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コロナの後ろで大忙しだった原油市場

2020-04-14 17:04:58 | 欧州情勢複雑怪奇

コロナの話が毎日どこの国でも1面をにぎわせるようになってから2カ月ぐらいになるけど、その間にも世の中大枠では普通にみんな生きてる。みんな生きてりゃエネルギーを使う。

というところで、そのエネルギー資源の中の代表選手である原油価格が二階から飛び降りるように下がって1カ月ちょっと経過して、なかなか興味深い展開があった。

こうなったのが3月9日。

OPEC+、つまり、サウジ主導のOPECに+1のロシアがくっついた恰好でここしばらく減産するか否かの調整を行っていた。

しかし、ロシアがもうOPECと特に協調しないで、増産する時はするという態度を表明。折からの価格下落の上に、先安観が確立。

マーケット大荒れ&ロシアの「No」

 

ロシア政府は、先安で結構、バレル20ドルだろうが30ドルだろうが構わない、それで予算組みに不都合が出たら自分ちの貯金箱ひっくり返してやりくりする。バレル20ドル近辺だと6年から10年はやれる計算だ、などと言い出す。

今日誰でも知ってる通り、この金額ではアメリカの従来型はいいとしても、シェールが立ち行かない。シェール事業は壮大な減収が見込まれ、事実すぐに倒産したところもある。貸し込んでいた銀行群が、仕方ないから担保に取ってた油田を持つことにした、といった状況も見られる。銀行が持ったからといって20ドル近傍で採算が取れるようになるわけではないわけだが。

The industry is estimated to owe more than $200 billion to lenders through loans backed by oil and gas reserves. As revenue has plummeted and assets have declined in value, some companies are saying they may be unable to repay.

https://finance.yahoo.com/news/exclusive-u-banks-prepare-seize-213321633.html

という中で、トランプ政権は3月30日にプーチンに電話して、あれよあれよとともあれサウジ、ロシア、アメリカが話し合う恰好となり、何度か行き来があって、現時点では相当な量の減産の合意が一応できた。

この事態を、トランプが、いやぁよかったよかった、俺がサウジとロシアを調整したんだよ的に談話し、Bloombergあたりが、勝ったのはアメリカ、負けたのはロシアだ~とかいう記事を書いていたりする。

 

だがしかし、そんな話ではないのは関係者はみんな知ってる。ボトムラインにあるのは、シェールの採掘コストは高いということと、もう1つは、アメリカは自分は傍観者みたいにして、何かあるとサウジを使って原油価格をあげたり下げたりしてきた。つまり、石油価格を武器にして世界を振り回してきたわけですね。

で、今般、プーチンがやったことは、こういう話会いにアメリカを引き出して、お前も席に付け、としたことが大きいんだと思うわけです。

これについて、3日ぐらい前だったか日経が非常に良いまとめをしていて、予想外のことなので驚いた。

米国の姿勢には「いいとこどり」をねらう姿勢もうかがえる。原油安の直撃を食らっているのが損益分岐点が高いシェールオイルを生産する米企業だ。シェール企業の破綻で債券市場で信用リスクが広がるなか、トランプ米大統領がサウジとロシアに協調減産の枠組みに戻るよう呼びかけたのが今回の産油国の暫定合意の発端だった。民間企業による減産で協力姿勢を演出するのにとどめて、暫定合意の原油安歯止め効果に「ただ乗り」しようとの思惑もにじむ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57959490R10C20A4EA5000/

 

そう。この事態を前にしても、サウジとロシアが~とかいって、両者に減産させて、それによって多少原油価格が戻る(高くなる)わけだから、そしたら自分は何くわぬ顔で高い値段を享受する、という恰好。

アメリカはこれをずっとやってる。

というより、アメリカというのは、自分に不利になるような約束は絶対にしないという、誰とも協力しない、Exceptional(例外)な存在だというのが国是。

これは別にオバマに限ったことではなくてずっとそう。IMF/世界銀行という仕組みを作って、各国を借金漬けにし、かつ、食料やエネルギーの買付先を制限していって、各国の経済(というより生活そのもの)をコントロールしてきた。

自分は例外。だからアメリカの農家は補助金付けてもOKだが、他国がやると社会主義が~だの、対ソ戦略上とかなんだりかんだり理由を付けて、新自由主義方向に行かせる。これもそれも、食料を外国から買い付ける恰好になってる国は弱くなるに決まってるから。

ここにおいて、エネルギー、基礎的穀物、基礎的テクノロジーが自給自足で完結でいるロシアがなぜ強いのかわかりますね。お前んところの借金漬けを利用した「俺以外全部手下スキーム」から離れても俺は生きていけるというのがソ連/ロシア。

 

ということで、今般の動きは、アメリカはロシア、サウジ他のOPECと同じテーブルで話し合うというところまで行かされた、ってのが新しいと思う。勝ったと思うなら勝ったと騒げ、花でもメッセージでも送ってやる、だからそこに座れ、ってのがプーチンの戦略だったと思う。

Kremlin considers OPEC+ deal to be accomplished 

https://tass.com/economy/1143047

 

しかし、そうするとアメリカとロシアが多少なりとも協力体制にあることになっちゃうでしょ。だからそれがイヤさに、アメリカの圧力にロシアが屈したみたいな記事を書き続けている勢力がいたりするんでしょう。

リアリティーねーよ、ってのに気づいているのは他ならぬアメリカの石油産業でしょう。石油産業は基本的には、どうあれ、ちゃんと掘って、ちゃんと精油して、ちゃんと運んで、ちゃんと使ってもらわないと飯が食えない、テクノロジーを含んだ実業。だから、いかさましないでもやれる安定的な原油価格はこの業界にとっても長期的にはプラス。

それに対して、金融、メディアは虚業。騙しが儲けになる業界。

 

といういうことで、また多少は波乱はあると思うけど、方向性としては、OPEC+2(ロシア&アメリカ)みたいな感じをベースに、なんらかの価格調整の枠組みができるんじゃなかろうかと予測する。

ロシア政府が、ウチはバレル40ドルで予算組んでます、と言い続けているのはこのあたりの価格でどうでしょうかという示唆なのかなと思わないでもない。

そうなると、アメのシェール産業にとってもサウジにとっても安すぎるということになるんだが、多分、ロシアはそういう余剰資金が世の中の不安定化の要因と思ってるだろうから(実際、テロリストという傭兵の資金源はサウジ、カタールなどの資源国)、相対的にいえば低値安定路線を目指すと思う。

これは、非産油国にとってはまったく喜ばしい話(日経がこの件に関して結構真面目なのは一応日本の新聞だからかもしれない)。

アメリカの石油業界は、シェールで潤ったから青天井の高値路線が望ましいというのはもはや終わった話でしょう。現実には、なにせ国内産業だからここの見通しが過度に悪化して将来の見通しがたたなければ、雇用にも大影響、地域産業にも大影響。また、石油で潤ってる地区は主に共和党地盤が多いので、ここで意地張って事態を悪化させたらトランプにとっては選挙問題でもある。

ということで、トランプに花持たせながら、アメリカもテーブルに着いたメカニズムに向かった取り組みになっていかざるを得ない、今ここ、って感じであろうと思う。

Oil Industry Experts Say Shale Will Rise Again 

https://community.oilprice.com/topic/12383-us-shale-resilience-oil-industry-experts-say-shale-will-rise-again/

Trump To Discuss Aid For Oil Industry As First Big Shale Firm Files For Bankruptcy 

https://www.investors.com/news/oil-prices-whiting-petroleum-files-bankruptcy-saudi-arabia-price-war/?src=A00220&yptr=yahoo

 

■ オマケ

この間、ロシアとアメリカの宇宙飛行士3人がソユーズで国際宇宙ステーションに行ってた。

米ロの3宇宙飛行士、宇宙ステーションに到着 新型コロナで厳戒下の打ち上げ

https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/2d39d5bedae7c36e1d5e03ff352cd03c

 

これは宇宙ステーションの人たちにプーチンが隔離された執務室から話しかけてる様子(プーチンはコロナ対策で会った病院長がコロナ陽性だったため自主隔離中)。

4月12日は、1961年4月12日ガガーリンが世界初の有人宇宙飛行を達成したことを記念した宇宙飛行士の日。

http://en.kremlin.ru/events/president/news/63183

 

2007年あたりからの異常なロシア叩きの間も、宇宙における米露の協力には特に変化はなかった。

世の中こんなことをやっている間も。

そしてプロパガンダが残った

 

これはつまり、何度も書いてるけど「国ごとに考えると間違う」という話なんだとしみじみと思う。

そして私は相変わらず、リベ・デモ(グローバリスト)の凋落の時代と見てる。

リベ・デモの凋落と「地」&着替えがない日本

 


 


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1 コメント

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Unknown (ローレライ)
2020-04-15 15:52:23
石油高騰の為に戦争起こすアメリカの狂人外交の相手は難しい

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