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神聖同盟の前に1812年ロシア遠征

2014-04-10 18:35:33 | 欧州情勢複雑怪奇

この間思いつきで書いた神聖同盟説がちょっと気になって再度考えてみた。

いや、今日歩きながらふと考えたのは、神聖同盟が成り立つということは、ナポレオンは1812年のロシア遠征に失敗し、その後最終的にウォータールー(ワーテルロー)で負けるんだよな、と。

で、じゃあ今回のナポレオンは誰なのかといえば、フランスじゃない。別にフランスはかき混ぜてない。やっぱりアメリカってことだろうなぁ・・・と。確かに理念的にはアメリカはフランス革命の拡大版には違いない。

とすると、ロシアという保守の壁みたいな国が立ち上がるのは実にまったく当然だったともいえる。日本では、ソ連のイメージが強すぎるのでロシアを左翼だと考えている人が多数のような気がするけど、国の位置、国柄としてロシアって欧州世界の究極の保守でしょう、やっぱり。(極東方面は清国とのからみで欧州と事情が異なりすぎるのでここでは考えない)

今回ウクライナに手を突っ込んだというところが、近代3度目のロシア遠征ということになるんだろうけど、これまでの歴史ではここは近代化勢力が負けることになってる。

で、神聖同盟が見え隠れするということは、1800年代と同様に革新勢力の敗北が見えている、と言いたいところだ。しかし、ここが難しい。

というのは、今回の「ナポレオン軍」(ナポレオン→近代化・革新勢力→アメリカと流れて来た結果としての主体)は、EU/NATOというカバーを使って、欧州内の各国家勢力の意志を封じ込めており、とりわけイギリスが現状いわゆるアメポチ状態なので、単独で保守勢力として振る舞えない。そうすると保守勢力が結集できない。ウェリントンはもういない(イギリス人にとっては心から悲しむべき事態だわ)。キャメロンとか冗談にしかならない。

(1815年のワーテルローの戦いでナポレオンを打ち破った軍人として名高いウェリントン公爵)

ということは、今度こそナポレオン以来の近代化勢力が勝利するのか、と見えないことはない。であれば、アメリカが日本を封じ込めていたのと同じように、NATOを使って欧州を封じ込めた作戦がここで生きてきた、ということになる。ということは1997年にNATO東方拡大を決意したのは、このロシア潰しの本格化という意味だったのだろう。アフガン戦争はその前哨戦としての中央アジア崩し、と。う~ん、自分で納得してしまう。
(このアナロジーで考えれば、日本はこの封じ込めを解かない限り自力で中国に立ち向かえないよう誘導される日が来るかもよ、ということになる。自立って大事だわ)

  1. 1812年 フランス ナポレオン
  2. 1941年 ドイツ ヒトラー
  3. 2014年 EU/NATO/US連合軍

でもその間に、1917年のボルシェビキの革命と冷戦終結による1991年ソ連解体があったので、ロシアへの欧州からの外国勢力の侵入または介入という意味では都合5回。

なんというか、近代欧州諸国は強国になるとロシアに突っ込んでいくのは運命のようなものなんでしょうかね。というか、これがユーラシア支配、ひいては世界支配への欲望の表われというやつではなかろうか。多分そう。

(1812年頃の地図。バルト3国、ワルシャワあたりはロシア帝国内、オスマン健在。)

ロシアが狙われる理由の最大のものはその位置でしょう、やっぱり。東地中海に力を投影できるというのが非常に大きい。トルコ、ペルシア(イラン)方面を抑えられる位置にある(英仏、NATOがたとえどんな国情だろうがトルコを離さないのは戦略的に正しすぎるほど正しい)。今回はそれに加えてその天然資源が重大な関心を寄せている。そういうわけで、世界支配を企む勢力のターゲットとなるんでしょう。個々のロシア人にとっては全く気の毒な話だけど。だってそうでしょ。存在するだけで敵扱いされるんだから。

■ 核兵器が救ったロシア

とりあえず、今のところロシアが差し込まれているように見えるけど、でもなぁやっぱりEU内の一定の国との足元の連携が固いという点から、欧州全域が「ナポレオン軍」に与しているとはやっぱり言えない。一皮むけばナポレオン嫌いも多いだろう。一貫していつも「ナポレオン軍」の側にいるのはポーランドというのも興味深い。これは偶然とうよりやっぱり位置と支配者層の傾向なのかな。冗談のような偶然の一致は、デンマークもナポレオン支持側だが今回もNATO事務総長はデンマークの元首相という点か。

さらに、前回は陸上戦力の移動だけが戦争だったわけだけど、今回はロシアには核兵器という大きな武器がある。一定以上の脅しには相応の報復が待っている。

改めて考えてみるに、ロシアほど核兵器が重要な国はないのかもしれない。だって200年を通してナポレオン軍をはじめとして世界支配の野望を抱くものの通る道はロシアの奪取へと至る、ってことらしいんだもの。

もう一つ、今回は奇妙な援軍がいる。バチカンが妙にロシアというかプーチンというかの肩を持っていように見える。世界的にある種の現れが見えるようにも思える。

そういうわけで、「ナポレオン軍」のモスクワ攻略は今回も無理だろうなぁ、というのが私の判断。

  • 核兵器が物理的、軍事的侵略を阻止
  • 正教とバチカンによる側面支援が、経済侵略、文化侵略に対する国民(または援軍の諸国民)の精神的武装に寄与

という作戦か。

逆に、ひょっとして、ロシア遠征を受けて、EUが割れる、少なくとも欧州ソビエトと言われるほどの現在の疑似専制体制は壊れるのかも、という気がしてきた。となると、これがウィーン会議への道筋か。

いやいや、そうやって表に出さない、アレクサンドル1世が目立っちゃうような会議は踊る的状況は作らず、みんなしておとなしく面従腹背的にだましだまし自己の利益を最大化させるよう、潜伏、匍匐前進的に進むのが今回の諸国のトレンドとなるのかもしれない。

現状、欧州の個々の国々とかG7各国は、大きな事件があった時にそれぞれの見解を言う自由はかなり制限されており、決められた文言を飲むしかないみたいなトーン空気が支配的だ。自由な諸国なので不自由は選べないみたいな。実に異端審問くさい。きっとこれは、後に、米覇権後期の「大恐怖時代」とかいう歴史用語で語られるようになるのだろう(笑)。


(俺が目立つ方がよくない? ロシア帝国アレクサンドル1世)


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