前の2つのエントリーでぐしゃぐしゃ書いたけど、ともあれ、シリア停戦合意は達成、和平会談開始の準備もできた、とプーチンが語ってる。
Agreement reached on ceasefire in Syria & readiness to start peace talks - Putin
https://www.rt.com/news/372141-putin-syria-ceasefire-agreed/
どういう代物かというと、3つの文書から構成されている。
- シリア政府とシリア反政府勢力による、シリアアラブ共和国領土内における敵対行為を停止する旨の合意
- 上記停戦をコントロールするための措置の設定についてのもの
- シリア問題解決に対する意図を確認する声明
で、1の反政府勢力というのは、主に7つの武装グループで総勢6万人。
この停戦には国連が認定したテロリストは含まれない。
停戦実施は、12月30日の鐘がなったら、ということなのであと数時間。
トルコは、武装グループが停戦合意を遵守するようあらゆる当事者に呼びかけている。
トルコ、イラン、ロシアはカザフスタンのアスタナで和平会談を開く準備をしている。
ということらしい。
誰が考えても、かなりこう、緩い。が、形は出来た、と。で、プーチンは、
「みんなが理解する通り、私たちが達成したこの合意は非常に脆いものです。特別な注意と我慢、プロフェッショナルな態度、パートナーとの絶え間ない接触が必要です。」
“This agreement we’ve reached is very fragile, as we all understand. They require special attention and patience, professional attitude, and constant contact with our partners,”
と語っている。まさに誰でもそう思うわな、ってところ。
まぁその、そもそも武装勢力をそのままアレッポから武器をもたせて逃がすってどうなの、と多くの人が思い、米軍軍関係者なんかは、軍人は敵を武器を持って逃がすなんてしたくないんですよ、と率直なことを言い、普通殺しちゃうんですと言わんばかりのことまで示唆していたぐらいだった(アメリカのブラック上院議員)。
この6万人を殺さずにおくことは、アサドへの敵対方向を固めないことにもつながり、シリアにおける殺戮、憎悪の減退になる、というロシアの判断なんだろうと思う。あるいは、こうやってスクリーニングをしていければ、紛争のたびごとに脱落者が出ていく、という読みもあるんだとも思う。
この勇気と実行力のある判断が良い結果につながることを願いますよ、もちろん。
でも、形になってしまえば、今後は合意違反をあげて、それをあげつらいながら対処するという方法がとれるし、意味不明に誰が誰だかわからないところに武器や資金を投入していくアメリカという最強テロリストの介入の予防にもなる。
つまり、シリアにおける反政府勢力をシリアの勢力として認定した、というのが一見迂遠のようでいて効果的なんだと思うんですよね。
なぜなら、これによって、彼らに対する支援は外国勢力の介入であることが形式上鮮明になるから。
別の言い方をすれば、オバマ政権が取った、「たいへんよ、アサドは人道違反なの、みんなで助けに入りましょう」という狼による赤ずきん作戦を封じたとも言えるでしょう。
今度はイドリブとシリア東部を中心に、クルド問題をどうするのかという話をしていくことになるんでしょう。で、シリア問題の解決にはそこまでが含まれるから、実のところとても難しいし長い。クルドはイラン、イラクにもまたがってるから。
■ オマケ
好例の妄想セクションですが、結局これは何をしたことになるのかと考えてみるに、ふるーい古い勢力、アングロ・シオニスト勢力が負けてる、少なくとも思うようにいかなくなってる、って話だと思うわけです。ここにはフランスやらドイツの一部も含まれると思う。
しかし、この話はまだまだ全然終わらない。アングロ・シオニスト勢力は過去150年ぐらいにわたって、各種の団体をつかいながら(いろんな変装をしながら)不埒で不出来なイデオロギーをまき散らしているわけですよ。だから、それらが独自に作ったネットワークによる変奏がまだまだ続くんだろうなと思う。
プーチンが2015年9月の国連総会で、「Do you realize what you have done?」(あなたがたは自分が何をしたかわかってるんですか?」と言ったことが話題になったけど、これは単にシリア危機に留まらない指摘だと思うし、プーチンあるいはロシアだけの考えでもないと思う。
1917年を見直す時になるのか2017年
■ オマケ2
「テロリスト支援するなよ」by エルドアン、と言われれば誰だってお前だろう、支援してたのは、とつい言いたくなるのだが、エルドアンがテロリストという場合には、それはほとんどの場合、トルコ内のクルドの話、つまりYPGのこと。
‘Support your NATO ally, not terrorists:’ Erdogan slams US amidst row over alleged YPG supplies
https://www.rt.com/news/372150-erdogan-us-terrorists-turkey/
この是非はおいておいて(おけないほどトルコが酷かったりもするのだが)、「テロリスト支援するなよ」といいながらクルドに支援するのやめろよ、と米に言っているのは、マジでしょう。
だから、ここで俺はNATOだぜ、というのが西側向けのある種の担保になる。だから、NATOを抜けるなんて言わない。単に、ロシアや中国とも協力すると言う。
このへんを、潔癖症の人は怒るんだと思うけど、だって、NATO/USが敵だと認定したらどうなるのか、みんな知ってるでしょ?ってことを加味して考えないと、観察者の正義感のためにトルコ人に死を覚悟しろと言ってるも同然になっちゃうと思うのね。
ロシアも弱ってる時まっさきにアフガン攻撃を支援したのはこの伝だと思う。あそこで911に疑義を呈して反対を貫いてたら攻撃対象になってた可能性は大有りでしょう。そうしたい人たちがプランニングしてたんだから。
ということでユーラシアの人々はこうやって国民単位で是非を聞き分けながらやっていくしかなかったんだし、まだ当分そうだと思います。
満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書) | |
安冨 歩 | |
KADOKAWA/角川学芸出版 |
シベリア出兵 - 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書) | |
麻田 雅文 | |
中央公論新社 |
アメリカって本当に余計な存在だったんですね