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オバマ→トルコ「シリア国境を閉鎖しろよ」

2015-12-01 16:56:27 | アジア情勢複雑怪奇

日本のトルコがらみの報道は殆どすべて、根拠のない希望的観測に基づいていたんだろうなぁと面白くみている。

今日のはとりわけ凄いかも。

首相 トルコとロシアの関係改善に努力の考え
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151130/k10010324751000.html

そりゃ対話のパイプになるのは結構なことかもしれないけど、何か、こうやることによって何か事態が解決しそうな誤解を日本国民に振りまくのはいかがなものか。

そもそも、この記事を読んでも、エルドアンと安倍ちゃんは「トルコのエルドアン大統領と短時間、ことばを交わし、」だそうだよ。

さらには、プーチンとは別に会話も交わしてない模様。プーチンはオバマと30分ぐらい話し込んだそうだし、あちこちの首脳と会話したり会見開いたりして忙しそうだ。

でね、これってトルコとロシアの「関係改善」なんてテーマではないわけですよ。

シリア問題を巡って、トルコは二枚舌を使ってシリア侵略の急先鋒だったことが明白となり、その一方でテロとの戦いは大事ですといって、彼らにとっての「テロリスト」であるクルドを攻撃していた、つまりトルコはIS打倒を目指すNATO諸国民を裏切っていた、というのが最も重要な問題ね。

プーチンがトルコを非難したって話はトルコとロシアの問題じゃなくて、トルコと「IS打倒チーム」の問題になっちゃってるの。

これはロシアチームの論理的一貫性と広報活動の強さの成果でもあるでしょう。

(それに対して日本の情報機関&大本営は、事件はシリアで起こってるんですよ、大本営の人でも書いた通り、シリア危機が国際問題になっていることを日本国民に伏せて、ぼかして、ロシアが悪いからこうなった問題にしようとしているんだろうか? パーでしょ。)


■ オバマ、トルコにシリア国境を閉ざせと言う

で、ここ一両日で最も重要な記事はこれかも。

War with Isis: Obama demands Turkey close stretch of border with Syria
http://www.independent.co.uk/news/world/europe/war-with-isis-president-obama-demands-that-turkey-close-stretch-of-frontier-with-syria-a6753836.html

オバマ政権がトルコにシリア国境を閉じろと要求した、と。

一部分試訳すると、

パリでのISIS攻撃を受けて、ワシントンはアンカラに対し、ISISが現在もまだ使っているシリア・トルコ国境で開いているいる部分を閉鎖できないいうトルコ政府の主張はこれ以上受け入れられないと明言している。オバマ政権の高官の一人はウォールストリートジャーナル紙において、「ゲームは変わった。もう十分だ。当該国境は閉鎖されるべき」、「これは国際的な脅威で、その脅威はシリアから来ており、そしてトルコ領土を通ってきている」との言葉でワシントンがトルコ政府に発している厳しいメッセージを説明した。

で、この後、事こうなった経緯とその国境部分を巡るいきさつが縷々述べられている。

つまり、前からトルコがシリア国境を開けたことによってテロリストだか武装民兵だか知らないけど、それら反アサドを旗印にするヤバい奴らがもりもりシリアに這い込んだ、ってことが重要な転機だったって書いてるけど、それを、いい加減やめろとオバマ政権がトルコ政権に要求したようだ、ってな話。

もちろん、もっと前に言えよ、って話だし、こういうトルコの行為をワシントンは見逃していたし、協働もしていたわけだけど、今になってこうなったのは、もはや事態は変わりました、と見定めているから、なんでしょうね。

これを書いているのが、Patrick Cockburnというジャーナリストで、おそらく英諜報とかのために書いている人じゃないかと言われている人。

というと御用ジャーナリストかよぉ、なんだけど、いやそういうのじゃなくて、政権なり軍なりが真意をある程度流す必要がある時に、ちゃんと話を組み立てて事情を流すという重要な役割を果たしている人といえるんじゃなかろうか。

つまり、情報機関の言う通りを流す日本のジャーナリストみたいなのはいわば低級(ジュニア)御用ジャーナリストだとしたら、英米には高級(シニア)御用ジャーナリストみたいな人たちがいるって話。あはは。

で、シニア御用ジャーナリストは、それなりに上手に「上」が隠したいことを隠しつつ、読者という一般人がある程度受け入れられる話を、自分が持ってる情報源の情報とマッチアップさせて、大丈夫な線を書くって感じなんだろうと思う。

今回このシニア御用ジャーナリストが隠しているのは、ゲームは変わったのだとしても、それはオバマ政権の堪忍袋が切れたから、でも、ISの行為が国際的な脅威になりました、でもなく、パリの市民を慮ってでもなく、ロシアが本気で乗り込んできて、ついにはS-400の配備に行きつき、かつ、これがまた重要なんだが、イランがロシアとの共闘を支持しっぱなしだから、じゃないかと思う。

これであり、

これだから、でしょう。

 

この配備を乗り越えてそれでもロシアを叩こうとしたら、それってもう核戦争を視野に入れる話になるので、ISたらいう汚ねープロジェクトにそこまでやる価値なんかねーよ、だと思う。

しかし、そうは言いたくないから、もうここで手を打とう、もう十分だ、困ったことだ、という感じに話をもっていっている、ってことじゃないですかね。シニア御用ジャーナリストはそのために上手に理由を述べている(が、最近のロシアを中心にみている各国草の根はその水準を挙げてしまっているので、私が思うに、アメリカ政府の対応は遅すぎたと思う。)


■ 捲土重来を期す!

ということで、ISプロジェクトはもう詰んでいる、って理解していいんだと思う。

もちろん、the Westさんは「捲土重来を期す!」だろうけど(笑)、このターンはあかん、じゃないのかなぁ、と。

おそらく、トルコが自分で決めてロシア機を撃つなんてことはあり得ないので、どこかの誰かなりの「戦略」なんだろうけど、でも、どうも上手くいかなかった、と。

で、このままトルコに突っぱねさせていると、ロシア政府は次から次からいろんな話を暴露するし、それに呼応して英米一般人の認識が、トルコはNATOだから仕方ない、から、NATOから叩きだせ、になって行ったら困るのはthe Westってことでもあるでしょう。

■ ロシアの対応策に非難がない

思えば、トルコの行為をNATOという組織は擁護したが、ロシアが課したトルコへの対応策への批判ってのが出てこない。自分でやったんらから仕方ないだろ、なんだろうね。

EUは金を出して、難民対策よろしくねと言い、さらにはビザ制限を緩和し、トルコのEU加盟が促進される、という形になっている。だから、なんだかトルコ政権は自分が勝ったかのような錯覚に陥っているやにも見える。

しかし、EU各国はこれに耐えられるのだろうか・・・。

というのは、トルコがロシアから課された制裁を見ると、これってトルコがEUの重荷になるっていう方向に見えるから。

トルコからロシアへの農産物輸入が禁止になると、余剰分はEUに流れるのでは? しかり折からEUはロシア市場を失って農家が今も困ってる&怒ってるところ。

さらに、トルコはロシア市場の特に建築業界で下請け企業になっているところが多い。こういう業界は労働力を必要とする。ここがまるまる失われる。また、ビザ無し渡航が禁止になるということは、合法だけでなくすれすれ非合法的にロシアに出稼ぎに出ていた人たちもロシアから退去することになる。ロシア連邦だけでなくおそらくその兄弟分地域でも同様の対応が取られると予想。

この人たちはどこに流れるでしょう。それはつまりEUではないの?

ロシアは、多分、この流れが確定してから、ところでエネルギーが、という話に移るものと想像。で、私の読みはトルコ・ストリームはもうない。300ルーブル賭けて1年後に読み返すことにする。

 


 

永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04)
白井 聡
太田出版

 


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2 コメント

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『塀の上のエルドアン』 (ローレライ)
2015-12-01 21:12:30
『塀の上の』アクロバット中のエルドアンを落とすネタは『スパイ衛星時代』だから、ロシアやアメリカでは共有されているだろう。
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アメリカにとっても敵 (ブログ主)
2015-12-01 21:40:04
今回ロシアがエルドアンを蹴り落とすことになりましたが、でもアメリカはやってもらって大ラッキーだと思います。

ああいうタイプはイスラムとワッハービズムとかいう偽物イスラムを切り離していく契機にもなり得たから。

ある意味岸信介に近いものがあるんじゃないのかなとか思いました。汚い奴であることは疑いもないんだが何かの拍子にその刃物がこっちに向かってくる可能性も否定できないから。こういう手合いは英米は嫌いなんです。ロシアは割と得意だからある意味もったいなかったと思ってるんじゃないでしょうか。
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