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世界強国への道は行き逢ったのか

2015-05-25 19:11:28 | 欧州情勢複雑怪奇

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告/エマニュエル・トッド

で書いたこの本、まだ買っていないのだけど、情報を整理しておきたくなった。

この本がなぜ今日重要かというと、また「あの」枠組みが動いているという恐怖感が一定の人々の中にあるからだと思うわけです。そしてこれがなぜ日本で出されたのかといえば、日本、関係あるよ~ってことでしょうね。

で、どんな枠組みかというと、

世界強国への道/フリッツ・フィッシャー

どういうことかいうと、ナチスの欧州支配、東方拡大について彼がへんな奴だったからと異物扱いしている風潮に対して、フィッシャーさんという歴史学者が、

ドイツ第二帝政から第三帝国に至るドイツ支配勢力の性格は、根本的には連続性をもっている。したがって、両大戦における戦争の原因、ドイツの戦争目的、支配勢力の政策もまた、ある程度の連続性が認められる (wikiにあった)

と主張したわけ。ひらたくいえば、ドイツ帝国は最初っからずっと同じ侵略目標設定やってるやろ、という話。

その下敷きにあるのは、いわゆる「中欧」構想。そして、今見てみると恐ろしいことに実は着々と成功してたりするのね(笑)。色別の説明は世界強国への道/フリッツ・フィッシャーで書いた通り。

 

■ 世界征服

と、なんで今日こんなことを書きたくなったかといえば、先週、安倍ちゃんと志位さんが党首討論をやって、その中でポツダム宣言の中の6項、8項が読み上げられていて、ああ・・・、と思ったから。

6項には、日本国民を欺いて世界征服に乗り出す過ちを犯させた勢力を除去する、とある。

吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス

国会図書館

この中の「世界征服」の挙に出ズルノ過誤、というのが、昔から問題視されてきたように思う。いや、問題視というか、欧米人が勝手にそんなことを言っている、か、でなければ、田中メモリアル(田中上奏文)以来の妄想だろうといわれていた。

しかし、そこではない可能性の検討は行われていないのではなかろうか。少なくとも連合軍でポツダム宣言書いた人たちの中には、世界強国への道は行き逢ってた、つまり共同謀議的だったと思ってた人がいたってことだよね。で、その結果として、お~らおら、日本いい加減にせーよと思った人がいたって話なんだろうな、と。

つまり、日本、ドイツ、または日本、ポーランド、ドイツの組み合わせでユーラシアを揺らしていくという構想を持った人たちがいたって話じゃないのよ、ってことです。日本の歴史家は一般的にここには答えていない。

まぁまったく言われがないとも言い切れないのは、だって、ロシア革命の混乱後にウラジオストックを制圧して、シベリア出兵して当時のスケールでは一戦争分のお金と人員をもっていって、何年も兵を戻さず、ようやくあきらめて戻ってきたのは ワシントン会議の後の1922年。日本はそれまで沿海州、シベリアに居座って(他に適当な語が見当たらない。だってなんの正統性もないんだもの)、北樺太からの撤兵はさらに遅れ1925年。その間ユーラシアの反対側では、最初はドイツがロシアを攻め、トルコのお当番は黒海、そうこうするうちにロシアが革命で混乱している最中にはポーランドがロシアに攻め上りかなりの大戦争となった。(ポーランド・ソビエト戦争

さらにそこから十数年たって、ノモンハン事件の前後もまた、ユーラシアの東西が揺れていた。

これを並べてみれば、まったく関係がないと言い切れない感じがしてしまうのも仕方ないのじゃなかろうか。単純に、並べて研究する姿勢をもった研究者がこれまであまりいなかったにすぎない。とにかくなんかスケールの大きいことを考えてたグループがいたみたいだな、と想像しても悪くないでしょう。

その上で日本は、満州事変があって、今もって何をしたかったのかまったく不明としか言いようのない三国同盟を締結しているわけだしね。

このへんで書いたように、日本陸軍はユーラシア深く、深く関心を向けてるというのも示唆的。

昭和陸軍全史/川田稔

 

■ 問題の在り処がわかってよかったのか

そういうことを考えてくると、安倍ちゃんが、ポツダム宣言の詳細は知らないもん、と言ったのは他に言いようがなかったからなのか・・・と考えるとかなり正直な反応をしたともいえて、あれれと思ってみたりもする。ポツダム宣言の内容として指摘された2点について両方とも心当たりがあるのでかわしたってことだから。

一つは、共同謀議問題。もう一つは、国民を騙していたという問題。満州事変が関東軍の謀略だったことを国民が知ったのは戦後だという点はもっと強調されていいと思う。このへんで書いた通り(「戦後秩序からの脱却」と「満蒙は日本の生命線」)。

ある異常体験者の偏見 (文春文庫)
山本 七平
文藝春秋


ただ安倍ちゃんは能力が劣っているので、うまくかわせなかった。官房長官が翌日の会見で、受諾した、受諾した、それがすべてみたいなことを言っていたけどこれはつまり、政権としてポツダム宣言見直しを迫るとかいう気はないんですよという、海外、主にアメリカに向かってのセリフじゃないかと思った。国民向けじゃなくて。

しかし、ではそうすると、さんざっぱら国民をあおってきた戦後レジームからの脱却って何の話よ、になっちゃうわけで、なんてかこう、不誠実に「同床異夢」を誘って、あっちにもこっちにもいい顔して勝った気になってる男の末路みたいな感じ。

なんで日本の指導者層には「誠実であることの強さ」みたいな心根がないんだろうね。一般的に徳川時代の指導者層にはあるけどね。そう考えてくるとやっぱり明治維新というのがチンピラな革命だったからということになるのかもしれない。

いずれにしても、洋の東西で、100年前あたりからの歴史が徐々に見直されている気配があるのは好ましいことだ。

■関連記事

世界強国への道は行き逢ったのか(2)


 

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