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英レポートの続き:「虚偽の理由づけに基づき着手された侵略行為」

2016-07-07 17:52:23 | 欧州情勢複雑怪奇

昨日のイラク戦争に対するUK独立委員会の調査報告について、その後UKの下院でも取り上げられて、野党のジェレミー・コービンは、件の戦争について、

an act of agression launched on a false pretext

と述べていた。動画

虚偽の理由づけに基づき着手された侵略行為、ってことですね。

あちこちに出てるけど、Daily Mailがいつものようにぐちゃぐちゃにいろんな写真やら何やらを貼っつけているのでここをリンクしておこう。

'An act of military aggression launched on a false pretext': Corbyn tears into Blair branding Iraq war a 'stain' on Labour after devastating inquiry report

 

で、これに対してキャメロン率いる保守党とブレアの子分の労働党の人は、そんなんじゃないと言いたいのでああだこうだ理由づけをしているけど、いいやあれは正しい行為だったと自信を持って言う人は実に少数になってると言っていいと思う。

なんせ理由がインチキだったところまでは確定してるからね。

保守党+ブレア派の急進派の理論建ては、そうはいっても独裁者を放置しておくわけにはいかないのだ~、ってあたり。これがネオコン本筋+人道的介入主義者とでもいうべき一群の「教理」みたいなもの。

しかし、キャメロンの言い方を聞いているとさすがにこの教理で押すのは無理だと思っているのか、そういう判断と、結果を考えた時の判断との間で、どうリスクを取るのかの問題だ、とか、今後に活かすためにこういう検証をしているんです、みたいな言い方で懸命になって凌いでいた。


■ 議論が示唆するもの

UKではそもそも国民は反対が優位の状態で戦争に突っ込んでるので、今さら国民はあの時支持したのだ、とは言えないし、国際社会がみんなして賛成したのだとも言えない(近場でフランス、ドイツ、ロシアは反対してた)。だからUSとUKが先頭を切ったことに対する責務ってのが発生してる。

その上で、突っ込んでいった結果として自国の将兵179名が死んだ。イラクはぐじゃぐじゃになってる。そこで少なくとも50万人以上のイラク人が死に、それに数倍する人々が傷つき、さらにその何倍もの人たちが居住地を失って人生を狂わされたという現実がある。復興の見通しすら立たない。

重ねて考えると、少なくとも国連決議というある種の集団的な合意がない大規模武力介入は、やった側に大きな責任がのしかかって大変だよな、とまとめているも同然、って気もする。


■ まさしくロビン・クック

そこで思い出すのは、ロビン・クック。これはまさしくイラク開戦前にロビン・クックが述べたことそのものだ。昨日の英議会でも数人の議員からロビン・クックの名があがっていた。

  ロビン・クック wiki

ロビン・クックは、国際社会の合意もないことを突っ切ってやるというのはアメリカはサバイブできるかもしれない。しかしUKはそういう大きな国ではありません、だから私はこの戦争に反対する、という言い方をしていた。

ロビン・クックは英国政府の中でイラク戦争に反対したことで有名だけど、でも、こういう論理の立て方は一部の人には不評なんじゃないかと思う。道徳的に間違いだ、という追い込み方をしないから。一直線に道徳にバリューを置く人はコービンの方が好きでしょう。


しかし、道徳的に間違いだった、というのは、もちろん正しい理屈ではあるんだけど、それは一方で「独裁者は倒すべき」という狂人たちの「教理」と同じ地平で争うことになる(彼らは主観的には道徳を追っているつもりだから)。だから、それよりも、consquences(起こり得るべき結果)がより平和的、より少ない犠牲で済むのはどっちなのか、という議論で押すというのも一理というか一利あると思う。


ということを考えた時、ロビン・クックはやっぱりなんらかの理由で消されたんじゃないのか、という根強い噂を思い出さないわけにはいかなくなりますね。なぜなら、彼の方が有用だから。


■ 今後の前提

とりあえず、現状の確認として重要なのは、13年前猛威を振るった「教理」は、起こった結果の重大さから考えて、もはや魔法のツールではない、ということが確認されたことが重要だろうと思う。

別の言い方をすれば、先制攻撃派は追い詰められている、ってこと。

で、このへんが今後の前提になっていく、んじゃないかと思うなぁ。まだ、「教理」派は捲土重来を喫してるんだろうが、英米の下々が懐疑派になっちゃったらどうやって話をもってけるのよ、ってところなので教理派不利は変わらないでしょう。

つまり、安倍ちゃんの「積極的平和主義」という考え方は、現状、少なくとも英米の半分ぐらいのところでは否定された、って感じだわね。

 

■ オマケ

どこかにあるはずと思って検索したらあった。ロビン・クックが院内総務を辞任する時のスピーチ。両党の議員たちがこんなにもみんなして拍手を送ることとなった事例はなかっただろうと言われているそれ。あらためて聞いてみるに、いやほんと素晴らしい。

Robin Cook's Resignation Speech (in full)

 

■ 後で追加

Everyone says I love youさんが、いつものように日本の報道をいっぱいまとめてらしたので、リンクさせていただきます。そう、日本はまだこのイラク戦争について総括してないんですから今後必要になります。

英国の独立調査委員会がブレア首相のイラク戦争参戦を厳しく批判。ではあれはフセインが悪かったという安倍首相は?
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/8ac78e4861d84405cbf80c45a7d15b24?fm=entry_awp

 


 

ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ
副島 隆彦,副島 隆彦,佐藤 研一朗
成甲書房

 

 

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
堀 茂樹
文藝春秋

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ブッシュ=ブレア=マードック (ファンです)
2016-07-08 02:19:15
イラク戦争からはこの爺さんも外せませんね・・・

http://www.recordchina.co.jp/a86431.html
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『正義感の罠』 (ローレライ)
2016-07-08 05:38:20
『物理的不可能』を訴えるロビン・クック流なら『正義感の罠』に嵌まらない。コービン流では『正義感の罠』に嵌まり安くなる。
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正義感は必要なのだが (ブログ主)
2016-07-08 14:35:28
ローレライさん、

そうなんですよ。正義感を達成するためには正義感をストレートに表明すればいいというものではない、というのが政治にとって重要だと思うわけです。

ここまで含めて教訓ですね。
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メディアの犯罪 (ブログ主)
2016-07-08 14:37:17
「ファンです」さんどうも。

リンクどうもありがとうございました。そうですよ、そこらへんのメディア関係者の罪は政治家より重いぐらいなのに裁けない。今後この危険な期間の扱いが問題になるでしょう。
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