習国家主席が、モスクワを公式訪問している。
数時間前についたばかりなので、特にまだ何も発表のようなものはないが、中国、ロシア共に、数日前からこの訪問は大事、この訪問は大事と書いているので何かあるのかもしれない。
多分、一帯一路構想と、ロシアを中心としたユーラシア経済同盟を有機的に繋ぐという構想をしているのであろうと思う。
ここで出てくるか否かは別として、おそらく軍事協力の深化も含まれている。既にその兆候はあるし。
しかし、前にも書いたけど、この2国の場合、たとえ貿易交渉でぎくしゃくしたり、ペンディングが続いたとしても、領土問題を解決し、特別に友好的な間柄を構成したというその事実だけでも、ユーラシア的には重要だし、安定の基盤ですね、ほんと。
Xi arrives in Moscow for state visit to Russia
http://www.globaltimes.cn/content/1054710.shtml
Chinese president stresses Sino-Russian commercial ties pose great potential
もちろん、この会合の数日後にはドイツ、ハンブルグでG20があって、そこでひょっとしたら、プーチンとトランプが会談するかもしれない。まだ2国間の会談は完全な公式スケジュールになっていないようなのだが、いずれにしても同じ建物でみんなして会合することまでは間違いない。
つまり、これはビッグイベント。でも、誰もまだ騒がない。騒がないから大きな問題でないのではない。大きすぎて話せないんでしょう。あはは。
というわけで、日本の記事はどうなってるのかなと思ってググったら、ふいに、こんな記事をみつけてしまった。
新潮社の「フォーサイト」という国際政治専門の雑誌の記事だそうですよ。へぇ~、とたまげますね。
「ロシアゲート」疑惑:閉塞のジレンマに陥る「プーチン外交」
名越健郎
執筆者:名越健郎 2017年5月23日
一連の展開は、米政界や社会に占める反露感情の高さを浮き彫りにしており、米露関係改善の限界も見せつけた。トランプ政権誕生に歓喜したロシアの思惑は裏目に出た。
http://www.fsight.jp/articles/-/42354
何か裏目に出てますか?
こんなもの、金払って読むバカがどこにいるんだい、と大きな文字で書こう。
これこそ、まさに、安富氏が口をすっぱくして述べている、あるいは全身で抗っているに等しい、立場主義そのものでしょう。
ロシアとトランプは仲が悪いはずだ、だってアメリカのメディアはそう書いている、それに、みんなロシアに批判的だ、実際そうでなければならない、だからそうなのだ、という論法。
まず見ろよ、と言いたいわ、私は。
そしてこの記事のトップには、安倍ちゃんとプーチンの写真。そこのキャプションが凄い。
外交的孤立が深まる中、唯一手を差し伸べているのは日本なのだが(写真は4月の日露首脳会談)(c)EPA=時事
だそうですよ。
ロシアは、外交的に孤立している、と。
しかし、よーく目を開けてみれば、いや、そんなに大きな目をしなくても見えてくるのは、
こんなものとか、
(ロシアとドイツ直通のパイプライン)
こんなものとか、
(ロシアとイラン、インドをつなぐ南北回廊)
(上海協力機構)
こんなものとか、
トルコ NATOの対ミサイル防衛システムからロシアのS400へ
https://jp.sputniknews.com/politics/201704283587147/
もう、数えるのがだるくなるほど、ロシアの外交は活発ですがな。というか、中東問題は既にモスクワ幕府を中心にして進んでるようなものでしょう。
その状況を指して、ロシアは外交的に孤立している、というのは、一体どういう意味なんでしょう?
さらにいえば、上であげた例などは、メディアが何を言おうと、首脳の口が何を言っていようと、現物が動いている事例ですので、外交的孤立もへちまもない。
一応考えられるのは、世界の一流国の集まりである「西側」では、という意味なのか。しかし、パイプラインの天然ガスは今日も流れている。
それだけでなく、そういえば、数日前、ドイツのガブリエル外相がモスクワを訪問していた。キッシンジャー氏が訪問していた頃(会ったという話は聞かないが)
おそらく米がロシアに制裁をかけて邪魔しようとしているパイプライン(2番目の)のことなのだろうと誰しも思うが、それ以上にプーチン、習、そしてトランプというこの動向の中にしっかり噛んでいるという意味だろうと考えるのが適切ではあるまいか。
Meeting with German Vice Chancellor and Foreign Minister Sigmar Gabriel
http://en.kremlin.ru/events/president/news/54905
一番右に見えるのがラブロフ外相。ガブリエル vs ラブロフの両外相による実務者会談が主体だけどプーチンともご挨拶、という感じでしょう。
で、こういう記事を専門誌なんてな名前の記事の中に書いて、恥ずかし気もなくまださらしている奴らはどんな目ん玉を持ってるんだい、と怒りたいが、怒るのが間違いなんでしょう。
そんな目ん玉なら銀紙でも詰めとけ、そんな耳ならミミーの耳でもつけてろ変態野郎とか罵倒しても始まらない。
立場主義者は、目のまえで爆発が起こっていても、いいや建屋内で爆発などあり得ない、あり得ないものはないのだ、と考える。これは病。
しかし、病に落ちいっていることすら気付かない。病と言われてもダメだろう。私の立場からはこうでなければならない、そうでないなどあり得ない、と考えるのだから。これは、ほとんど認識の病、精神の病。
(別の見方をするのなら、嘘という概念がない、なぜなら真実は視点によって異なるから、という方向から自分で見たものを裏付けなしに正しいと考える、とか、私は優秀なので間違わない、というタイプの深刻な病の人とはまた別種なのが分かりにくいんじゃないかと思う)
だから、立場主義者の群れをどうにかしないと考えるのは多分間違っている。多くの人は、マスコミが~とか苦情を言ってますが、そんなことをいくら言ってもダメだと思う。相手は暴走する立場主義者で、その本質はほとんど病なのだから。
もし本当に日本をガラパゴスランドからすく出そうとするのなら、この立場主義の牙城を一人でも多くの人間が出て、正常な五感と判断力を取り戻していくことから始めないとだわ。
まぁ、1世代ではすまないでしょう。
■ オマケ
マジでこの本いいです。800円台の親書。
満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書) | |
安冨 歩 | |
KADOKAWA/角川学芸出版 |
■ オマケ2
勢い立場主義に流れてしまったいるうちに、習・プーチン関係の方は、ロシアが聖アンドリュー勲章というロシア最高位の勲章を習さんに授与することにしたようだ。
環球時報の方では、中露間の関係は、史上最高と述べている。まぁ清とロマノフ朝も悪くない時期が結構長いけど、ここまで明示的にというのは確かに史上初かも。
Chinese president says relations with Russia at 'best time in history'
http://www.globaltimes.cn/content/1054638.shtml
また、この会談では、10ビリオンドル、だいたい1.1兆円ほどの取引の締結が予定されているそうだ。鉄道、ガス、ある種のハイテク分野なんかでしょう。
Xi Jinping to meet Putin in Moscow for 3rd time this year to strike $10bn worth of deals
https://www.rt.com/news/395102-xi-visit-russia-putin/
ワルシャワ条約機構はNATOを作られたので仕方なしに作った、ぶっちゃけロシア帝国とその周辺がハリネズミになっているといった趣でしたが、上海協力機構は、関係国の調整機構なので、赤軍みたいなノリではないが、その分スケールがとてつもなく大きい。見たくないのもわかる気はします。
江戸の武士階級って別に理想主義の下に呆けていたわけではないと思います。そろばん持ったり、農業指導したり、ちゃんと支配階級としての矜持を持って生きていたと思います。
とはいえ、すべてが明治以降の問題でもない。律令制度というあってもなくてもいいようなものを建前として残していたような、建前メンタリティーは有史以降常に見られます。が、発病するほどではなかった。