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シリア情勢大詰めみたい(何度目?)

2015-09-15 22:35:13 | 欧州情勢複雑怪奇

この間書いた通り、シリア問題を巡って、米主流メディア(つまり世界の主流メディアは全部一緒)は、ロシアがロシアがロシアがと騒いでるね。

ウォールストリートジャーナルのこの記事はソースが匿名の「関係者によれば」ばっかりなのでその時点で信頼性は小さいが、基本構造の一部は正確なんじゃないかなぁと思うのでクリップ。

ロシア、シリア飛行場に戦車配備 基地準備か
http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581234462349503254

 【ワシントン】米政府関係者によると、ロシア軍はこれまでにシリアの飛行場1カ所に6台の戦車を配備した。シリアの海岸沿いにあるこの戦略的な土地を、 アサド大統領を支援するための新たな軍事拠点に変貌させる準備をロシア政府が進めていることを示す強力な証しだと関係者は述べている。

 

この記事で一番目につくのが、シリア北部にロシア軍が荷物を運びこんでいる、さて大変だ、基地を作る気だと書いてあるものの、では一体何が大変かが非常にわかりにくいところか。

なぜわかりにくいか。それは、アメリカが誰の味方なのかさっぱりわからない立場を取っているから、でしょうね。あはは。

ロシアは、最初っからシリアをぐじゃぐじゃにするのは大反対で、現在シリア国民の支持もあるんだからアサドでいい、という立場。2年前から何も変わってない。

上の記事の、

 ロシア軍の装備が途切れずに到着していることで、ロシアがシリア内戦で武力行使という役割を拡大させる準備を進めているとの米国の懸念が強まっている。それが事実であれば、過激派「イスラム国(IS)」に対する米国の戦いと、紛争の外交的解決策を模索しようとしている米国の試みの両方を複雑化する可能性がある。

この部分が泣かせる部分だよね。

ISに立ち向かうんだったら、イラン、ヒズボラ、ロシアと組んで戦えばいいだけなんですよ。アメリカの保守派(孤立派)グループも皮肉交じりにそう言ってることがあるぐらい、自明な話。ISがテロリストで、いきなり入り込んできてイラクという国家をぶち壊し、シリアという国家をぶち壊し、ある意味巨大な自由を獲得しているわけだから、究極の侵略行為を行ってる。それなら、みんなして協力すればいいだけの話。(イラクの領土的一体性はどうなってるんですか、安倍さんと誰か聞いてほしい)

ところがそれをやらない。いややってるけど、空爆でいいだの、根絶には何年もかかるだのと戯けたことを言っているのがアメリカ。結果として、やらないのは、実はそこが本気ではない、別のことを狙っている、と世界中で知られちゃってるわけですね。

ただ、ISの資金源が誰なのかを巡って、サウジ、カタール等だ派、CIA等の作品だ派、いやモサドだろう、という各派がネット上で大騒ぎをしているという余波的な面白さもあったりする。

だもんで、むしろ中東だけでなく、欧州勢も、結局ロシアに頑張ってもらってISを倒してシリアを落ち着かせればいいんだよね、に傾斜してるんじゃないか、というのが現状。

■ イラン&ヒズボラ

ついでにいえば、これらのアメリカ主要メディアからの記事が、苦心の後が見えるな~なのは、ロシアにだけ焦点を絞って書いてるところ。ISを叩くならイランと組めばいんだよね、とは言えないのが現在の米メディア主流なんだろうね。

だから、上の記事のような論調というのは、まるっきりの嘘ではないけど、ごく一部にフォーカスをあてて全体を見せていないという意味においてプロパガンダなんだよね。切り取って騒ぐ、って手法ね。

現実問題としてロシアにとってシリアは近隣の、いわゆるロシア圏関係国じゃない。だから、大きな関与は国民的に支持されないし、そもそもロシア軍は近隣諸国対応用にしかできていないから、大規模関与なんてできないよ、であるらしい。ソ連とは違うんだよ、と。

また、ロシアがなんでもかんでも持ち込む必要は全然ない。なぜなら、イラン、ヒズボラ、シリアの各国軍、そしてクルドの軍もこれに加え、そこにはちゃんとした戦意の旺盛な軍組織があるから。イラン革命防衛隊はいろんな意味で怖い軍だす。

つまり、陸上戦力に不足はないので、ロシア軍はおそらく、まず長い内戦で壊れたシリア軍の装備の修理だの補充だのをするのと、航空支援、ミサイルがらみの電子機器使った、ってか高度なものを持ち出して、より機能的かつ効果的な組織にするための支援をするんだろう、とロシア回りを見てる人たちが書いていた。まぁそうだろうなと私も思う。

でもって、その間、一方でロシア政府および外交関係者が、欧州とロシアは共同してISを叩くべきである、という論調を作っているんだろうと思う。


■ ひょっとしたら

これは私の全くのカンだけど、ひょっとしたら、ドイツ、フランス、ロシアを中心として外交努力のためのユニットというかフォーマットを作ったりして? とちょっと思ってる。

ラブロフ(ロシア)、シュタインマイヤー(ドイツ)、ファビウス(フランス)ってみんな優秀ですやん。で、私の知る限り、この3人はどこにもナチっぽい臭いがない(つまり安倍ちゃんとかアボットとは違うリーグ)。なので、ここが知恵を絞っていくのかな、とか思った。

で、アメリカ(Aチーム)も主流メディアが書いているのとは違って、この動きを黙認しているんじゃないのか、なんても思う。

上のロシアによるラタキアの拠点化についても、アメリカは軍も国務省も積極的には妨害していない、多分。

■ 目を覚ませ欧州 by ロシア

それに関連して、数日前非常に興味深いやり取りがロシアとギリシャ、ブルガリア間で行われていた。軍事ものの輸送ではないのだが、ロシアが人道支援物資をシリアに届ける際、ロシアはギリシャ、ブルガリアに上空通過をリクエストした。

この図を見ながら考えよう。シリアはトルコのすぐ下。



最初はギリシャ上空通過拒否、ブルガリアも拒否だったんだけど、そこでロシアが、なんということだ、人道支援物資の輸送を妨害するとは、と大騒ぎして、次に、ギリシャは通過を許可した。ブルガリアも外交官立ち合いの下で許可することになった。結果的には貨物はギリシャ上空を通過したようだった。

これって何をしているんでしょう?

そもそも、ギリシャ上空通過、つまり黒海から地中海でシリアに行かなくても、カスピ海からアゼルバイジャンをちょこっと通してもらうとか、そのままイランに入って、そこから、イラク、シリア、でもOKでしょう。少なくともNATO諸国のギリシャよりハードルはぐっと低い。

もっと不可解なのはブルガリアで、ブルガリア上空は必要か?
トルコが海峡通過を拒否することを懸念したとか?

わからないけど、なんせ、ロシアのラタキア拠点化を黒海、地中海沿岸NATO関係国が、ロシアに怒鳴られたにしても、結果的に妨害してないってのはちょっと注目かなと思う。

移民問題を通した連帯強化作戦なのかな、とか思ってみる。つまり、一般化して移民っていうけど、その中には(故意、偶然を問わず)イスラム過激派が入ってないとは言えない状況があるわけで、これが心配なのはロシアであり、バルカン諸国だ。

だから、移民受け入れのハードルを劇的に下げて、ましてや事実上フリーパスのスキームを作ることになったら、ロシアも困るけど、お前もだよな、とロシアは訴えている、ということではなかろうか。そうだよな、正教諸国の皆の衆、と。

まぁまんざら嘘じゃないわけだしね。1800年代の前半はまだこんなだったということから考えれば、東欧諸国にイスラム系移民を大量に受け入れろというオファーがどれだけ恐ろしいか、わかれよ、って話でしょう。ついでにいえば、歴史的にみて西ローマ教会系は、同じくキリスト教である正教を叩くためにはイスラムと組むことも無問題、っていう人たちだしね。(例:第4回十字軍、ソビエト&ロシアへのムジャヒディーン等の投入)

 


 

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2 コメント

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イランやロシアの『集団的自衛権』 (ローレライ)
2015-09-16 06:04:34
イランの『集団自衛権』の対象はイラクとシリア。日本は『朝鮮半島』と言いたいが『相手がお断り』。
返信する
ウクライナの方は (slavs watcher)
2015-09-19 12:30:29
ウクライナの方はEUとロシアに譲歩する趣旨の取引でもしてそうですね。そろそろ越冬分のガス代を払う払わないでまた揉める季節でしょうし。
返信する

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