大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第129回

2014年09月02日 14時53分30秒 | 小説
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第129回



週明け会社に出勤だ。

何かの発送があるとすぐにワードで発送案内を打ち、遡った数字などを聞かれればエクセルを使いすぐに答えることが出来る。 
税理士に提出する書類に挨拶文を付ける為ワードを打っている時、それを見ていた社員が

「織倉さんなかなかやりますねぇ。 それにブラインドタッチですか?」

「完全ではありませんけど・・・」

「いや、それって完全でしょ」

「時々手元を見てますよ」

「そんなの見てるうちに入らないですよ。 それに打つの早くないですか?」

「そうですか?」

「そうですよ、早いですよ。 だから・・・この書類打ってもらえませんか?」 申し訳なさ気にA4にびっしりと書かれた仕様書を出してきた。
それを受け取りさらっと読んでみると

「取り説ですか?」 5枚ほどだ。

「取り説ではないんですけど専門の会社の仕様書みたいな物かな。 それをちょっと利用したくって。 手の空いた時でいいんでお願いできますか?」

「いいですよ。 ・・・でも聞いたことのない言葉ばっかりですね。 ちょっと時間がかかってしまうかもしれません」

「いつでもいいんでお願いします。 あ、打ち終わったらデータで欲しいので共有に入れておいて下さい」

「はい」 それから自分の仕事の区切りをつけ すぐに渡された仕様書の打ち込みを始めた。 そして見直しを済ませ

「今、共有に入れましたからいつでも吸い取ってください」 そう言いながら仕様書を返した。

「え!? さっきのですか?」

「はい。 でも間違ってたらすみません」

「えー! 嘘だろー!」 すぐに共有を開け中を確認した社員が

「なんでー! 織倉さんさっき自分の仕事してましたよね」

「はい。 区切りがついたのでその後にしました」

「僕だったら何時間かかると思ってるんですかー」

「あ、でもほんとに初めて聞いた言葉が多かったので間違ってるかもしれません。 確認してください」

「そんな問題じゃないですよー」 それからは時々頼まれて打ち込みをしていた琴音だが こういう仕事が好きで何の苦もなかった。 それどころか経理といういつまで経っても慣れることの出来ない仕事の合間の息抜きにさえなっていた。


ある日社長が社員に

「今から言う事をちょっと聞いてくれよ・・・」 と打ち合わせを始めた。

「それでいいんじゃないですか? アチラさんもその方がいいでしょう?」

「じゃあ、そんな文言で書類とまでいかなくていいから誰か後に残るように手紙を出しておいてくれ」 それを聞いてた社員が

「そんなことは織倉さんが打ってくれますから 社長がちゃんと社長の言葉で下書きを書いてくださいよ」

「え? 織倉さんが打つの?」 社長は琴音の打ち込むところを意識して見たことがなかったのだ。 社員が琴音のほうを見て

「織倉さん打ってくれますか?」 仕事をしながらも話を聞いていた琴音が

「はい」 と返事をすると

「ま、まぁ それじゃあ下書きをするから頼むね」 そう言って下書きを書き始め書き終えたものを琴音に渡した。 すぐに打ち始めた琴音を見て

「織倉さん、どっち見て打ってんの!」 下書きと画面を交互に見ながらキーを打っている姿に驚いたようだ。

「社長、あれがブラインドタッチってやつですよ」 笑いながらさっきの社員が答えた。

「あんなのでほんとに打てているのか?」 琴音の隣に来て画面を見ると

「・・・織倉さん。 ・・・何考えながら打ってるの・・・」

「え? 何も考えてません」 目は下書きを追って指はキーを打っている。

「打ちながら喋られるの?」 

「少しの会話くらいでしたら」

「間違って打ってない?」 画面を覗き込む。

「後で見直しをします」 その言葉を聞いて社長が席に着くと琴音はもう見直しをしだした。 そしてアウトプットをして社長に渡しに行くと

「嘘だろ? もう出来たの?」

「多分合ってると思いますが社長の確認もお願いします」

「5分? そんなに経ってないですよね・・・それくらいで打ったの?」 

「社長、だからこんな事は織倉さんに頼むのが一番ですよ。 僕だったら2、30分はかかりますよ」 琴音の苦手な経理ばかりしていても疲れるだけだからね。 PCを切っ掛けに琴音の好きなことが出来てよかったね。

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