大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第196回

2015年04月24日 14時15分31秒 | 小説
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第196回



おにぎりを二つ食べお茶を飲み干し、琴音も和室の掃除を始めた。 

その後二人でキッチンを残してベランダや玄関、寝室の掃除をし終えた時にはお昼を過ぎていた。 キリよく片付いた時に暦が

「ねぇ、そろそろお昼にしようか?」

「うん。 お腹すいた」 暦が重箱を開けている間に琴音がお茶を入れた。

「暦ったら話しながらすると楽しいでしょ? って言ってたのに完全に無言で掃除をしてたわよね」 二人分の湯呑みをテーブルに置いた。

「あ・・・そう言えば。 駄目なのよねー、掃除をすると夢中になっちゃって。 琴音となら話しながら掃除できると思ったのに。 家でもよく言われるの。 はい、琴音のお箸と受け皿」

「有難う。 なんて?」

「お母さんは掃除をしてる時に話しかけたら返事もしないって。 さ、食べよ」

「うん。 もう集中してますって顔でやってるものね」

「え? 私、そんな顔してるの?」

「何も寄せ付けませんって感じ?」

「うそー!」

「いいじゃない。 それだけ掃除が出来てるってことなんだから。 それにこの料理・・・溜息が出ちゃうわよ。 何時に起きたの?」

「4時」 琴音の喉が詰まりそうになった。

「ぐ・・・ゴホン、ゴホン」

「なにやってるのよ 大丈夫? ほらお茶飲みなさいよ」 差し出されたお茶を飲んで

「はぁー、死ぬかと思った」 

「大袈裟ねー」

「ゴホン・・・なにやってるのじゃないわよ。 暦こそそんなに朝早くからなにやってるのよ」

「この料理じゃない」

「そんな事言ってないわよ。 友達の掃除を手伝いにくるだけでも普通嫌がるのに そんなに朝早くから起きてお昼ご飯を作ってくるなんて、それもお重箱に詰めてって」

「そお? 別に掃除は嫌じゃないし、いつもより1時間早く起きただけだし・・・何てことないわよ。 あ、別にお重箱じゃなくてタッパでも良かったんだけど 年末にタッパって寂しいじゃない? だからお重箱にしたの。 それに今年は年末年始が実家だからお重箱の出番も無いからね」

「あ、なに? 年末年始 実家に帰るの?」

「うん。 琴音も帰るんでしょ?」

「うん。 でもまだ連絡してないの」

「あら、おばさん寂しがってるわよ。 連絡してあげなきゃ」

「うん。 そうなんだけどね・・・色々考えてたら連絡するの忘れちゃってて」

「色々って?」

「実はね、今行ってる会社が3月で閉鎖になるの」

「ええ!? どうするのよ就職したばっかりなのに!」

「実務は5月か6月くらいまでなんだけどね」

「いや、その2、3ヶ月でどうこうって話じゃないじゃない」

「うん。 でも、あのね・・・」 そう言って正道との事を話し出した。

「へぇ、それいいじゃない。 面白そう」 ニンマリとした暦が背もたれにもたれた。

「面白そうって・・・」

「琴音はどうなの? やりたいの?」

「とってもやりたいと思ってるわ。 でもね・・・自信がないの」

「自信?」

「こんなに携わりたいと思ってるのに 自信が伴ってこないの」

「何言ってるのよ、自信なんて後で付いてくるわよ。 それに琴音は実家に帰るようになってるんじゃない? 実家って言うよりあの土地かな?」

「なに? どうして?」

「この間、うちのお婆さんが言ってた事を考えてたのね。 あ、前にうちのお婆さんと電話をしてたら琴音の話になってね、琴音はいつこっちに帰ってくるの? って聞くから どうしてそんな事を言うのか理由を聞くと 琴音にはこの土地が良いって言ってたのよ」

「おばさんが?」

「うん。 あの不思議お婆さんが。 それでね、私なりに考えたわけよ。 ね、何か書くものある?」

「うん」 電話の横に置いていたメモとペンを出してきた。

「ね、見て。 いい? ここが琴音の実家。 そしてここが琴音の最初のマンション」 そう言って1つ目を上に、2つ目を斜め下に2つの点を書いた。

「次に最初の就職先。 方角的に見たらこうなるでしょ?」 また点を書いた。 そして

「今のマンションと次の就職先がここ。 琴音の前の職場ね」 次々と点を書いていく。

「大体、方角も距離も合ってるでしょ?」

「うん。 そんな感じね」

「この点を今の順番に線で結んでいったら・・・」 ゆっくりと点を線で結びだした。

「うそ!?」 そこには少し歪ではあるが五芒星が書かれようとしていた。

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