大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第181回

2015年03月03日 14時38分33秒 | 小説
『みち』 目次



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『みち』 ~道~  第181回




「お早うございます」

「おお、琴音さん。 お早うございます。 お早いですなぁ」

「仔犬ちゃんと遊びたくて早く来ちゃいました。 あの、勝手に入ってすみません」

「いや、いや。 そんなことは気にしなくていいんですよ。 どうですか? 仔犬と仲良くなれそうですか?」

「とても可愛くてずっと遊んでいても飽きません」

「2週間も経つと行動も前と違って活発になりましたでしょう?」

「はい。 おもちゃで一緒に遊んでいたんですけど飛びついてきたりして、前に来た時みたいに寝てることが多い感じがしません」

「そうでしょう。 これからは活発になってゴンタになりますよ。 あ、女の子ですからお転婆さんですかな」

「あら、仔犬ちゃん、お転婆ちゃんになっちゃうの?」 仔犬を見て言うと仔犬は知らん顔をしておもちゃで遊んでいる。

「それでもこの仔は大人しい方ですよ。 琴音さん、仔犬はそのまま自由にさせておいていいですよ。 さて、今日はどんな話をしましょうかなぁ」 正道のその言葉を聞いてすぐに琴音は正道の元へ小走りに寄って行った。

「慌てなくてもいいですよ。 まだどんな話をしようか決まっていませんからね」

「はい」 そう返事をしながらも正道の前に立っていると

「どうぞかけて下さい」 正道がパイプ椅子に座るよう促し、正道も椅子に座り

「そうですなぁ・・・動物の肉体のことは本で勉強をしてもらいますから良いとして・・・あ、どうですか? 本は読みにくくはありませんか?」

「大丈夫です。 分かりやすい図解入りですし、今のところは聞き慣れない言葉もそんなに出てきていませんから」

「それは良かった。 でも初めて見た方ならきっと聞き慣れない言葉が既に出てきているはずなんですよ」

「そうでしょうか?」

「琴音さんが幼い時に積み重ねたことがここで表に出てきているんですよ。 大きくなったときに役に立つようにと、本を読んでいたから言葉慣れもしているんですよ」

「あ・・・そうなのかしら・・・」

「そうですよ。 人生に無駄な事など無いんです。 点と点が繋がり線となるんです。 どんな小さなこともどこかで結びつくんです。 そして線となったときにその線をどれだけ太くするか、どれだけ長くするか、その繋がった線は面となりその面積をどれだけ大きくするかも自分自身なんですよ」 琴音は正道の話を聞き、ただコクリと頷いた。

「そうですなぁ・・・今日はそんな話を致しましょうか・・・」 琴音は黙って正道を見ている。

「琴音さんは輪廻転生を信じていますか?」 琴音は突拍子も無い突然の質問に驚いた顔をしている。 その顔を見ながら正道が言葉を変えてもう一度聞いた。

「生まれ変わりや前世、来世を信じていますか?」

「生まれ変わりですか・・・? 考えたこともありませんでした・・・」

「それでは言葉を少し変えて、死が全ての終わりだと考えますか?」

「死んでしまうと・・・終わりですよね・・・? 身体がなくなっちゃうんですから・・・」

「確かに、肉体は終わりますな。 ですが肉体がなくなったからといって全てがなくなるのでしょうか?」

「全てというのは?」

「念や想いという物も終わってしまうのでしょうか?」

「身体がなくなってしまっては念も何も発することができないんじゃないでしょうか? 肉体があるから念や想いを発することが出来るんじゃないんでしょうか?」

「肉体から発している・・・ですか・・・ふむ、確かにそう考えることも一理ありますな。 では、幽霊・・・信じていますか?」

「はい、勿論です」

「これはこれは、今までに無くはっきりと仰いますな」

「見たことはありませんけど信じなくては恐くて・・・どうして信じないんだー、って出てこられても恐いですし・・・」

「ははは、そう考えますか! まぁ、どんな形でも信じていらっしゃるのなら話が早いですな。 では、肉体がなくなった幽霊はどうして終わらないんでしょうかな?」

「え!? ・・・あ、そう言われれば・・・」

「それに肉体の無い幽霊というのは何か強い想い、思念を持っていると思いませんか? ですからそこから離れることができないと・・・」

「あ・・・」 思いもしなかった事を聞かされ小さな声で 「そうかもしれない・・・」 と一言いった。 

そして人一倍幽霊が怖い琴音が続けて

「・・・ちょっと恐くなってきました・・・」 少し青ざめた顔で言った琴音を気づかって正道がゆっくりとした口調で説いた。

「ああ、怖がらせてごめんなさい。 でもね、人間も霊なんですよ。 ただ肉体があるかないかの違いなんです。 だから恐がる事はありませんよ。 そんなことも少しずつ慣れていきましょうね」 コクリと頷く琴音である。

「では、話の筋を変えましょうか。 肉体というのは今世での乗り物のような物なのです。 例えば肉体が車だとします。 車から降りたからといって想いや念を持っている人が居なくなるわけではありませんでしょ?」

「身体が乗り物・・・ですか?」

「乱暴な言い方ですがな・・・そう考えるのが一番簡単です」

「その想いや念というものはいったい何なんでしょうか?」

「先程言った霊であったり、よく使われるのが魂という言葉なのですが・・・本来の魂という物は光り輝くもので念を持っているとは言い難いんですがな・・・」 

「では肉体という乗り物に魂が乗っているんですか?」

「そうです。 最初はそう考えておくのが一番分かりやすいでしょう。 ですから一生のうちで人は何度か車を買い替えますでしょう? 3台目の車に乗ったときを中心に考えると 2台目が前世、1台目が前々世。 4台目の車に乗ったときがいわゆる来世です。 そして5台目6台目へと続きます」

「車が肉体だから・・・それが輪廻転生なんですね。 今のお話だと6回の転生をしていることになるんですね」

「そうです。 そして人はその転生毎に青写真を描いて生まれてくるのです」

「青写真・・・?」

「人には選ぶという事が与えられていますが、ある程度の青写真は描いて生まれてくるのです」 

「青写真・・・いったい何が描かれているんでしょうか?」

「大きく言うと生まれる国や、性別などですな。 これは生まれた後に変えることは出来ませんからな。 そしてその生でやりたい事、感じてみたいこと。 それを青写真として その生で達成するために生まれてくるのです。 その一歩一歩が小さな点なのです」

「あ、さっきのお話ですね」

「そうです。 道を踏み外さないように・・・いえ、踏み外してもいいんです。 それも大きな経験です。 ですから歩いている一歩一歩がとても大切なんです。 無駄なことなど何一つないのです」

「その青写真は誰が作った物なんですか?」

「本人です。 前世でやり切れなかった事であったり、今度はこういう経験がしてみたいと計画してくるのです」

「私が私の計画を立ててきたんですか?」

「そうですよ。 とても素晴らしい経験をしようと計画を立ててこられたんですよ」

「・・・言葉で理解できても実感がありません」

「ははは、これからですよ。 焦ることはありません」

「はい」

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