大福 りす の 隠れ家

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みち  ~道~  第209回

2015年06月09日 14時31分57秒 | 小説
『みち』 目次



『みち』 第1回から第190回までの目次は以下の 『みち』リンクページ からお願いいたします。

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『みち』 ~道~  第209回



「グラウディングはしていましたかな?」 

「はい、毎日ではありませんが」

「お仕事もありますからな、毎日はしなくてもよろしいですよ。 週に1回くらいで充分です。 それと・・・前にも聞きましたがそれ以降も何か変わった事がありませんでしたかな?」

「変わった事ですか? ・・・心当たりはありませんが」

「そうですか・・・」 おかしいな・・・とでも思ったような顔がチラッと見えた。

「何か?」

「いえ、無ければそれで宜しいですよ。 そうですね、お風呂に入った時にゆっくりと浸かって雑念を消す練習をしていけば宜しいかと思いますよ」

「お風呂ですか?」

「はい。 何もかも忘れて湯に身体を預けてリラックスするんです。 どうしても服を着ていると身体に当たっているどこかが気になったりも致しますでしょ」

「あ!」 お風呂と言われて思い出し、つい大きな声が出てしまった。

「おお、どうしましたか?」 驚いて目を丸くする。

「あ、すみません大きな声を出して」

「宜しいですよ、どうしました?」

「これもお聞きしようと思っていたのに忘れる所でした。 それに変わった事がありました」

「ほう、どういったことですか?」 少し前のめりになった。

「お風呂に入っている時に、ビジョンって言うかそんな物が見えたんです」 風呂で目を瞑っている時に見たポンプのような物。 そこから水が漏れているのを見た時のことだ。

「はい」 いったいどんな事を琴音がどう受け取ったのか、理解したのかと琴音を真っ直ぐに見る。

その正道の目にその時に見えたビジョンの事細かなことや、琴音がした質問のことを話した。 
それを聞く正道にはいつものように声に出して相槌を打つ様子がない。 コクリと小さく頷く程度の相槌だ。 

話が終わると前のめりになっていた身体を起こし、大きく息をついた。

「素晴らしいですな。 良くこの短期間で・・・」 琴音に話しかけているようではなく、まるで独り言の様に言った。

「私の理解の仕方はあっているんでしょうか?」 琴音の質問に一息置いて答える。

「私が昨年の最後の日に言った事を覚えていらっしゃいますかな? ちょっと気になる事がありますが、琴音さんが気付く事が必要だと言った事を」

「覚えています。 ・・・このことだったんですか?」

「そうです。 数ヶ月前から琴音さんのチャクラから少しづつエネルギーが漏れているのが見えていたんですが、段々とそれが多くなってきていましたから 身の周りで何かあったのかと気になっておりましてな。 ですが今日はそれが以前ほど見えないんですが・・・何か心当たりは?」

「それを知ってからは、お風呂に入った時にチャクラの位置に手を当てるようにしたんですけど、それくらいで・・・」 他に何かしたかと思い出すように考えるが思い当たらない。 

しかし、正道がそれを聞いて驚いた顔をし、そして一息のみ

「もう、充分ご自分の道を歩かれていますよ。 これからもそうやって色んなヒントを与えて下さいます」 

「与えて下さるですか?」

「はい。 守護霊様や、琴音さんを陰で見守ってくださっている方々です」

「陰で見守って・・・そう言えば」

「はい?」

「更紗さんと初めて会ったときに お陰様のことを教えてもらっていました。 その時は何のことか分からなくてただ溜息しか出なかったんですけど・・・」

「ほほぉー、更紗さんもなかなかやりますな。 今はどうですかな?」

「何となく分かります」

「それは宜しい事ですな」 

「あの、さっき方々って?」

「はい、そうですよ」

「お陰様ってお一人じゃないんですか?」

「はい。 沢山の方々が見守ってくださっていますよ。 人それぞれですが琴音さんには・・・」 座っている琴音の頭の上に目をやり、次に横に目を移した。 

眉が微かにピクリと動いた。 正道がそんな表情をするのは珍しい事だ。 しかし、すぐに口元が軽く緩んだ。 そして琴音に分からないように、まるで答えるかのように会釈をした。 他の事が気になっていた琴音は全く気付く様子が無い。

「あ、いけませんな、何も見ないといいましたのに。 必要であれば琴音さんご自身で分かりますでしょう」 その言葉にコクリと頷き、間を置いて琴音が話し出した。

「あの・・・」

「はい? どうしました?」

「さっきの続きがあって」

「というのは?」

「色を見させてもらった後に もう1つビジョンが見えたんです」

「ほう、いったい何が見えましたかな?」

「その時はセメントで出来た壁のようなものと思っていました」

「壁・・・ですか?」 何のことだろうかと考える。

「はい。 どこかで見たことがある壁だとは思っていたんです。 でもそれが何処だか思い出せなかったんですが 年始、ここで正道さんとお逢いした時 仔犬ちゃんが走ったのを私が追いかけた時がありましたでしょ?」

「ああ、はい。 仔犬のオモチャが落ちていた時ですな」

「はい。 その時・・・仔犬ちゃんを抱き上げようとした時にその壁を見たんです。 正確には壁では無くて、建物の基礎部分のセメントだったんです」

「おお、ここの建物を見たんですか。 ああ、あの基礎部分ですな。 ・・・ですが建物の基礎部分のセメントとはどうしてでしょうなぁ」

「あの・・・実は」 

「はい」

「私が行っている今の会社なんですけど 3月で閉鎖になるんです」

「え?」 思ってもいない言葉についウッカリ声を出してしまった。

「実質仕事は事務処理が残っていて3月で終わるわけではないんですが、12月に閉鎖が決まりました」

「そうですか。 この不況ですからな何処も苦しいと思います。 そうですか、エネルギーが漏れていたのは会社での出来事があったんでしょうな」

「そんな事で漏れる物なんですか?」

「そうですよ。 それに決まる前から色んな心配事がありましたでしょう?」

「はい。 ありました」 思い出すように視線が下がる。

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