カラダよろこぶろぐ

山の記録と日々の話

イーハトーヴの山歩き 【裏岩手縦走路へ.・その1】

2009-09-29 | ヤマのこと

1日目

9/20(日)旅の二日目。

夜中に目が覚めると、強い風と雨の音がしていた。
ご来光はムリかな・・・と思いながら予定の4:30に起きる。

トイレへと続く廊下のドアを恐る恐る開けてみると・・・
たった1.5mほどの廊下(屋根のみ)を歩くのにも濡れてしまうほど。
小屋の外は強風とガスで視界数メートルほどしかなかった。

5:00には岩手県山岳会の方がラジオを付けてくれたので、今日の天気予報が解った。
(携帯docomo,au圏外)

 
「今日の天気は晴れ、らしいね。
このガスも、気温が高くなれば消えると思うよ。」

その言葉に油断して、予定出発時間を1時間半遅らせたのが、大変なことになろうとは・・このときは知る芳もない。

ガスが切れたところには青空ものぞいている。
ゆっくりしっかり朝食をとり、支度をする。
前日まで仕事で忙しかったダンナも、やっと満足に睡眠が取れた様でよかった。

【7:30】山岳会の方に挨拶をし、岩手山の西へと進んでいく。

 
小屋からほぼ平坦な不動平を過ぎると、左手に「鬼ヶ城」
鬼、という名前の通りごつごつでこぼこした岩が、ガスの中で不気味にそそり立っていた。
こっちのルートは急崖なのでガスのときは通行はしない方が良いらしい。
最初から危険なところは歩く気のない私は、「お花畑」という道標の方へ進む。


 
「お花畑」という甘い言葉とは裏腹に、険しく急で歩きにくい道。
小屋から標高差約300m、ぐんぐん高度を下げていく。
ガスの中、誰にも会わず、平坦なところに出たと思ったら、木道がでてきて、
【8:55】「お花畑」に到着。

なるほど最盛期には綺麗な花がたくさん咲いていただろう、チングルマの果歩を見ながら、
ザックをデポし、ここから0.2kmという湖を見に行ってみる。


 
10分程度で「御苗代湖(画像左)」風の音しか聞こえてこない、静かな湖。
少し戻ると「御釜湖(画像右)」昨日、岩手山頂から見えていたコバルトブルーの湖はここだったんだ。

山頂付近はあんなにザラザラと火山らしい風景だったのに、
ここは静かな湖。火山ということを忘れてしまうほど。



 
「南部片富士」と呼ばれる岩手山だけど、東側のそれとは全く違う姿を見せられた。
なだらかで美しい表情と、雄々しい山並み。
見る角度、歩く方向によって全く変わる景色が不思議な山。

「お花畑」を後に、ガラガラとして歩きにくい大岩を行くと、松川への支流へ出た。
ある箇所は白濁した川底を力強く太く流れる白い川。
ある箇所は鉄分を多く含んだ川底をサラサラ流れる赤い川。
本当に色んな顔を見せてくれる。


 
川から離れ、少しずつ登っていく。
地図上では多分、西岩手火山のカルデラあたりに来ているのだろうけど、
ガスで全くどこを歩いているのか解らない。
でも、さっきまで誰にも会わなかった登山道も、だんだんと人が増えてくる。
日帰りで来ている人たちだろうか?


前方ガスの中から時折人の姿が近づいてくる。だいぶ人が増えてきた。
「今日は晴れだ、っていうから来たのにー」と話す人々。
私も・・・そう思う。
私の雨(ガス)女っぷりはここに来てまでも続くのか、と自分で呆れるほどだ。



【9:45】大地獄谷の分岐。
ツンとした硫気ガスの臭いがあたり一面に漂う。

 
「黒倉山」への分岐を過ぎると、ほぼ平坦な道。
でもガスの為、どんなふうになっているのか全く解らず、ただひたすらロープに沿って歩いていくと、
火山ガス計測器のような設置物が、もやの中に見えていた。生きているんだね、この山は。

「姥倉山」への分岐あたりは風が吹きぬけ寒かったけど、
歩けど歩けど晴れぬ霧にちょっとうんざりした私たちは、腰を下ろして休むことに。

すると、姥倉山方面から名札と腕章を付けたパトロールの方が2名降りてきて、
私たちの行き先を確認する。
ここから先、何人ものパトロールの方とすれ違うことになる。

話をすると、やはり今日の天気予報は晴れ、なんだけど、
標高1400mあたりにガスがかかっていて、下界は晴れている、とのことだった。
私はこの先、今回一番眺めが良いという場所を楽しみに歩いてきたから、
つい、「これから晴れますかねー?」と聞いてしまった。

「そりゃおでにもわがんね。
でもな、三ッ石にさ昨日いってきだけんど、紅葉がすばらすかったぞ。
いいよ、あそごは。なーに、1時間もあるげば景色も良くなるで。
きぃづげてな」


パトロールのおとうさんのほっぺは、紅葉と同じくらい赤くてつやつやしていた。
「ありがとうございました」
と頭を下げ、「犬倉山」へと歩き出す私たち。

すると・・・


 
10分ほどしか経っていないのに、あんなに重く暗かった空に切れ間が出来て、
青の色がどんどん増えてきた。
登山道も、脇の木々にもどんどん光が降り注ぎ、みるみる山が動き出した。



「あそこで会ったのは山の神様?
いや、晴れとーさんだったんだ!ありがとう!」

げんきんなもので、日が差してきたとたん足取りも軽くなり、ぐんぐん進んでいく。
あるくあるくあるく・・・そして、


【11:35】「犬倉山・1408m」到着。


「犬倉山」からは胸のすくような素晴らしい景色が広がっていた。
あのちょこん、としたのが「乳頭山」左のどっしりしたのが「秋田駒ケ岳」だね、多分。


しばらく景色を楽しんだ後、道なりに緩く下っていく。
すると「網張温泉」のリフト乗り場分岐あたりになるのか?地図にはなかった展望台があった。
分岐にザックをデポしてちょっと立ち寄り、今歩いてきた山を振り返る。
緑色のウールをベースに、赤やオレンジの編みこみを施したセーターみたいだ。
ほんわか、温かい、手編みのやつ。
手にとって、頬ずりしたくなるような温かさだ。


眼下には雫石の町も見えていた。
ビル街じゃない、だだっ広いのどかな町並みが心を和ませてくれる。

さあ、進もう。どっしりとしたこの山の向こうに。
どんな風景がひろがっているのだろう?
 
歩いて歩いて。登って、下って、登って、下って・・・



また登って・・・「大松倉山」手前についた。
あまりに眺めが良いのでここで昼食とした。
「わー、来たね。あのてっぺんから来たんだね」
岩手山をバックに、セルフ撮り。来年実家に帰ったら、かあさんに見せるんだもんね。

休憩していたら、昨日からずっと同じ行程できていた若い単独女性が登ってきた。
「どちらまで?」
「私は今日は三ツ石か大深。最終的には秋田駒まで行きます」
「そうですか、よい山旅を」

そう話して別れた。
岩手山の登りでもぐんぐん抜いていった彼女。やっぱりすごいなー、秋田駒まで行くのか。


さあ、私たちも進まなきゃ。
ここから先のなだらかな稜線は、あまりに美しすぎて・・・
嬉しくて楽しくて、笑いながら歩いた。


登って登って・・・天気が良すぎて暑い。贅沢な悩みだ。

 
「大松倉山・1407.6m」のピークは平坦な場所にあったが、
そこからの眺めがまた素晴らしく、緩やか滑り落ちる山肌の先に「葛根田渓谷」
遠方に「鳥海山」が見えていた。
北東北の空は穏やかそのものだった。




「海だべがど、おら、おもたれば
 やつぱり光る山だたぢやい
 ホウ
 髪毛(かみけ) 風吹けば
 鹿踊りだぢやい 」---宮沢賢治



なだらかに進んで又標高差150mほど下り、「三ツ石山荘」に到着。
網張辺りからずいぶん人が増えたな、と思っていたけどここはすごかった。


 
山荘前には地糖があり、穏やかな風景と共に小屋のテラスから眺めることが出来る。
先ほどすれ違ったパトロールの方も「三ツ石山荘は最高なんだよ」と言っていたけどなるほどそうだ。

 
ウッディでまだ新しいこの避難小屋はもちろん無料。
山荘内には薪ストーブが設置されている、2階建ての施設。
ざっと見積もっても20人は十分寝れそうだ。

ここは私たちが来た岩手山、進む三ツ石のほかに、約二時間下れば松川温泉、滝ノ上温泉、
と4方向に進むことが出来る十字路。
その為、日帰りの方も多く、今回の山行で一番賑やかな場所だった。
トイレにも行列が出来ていたので、あまり写真も撮れず、山荘を後にした。

本当はここを出発する時間を13:00リミットとしていたのだが、
現在時刻14:00・・・・ 
ここに泊まってもよかったのだけど、ちょっとまだ早いし、難点が一つ。
ここには水場がないのだ。地図には書いてあっても今はもう涸れていて使えない。
私は2lもって歩いていたが、なんとダンナが1lほどしか持ってないという。
姥倉山から大松倉山の間に1箇所(エアリアにはない)水場があると教えてもらってきていたのに、
そこで確認せず(水場と書かれた標識はあった)汲まずに着てしまった・・・。
今夜はもったとしても、明日スタート時に水がなかったら・・・今日のような快晴だったら・・・

ちょっと悩んだが、「先へ進もう」と言う私。
その私の一言があとあとに・・・


つづく














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1 コメント

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春と修羅デスね2 (shucream)
2009-09-29 22:39:17
cyu2さん、続けてこんばんは~!

晴れとーさん。
旅ではそういう不思議な役割を果たす人物との出会い、
ってありマスよね~。真っ赤なほっぺの晴れとーさん。
それを見逃さないcyu2さんは素敵な方なんだろ~な。

海だと思ったら光る山だった。
風の又三郎の舞台と同じ高原デスよね。
東北の山にはそんな世界が広がっているのかな。
それとも、どこの山にでもあるのに、
ボクが感じられてないだけなのかも。
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