小児アレルギー科医の視線

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「卵を早期から摂取すると卵アレルギーにならない」を誤解していませんか?

2017年10月13日 13時24分04秒 | 食物アレルギー
 数ヶ月前に「離乳食で卵を早期から摂取させると卵アレルギーを予防できる」という報告が医師向けに公表され、話題になりました。

■ 「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の発表について

 これは対象を限定した研究発表に基づくものであり、一般論として普及させるべきモノではありませんでした。
 しかし現実には、メディアが大きく報道した影響で「健康な子どもでも早めに卵を食べさせた方がよい」という誤解と伴って普及してしまいました。

 その状況に警鐘を鳴らす意味で、日本小児アレルギー学会から先の提言の説明が新たに公表されるに至りました。

 その内容のポイントを挙げますと、

1.対象は乳児アトピー性皮膚炎に限定され、
2.かつ、治療により湿疹がなくなった状態に限定され、
3.1と2を満たす患者に卵を医師の管理下で生後6ヶ月時点で微量摂取からはじめて増量していくプログラムを行ったら卵アレルギー発症率が低くなった。


 ということです。
 つまり、この研究結果からは、
① 健常児
② 治療により湿疹がよくならない乳児アトピー性皮膚炎患者
 は対象にならない
と云うことです。

 さらに云うと、卵を開始する時期、量によっては卵アレルギー発症を防ぐ効果がないという報告もあるので、健常者が「何となく卵を早く食べ始めるといいらしい」というレベルの話では断じてない、ということです。
 誤解なきよう。

「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説:小児科の先生方へ
「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」の解説:患者・一般の皆様へ


 脱線しますが、英国の卵摂取事情に関する記事を見かけたので紹介します。
 イギリスでは赤ちゃんに卵を食べさせなかった、しかし理由はアレルギーではなくサルモネラ感染症が恐いから。
 安全宣言が出されたので、解禁になったらしいです。

■ 英国でも生卵が全面解禁 赤ちゃんも妊婦も食べてOK
2017年10月12日:BBC
 英国ではこれまで生卵の安全性について、乳幼児や高齢者、妊婦は食べてはいけないと言われてきた。しかし英食品基準庁は11日、生産方法や衛生状態が改善したため、品質保証の赤い「ブリティッシュ・ライオンマーク」がついた卵は、誰でも生で食べて大丈夫だと基準を変更した。
 英国では1988年12月、当時のエドウィナ・カリー保健相が「英国の卵はすべてサルモネラ菌に感染している」と発言し、卵の消費量が激減する騒ぎがあった。英国では前年、卵によるサルモネラ菌感染が20件以上起きていた。
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