本棚(小児医療・アレルギー・アトピー他)

日々アレルギー疾患の診療をしている小児科医です.最近読んだ本の感想を書き留めました.

「子どもに薬を飲ませる前に読む本」by 山田 真

2012-01-15 14:04:14 | 小児医療
 講談社、2010年発行。

 子どもが風邪を引くと小児科へ行って薬をもらって一安心・・・これが平均的な日本人の親の感覚です。
 しかし、著者はこの感覚に疑問を呈します。
 「その薬、ホントに必要?」

 著者は町医者40年選手のベテラン小児科医で、長年の経験に基づいた珠玉のコメント群が詰め込まれた本です。ちょっとクセのある毛利子来氏(予防接種反対派)と共に行動している方なので話半分で読もうかと思いきや、至極まともな内容でした。西洋医学で限界を感じる分野(過敏性腸症候群など)には漢方を取り入れているのも自分のスタンスと似ていると感じました。
 ただ、あとがきにも書かれていますが「ぼくは自分が実際に経験したことについてしか書けない性格」という点が本書の魅力である一方で、短所にもなってます。一人の小児科医の経験することは自ずと限定され、それにこだわると「科学的」ではなくなってしまうのです。客観的データに基づかない判断が散見され、そこは残念でした。
(例)タミフルを含めた抗インフルエンザ薬、アトピー性皮膚炎におけるステロイドの使い方、等

 気になった箇所をメモメモ(同じ小児科医である私が得た情報と少々異なる箇所が散見されましたので、そこには灰色でボヤキが入ってます)

薬を乱用していませんか?
 薬の乱用に拍車をかけているものに乳幼児医療の無料化ということがあるのも残念なことです。いつでも気軽に医療が受けられるという日本の医療のアクセスの良さが逆に医療の受けすぎという弊害を作り出してしまったわけです。日本では病院へ行くことと薬をもらうことがほぼイコールで繋がってしまうこともあって、不必要な受診が不必要な薬を使用することに結びつくのです。
 「お薬はいりませんよ」とぼくが言うと、
 「えー、おみやげなしなの」という顔をされることがよくあるのです。
 不必要な薬を使えば弊害があります。乳幼児期に抗生物質をたくさん飲むと、後年ぜんそくなどアレルギー性の病気になる率が少し高くなるという報告もあります。

「こなぐすり」の種類について
 粉薬は正式には散剤といいます。粉末の粒子が細かいものを細粒といい、細粒よりも粒子が粗く匂いや苦味をおさえてゆっくり溶けるようにしたものは顆粒とかドライシロップとか呼ばれます。ドライシロップは水に溶けてシロップ状になります。

子どもの飲み薬の種類と使い分け
 3歳以下の子どもの場合、錠剤は咽に詰まらせてしまう危険もあるので使わないことになっています。3歳以上の子どもでも錠剤を上手く飲み込めないことが多いので、小学生になるくらいまではシロップや粉薬を使う方がよいと思います。

苦い抗生物質の飲ませ方
 薬の種類によってはジュースなどと混ぜるとかえって苦味が出てしまうこともあることを知っておいてください。
 特にある種の抗生物質では要注意です。クラリス(=クラリシッド)、ジスロマック、エリスロマイシンなどの抗生物質は、酸性飲料と呼ばれるオレンジなどの柑橘系ジュース、スポーツドリンク、乳酸菌飲料、ヨーグルトなどと混ぜると苦味が生じるので子どもは嫌がります。
 ぼくが実際に試したところでは、ここに挙げた抗生物質はウーロン茶麦茶とまぜると味が無くなって飲みやすくなりました。

熱性けいれんの頻度
 子ども100人のうち3〜4人はひきつけを一度は経験すると云われますから決して珍しいものではありません。初めてひきつけを起こす年齢としては1〜2歳が多いです。
 一度ひきつけた子どもがその後また高熱になったときにひきつける確率はかなり高く40%ですが、90%の子どもは一生のうちひきつける回数が2回以下です。そして6歳くらいになるとひきつけなくなるのがふつうです。5回以上ひきつける子どもも数%いますが、回数が多くても後遺症が残ったりはしません。

ひきつけ予防薬(ダイアップ坐薬)の考え方
 ひきつけを3回起こした子どもはさらに何回か起こす可能性があるので予防措置を行います。体温が37.5℃以上になったらダイアップ坐薬を肛門から挿入します。そして8時間後に38℃以上の熱があればもう一度坐薬を挿入します。これで終了です。
 それ以上使う必要がない理由は、ひきつけがふつう最初に発熱してから48時間以内に起こるからです。ダイアップ坐薬を上記の方法で2回使うと、効き目が48時間持つのです(注:メーカーの説明では24時間です・・・)
 ダイアップ坐薬を使用するか否かは保護者の選択でよく、「使わなければいけない」と考える必要はありません。
 ダイアップを使うことに医学的な意味はないのです。ひきつけが起こっても後遺症の心配はない、ただあのけいれんをもう絶対見たくないという人は使ってもいいし、ボーッとしたりふらついたりするのがいやなら使わなくてもよいのです。
 結局、ダイアップ坐薬は「またひきつけるのではないか」と不安になっているお母さんやお父さんを楽にするための薬だと考えてください。ですから「ひきつけが起こってもかまわない」と考えるお母さん、お父さんは使わなくてよいのです。
 解熱剤を使うと、熱は一旦下がっても解熱剤の効き目が切れる時間になるとまた上がりますが、この時またひきつける可能性があります。解熱剤で体温を上げ下げするより、上がりっぱなしにしておいた方がひきつけも起こりにくいと考えられるので、ひきつけやすい子にも解熱剤は使うべきではないと考えている医者が多いようです(注:医学書には「解熱剤を使っても熱性けいれんの頻度は変わらない」と書いてある方が多いのですが・・・)

腸内細菌という名の常在菌
 小腸には1mlあたり1億個の細菌細胞がひしめき合っていて、大腸には1mlあたり1000億個もの細菌細胞がいるのです。これらの腸内細菌の総重量は900gを超えます
 そしてこの膨大な細菌達は僕たちの体にとても役に立っています。
 ジェフリー・ゴードンという学者によると、人間の腸の中に常在菌がいないと腸が正常に成長しません。腸は自然の毒素や胃が分泌する強力な酸から自らを守るために、1週間から2週間に一度、腸壁を入れ替えます。成長するにつれ、新しい細胞が腸の下層から上層の方へ移動することで新しくなるのですが、この移動を促しているのは細菌が発する信号で、この信号がないと腸は正常に成長しません。
 さらに腸内細菌はビタミンを作る手助けをし、栄養素の吸収を助け、傷ついた腸細胞を修復する働きもしています。
大腸菌いろいろ
 健康な人の腸の中にふつうに存在する常在菌で、便1gの中には大腸菌が10の6乗個から10の8乗個くらい含まれています。この大腸菌は腸の中にいる間は無害だけれど、腸以外の場所、例えば胆道、尿路(尿道、膀胱など)、呼吸器などに入り込んでしまうと病気を引き起こすと云われてきました。
 しかし最近では、ふつうの大腸菌は腸以外の場所に入り込んでも病気は起こさず、病原因子と呼ばれる特別な構造を持った大腸菌だけが病気を起こすと云われています。
 また、それとは別に、腸の中でも病気を起こす病原性大腸菌と呼ばれる特殊なものも存在し、有名な出血性大腸菌もその一つです。

抗生物質を飲むと下痢するわけ
 ヒトの腸の中には無数の常在菌と呼ばれる細菌(腸内細菌)が存在しています。この中でビフィズス菌、酪酸菌、乳酸菌などは腸の調子を整え、消化を助けてくれています。
 ところが抗生物質を飲むと、腸へ到達した抗生物質が腸内の「良い常在菌」の一部を殺してしまいます。常在菌が減ると腸の調子を整える力が低下しますし、常在菌が十分存在する間は腸内に入り込めなかった病原菌が、常在菌が減ったのをチャンスばかりに入り込み、その結果として下痢が起こるのです。

健康な子どものノドにも細菌はいる
溶連菌
 健康な人100人のノドを調べたら5人くらいの人に溶連菌がいたという報告、いや20人の人に溶連菌がいたという報告があります。溶連菌は多くの場合、のどにくっついても病気を起こさないのですが、たまに病気を起こすことがあって、それは咽頭炎、扁桃炎という形になります。
肺炎球菌
 肺炎の原因になる菌ですが、もともと健康な人の鼻とノドにいることが多い常在菌です。幼児では25〜50%と高率にいます。ウイルス性の風邪を引いて抵抗力が落ちているようなときにこの菌が増えると、肺炎になることもあるのです。

インフルエンザはウイルス?それとも細菌?
 実は両方存在します。
 冬に流行するインフルエンザはウイルス、乳幼児に接種するヒブワクチンのターゲットはインフルエンザ菌です。
 ややこしいですね。
 最初、インフルエンザの患者さんからこの菌が見つかったので、これがインフルエンザの原因だろうということになってインフルエンザ菌と名付けられました。
 しかしその後、インフルエンザはインフルエンザウイルスによって起こることが分かり、インフルエンザに罹っている人にインフルエンザ菌が二重に感染することがあるということもわかりました。
 その時点でこの菌の名前を別の名前に変えればよかったのですが、なぜかそのままになって今に至るものですから混乱を招くわけです。

抗生物質長期内服の危険性
 メイアクト、フロモックスなど、第3世代セファロスポリン系と呼ばれる抗生物質を長期に使うと低血糖(血液中の糖分の量が異常に低下すること)を起こすことが報告されています。
 中耳炎になってメイアクトを34日間、フロモックスを19日間飲み続けた1歳児が低血糖になりけいれんを起こした例、のどかぜでフロモックスとメイアクトを50日間飲んだ1歳児が低血糖となりやはりけいれんを起こした例などがあります。
 強力な抗生物質を長期間飲むということの危険性が広く認識される必要があると思います。

 医者の側としては、細菌感染症の患者さんに出会ったらまず原因になっている細菌は何かということを考え、最初に「その細菌には効くがその他の細菌には効果が弱い」といった抗生物質を使うようにして、広範囲に効く抗生物質は他の抗生物質が効かないときの2番手として使うことにするべきでしょう。
 また患者さんの側としては「なるべくよく効く強い抗生物質をください」というふうに医者に求めないことが必要だと思います。
 乳幼児期にたくさん抗生物質を飲むと、将来アレルギー性の病気に罹りやすくなるという事実も報告されています。抗生物質信仰をみんなで改めていくことが大事ですね。

とびひ(伝染性膿痂疹)の治療の変遷
 以前は塗り薬としてはゲンタシン軟膏、飲み薬としてはセファロスポリン系の抗生物質が多く使われていました。しかしMRSA等の耐性菌の増加によりこの組み合わせでは治りにくくなってしまいました。
 最近は塗り薬ならアクアチム軟膏、飲み薬はホスミシンが用いられる傾向があります。
 耐性菌対策としては、軽症例ではまず塗り薬だけで治療し、よくならないときに飲み薬を使おうという方法が勧められています。

中耳炎は抗生物質なしでも治る?
 急性中耳炎の自然治癒率は約80%と高いことが分かってから、欧米では「高熱があって痛みが強い」急性中耳炎でも3日間は抗生物質を使わずに自然経過を見るというのがふつうになって。きていますそして4日目になって軽快してくる様子が見えなければはじめて抗生物質を使うのです。

突発性発疹は2回罹ることがある
 突発性発疹はウイルス感染症であり、その原因はヒトヘルペスウイルス6型(発見されたのは1986年と比較的最近のこと)とヒトヘルペスウイルス7型の2種類が知られています。
 実際、突発性発疹に2回罹る子どもがいます。そのような例では、1回目の方が2回目より高熱のことが多く、この場合、1回目がヒトヘルペスウイルス6型によるもので、2回目がヒトヘルペスウイルス7型に夜ものだろうと考えられています。
 6型も7型も乳幼児期に感染した後、ずっと体の中に残っているようで、乳児が突発性発疹に罹るのは周りの大人が時々ヒトヘルペスウイルス6型、7型を外に出すため、そこから感染するらしいのです。

タミフルは危険、抗インフルエンザは必要ない?
 ・・・と著者は記していますが、その根拠は著者の経験のみであり、科学的データの基づいたものでないのが残念です。
 例えば「タミフルやリレンザが登場する以前、何十年もの間、ぼくは毎年冬にはインフルエンザの患者さんを多数診察してきましたが、重症になった人はほとんどいませんでした。インフルエンザ自体、恐い病気とは思いません」という記述があります。
 インフルエンザ脳症で目の前の患者さんが為す術亡くなっていくという経験をした私にとっては受け入れがたいコメントです。


下痢止めの種類
 塩酸ロペラミド(商品名:ロペミン)は下痢止めとしてもっともよく使われるものですが、2歳未満の子どもに対しては「原則禁忌」(よほどの場合を除いて使ってはならない)ということになっているくらい強い薬ですから、子どものウイルス性胃腸炎や細菌による食中毒の場合の下痢には使うべきではありません。
 抗コリン薬と呼ばれる下痢止めがあります。ロートエキス硫酸アトロピンなどがその仲間ですが、昔は良く使われたけれど最近はあまり使われなくなりました。
 天然ケイ酸アルミニウム(商品名:アドソルビン)は吸着薬と呼ばれ、これは腸を刺激するような有害物質や過剰な水分を吸着して腸の動きを抑える薬です。短期間使うなら副作用の少ない薬と云えます。

 ・・・私は子どもの下痢の治療に整腸剤とアドソルビンを組み合わせて使用しており、著者の意見に賛成です。それでも治りが悪いときは漢方薬を併用しています。

経口補水液(ソリタ-T顆粒、OS-1等)の飲ませ方
 経口補水液を飲ませる場合、液体であっても一気にぐいぐい飲むと吐きますから、おちょこに1杯ぐらいの少量を1回分としてほんの少しずつ与えます。ストローを使える年齢ならストローで少しずつ吸わせます。
 吐き続けているときでも少量ずつの水分補給は行います。5〜6時間もすれば吐くのも自然に治まってくるのがふつうですから、薬は必要ではありません。


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患者だからわかる「成人・小児ぜんそく」by 日本アレルギー友の会(NPO)

2011-07-21 16:47:54 | 気管支喘息
 2010年、小学館発行。

 表紙にあるタイトル+αを全部書くと・・・

 患者だからわかる・患者の会がつくる「成人・小児ぜんそく」〜素朴な疑問から治療法まで〜
 NPO法人日本アレルギー友の会著、総監修:宮本昭正、監修:坂本芳雄、勝沼俊雄


 となります。にぎやかですね(笑)。

 内容はタイトル通りで、患者の会がつくった喘息読本です。
 小児科医の私の視点から見ると「患者さんと医師の橋渡し」の役割を担う良書。監修されている医師もアレルギー学会の重鎮〜御意見番の先生方なので安心です。

 喘息と診断された患者さんは、日々発作の不安に悩まされます。医師の指示通り薬を使っているのに症状がよくならないと更に不安が増します。そんなときに誰に相談したらよいか・・・そのような修羅場をくぐり抜けてきたベテラン喘息患者さん達(つまり「日本アレルギー友の会」)が受け止めてくれるととても心強いことでしょう。この会のような窓口があると助かる方がたくさんいると思います。
 というわけで、悩める患者さんにはお勧めの1冊です。

 友の会はその患者さんが住んでいる地域のアレルギー専門医を紹介もしてくれます。これは「日本アレルギー協会」という財団法人が作成した「患者相談協力専門医名簿」に基づいたものです(一応私の名前もあります)。
 日本アレルギー協会関係では「アレルギー電話相談センター」というサービス(無料)もありますので、ご利用ください。

 私の所にもドクターショッピングの果てに受診される患者さんがたまにいらっしゃいますが、その原因を考えるといろいろなパターンがあります;

1.医師の誤診
 ・・・ただし、時間経過と共に病気の本性が現れてくるので、最初に診た医師は気づかないこともあります。医師の世界では「後医は名医」というスラングがあります。

2.なんちゃってアレルギー科
 ・・・看板には「アレルギー科」と書いてありますが、アレルギーが専門ではない医師もいます。なぜこんなことが起こるかというと、日本のルールでは専門分野でなくても標榜するのは自由なのです。
 専門医でもないのに「アレルギー科」を標榜して、旧態依然の治療をしている医師もゼロではありません。私が医師になった四半世紀前と現在を比較すると、喘息の治療も随分変わり進歩しましたので。
 もちろん、専門分野ではないけど熱心に勉強して専門医以上に素晴らしい診療をしている医師もたくさんいらっしゃいますので、誤解無きよう。
 ではどうやって見分けたらよいか・・・難しい・・・評判・口コミでしょうか。

3.患者さんが指示を守ってくれない
 ・・・処方された薬の吸入・内服をせず、環境整備にも熱心ではないタイプ。このような患者さんを近年「アドヒアランスが悪い」と呼ぶようになりました。
 喘息という病気を理解して、家族が喫煙をやめ、室内犬を手放し、ステロイド吸入をしっかりやれば楽になるのに・・・と思っているといつの間にか来院しなくなります。おそらく「この医者もダメ」と決めつけて他の医者をまたショッピングしているのでしょう。

 ここで、本の中から一部抜粋を(Q11:38ページ)。

Q:評判のよいお医者さんに行ったのですが、自分には合わないようです。こんな時はどうすればよいでしょうか。

A:・・・何人もの専門医を受診して「あそこもだめ、ここもだめ」という状態だとしたら、患者側の受診の仕方に問題はないでしょうか。・・・医師は言われたことを守らない患者さんに対して不信感を抱くこともあります。このような類のことで、医師に叱られたから相性が合わない、などということはないですか?


 このような患者さんもいる一方で、医師の説明不足も棚に上げてはいけません。
 私は発作止めの頓服では解決できない患者さんに予防薬として吸入ステロイドを処方していますが、この使い方にピンと来ない患者さんが多いですね。
 発作止めは苦しくなったら内服・吸入すると楽になるのでわかりやすい。納得して使ってくれます。
 でも吸入ステロイド使用してもすぐに効いた感じはありません。すると何となくサボりがち。
 吸入ステロイドは調子の善し悪しにかかわらず毎日吸入するよう指示されますが、なぜ?
 それは、喘息は発作が出ていないときも気管支に炎症がくすぶっているから。喘息患者さん自身、振り返ってみてください。ふだんから咳が出やすいでしょう?
 その炎症を小さく小さくしておくと、悪化因子(風邪、疲れ、ストレス)におそわれてもひどい発作にならずに済むのです。それが吸入ステロイドの役割であり、効果です。ふだんの咳や痰も気にならなくなりますよ。

4.精神的要素が関与
 ・・・子どもでは少ないのですが、小学生以上では心理的・精神的要因により喘息症状が悪化する患者さんがいます。
 症状がよくならないと訴えるので、仕方なく薬の数と量が増えてきます。それでも訴えは減ることなく、一言で云えば「手応えがない」患者さん。カルテを見返してみると、訴えているほど診察所見は悪くありません。
 ピンと来ると、私は漢方薬を処方します。
 漢方薬は複数の生薬を混ぜ合わせたものですが、症状を和らげる生薬の他に、必ずと言っていいほど気持ちを和らげる生薬も入っています。そのタイプの漢方薬をこのタイプの患者さんに使用すると、効きます。

 今から約20年前、駆け出しの小児科医であった私は重症の喘息発作の男の子の主治医になりました。呼吸困難が強く、顔色が悪く、酸素吸入が必要でした。点滴・吸入など集中治療により数日の経過で改善に向かい、退院となりました。その後の外来通院の際、お母さんから「読んでみてください」と1冊のノートを渡されました。
 それは「闘病日記」でした。
 入院中は、苦しくて眠れない晩を過ごす患者自身のつらさ、それを側で見守るしかない家族の切ない気持ちが切々と綴られていました。退院後も「またいつあの発作が起こるのか」という不安に押しつぶされそうな日々。
 その不安の深さを垣間見てショックを受けました。
 医師から見ると、重症ではあったけど治療は成功して一段落という認識でしたが、患者家族の不安を受け止められていたかいうと、とても十分とは云えないと反省させられました。
 重症の患者さんを診療するたび、この家族を思い出します。



※ 最後にひとつ注意点を。
 「日本アレルギー友の会」は上述のように信頼できる組織ですが、似たような名前に「(全国)アトピー友の会」という団体がありますが、こちらは要注意。高額の温泉療法を扱うアトピービジネス系なのでお勧めできません。
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「アトピーの女王」by 雨宮処凜

2011-06-09 21:59:27 | アトピー性皮膚炎
2009年発行、光文社知恵の森文庫

自分自身がアトピー性皮膚炎患者である作家が書いたすさまじい闘病歴です。
アトピー性皮膚炎診療が抱えてきた問題点を余すところなく暴露しているような内容。

とくに患者の精神状態が微に入り細に入り書き込まれていて、治療者である皮膚科医は必読すべきだと感じました。
また、アトピーの治療に関する事件や訴訟のスクラップ記事も役に立ちます。

ただ、医師の私から見ると、所々間違った記述があるのが気になります。
アレルギー学会では異端扱いされている「土佐清水病院」によい印象を持たれていますが、この病院の治療法はステロイド軟膏の域を出ません。
一方、漢方に良い印象を持たれていませんが、著者は本物の漢方診療を受けていないと思います。漢方薬は通販で使用するような薬ではありません。診察により皮膚の状態に応じてよりよい状態にすべくきめ細かく変更していきます。よくならないのに同じ漢方薬を使い続けることはあり得ないのです。上手く使うとステロイド軟膏を減量することが可能なんですけどねえ。

この文庫版のあとがきを記した時点(2009年)でも、著者のアトピー性皮膚炎は改善と悪化を繰り返しており、ゴールに至っていないのが残念です。

彼女の悩みを解決する治療法があります。
それは「プロトピック軟膏の間欠塗布法」です。
現在の治療法のスタンダードは、急性期はステロイド軟膏で炎症を抑え、安定期になったらプロトピック軟膏で維持する方法。
著者もプロトピックの驚くべき効果を経験したものの、良くなると「塗るべき場所がなくなった」とやめてしまっています。プロトピックの使い方のコツは「やめないこと」。改善した後も週に1回程度塗っていると良い状態が保てるのです。

※ 気になった文言をメモしておきます;

■ 私は痒いところを掻いているときが一番幸せであり、その時の私はまがうことなき「無」の境地だ。

 ・・・患者さんは掻くことを、また掻くことによってテカテカに光った爪を愛している、とよく表現されます。

■ たとえるなら、冬の乾燥アトピーが「かまいたち」だとすると、夏のドロドロアトピーは「ぬらりひょん」といった感じだ。冬は全身切り傷、夏は全身火傷と思ってもらえばいい

■ よくアトピーの人に「痒いのと痛いのとどっちがつらい?」と聞くと、決まって「痒い方がつらい」という答えが返ってくる。でも、アトピーじゃない人に同じ質問をすると、決まって「痛い方がヤに決まってんじゃん」という答えだ。そのたびにいつも私は思う。甘い、おまえはまだ本当の痒さを知らないのだ、と。それくらい、アトピーの痒さは独特で辛いのだ。

■ 水いぼがステロイドの非常にポピュラーな副作用と言われていることを知った。私はアトピーじゃない人で水いぼに感染したという人を知らない。

 ・・・水いぼは小児科医である私には珍しくない皮膚感染症です。水いぼがアトピーの子どもに多いのはステロイド軟膏よりも皮膚のバリア機能が低下している要素の影響の方が大です。湿疹と水いぼが混在しているときは、まずステロイドを塗って湿疹を良くしてから、水いぼの治療(摘除)をするのが一般的ですので。

■ 果たして重篤な食物アレルギーの人以外、食事制限はどれほど効果があるのだろうか?このような疑問を持っても、これまた答えは曖昧だ。医者によって言っていることが全然違うからだ。食事療法のみがアトピーを治すもの、と言い張る医者もいれば、食物はアトピーと関係ない、という医者。傾向としては、小児科の医者が食事制限を勧め、皮膚科の医者が食事制限は必要ない、というパターンが多い

 ・・・鋭い指摘。小児科と皮膚科の言うことが異なるのは、患者さんの年齢層に起因します。赤ちゃんに湿疹ができると、とりあえずかかりつけの小児科を受診することが多い。幼児期以降は皮膚科に行くことが多い。そして、食物アレルギーの関与は乳児期には多いのですが、3歳くらいまでに耐性が獲得されて食べても症状が出なくなる例が7割と言われています。
 食物アレルギーの治療は「食べられるようになるまで制限する、つまり摂取開始を遅らせる」ことに尽きます。
 近年、積極的に負荷して食べられるようにする「急速減感作療法」が話題になっていますが、この治療法の対象者は「小学校に上がった時点である食材を食べるとショックを起こす重症の食物アレルギー患者」です。

 私の経験談その1;
 卵を食べると翌日湿疹が悪化する赤ちゃんが皮膚科を受診しても「アトピーに食事は関係ありません」と取り合ってくれず、毎回ステロイド軟膏を処方するのみ。困った患者さんは小児科に来るのです。
 
 私の経験談その2;
 アトピー性皮膚炎で皮膚科に通院中の赤ちゃん、なかなか良くなりません。「わたし(母)が卵を食べた後に母乳を飲ませると皮膚が赤くなって掻きむしる印象があるのですが・・・」と皮膚科医に訴えると、「食物アレルギーはよくわからないから小児科へ行って」と言われた患者さんもいました。

 小児科医の私には「皮膚科医は食物アレルギーをよく知らないので、その関与を見て見ぬ振りをしている」と見えてしまうのは誤解でしょうか。

■ 自分のためにいろいろやってくれているお母さんのためにも早くアトピーを治さなきゃ。子どもの頃の私は、非常に素直にそう思っていた。と同時に、何をやっても良くならない字bぐんに太子、どうにもならない後ろめたさを感じていた。母親もまた、私をアトピーに生んだことに罪悪感を感じていた。私が痛がったり痒がったりして泣くと、母親は「ごめんね」といってよく泣いた。私たちは怒りをぶつける場所もなく、お互い罪悪感ばかり感じていた。
 アトピー患者は、小さい頃からいろんな事を我慢している。痛み、痒さ、眠れないことはもちろん、汚い肌を露出しなければならないこと、いつも薬のことを気にしてなくちゃいけないことそれにひどくなったら怒られるし、食べ物や遊びだって制限される。また、私はアトピーで金のかかる自分がワガママなんか絶対に言っちゃいけないと思い、子どもの頃はワガママなんて言ったことがなかった。私は親に言われるまま勉強を市、徹底的にいい子であろうとした。そうしなきゃ、見捨てられると思っていた。
 アトピーは「抑圧」の病気でもあるのだ。


 ・・・悲しい患者心理。自己評価が低くなってしまいます。と同時に家族も病んでしまいます。

当時はあの懐かしい「バンドブーム」の真っ最中だった。中学生の私はバンドブームに猛烈にはまった。とくに何を間違ったのかビジュアル系バンドにはまった。被害妄想的な歌を歌うバンドが大好きだった。私の行き場のない怒りも絶望も、全部代弁してくれているような気がしていた。
 ビジュアル系バンドの追っかけの子には、アトピーの子も多かった。家にも学校にも居場所が泣く、何かと問題を抱えた子達が多かった。


■ ステロイドはアトピーを完治させる薬ではない。ステロイドを使うことは対症療法でしかないのだ。

 ・・・私もそう思います。でも皮膚科学会が作成したアトピー性皮膚炎診療ガイドラインには「十分な量のステロイド軟膏を十分な期間塗ればアトピーは治ります」としか書いてありません。

■ 皮膚科医には「何の薬ですか?」と聞いただけで猛烈に怒りまくる人が多い。

■ アトピーそのものよりも、アトピーによって精神的に追いつめられることの方がずっとずっと辛い。自分に自信が泣く、人に対して積極的になれないことから恋愛も友人関係も仕事もうまくいかず、人生をアトピーですごく損をしている。

■ 「アトピービジネス」は、ステロイド軟膏が恐いという患者の心の隙間に見事につけ込んで散々荒稼ぎし、今や兆単位を売り上げるマーケットにまで成長を遂げている。医療ビジネスにとって、死者が出ないアトピーはまさにおいしいターゲットだ。
 アトピー患者の8割以上が皮膚科医の治療に不信を抱いてアトピービジネスに走り、高いお金を払ったあげく、悪化させて病院に逆戻りしている。


■ アトピービジネスの言い分にも一理ある。それは「不満がなければ誰も民間療法なんかに走らない」ということだ。不満の種類はいろいろある。ステロイドへの不満。アトピーが全然治らない事への不満。医者本人への不満。説明がなにもない事への不満。
 そこに「これで絶対治る」という力強い言葉をアトピービジネスは根拠がなくても平気で言ってくれる。しかも、ふつうの皮膚科ではほとんどお目にかかれないカウンセリングシステムがあったりする。
 とにかく、アトピー患者はずっと皮膚科で行われてきた治療に対して並々ならぬ不満があり、そこを突かれてしまったのだ。
 この辺は、話を聞かない皮膚科医、何の説明もしない皮膚科医、患部をろくに見ることもしないでステロイドを出すだけの皮膚科医、それ以前にとても質問できないような空気を造り出している皮膚科医には、心から猛省を促したい。


■ 死ぬほど衰弱すればアトピーは治るということを何かの本で読み、突然断食を開始した。3日で5kgも体重が減り、このまま衰弱すれば死ぬけどアトピーは治るかも、と胸を躍らせた。

■ ステロイドの副作用は、日本に限らずいろいろな国で問題になってきているが、日本のように重篤な副作用は他の国ではあまり出ていないらしい。その理由の一つには、日本の医者がステロイドの副作用について説明しないことが大きいだろう。米国では、患者の同意を得ないで治療をすれば訴えられるし、場合によっては傷害罪に問われる。そのためステロイドの塗り方と副作用について医師から詳しい説明があり、患者もステロイドの副作用についてよく知った上で選択している。しかし日本の場合、何の説明もしなくても何の罰則もない。

 皮膚科の先生、著者に「正しい治療法・治る治療法」を教えてあげてください。
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「アトピー性皮膚炎診療が楽しくなる!」by 竹原和彦先生

2011-05-26 06:57:14 | アトピー性皮膚炎
 著者は金沢大学皮膚科の教授で、「アトピービジネス」という流行語の作者でもあります。

 1990年代まではアトピー性皮膚炎の治療は混乱していました。「脱ステロイド軟膏」「温泉療法」など怪しい民間療法が幅をきかせ、そこにはまって悪化した患者が大学病院皮膚科に泣きつく構図。
 そこに登場したのが若手のホープ竹原教授、民間療法を一つ一つ検証して間違いを論破し、患者相手に金儲けする悪徳業者を「アトピービジネス」と位置づけ、「アトピー治療の王道はステロイド軟膏である」と立て直した功労者です。
 その頃何度となく講演を聞く機会がありましたが、若さと熱意に「闘士」という印象を受けました。

 あれから15年以上が経ちました・・・今や大御所の竹原先生が書いた肩の力の抜けた題名のアトピー本。アレルギー学会会場で手に取り面白そうなので購入しました。

 内容は、ちょっとくだけ過ぎかなあ。よく云えば「口訣」ですが、テキストからはみ出る診察室での内緒話という感じ。自ら作成に参加している「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2009年版)」(日本皮膚科学会)の内容に疑問符を投げかけるし、患者を非難するし、他科医師を非難するし・・・ここまで書いていいのかな、と心配になるほど。

例1)「口なめ皮膚炎はほとんどアトピー性皮膚炎にみられる」という文章がありますが、小児科医の私からすると「?」です。
 患者さんは口なめ皮膚炎だけでは病院に来ません。風邪のついでに「実は唇を舐めるクセがあっていつも荒れて困っている」と相談するレベルです。別にアトピー性皮膚炎に限ったことではなく、ふつうに見られる皮膚炎です。
 ましてや大学病院に口の周りが荒れているだけで受診するはずはないでしょう。

例2)「そもそも『子どもが薬を塗らせてくれない』などという親はやる気がないのである。つまり『子どもが塗らせてくれない』という口実に基づいて楽をしてサボっているのである。こういう親はアトピー性皮膚炎のコントロールよりも、子どもに対する人間としての躾ができるのだろうかと本気で心配してしまう。」という文章は、私には医師の言葉とは思えません。
 子どもが親の思い通りに行動してくれないことは日常茶飯事。薬を飲んでくれなくてあの手この手でいろいろ工夫するのが小児科医の日常ですので、「塗らせてくれない」くらいで子どもの・親の人格を疑うのはちょっと・・・。

 皮膚科に見捨てられた上記のような患者さんはどうするか?
 小児科に来ます。
 小児科開業医は「患者の不安を受け止めて減らして帰す仕事」と私は考えています。治療の王道を横目で見つつ、塗り薬がダメなら飲み薬で何とかならないか・・・しかし抗アレルギー薬はかゆみ止めくらいの効果しか期待できない・・・そしてたどり着いたのが漢方薬です。
 漢方と友達になってスキンケアに手抜きができるようになった子ども達の経験談をどうぞ。

 というわけで、「自分が見たものだけがすべて正しい」という大学教授のナルシスト的要素が垣間見えるのが玉に瑕でしょうか。

 少々辛口批評となりましたが、役に立つ内容も以下の如く盛りだくさん。

・使用期限切れの外用薬は塗っても大丈夫か?
・同じ名前の軟膏とクリーム、どちらが強い?
・プロトピック軟膏と発がん問題その後
・抗ヒスタミン薬と妊娠・授乳
・セラミド入り保湿剤(高価!)は必要?
・ステロイド外用薬と色素沈着
・ダーティネック(首の色素沈着)は治る?
・目の周りの湿疹・びらんの治療は?
・アトピー患者は甘いものを食べてはいけない?
・塗る順番はステロイド外用剤が先か保湿剤が先か?
・学童の感じの日焼け止めは?
・温泉はアトピーによい?

 これを読んでいる皆さんも知りたいことばかりでしょう。

 それから、「ほほう」とうなづいた箇所。
 それはステロイド軟膏の減量方法です。
 ステロイド軟膏を十分に塗ると湿疹は改善しますが、実は減らし方が難しい。
 いろんな人がいろんな方法を提唱しています。

① 弱いステロイドに変えていき、保湿剤までゆっくり落としていく方法
② 毎日→隔日→・・・と間隔を開けていく方法
③ いきなりやめる方法

 私は③の方法で指導していますが、意外にも竹原先生もこの方法でした。湿疹をしっかり治し痒みから解放することができれば③が可能ですが、中途半端にやめてしまうと①②の方法が必要になります。

 全体的には ”皮膚科医の本音” を興味深く読ませていただきました。
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「ぜんそくがよくならない人が読む本」by 宮武明彦

2011-04-02 07:10:51 | 気管支喘息
 2009年発行(創元社)
 副題 ー専門医が語る最新治療とその実例ー

 内科のアレルギー専門医が書いた患者さん向けの啓蒙書です。
 著者はアレルギー学会でも有名な御意見番の先生です。

 以前購入してしまい込んでいたものを本棚の整理中に見つけてパラパラページをめくってみたら結構面白くて最後まで読み切ってしまいました(よくあるパターン)。

 喘息治療の基本を丁寧に解説している内容。
 また、各章で患者さんの実例を挙げて、どこが問題なのか紐解いていく手法も見事。
 通院が長いとついつい「薬を使っていればいいや」と日常生活が乱れがちですが、アレルゲンを除去して規則正しい生活をすることこそが基本であり、薬を減らせるコツであることがわかりやすく説明されています。

 著者の診療風景が垣間見えるような良書だと思いました。
 忙しいと環境整備の話を省略しがちな私自身の診療も反省することしきり(苦笑)。

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「正しく知ろう 子どものアトピー性皮膚炎 」by 赤澤晃

2011-01-21 07:28:07 | アトピー性皮膚炎
 著者は国立成育医療センター(旧国立小児病院)の先生で、アレルギー学会でも有名人での小児科の御意見番です。
 彼は研究中心の大学の先生ではありません。また、私のように研究から離れて患者さんの数をこなす開業医でもありません。
 研究・教育・医療現場の全てに立ち、手探りしながらよりよい医療を求めている姿勢に敬意を表します。

 何回も彼の講演を聞いたことがありますが、理知的かつわかりやすい説明にはいつも感心させられます。その先生が患者さん向けの啓蒙書を出版したのですから、これは読まずにはいられません。待合室用にも複数購入しました。

 内容は、アトピー性皮膚炎について、基本的な知識と患者さん目線に立った実際の生活指導が丁寧に記されています。
 日々私も診療で患者さんに説明していますが「こんな風にするとわかりやすい」というお手本を見せてもらっているようで、見習うところ多し。
 イラストも秀逸です。言葉では今ひとつ伝えにくいところをうまくサポートしてますね。

 総じて、スキンケアとステロイド軟膏療法を徹底的に行えばアトピー性皮膚炎は克服できる、という考え方です。ガイドラインに沿った王道の治療法。
 たしかに、ここまで徹底的にできれば、可能かもしれないな、と感じ入りましたが・・・なかなかできないんですよねえ。それが私に漢方薬を導入させた理由です。多少スキンケアに手抜きしても大丈夫、という状態を作ってくれるのです。

 
以下、気になったところをメモ書きしておきます;

■ 保湿クリームの塗るタイミングは「お風呂から出て乾く前!」
 昔のテキストには「10分以内」と書かれていましたが、最近「5分以内」となり、なんとこの本では「3分以内」に短縮されています。
 体を押し拭きしたら、脱衣所に用意してある保湿剤をすぐに塗るしかありません。

■ ステロイド軟膏の使用法では、「やめ時がポイント」。
 その通り!いつやめるべきか指導が必要ですが、結構抜け落ちてしまいがちです。
 私は「痒みから解放されるまで」と説明しています。

■ 「入浴は1日2回が原則、夏はできれば3回」とあります。
 朝の入浴・・・重症者以外はなかなか無理かなあ。患者層の違いでしょうか。

■ 夏の悪化因子は「汗と紫外線」。
 私は「紫外線」をノーマークでした。反省。

■ いい医者の選び方は「親切なだけではダメ、適切な治療をしているかを見抜く必要あり」
 昔だったらよく話を聞いて丁寧に指導してくれるのがよい医師でした。しかし、アトピービジネスや怪しい治療法をしている医師もゼロではない時代です。患者さん自身が賢くなる必要があります。
 あなたが受けている治療は、ガイドラインに沿っていますか?
http://www.jaanet.org/pdf/allergy_skin02.pdf

■ 血液検査だけでは食物アレルギーは診断できません。
 現在1歳前後の子どもを調べると、3-4割に卵白のラスト(特異的IgE)が陽性です。しかし、みんなが発症するわけではなく、発症するのはほんの数%のみ。

■ スキンケア・チェックリスト。
 湿疹のコントロールがうまくいかないときは、スキンケアがうまくできているかチェック・リストを用いて評価・・・いいですねえ。私の診療にも取り入れてみようと思います。
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「小児アレルギー診療ブラッシュアップ」by 末廣豊

2010-12-23 11:59:51 | 気管支喘息
診断と治療社、2010年発行
編集:末廣豊
分担執筆:亀崎佐織、住本真一、南部光彦

 これは医師向けの副読本です。学会会場の書籍販売コーナーで購入しました。
 編集者・著者ともにアレルギー学会では名の知れた御意見番。
 教科書には載っていない診療のコツ(漢方で云えば「口訣」)を若手医師に伝授する設定ですが、中堅の私にも手軽な知識のアップデートとして大変参考になりました。
 ただ、末廣先生のヘンに文学的な表現にはちょっと引きました(苦笑)。

「ほほう」と感心したところをメモ書きしておきます;

■ ステロイドを嫌がる患者さんは、医師の説明不足から不信感を抱いていることが多い。

・・・肝に銘じておきます。

■ 子どもの偉大なところは学んで変われる存在であると云うことを、大人は忘れてはならない。

・・・これは私も日々感じていることです。あんなにワガママだった子がお兄ちゃん・お姉ちゃん然として驚かされたり・・・「この子はこんな子」と決めつけるのはやめましょう。

■ 小児喘息の70%くらいは一旦喘息症状が出現しなくなるが、成人になって再発するものが小児喘息全体の20〜30%前後は存在する。

■ 長引く咳の患者さんを診療する場合、喘息他様々な疾患の可能性があるが、「後鼻漏による咳」も忘れてはならない。このタイプは、長期化したり痰をしばしば吐くわりには元気で生活が障害されていない場合が多い。

■ アトピー性皮膚炎の原因として、以前はアレルギー性炎症、特に食物アレルギーによるものが注目されていたが、最近はむしろバリア機能の破綻がアトピー性皮膚炎の原因として注目を浴びている。
 きっかけは尋常性魚鱗癬という皮膚病の原因がフィラグリンという皮膚バリア機能を担う蛋白質の遺伝子異常であることの発見であった。アトピー性皮膚炎の患者の一部(20〜30%)にも同様に遺伝子が見つかり、このことによりアトピー性皮膚炎の原因としてフィラグリン遺伝子異常に起因する皮膚バリア機構の破綻の関与が注目されるようになった。

■ 皮膚を洗うという作業には、清潔にすると云うよい面と、ドライスキンを助長するという負の面があることを意識することが大切である。

■ アトピー性皮膚炎は長期間、慢性的に経過する病気であり、「短期間に治す」より「上手につき合う」という感覚が大切である。

■ アレルギー・マーチは皮膚から始まることを裏付けるデータが集積しつつある。
 最初は皮膚でも消化管でも鼻粘膜でもいいのだが、未分化なCD4リンパ球が抗原特異的なTh2リンパ球に分化してリンパ節で待機していると、次は別の臓器でCD4が抗原特異的なリンパ球に分化してアレルギー症状を発現してくる、これらの現象をアレルギーマーチと呼んできたのではないかと考えられる。

・・・従来、アトピー性皮膚炎→喘息→アレルギー性鼻炎・花粉症と年齢が進むにつれて発症するアレルギーの病気に一定の順序がある現象を「アレルギー・マーチ」と呼んできました(命名は同愛記念病院の馬場実先生)。しかし、なぜこのような経過を辿るの誰も説明できませんでした。近年、アトピー性皮膚炎の皮膚バリア機構の破綻がそこからアレルゲンの侵入を許し、多彩なアレルゲンに反応するようになり(感作と云います)、吸入アレルゲンにも反応する喘息・アレルギー性鼻炎などの病気を誘導することがわかってきたのでした。

■ 食物アレルゲン感作は皮膚から起こる!
 ピーナッツアレルギーは、妊娠中や授乳中に母親が摂取したピーナッツ量よりも、他の家族の摂取量と有意に関係があるとFoxらが報告した(2009年)。母親がいくらピーナッツを摂取しても、他の家族が摂取しなければピーナッツアレルギーは起こりにくいのである。

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「予防接種は効くのか? 〜ワクチン嫌いを考える〜」by 岩田健太郎

2010-12-21 22:47:48 | 予防接種
光文社新書、2010年12月発行。

 出版されたばかりの本です。
 岩田健太郎先生(神戸大学教授)は今をときめく感染症学者で、新型インフルエンザワクチン会議のメンバーでもありました。

 その岩田先生が、現在の日本のワクチン行政の何が問題なのかを、ニュートラルな視点で俯瞰した内容です。思い込みや感情論ではなく、資料・医学データに基づいて論理的に提示しており、すぐれた啓蒙書でもあります。

 話題は現在の日本のワクチン行政が抱える問題点に始まり、ワクチン開発とトラブルの歴史、ワクチンに反対する人々の分析、果ては社会を賑わしたホメオパシーへのコメント等々。
 特にマスメディアが医療の足を引っ張っている現状を小気味よい切り口で解説されており、現場で日々感じている矛盾を代弁してくれているかのよう。
 
 予防接種に関わる医療関係者のみならず、受ける側の家族にも読んでいただきたい良書だと思いました。

※ 印象に残った箇所をメモ書きしておきます。

日本脳炎ワクチン接種勧奨停止問題とマスメディア
 2005年、日本脳炎ワクチンの「積極的勧奨の差し控え」が行われ、接種率が大きく低下します。これは2003年に起きた、ワクチンに関連するADEM(アデム:急性散在性脳脊髄炎)と呼ばれる副作用が問題とされたためです。
 その結果、これまでほとんど発生していなかった日本脳炎の小児患者が見られるようになりました。2006年には熊本県の3歳児が、2007年には広島県で19歳の方が、そして2009年には高知県の1歳児と熊本県の7歳児が発症しています。

 ・・・マスコミは副反応発生は大々的に報道して「犯人は誰だ?」と世論を扇動する一方で、ワクチンを打たないことによる犠牲者の報道はほとんどしませんでした。

 マスコミは「ある被害が起きた場合はそこに加害者がいなければならない」という勧善懲悪の「物語」を作ろうとします。問題の原因究明よりも、責任の追及を第一義的な目標にしてしまっているのです。
 このようなメディアの論調が、ワクチン製造者、行政担当者、医療現場を恐怖させ、萎縮させ、ワクチン問題への妥当な取り組みを妨げてきたのです。

 予防接種には副作用がつきものでゼロにはできません。しかしマスコミは何か起こると「犯人は誰だ?責任者出てこい!」という論調で報道しがちです。
 このような考え方がまかり通るなら、「冤罪を起こした検察官や裁判官」「犯人が捕まえられない警察官」なども処罰の対象になるはずです。

・・・私が常々感じている矛盾を指摘してくださいました。数年前のゲリラ豪雨の時、栃木県の高架下で自動車の水没死亡事故がありました。まだ生存中の被害者から連絡を受けた警察官が勘違いして他の現場へ出かけた失態が原因となった死亡事故ですが、その後もこの警察官が逮捕・書類送検されたという報道はありません。
 一方、医療界では患者の命を救おうと努力した診療内容でも、結果が悪ければ犯罪者呼ばわりされ逮捕までされています。なぜ?


ワクチンを開発したものの、役立てていない日本
 アメリカでは高齢者用の帯状疱疹ワクチンが、すでに推奨予防接種のスケジュールに組み込まれています。実は、このワクチン株は日本で1970年代に開発されたものを応用しているのです。
 世界で初めて水痘ワクチンを開発したのは日本で、今でもWHOに認められているのは”岡株”と呼ばれているものですが、アメリカで定期(公費負担)のこのワクチンも、日本では任意(全額自己負担)です。

ワクチンの価値は相対的なもの
 ワクチンは絶対的な存在ではありません。ワクチンを接種されたとしてもやはりその病気にかかってしまうことはあります。反対にワクチンを打たなくても病気にかからないラッキーな人もいます。
 しかし、たくさんの人を集めて数えてみると、やはりワクチンを打った人の方が打たない人に比べるとずっとインフルエンザにかかりにくいのです。これを統計学と云います。

ダブルバインドな予防接種
 ワクチンを打つと副作用が起きる。ワクチンを打たないと病気になってしまう。どっちに転んでも問題が起きる。
 厚生労働省はこの難しい状況を逃げにまわらず、大人の見識で判断し乗り切っていただきたいところですが、これまでの経緯を見ると「批判されたくない」という低レベルの行動規範に集約していることが伺えます。

50年前までは感染症が死因の第一位だった日本
□ 結核:1910年(明治43年)には人口10万人辺りの結核死亡者は224.2人でした。90年後の1999年の結核死亡者は人口10万人値2.3人と100分の1くらいに減っています。

幻の「腸チフス・パラチフス・ワクチン」
 1940年代後半当時、この予防接種の効果はよくわからなかったのですが、チフスの流行が社会的に大きな問題だったと云うことで、とにかく行われました。
 その後、日本の腸チフス・パラチフス自体が激減するのですが、これは予防接種の効果と云うより、どちらかというと、衛生状態の改善や国民の栄養状態の改善のおかげではなかったかと僕は思います。そしてこのワクチンは1970年に廃止となりました。

・・・私にも接種歴があります。そして接種後発熱し、私の予防接種の問診票には「腸パラで発熱」といつも書かれていたことを記憶しています。

京都と島根のジフテリア・トキソイド事件
 戦後間もない日本では毎年何万人ものジフテリア患者がいました。1945年では発症者が8万6千人、そのうち10%は死亡したそうです。患者の多くは乳幼児で、激しい咳・発熱・心臓や神経に障害を起こすこともあります。
 現在は3種混合ワクチン(DPTのD)として定期接種に組み込まれ、日本では希な感染症となりましたが、実はそこに至るまでにダークサイドも経験しているのでした。
 1948年にジフテリアワクチン接種後の子ども達に異常が発生しました。原因はジフテリアの毒素そのものの混入と判明し、最終的に京都府では68名、島根県で15名、合計83名が死亡しました。
 戦後間もない頃のワクチン製造会社は今のイメージと異なりバラック造り。ワクチン検定でも半分が不合格という物質不足・混乱の時代でした。この事件を起こしたワクチンは「大阪日赤」という会社で作られたものですが、製造過程に問題があり、無毒化するために必要なフォルマリンの濃度が十分に高くなかったため、トキソイドの瓶(バイアル)にジフテリアの毒が入ってしまったのです。

ワクチン被害に加害者を決めつけないアメリカのシステム
 アメリカでもワクチン被害が社会問題になったことがありますが、ワクチンの二面性を解決するシステムを構築して乗り越えています(大人の判断)。
 メーカーも医療者も、ワクチンの副作用に対する医療裁判から免責されています。その代わり、ワクチンの費用の一部を積み立てたお金を原費として、ワクチンの副作用に苦しむ人を救済するための無過失補償制度を運用しています。

日本におけるポリオ・ワクチンの歴史
 ポリオ(急性灰白髄炎)は感染すると麻痺などの神経後遺症を残す病気で、現在でも有効な治療法がありません。
 1940〜50年代、日本では毎年何千人ものポリオ患者の発生がありました。
 1953年に初めてポリオを予防する2種類のワクチンが開発されました。一つは注射のソーク・ワクチン(不活化ワクチン)、もう一つは経口のセービン・ワクチン(生ワクチン:現在日本で使用中)です。効果は生ワクチンの方が高く、不活化ワクチンは病気の予防には有効であるものの、感染したウイルスの増殖と、さらなる感染の広がりを防ぐ効果はありませんでした。
 1959年に日本でもポリオ・ワクチンの接種が始まりましたが、当初は輸入した不活化ワクチンで、その量は十分ではなく、また任意接種(全額自己負担)のために普及しませんでした。
 そんな中、1959年に青森県八戸市で、1960年には北海道夕張市でポリオの集団感染が発生し(この年日本全体では6500人発症)、1961年に世論に押される形で政府は生ワクチン輸入を決定しました。ソ連、アメリカから1300万人分の生ワクチンが輸入され、全国に無料配布され、1ヶ月後には流行が終息したのでした。
 1964年に生ワクチンの国産体制が整い、定期接種ワクチンとして不活化ワクチンから生ワクチンへ切り替えられました。
 そして現在・・・ポリオの自然発生患者はゼロ。一方、ポリオ・ワクチンの副反応によるポリオ患者は440万人接種に一人の頻度で発生し、こちらの方が社会問題化する時代になりました。
 生ワクチンの役割は終わりつつあり、今後は生→不活化へ再度バトンタッチされる予定です。

 
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「子どもの感染症〜予防のしかた・治しかた〜」

2010-06-26 06:48:49 | 感染症
金子光延著、講談社(2008年発行)

 しばらく前に同じ著者の「よくわかる、子どもの医学」という本を読み、「自分と同じスタンス」を感じました。その時に探して購入してあった同じ著者の本を引っ張り出して読んでみました。

 実は、10年以上前の開業医は最新の医学知識を取り入れ、診療レベルを維持するのが大変でした。学会参加もままならず、大学図書館へ通って医学雑誌や論文を拾い読みする方法しかなかったのです。
 ところが、インターネットの普及に伴い、たくさんの情報を自宅にいながら入手可能な時代になりました。隔世の感があります。今時の開業小児科医は、目の前の患者さんを診療しながら最新知識をアップデートできるのです。

 この本はまさに「小児科医の現場からの声」であり、まだ分厚い教科書には載っていない新事実や、現場のノウハウが詰め込まれている内容です。これを読めば小児科医の日々の仕事がわかってしまいますね(苦笑)。

 子育て中のお母さん・お父さんのみならず、小児科標榜医(本来の専門は内科や耳鼻科の先生が「小児科も診ますよ」というスタンスで看板に表示)にも読んでいただきたいと思いました。

<ポイント>
・・・ウンウンうなづきながら読んだところを抜粋します。

■ 風邪の9割はウイルスが原因で、ウイルスに抗生物質は効きません。

■ 「熱が出たら抗生剤」の功罪:
 抗生物質が必要な感染症は、ふつう5日間以上投与が必要であり(例えば溶連菌では10日間)、「熱が下がるまで数日投与」という抗生物質の使用法は教科書には記載がありません。熱が出ただけでその度に抗生物質を使っていると、体内に抗生物質が効かない「耐性菌」を育ててしまい、本当に必要になったときに効かなくて治療困難・・・という事態が予想されます(現実に中耳炎でも入院治療が必要な例が出てきました)。

■ 「治癒証明書」が必要な感染症だけがうつるわけではありません。風邪はみんな「伝染るんです」。

■ 風邪ウイルスが体に入っても症状が出ないことがあります(不顕性感染)が、でも人にうつす力はあります。

■ 生後半年以降の子どもの発熱は風邪ウイルスによることが多いのですが、生後3ヶ月未満の赤ちゃんの発熱は、風邪ではない病気が隠れていることがあります・・・救急疾患!

■ 鼻水が続くと「蓄膿症」が心配になりますが、10日間以上青っぱなが続く場合に疑うことになっています(ガイドライン上)。サラサラの透明な鼻水が続くときは、蓄膿症ではなくアレルギー性鼻炎を疑います。

・・・個々の感染症については書ききれないので省略しますが、私が毎日の診療で説明していることと共通点がいっぱいありました。こんな内容を乳児検診などで説明できれば、子育て中のお母さん方がどれだけ安心することか・・・。

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「ドクター江部のアトピー学校」2.スキンケアと食生活

2010-05-17 06:55:47 | アトピー性皮膚炎
著者:江部康二、東洋経済新報社(2005年発行)

 江部先生はもともと漢方医で現在の肩書きは京都の高雄病院理事長。長年、アトピー性皮膚炎の診療に心血を注ぎ、理想を追い求めて最先端を行く医師です。
 このシリーズを「自分のアトピー診療の集大成」と位置づけ、第一巻では「心と体」、第二巻の本書では「スキンケアと食生活」についてまとめています。興味のある第二巻から読みました。

 高雄病院はいわば「アトピー治療の最後の砦、あるいは重症患者の駆け込み寺」です。アトピーに関しては、いろんな先生の講演や書籍を読んでいますが、江部先生の云うことが一番しっくりきて頷けます。彼の診療はアトピー治療のひとつの到達点を示していると思います。

 江部先生はいろいろな治療法を検討し、よいとわかれば積極的に取り入れてきました。西洋医学、漢方医学、心身医学、絶食療法・・・そのバイタリティには頭が下がります。
 でも、いまだに全てのアトピーを治せているわけではないと告白しています。これが現実なのでしょう。

 ここまで微に入り細に入り患者に寄り添う診療ができれば、アトピーの改善率は上がるだろうなあ、というのが率直な感想です。特にステロイド軟膏の具体的な塗り方指導が素晴らしいと思います。ホント、お手本です。

 しかし、今の日本の「薄利多売」の医療システムでは江部先生と同じレベルの診療をどこでも行えるわけではありません。
 私も「アトピーのスキンケア」「ステロイド軟膏の上手な塗り方」「ステロイド軟膏の副作用を理解しましょう」などプリントを作成して説明・配布していますが、全部説明するとゆうに30分はかかってしまいます。
 風邪患者が押し寄せる小児科開業医では無理な話。
 さらに時間をかけて食生活や軟膏の塗り方を指導する診療をしても、「これ塗って」と軟膏を処方するだけと診療報酬が同じなのですから・・・。
 誰もこの問題点にメスを入れようとしません。
 十分話を聞いてもらえなかった、軟膏の塗り方を説明してもらえなかったという気持ちを抱える患者さんは医療不信に陥り民間療法に走ります。アトピービジネスが横行する土壌は日本の医療システムが作り出しているような気がします。

 また、「ステロイドの副作用」について分析し、その対策をわかりやすく記しています。
 メリハリをつけた正しい使用法を守ればこれほど有効な薬はないのに、マスコミが造り上げた「ステロイドは恐い薬」というモンスターのために患者自身が自分の首を絞めるに至る悪循環。
 民間療法ではステロイドをやめた後に皮膚が赤くなって腫れ上がることを「ステロイドの毒が出る」と表現しますが、その本体は「リバウンド」と「ステロイド離脱皮膚炎」の2種類が存在する、軽症であれば離脱性皮膚炎のみで済むので一過性(民間療法で云う有効例・・・1割くらい)、重症であれば「リバウンド」で改善無く全身真っ赤になり病院へ駆け込むことになる、と説明。

 プロトピック軟膏の使用法も詳しく書かれていて医師の私にも非常に参考になりました。高雄病院は日本中の病院の中でプロトピック軟膏の使用量が第一位。そのノウハウは貴重です。
 「プロトピックを使うと皮膚がんになる」という迷信も小気味よく論破。
 しかしマスコミが煽り、一度形成された世論を跳ね返すのは個々の医者には困難です。
 この本が出版された後にも、2010年3月にもアメリカFDAが「プロトピックと小児皮膚がん」の問題を取り上げました。
 「日本でプロトピックが普及しないのは小児科医がさぼっているから」と決めつけないで、使用可能な環境を整備する方が先でだと思います。

 私自身のアトピー性皮膚炎診療はふつうに西洋医学から始まりました。
 しかし、各学会作成の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」は「ステロイド軟膏を上手に使って良い状態を保てばいずれ治癒する」という方針であり、患者さんを満足させるほどQOL(生活の質)が上げられません。ひたすら軟膏を塗り続けても先が見えなくて疲弊していく患者さん・・・この治療に限界を感じ、漢方医学を取り入れるようになりました。
 まだ十分使いこなしているとは云えないレベルですが、それでも以前より改善例が多くなってきたことを実感しています。
 ステロイド軟膏で押さえつける西洋医学と、身体の中からジワジワ良くなる漢方医学。併用するとなお良いですね。
 江部先生の診療を参考にしながら、このスタンスでもう少し追求していこうと思います。


★ 高雄病院がたくさんの職種のスタッフを抱えて「チーム医療」を実現できている理由の一つに「社会福祉法人」であることが挙げられます。
 この「社会福祉法人」には税金がかからない!
 ふつうの医院・病院は収益の4割以上が税金として消えていきます(涙)。当院も例に漏れません。そのお金が手元に残り、人件費に割くことができれば・・・理想の医療を追求できそうな気がします。
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