小児医療・アレルギー・アトピー他

日々アレルギー疾患の診療をしている小児科医です.読んだ本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

アスリートは健康ではない?

2017-10-17 11:06:41 | 医療問題
 体脂肪率一ケタの引き締まったボディ、高い運動能力は健康の象徴です。

 しかし以前、血管外科&漢方医の新見正則先生の講演で、
「トライアスロンは自分を追い詰めるところまでやると健康的とは言えない。トップ選手の中には試合前に帯状疱疹を発症することもあるくらい不健康だ。」
 と聞いて驚いたことがありました。

 そんなタイミングで、トライアスロンの心停止トラブルに関する記事が目に入りました;

■ トライアスロン中の死亡リスクは予想外に高い
HealthDayNews2017年10月1日:Medy
 トライアスロンの参加者がレース中に死亡するリスクは、これまで考えられていた以上に高い可能性が、米アボット・ノースウェスタン病院ミネアポリス心臓研究所のKevin Harris氏らが実施した研究で示唆された。詳細は「Annals of Internal Medicine」9月19日オンライン版に掲載された。
 Harris氏らは今回、米国のアスリートにおける突然死を登録したデータベース(U.S. National Registry of Sudden Death in Athletes)と米国トライアスロン連盟(USAT)のデータを用い、1985~2016年にトライアスロンのレース中に死亡あるいは心停止となった競技者のデータを調べた。
 その結果、同期間に(1)突然死(2)心停止(3)外傷による死亡が計135件発生していた。
 このうちほとんどの突然死および心停止がスイミングのレース中に発生しており、発生件数は90件だった。
 次いでランニング中(15件)、自転車レース中(7件)が続き、レース後のリカバリー中にも8件発生していた。
 このほか、自転車レース中には外傷による死亡が15件発生していた。
 死亡した競技者の85%は男性で、死亡時の平均年齢は46.7歳だった。
 USATの大会への参加者(計477万6,443人)における死亡または心停止の発生率は、10万人当たり1.74人(男性2.40人、女性0.74人)で、男性の死亡リスクは女性の3倍を超えていた。
また、男性では加齢に伴い同リスクが上昇し、60歳以上の男性競技者の場合、死亡または心停止の発生率は10万人当たり18.6人に達していた。
 Harris氏によると、今回の研究で示されたトライアスロン中の死亡リスクは、これまでの推定を上回っているだけでなく、マラソンのレース中の死亡リスクの約2倍に相当するという。
 同氏は「絶対リスクとしてはトライアスロン競技者の死亡リスクは高くはないが、特に40歳以上の男性はこのリスクについて心に留めておくべき」と強調するとともに、「トライアスロンの競技の中ではスイミングのレース中に最も死亡リスクが高まるため、スイミングのために準備を整えておくことは極めて重要」と話している。
 また、一見健康そうでも実際には深刻な心血管疾患があり、激しい運動によるストレスで症状が現れることも考えられるという。
 このため、Harris氏は40歳以上の男性のトライアスロン競技者に対し、レースに参加する前に冠動脈疾患のリスク因子を精査しておくことを勧めている。


 トライアスロンのスイミングでの死亡事故は時々耳にしますね。
 次の記事は、運動中の心停止トラブルと性ホルモンを関連づけた学会発表です。
 やはり過剰な運動負荷は体に悪いようです。

 女性アスリートでも減量と激しい運動の結果、無月経になることが問題視されていますね(「女性アスリートの三主徴」)。

■ 「走り過ぎ」で男性ホルモン低下、心停止に 〜新概念「運動ストレス性低テストステロン症」を提案
2017年10月13日:メディカル・トリビューン
 よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック(神奈川県)院長の奥井伸雄氏は、マラソンなどのスポーツ大会で心停止などを起こしたトラブル症例の検討から、「スポーツ大会での心停止は日常生活での過剰な運動による低テストステロン症が原因」とする仮説を第28回日本性機能学会(9月21~23日)で報告した。
 トラブル症例の特徴として、有意なテストステロンの低値、有意に多い運動量、睡眠と性機能の障害が判明したことから、今回の仮説を立てた。同氏は新たな概念として「運動ストレス性低テストステロン症」を提案、スポーツ大会での心停止のハイリスク症例を事前に予測する指標としてテストステロンが有効である可能性があるとしている。なお、この演題は、同学会2017年度最高論文(学会賞)を受賞した。
過剰な運動量と低テストステロンが心停止を誘発?
 奥井氏は、自身が医療班として参加したスポーツ大会でトラブルを起こし、外来受診を促した参加者のうち、同クリニックを受診した40歳代、50歳代の60例についてテストステロンなどを調べた(トラブル群)。過去3カ月間とスポーツ大会でけがの経験がない健常者(正常群:20例)、同クリニックに通院中の加齢男性性腺機能低下症候群(LOH)の患者(LOH群:10例)と比較した。
 その結果、日常の運動量(走行距離)は正常群150±32km/月、LOH群46±11km/月であるのに対しトラブル群では250±51km/月と有意に多かった。また、トラブル群は他の2群に比べ総テストステロンが有意に低かったLOHの診断に使われる症状質問票のaging male's symptoms(AMS)スコアはLOH群で全般的に点数が高く問題を抱えていたが、トラブル群は睡眠と性機能のみで点数が高い特徴があった(表)。

表. 各群の特徴

(奥井伸雄氏提供)

 同氏はこうした知見から運動ストレス性低テストステロン症という概念を立て、該当する患者をさらに検索した。心電図上の変化は乏しいため事前に見つけることが困難などの特徴も明らかになった。また、3カ月安静にすることでテストステロン、貧血、AMSスコアが正常化することも分かった。
 同氏は、日常的な過剰運動が心臓に負担をかけるとともに低テストステロン症を引き起こし、低テストステロン症が性機能の低下を招いたと推測。低テストステロン症がなんらかの影響を与え、スポーツ大会での心停止を引き起こしたと考えている。
 イタリアからの報告では、事前の心血管スクリーニングで特定の人を運動制限させることでスポーツ大会での突然死を25年間で10分の1に減少できた(JAMA 2006; 296: 1593-1601)。同氏は、性機能の問診がハイリスク例のスクリーニングに使えるのではないかとしている。
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