小児医療・アレルギー・アトピー他

日々アレルギー疾患の診療をしている小児科医です.読んだ本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

「診療所でみる子どもの皮膚疾患」(中村健一Dr.著)

2016-06-30 07:33:55 | アトピー性皮膚炎
診療所でみる子どもの皮膚疾患」(中村健一著)
 日本医事新報社、2015年発行

 小児科を開業している私にピッタリの内容です。
 中村先生は以前から「日経メディカル」で連載を担当し、現場で実際に困っていることを丁寧に教えてくれるのでファンでした。
 その先生が連載を元にまとめた本(小児も診たい皮膚科医向け)を書いてくれたことを知り、早速購入して読んでみました。

 系統だった堅苦しいテキストと異なり、小児科医の日常診療でも役立つ情報が満載。
 縁がないけど知りたいダーモスコピー、日進月歩のレーザー治療の記述は勉強になりました。
 なかでも皮膚の所見の取り方は基本中の基本、繰り返し読み返したい項目です。
 「巻き爪の原因は深爪である」と言い切る所なんて小気味よい!

 補助金のない開業医には必須の知識である保険診療も考慮されています。
 アトピー性皮膚炎の項では「皮膚科外来の中でも最も時間のかかる診療となるため、覚悟する」と前置きし、本音トークが炸裂(^^;)。

「アトピー性皮膚炎の治療には時間がかかります。恐ろしく非効率的で“儲からない”患者です」
「時間をかけて、相手の話を聞いて、こちらの治療方針を細かく説明・実技指導していると、今の診療報酬では圧倒的に安すぎます。」

 ああ、だから近隣の皮膚科医は軟膏を渡すだけの治療になりがちなんだ・・・これは国の保健行政による誘導であり、医師の責任ではありませんね。

<メモ> 〜自分自身のための備忘録

■ 丘疹、結節、腫瘤、局面の相違点 ・・・すべて「盛り上がる皮膚」の名称
・丘疹:直径10mm以下
・結節:直径10-20mm
・腫瘤:直径30mm以上で増殖傾向があるもの
・局面:幅広く扁平に隆起する状態、おおむね30mm以上の大きさ
→ 上記から外れる、「20-30mm」のものはなんと呼ぶべきか?
さらに個性的な形容詞が加わります。
 半球状、ドーム状、広基性、扁平隆起性、尖圭状、有茎性、臍窩状、など

■ 原発疹のいろいろ
・平らである:斑
・盛り上がる:丘疹、結節
・水分で盛り上がる:水疱
・閉鎖された何かによるもの:膿疱、嚢腫
・真皮の浮腫によるもの:膨疹(膨隆は医学用語ではありません)
※ 続発疹:鱗屑、びらん、胼胝、萎縮など

■ 皮膚所見を表現する皮膚科医のテクニック
・赤鬼様顔貌:アトピー性皮膚炎患者にみられる顔面のびまん性発赤
・牡蛎殻状鱗屑:牡蛎(食べるカキ)のような、ボコボコの硬い鱗屑
・ドーム状隆起:東京ドームのような隆起
・堤防状隆起:周囲が盛り上がっている隆起
・ターゲット状紅斑:多形滲出性紅斑の時に見られる
・貨幣状:コインのような形の湿疹

■ 軟膏は「安全」
 塗りごごちはローション>クリーム>軟膏だが、
 安全性(刺激の少なさ)は軟膏>クリーム>ローション

 軟膏はワセリン(油)を基剤とし
 クリームは水と油を乳化して混合したもの(さらにO/W型とW/O型に分かれる)
 ローションはアルコールなど液体の基剤と主剤を混合したもの

■ 薬疹を疑ったとき、「粘膜のびらん」と「眼脂」は見逃してはいけない重症化兆候

■ ステロイド外用で治らない皮疹、新たに出る皮疹
 ステロイドは抗炎症作用を発揮するとともに、同時に細菌の増殖も生じ、(多発性)毛包炎ができることがある。
 この場合の治療は抗菌薬軟膏(アクアチムクリーム®、フシジンレオ®)を使用する。

■ 突発性発疹
 HHV6/HHV7というウイルスによる感染症。2回罹ることがある(不顕性感染率30%)。ほとんどの小児が2-3歳頃までに抗体陽性となる。
 治った後も体の中に潜伏し、唾液から常に排出し続ける
 薬剤性過敏症症候群(DIHS:drug induced hypersensitivity syndrome)という薬疹ではこのウイルスが再活性化する。

■ EBウイルス感染症の年齢依存性の表現形
 3歳まで:ジアノッティ・クロスティ症候群
 3歳以降:伝染性単核球症かジアノッティ・クロスティ症候群のどちらか
 中学生頃:伝染性単核球症
※ 伝染性単核球症の発疹出現率は10-20%。ペニシリン系/セフェム系の薬疹を高率に合併する。
※ 2016年7月のNHKラジオ「健康ライフ」では、「伝染性単核球症の原因はEBウイルスが最多でサイトメガロウイルスのこともあり、近年HIVも無視できなくなってきた」とのことです。

■ おむつ皮膚炎
 「糞便・尿による刺激性の接触皮膚炎」「皮膚にとって最悪の“浸軟”状態」「摩擦」がキーワード。
 対策はサトウザルベ®(亜鉛華単軟膏)をべったりと分厚く塗り保護すること。
 ステロイド外用薬は“アレルギー性接触皮膚炎”と判断したときに使用する最後の切り札であり、刺激性の接触皮膚炎レベルのおむつ皮膚炎には必要ない。カンジダや膿痂疹ではない、手足口病でもない、でも治らないな・・・アレルギー性接触皮膚炎があるのかもしれない・・・ここでようやくステロイド外用薬の出番(使用期間は上限4-5日)。

■ 乳児の脂漏性皮膚炎
 マラセチアという常在真菌に対する反応。
 乳児の顔面にできる湿疹は、脂漏性皮膚炎であるのか、アトピー性皮膚炎であるのか区別がつかない。強いていえば、アトピー性皮膚炎は湿潤傾向が強く、授乳時に顔面を母親にこすりつけるような仕草がある。
 乳児の脂漏性皮膚炎は「待てば治る」(3-6ヶ月程度で自然に治る)、治らない場合はアトピー性皮膚炎を考える。
 脂漏性皮膚炎・長引く新生児ざ瘡、それに汗疹などが加わると何が何だかわからなくなり、皮膚科医は「乳児湿疹」という言葉で解決しようとする。つまり「乳児湿疹」とは乳児期に発症する湿疹の総称である。が、最も多い疾患はおそらくこの脂漏性皮膚炎だと考えられている。
 治療はスキンケアとヘパリン類似物質軟膏で十分である。脂漏部位に保湿剤というのは変に聞こえるが、生後3ヶ月を過ぎると脂漏が治まり乾燥肌になるので、早めに保湿し予防すると考える。
 記念撮影用にIV群ステロイド軟膏を使用するのは可。

■ 手湿疹
 小児の手湿疹は刺激性接触皮膚炎が大半。掻痒感が激しい場合は、アトピー性皮膚炎、疥癬を鑑別する。
 ステロイド外用薬(III群)とハンドクリーム(W/O型クリームのパスタロンソフト軟膏など)でコントロールする。

■ 皮脂欠乏性湿疹
 小児はほぼ全員、乾燥肌で小学校低学年まで続く。
 多少、掻痒感があっても保湿剤をたっぷり外用すればコントロールできる。
(例)ヘパリン類似物質軟膏、尿素軟膏(W/O型)、ビタミンA油(ザーネ®)軟膏、白色ワセリン(プロペト®)、亜鉛華単軟膏(サトウザルベ®)

■ 舌なめ皮膚炎
 IV群のステロイド外用薬(アルメタ®軟膏など)で十分。
 注意すべきは食物によるアレルギー性皮膚炎を生じ、やがて魚介類などの食物アレルギーに陥ってしまう可能性があるので積極的に治すべきである。

■ 汗関係の湿疹/皮膚炎
□ 汗疱:掌蹠、手指足蹠側縁などに生じる小水疱ないしは鱗屑の集まりで、炎症がない単なる水疱を汗疱といい、炎症がある発赤鱗屑などが目立つものを異汗性湿疹と呼ぶ。かゆみはピンキリ。一部の症例で金属(クロム、ニッケル、コバルト)の摂取で発症することがある。治療は吸収の悪い部位なので、やや強めのIII群を使用。
※ 長い間、「汗の貯留によるもの」なのか、それとは関係のない「単なる湿疹」なのか、論争が続いていたが、最近、ダーモスコピー、光コヒーレンストモグラフィーの活用により「汗と関わりのある病態でしょう」との結論に近づきつつある。
□ 汗疹:できる場所により名前が違う・・・角層内は水晶様汗疹、表皮内は紅色汗疹、真皮内は深在性汗疹。水晶様汗疹は治療不要。紅色汗疹/深在性汗疹で掻痒を伴う場合はIV群ステロイド外用薬で十分。

■ じんましん
 皮膚科開業医の外来で経験するじんましんは、ほとんど(9割)が「原因がわからない」もの。
※ 血管性浮腫:じんま疹の特殊型で、口唇が腫脹し2-5日間持続する。
 治療は抗ヒスタミン薬の内服で、外用薬は補助的(レスタミンコーワ®で十分)、ステロイド外用薬は膨疹には無効(ただし掻破した二次的な湿疹には有効)。

■ 薬疹
 小児の薬疹はまれであり、薬疹を疑う症例のかなりの部分がウイルス感染症の可能性が高い。
 粘膜症状(口腔内、眼球/眼瞼結膜)は重症化兆候、見逃してはいけない。失明の危険がある。
 内服開始と皮疹出現の時期の関係:T細胞の感作まで、通常は5日間かかる。初めての薬剤ならば内服してから5日以上で感作が成立し、その日以降、だいたい1-2週間で薬疹が出る。すでに感作されている場合は、再内服後2日程度で皮疹が出る
 確定診断は「内服試験」であるが、当然危険が伴う。
 治療は原因薬剤の中止と抗ヒスタミン薬内服。かゆみが強ければステロイド外用(III/IV群)。
 抗ヒスタミン薬が無効の際は、倍量投与、それでもだめならステロイド内服となるが、「免疫再構築症候群」の問題もあるので基幹病院へ紹介すべし。

■ わかりにくい「母斑」と「メラノサイト」の関係
 母斑細胞:神経堤由来の細胞。神経堤からメラノサイトかシュワン細胞に分化する予定の細胞が、そこまで分化しないで途中下車してしまったのが母斑細胞。
□ 母斑細胞母斑:メラノサイト系の増殖、あるいはメラノサイト系の良性腫瘍であり、決して「メラノサイトそのもの」ではない。どの細胞の概念にも当てはまらない奇形的な細胞。よくある「ほくろ」はこれで、母斑細胞が集団で増殖している状態。
□ 太田母斑:真皮のメラノサイト増殖と表皮基底層のメラニン沈着。Qスイッチレーザー(ルビー、アレキサンドライト)による治療が保険適用となったため、ほぼ完全に治癒できる。1回の照射で治るものではなく、数ヶ月間隔で行う場合もあり、満足のいく状態になるまで数年ないしそれ以上の年数を要することがある。
□ 脂線母斑:皮膚脂腺を含むいろいろな成分の奇形的増殖。母斑細胞はない。

■ イチゴ状血管腫
 毛細血管内皮細胞の良性増殖。母斑の中の「血管性母斑」であるとともに「血管系腫瘍」の性格もある。
 1歳頃にピークを迎え、以後徐々に消退する(学童期前に消失する例が多い)。
 かつては「経過観察」であったが、消退後も瘢痕が目立つ例が多いので、今は早期に発見し色素レーザーで治療する方向となっている。

■ 赤あざ(単純性血管腫)
 毛細血管奇形、つまり母斑である。
 サーモン・パッチ:2歳頃までに自然消退する。
 ウンナ母斑:一旦消失後、成人に舏るとまたするすると出現する。
※ 欧米ではウンナ母斑は「項部に生じたサーモン・パッチ」と表現されているらしい。
 ポートワイン母斑:自然消退しない。経過を慎重に観察し、色素レーザー治療を行う(成人になり盛り上がることがあるため)。
※ 顔面三叉神経領域のポートワイン母斑では Sturge-Weber症候群を疑う。

■ 脂線母斑
 頭部の黄色調脱毛斑。「脂腺」という名が誤解のもとであり、「類器官母斑」と表現するのが妥当。
 従来、教科書には「将来基底細胞癌が発症?」との記載されてきたが、現在では悪性度の低い腫瘍の発生がほとんどであることがわかってきた。
 良性腫瘍の発生する確率:15%
 悪性腫瘍の発生する確率:1%以下

■ 稗粒腫
 目の周りによくある白い嚢腫。軟毛の表皮嚢腫。放置可。

■ 異所性蒙古斑
 メラノサイト系母斑。真皮に存在するメラノサイトが増殖した状態。
 蒙古斑は通常消退するが、異所性で色調の濃いものは消退しないことがある。Qスイッチ(ルビーあるいはアレキサンドライト)レーザーで治療する。

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スギ花粉舌下免疫療法・2年目の検証

2016-06-29 15:21:45 | 花粉症
 2014年10月に認可されたスギ花粉舌下免疫療法。
 2シーズン経過後の評価は良好です。
 ダニによる舌下免疫療法にも期待したいですね。

■ スギ花粉・舌下免疫療法,実臨床2年目を検証
2016.05.14:メディカル・トリビューン
 スギ花粉舌下液を用いた舌下免疫療法(SubLingual Immuno-therapy;SLIT)が,2014年に臨床導入されて2年目となる。SLITは,スギ花粉が飛散していない時期に投与を開始し,1〜2週はアレルゲン増量期,3週以降は維持期のスケジュールで,数年間にわたる毎日の服用が必要となることから,長期継続のための患者教育が重要となる。そこで,花粉症診療のエキスパートに,SLIT実臨床の成績から,治療継続率を向上させる鍵について聞いた。

◇ ほぼ全例が治療を2年間継続,鍵はコミュニケーション
米倉氏 SLITは最低でも2年間は継続することがポイントである。千葉大学耳鼻咽喉科診療講師の米倉修二氏によると,同大学病院耳鼻咽喉科SLIT外来の約60例は,ほぼ全例が2年目(今年2月末現在)まで継続中である。

◇ 生活が不規則な患者への対応が課題
 同外来のSLIT導入例は,2014年に約30例(2年目),2015年は約30例(1年目)である。SLIT中断に至った数例がいたが,その理由は転勤や転校であった。米倉氏は「当外来でSLITを開始したほぼ全例が治療を継続できており,他院でもSLITを継続中なので,真の意味での脱落例はいない。ただ,生活が不規則であるために受診予約を頻繁に変更せざるをえない患者ではアドヒアランスが悪い傾向にある。今後の課題である」と言う。
 この点から,「当外来では患者とのコミュニケーションを重視する。薬剤の手渡しだけにならないよう,服薬忘れがないか,どのような状況下で服薬を忘れやすいかなどを意識してもらう」(同氏)。
 ある主婦の自己管理の例を挙げると,薬剤の冷所保存が必須なことから,冷蔵庫の扉の目に付くところに薬剤の袋を貼り付けている。毎日の服薬を意識付ける工夫として,毎朝,冷蔵庫の扉を開けるたびに袋が目に入るようにしている。また,同外来では患者に花粉症の症状の記録を付けることを指導している。同氏によると,症状の評価を行った記録があれば,前年の花粉シーズンと今年のシーズンで比較できる上,コミュニケーションが活性化するという。
 同大学と協力施設は2014年10月以降にスギ花粉症に対するSLITを開始した約100例に,2015年のゴールデンウイーク明けにアンケートを実施した。その結果,満足度は70%以上で「継続していきたい」は90%以上であった。同氏は「SLIT導入1シーズン目で患者がかなりの手応えを感じている」と評価する。

◇ スギ花粉特異的IgE抗体がバイオマーカーの可能性
 永倉氏ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック(東京都)の永倉仁史院長は,SLIT開始1年目に実施したアンケートと,SLITによる免疫学的変化の検証結果から,「スギ花粉特異的IgE抗体の変動は,SLITのバイオマーカーとなる可能性がある」としている。

◇ 治療開始2〜3カ月目から効果発現
 永倉氏によると,2014年10月〜15年のスギ花粉シーズンまでの有害事象は19%だが軽度で,治療を要するものはなかった。2015年の花粉シーズン後においては特になかった。
 2015年6月に,治療開始1年目の効果に関するアンケートを実施した。対象は,同クリニックで2014年8月〜15年1月にSLITを開始した115例(男性60例,女性55例,年齢12〜76歳,最年長は男性73歳,女性76歳)。その結果,服薬継続率は75%であった。服薬継続例における完全継続率は平均95%で100%の症例も多かった。服薬時刻は,クリニックが対応できる日中を勧めていることもあり,「朝食前」が48%,「朝食後」が35%と多く見られた。
 SLITの治療効果は高く,日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票で見たQOLの自己評価は「晴れ晴れ」18%,「笑顔」45%,「普通」28%で,前年の花粉シーズンと比べた2015年シーズンの成績も良好であった。早ければ開始後2〜3カ月目から効果が現れる可能性があるという。
 また,免疫療法により特異的IgE抗体は,
①治療開始後数カ月から増加
②治療開始後,一時増加した後で減少する
--などが知られている。そこで,アンケート対象のうち65例の免疫学的変化を検証した。その結果,スギ花粉特異的IgE抗体価は,SLIT開始時には著明に上昇,最高のクラス6(100UA/mL以上)判定が約3分の1に認められた。しかし,花粉飛散期前に上昇した特異的IgE抗体価はシーズンに入ると低下した。
 同氏は「SLIT開始初期はアレルゲンの増量により特異的IgE抗体の産生を増加させ,その後,減少するよう免疫応答が変化したためではないか」と考察した。

◇ アドヒアランスの維持が重要
永倉氏 スギ花粉症に対するSLITの治療効果は皮下免疫療法とほぼ同等で60〜70%といわれるが,用賀アレルギークリニック(東京都)院長の永倉俊和氏によると,同クリニックの有効率は成人,小児とも高かったという。治療効果を高める鍵はアドヒアランスの維持であるとしている。

◇ 30日以内の処方を基本に
 2014年10月にSLITが臨床導入されて以降,同クリニックで治療を開始した症例は成人160例,小児30例である。治療途中の脱落例は,成人では10%,小児では3%。それらを除いた症例の今年2月時点の治療効果は,成人では著効50%,有効30%,やや有効15%,小児ではそれぞれ60%,20%,10%であった。
 治療効果を高めるポイントとして,永倉氏はアドヒアランスの維持と,そのための患者教育の重要性を強調。「SLITを開始しても,長期間にわたって毎日の服用を継続できないのでは意味がない。患者への事前説明で,特にSLITの仕組みについて時間をかけて,正しく理解してもらうよう努めている」と言う。自ら作製したスギ花粉症対策に関するビデオを患者に見てもらうことも実施している。
 患者への適切なフォローアップも重要である。中には,数カ月もすると,治療開始時に説明したことを忘れてしまう患者がいる。再診時には治療経過を確認するだけでなく,適宜説明を繰り返すようにしている。
 SLITによる副作用をチェックするため,同氏は30日処方を基本とする。「生活習慣病の内服薬は60〜90日処方なのに,なぜ30日処方なのか」と不満の声もあるが,小児例では保護者が監視するので治療を継続させやすい。
 こうした対策を行っても,花粉シーズンが終わると受診しなくなり,そのまま治療中断に至る患者が一部存在する。思春期の患者で治療継続を面倒がって中断するケースが少なからずあり,今後の課題である。
 また,最近は小児のスギ花粉症が急増しているが,現在のところSLITの対象年齢は12歳以上に限られる。同氏は「保護者から,小児に対するSLITについて聞かれることが多い。できれば,幼児から実施できるようになってほしい」と期待する。

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「アトピー性皮膚炎 Q&A 55」by 加藤則人Dr.

2016-06-26 10:27:34 | アトピー性皮膚炎
エキスパートが答える! アトピー性皮膚炎 Q&A55
 加藤則人(京都府立医科大学皮膚科教授)編集、
 診断と治療社、2014年発行

 アトピー性皮膚炎の治療は最近少しずつ変わってきたのでアップデートが必要です。
 昨年から、当院スタッフが小児アレルギーエデュケーターの資格を取るべく修練中、提出するケースレポートにアトピー性皮膚炎症例を選んだので、指導する立場の私も勉強せざるを得ず、手元の関連本を読みあさりました(^^;)。

 Q&A形式でテーマが絞られているので、比較的明快な回答が書かれており、調べるときに便利です。
 小児科医の私にとっては、以下の項目がとても役に立ちました;

3.経皮感作やアレルギーマーチについて教えてください
6.小児のアトピー性皮膚炎の予後を教えてください
10.ステロイドはどのような皮疹にいつまで塗るようにすればよいのか、教えてください
12.小児アトピー性皮膚炎のステロイド外用薬のランクはどのような基準で決めるのですか
13.タクロリムス軟膏を始めるときの患者への説明のポイントを教えてください
14.ステロイド外用薬による皮膚萎縮はどのランクのものをどのくらいの期間続けると出現するか、目安を教えてください
17.アトピー性皮膚炎に対する漢方治療のポイントを教えてください
21.アトピー性皮膚炎の治療の目標とゴールを教えてください
23.アトピー性皮膚炎患者の顔面皮疹の治療法のポイントを教えてください
29.塗り薬を嫌がる子どもへの対処のポイントを教えてください
30.保湿外用剤の必要性と、処方する際に注意すべきポイントを教えてください
31.乳児の顔の湿疹への外用療法のポイントを教えてください
34.プロアクティブ療法について教えてください
38.どのようなときに皮膚科専門医に紹介すればよいですか
39.目の周りへのステロイド外用について眼科医の立場から注意すべきポイントを教えてください
41.乳児アトピー性皮膚炎での除去食の必要性の判定と実施方法について教えてください
42.乳児アトピー性皮膚炎の制限食の解除の方法について教えてください
46.アトピー性皮膚炎患者への紫外線に関する生活指導のポイントを教えてください
47.食物アレルギー児(アトピー性皮膚炎合併)の保育所や学校での対応について聞かれたとき、どうすればよいか教えてください
50.「ステロイドはだんだん効かなくなるって本当ですか?」と聞かれたら・・・
51.「ステロイドを塗っているけどよくならないのですが?」と聞かれたら・・・
52.「プールや温泉に入ってもいいですか?」と聞かれたら・・・


 ・・・みんな知りたいことばかりですね(^^)。
 欠点をあげるとすれば、一人の著者ではないので一貫性は今ひとつかな。

 
<メモ>  ・・・自分自身のための備忘録

3.経皮監査やアレルギーマーチについて教えてください
・フィラグリン遺伝子変異は日本人アトピー性皮膚炎の27%に存在する(ヨーロッパでは15-55%)。
・アトピー性皮膚炎患者の中でフィラグリン遺伝子変異を有する群は気管支喘息を発症しやすい。
・2008年にLackが二重抗原曝露仮説(同じ食物でも高用量の抗原の経口摂取は免疫寛容を誘導するが、低用量の経皮的な暴露は感作を誘導する)を提唱した。

6.小児のアトピー性皮膚炎の予後を教えてください
・日本の調査では、乳幼児アトピー性皮膚炎の半数程度が小学校入学までに寛解しているが、思春期以降に再発するケースもまれではない。
・生後4ヶ月の16.2%がアトピー性皮膚炎を発症し、そのうち70%が1歳6ヶ月で寛解していたという報告もある。
・英国の調査では、小学生前に発症したアトピー性皮膚炎は小学生の間に2/3が、中学生の間に3/4が寛解し、その後は成人まで有症率はあまり変わらない。
・予後が悪い因子:日本・ドイツの調査では、重症、アレルゲン感作/食物アレルギー(とくに小麦と大豆)合併、フィラグリン遺伝子変異、濃厚な家族歴、早期の喘息合併

10.ステロイドはどのような皮疹にいつまで塗るようにすればよいのか、教えてください
・ステロイド外用薬は皮膚炎のある部位に塗る。皮膚炎の有無は、“皮膚が赤い”“掻き傷がある”などの外見だけでなく、皮疹を触診して浸潤(ブツブツ、ザラザラ、ゴワゴワなどの立体的変化)を触れるか否かで判断する。
・皮疹の浸潤がなくなるまでステロイドを外用し、浸潤がなくなれば中止する。軽症から中等症では2週間後には正常化し、苔癬化や痒疹などの慢性皮疹や浸潤の強い紅斑では、触診で浸潤がなくなるまでに2週間以上の外用を必要とすることが多い。
★ 眼瞼周囲:ステロイド外用薬による眼圧上昇の可能性にも配慮し、ミディアムクラスを1週間以上塗布しても効果に乏しい場合には皮膚科専門医に紹介すべきである。

12.小児アトピー性皮膚炎のステロイド外用薬のランクはどのような基準で決めるのですか
・顔にはミディアム(IV群)、顔以外にはストロング(III群)を基本とし、皮疹の程度に応じてランクを変更する。額部は頬部より吸収率が低く治りにくいため、III群以上を必要とするケースがある。
・乳児の場合は、顔にIV群、体幹や四肢はIII群を使用すればほとんどのケースを寛解状態に導くことができるが、やや年長の幼児や学童期以降では、四肢の苔癬化局面や痒疹にII群を使用しないと完全な寛解状態に誘導できないケースもある。
・重症例の場合は、ステロイド外用薬の使用後2-3週間後に四肢遠位部に強い掻痒を伴う汗疱様の発疹が出現することがある(アレルギー, 60 (11): 1543-1549, 2011)。

13.タクロリムス軟膏を始めるときの患者への説明のポイントを教えてください
・マウスのがん原性試験では、皮膚バリア機能の低さのため25ng/mLという高い血中濃度が18ヶ月以上持続したが、実際のアトピー性皮膚炎患者では高い血中濃度が持続する例は成人、小児ともにみられていない。タクロリムスを外用している患者にみられたリンパ腫の頻度は、一般人口でみられるリンパ腫の頻度(自然発生率)と差がない。

14.ステロイド外用薬による皮膚萎縮はどのランクのものをどのくらいの期間続けると出現するか、目安を教えてください
・皮膚萎縮はステロイドの線維芽細胞活性(コラーゲン産生)抑制作用により膠原線維が減少して皮膚が薄くなること。
・報告1:ストロング(III群)クラスのステロイド外用薬を小児アトピー性皮膚炎(1-15歳)に1日2回週3回で18週間塗布しても皮膚菲薄化は生じなかった。
・報告2:成人アトピー性皮膚炎でベリーストロング(II群)クラスを週2回6ヶ月の維持療法を行い、68人中1人皮膚萎縮が認められた。
・報告2:ストロンゲスト(I群)クラスを連日塗布6週間で皮膚の菲薄化が確認されたが、ミディアム(IV群)クラスの連日塗布6週間では認められなかった。
・治療初期に期間限定で強いランクのステロイド外用薬を用いて炎症をしっかり沈静化し、外用の強さや頻度を減らして週2回程度の外用でコントロール出来るようになれば、皮膚萎縮のリスクはかなり軽減される。
・皮膚萎縮の多くは可逆性である。

17.アトピー性皮膚炎に対する漢方治療のポイントを教えてください
・温熱刺激が症状悪化胃に関係する例には清熱剤:白虎加人参湯、黄連解毒湯
・便秘や下痢を有する患者には胃腸の調子を整える漢方薬:補中益気湯、桃核承気湯

21.アトピー性皮膚炎の治療の目標とゴールを教えてください(片岡葉子Dr.)
・ゴールは“症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない”状態。
・乳児アトピー性皮膚炎では、即時型食物アレルギーの成立を防ぐことも治療目標となる。
・寛解導入、維持、漸減の各段階を意識して、まず薬剤を使って症状がない状態を維持し、その次に最終ゴールへと導く。
①寛解導入:自他覚症状ゼロ、血清TARC正常範囲程度を目指して、できるだけ速やかに2-4週以内に寛解導入
②維持期:顔面などの外用をタクロリムスに変更するなど、若干の変更を加えつつも初期と同様の連日外用を継続し、寛解を維持する。維持期間は重症例では1-2ヶ月程度、軽症例では1-2週間程度が必要。
③漸減期:自他覚症状ゼロ、血清TARC正常範囲程度を維持しながら、外用回数を隔日〜週2回〜週1回と減じていく。長期間遷延化してきた重症例においては、漸減期まで到達後、週2回程度の間欠外用(プロアクティブ療法)により症状のない状態を数ヶ月以上維持した後、次の漸減に移行する。
・長期間重症の症状が遷延化してきた一部の患者においては、薬剤の間欠投与継続によって安全に“軽微な医師軽度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで、悪化しても遷延することはない”状態を維持することがゴールとなる場合もある。

23.アトピー性皮膚炎患者の顔面皮疹の治療法のポイントを教えてください
・ステロイド外用薬を漫然と使用するとステロイド酒さが生じるため、タクロリムス軟膏への切り替えを念頭に治療戦略を立てる。
・眼瞼部の湿疹では眼合併症に注意。網膜剥離や白内障の危険がある。ステロイド外用による緑内障のリスクもあり、眼科併診が必須である。

30.保湿外用剤の必要性と、処方する際に注意すべきポイントを教えてください
・保湿外用剤は、吸湿性や保水性が高く皮表の保湿を主としたものと、皮表の保護を主とし角質層表面での水分蒸散を押さえる親油性のものに大別される。
①保湿:ヘパリン類似物質製剤、尿素製剤 ・・・保湿効果が高く伸びがよいが、においや刺激感が気になることがある
②保護:白色ワセリン、亜鉛華軟膏 ・・・油脂性軟膏自体が角層に水分を供給することはないが、角質層からの水分蒸散を押さえ、角層内に水分を貯留させる効果がある。欠点はベタつき感。
・保湿外用剤は、乾燥の強い部分だけではなく、全身状態は問題なし。に1日1-2回塗布し、とくに皮脂が失われやすい入浴後は塗布すべし。

31.乳児の顔の湿疹への外用療法のポイントを教えてください(楠Dr.)
・いつまで塗り続けるか? ・・・強い炎症を伴う皮疹の場合は1日2回塗布を1週間続け(導入期)、その後1週間単位で1日1回、2日に1回とし(地固め期)、それで落ち着いていれば原則として1日1回の保湿外用剤塗布のみとする。悪化の兆候があれば、その部位だけ局所的に数日外用薬塗布を再開する(安定期)。

34.プロアクティブ療法について教えてください
・寛解導入後、皮疹悪化時に塗布する方法をリアクティブ療法、寛解導入後、再燃を防ぐために週2-3回程度、ステロイドまたはタクロリムス軟膏を元々皮疹があった部位に継続して外用することをプロアクティブ療法と呼ぶ。

38.どのようなときに皮膚科専門医に紹介すればよいですか
・アトピー性皮膚炎患者に対してステロイド外用薬を適切に使用すれば、2週間以内に十分な効果が得られる改善がみられない場合は、一度皮膚科専門医の診察を受けることが望ましい。

39.目の周りへのステロイド外用について眼科医の立場から注意すべきポイントを教えてください
・眼瞼へのステロイド外用薬の使用が長期化する場合には、副作用(緑内障、感染症)の有無や眼合併症(アトピー性白内障、網膜剥離)の精査のために眼科受診を勧める。
・ステロイド緑内障:ステロイドレスポンダー(約30%)がステロイドを使用することで眼圧上昇を来たし、緑内障となるもの。

41.乳児アトピー性皮膚炎での除去食の必要性の判定と実施方法について教えてください
・経口負荷試験で即時型反応陽性食物はプリックテスト陽性の約1/3品目だけであり、プリックテストには偽陽性が多い。特異的IgE抗体も同様であり、コレラの結果だけで除去食を指導すると過剰な除去になる。
・プロバビリティカーブの陽性適中率は即時型反応を指標として求められており、アトピー性皮膚炎のような非即時型反応には適応できない。
・除去試験:疑わしい食物を最低2週間程度除去し、症状が改善するかどうか判定する。
・漸増傾向負荷試験:1回の負荷試験では湿疹まで出現する症例は少ないが、数日にわたる負荷試験を繰り返すと現れてくる。単回の経口負荷試験が陰性でも、家庭で数日間の連日接種をさせ、そのときの状態を除去試験中の状態と比較することによってアトピー性皮膚炎が悪化するか確認する。
・離乳食開始は生後5-6ヶ月が推奨され、早める必要も遅らせる必要もない。

42.乳児アトピー性皮膚炎の制限食の解除の方法について教えてください(宇理須厚雄Dr.)
・経口負荷試験で判定する。負荷量は同年齢の小児が摂取する量を目安に設定し、漸増法で総負荷量を3-5回に分割して行う。
・負荷試験陰性であれば、家庭で総負荷量の半量から開始し、無症状であれば総負荷量まで増量する。無症状であれば除去を解除する。
・負荷試験保留(軽度のかゆみや2-3個の小発赤程度)では総負荷量を数日間連日摂取して症状の変化を観察し、最終判断する(連日経口負荷試験)。
・経口摂取だけでは無症状でも、体調(感冒、下痢)や運動、入浴、生理、非ステロイド炎症薬などの誘発因子が加わると症状が惹起されることがある。
・負荷試験陽性であれば、除去を続行し、半年から1年後に再度耐性獲得確認目的で経口負荷試験を行う。

46.アトピー性皮膚炎患者への紫外線に関する生活指導のポイントを教えてください
・アトピー性皮膚炎患者に対してはできるだけ大量の紫外線を直接浴びないように注意させ、紫外線の多い季節・時間帯での不必要な外出を避けるよう指導することが望ましい。しかし、通常の日常生活での光線曝露ではアトピー性皮膚炎への影響はきわめて少ないため、過度の紫外線防御の必要はない。
・接触アレルギーを起こしやすいアトピー性皮膚炎患者がサンスクリーンを使用する場合には、低刺激性(紫外線吸収剤無配合など)の商品を勧める。
・タクロリムス軟膏使用直後は強い直射日光(紫外線)を浴びないように注意させる。
・紫外線自体は、一部のアトピー性皮膚炎患者の炎症防御に非常に有効である。ナローバンドUVB療法、UVA1療法、PUVA療法などの紫外線療法はアトピー性皮膚炎に対する補助的治療として行われている。
・抗ヒスタミン薬(塩酸プロメタジン、メキタジン)や非ステロイド外用薬(スプロフェン)で光アレルギーを起こすこともある。光アレルギーの多くは原因波長がUVAであるので、UVA/UVBどちらにも効果の高いサンスクリーンを選ぶことが重要である。
・サンスクリーンは紫外線吸収剤無配合で紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛など)を含有している者の方が皮膚に優しく、長期の使用に適している。汗をかいても取れにくい「ウォータープルーフ」も有用である。サンスクリーンとステロイド、タクロリムス、保湿外用剤の同時使用は避ける。

47.食物アレルギー児(アトピー性皮膚炎合併)の保育所や学校での対応について聞かれたとき、どうすればよいか教えてください
・日本学校保健会による「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」を基本に学校生活管理指導表を記載して対応する。
・即時型反応がグレード3以上であれば、エピペン®を使用する。

 ポイントは呼吸器症状であり、急激で重篤な呼吸困難の兆候があれば直ちに用いるべきである。

50.「ステロイドはだんだん効かなくなるって本当ですか?」と聞かれたら・・・
・そのように訴える患者の多くは単なる外用量や回数の不足であることが多く、まず確認すべきである。
・アトピー性皮膚炎では、治療開始後、全体にはよくなったが、頭部のかゆみの強い痂皮を伴う毛嚢炎様変化/フケの増加、体幹のかゆみのある毛嚢炎様変化をみることがしばしばあり、ステロイド外用単独では時に治療困難である。成人症例の多くでマラセチア(またはピティロスポリウム)特異的IgE抗体陽性であり常在真菌であるマラセチアの影響と考えられる。このような場合は、抗真菌薬含有の洗髪剤、洗浄剤の併用でかなり症状が軽快する。
・他に重症患者の治療開始後に、掌蹠の異汗性湿疹様変化が一時的に出現し増悪することがあるが、焦らず外用すれば次第に軽快する。

52.「プールや温泉に入ってもいいですか?」と聞かれたら・・・
・プールに入っている塩素は皮膚の乾燥を生じ、かゆみを助長する。大事なことは、プールの直後にシャワーなどで十分に塩素を洗い流すことである。
・人間の皮膚表面は、角層に含まれる保湿因子と表皮ぶどう球菌をはじめとする皮膚の常在菌などによって弱酸性に保たれ、健康な状態を維持している。一方で、アトピー性皮膚炎の皮疹部ではpHが上昇しており、皮膚表面の紅色ぶどう球菌数の増加などと併せて症状の遷延に関与していると考えられる。
・アトピー性皮膚炎患者が入浴しやすいと感じる温泉は酸性泉であり、増殖している黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果にも優れている。いわゆる美肌効果があるとされるアルカリ泉質は、皮膚表面の古い角質を溶解除去する効果があり、入浴後に皮膚のなめらかさを感じることはできるが、皮膚表面の弱酸性を保つことには対抗するため、多くのアトピー性皮膚炎患者で皮膚バリア機能が低下していることを考えると、入浴に関しては注意が必要である。
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軟膏対決:ステロイド vs タクロリムス(プロトピック®)

2016-06-15 11:03:17 | アトピー性皮膚炎
 アトピー性皮膚炎に使用される塗り薬はステロイドとタクロリムスです。
 この二つの副作用を比較した報告を紹介します。
 文中の「カルシニューリン阻害外用薬」=プロトピック軟膏とご理解ください。

■ アトピー性皮膚炎にはやはりステロイド外用薬か
ケアネット:2016/06/10
 アトピー性皮膚炎の治療において、カルシニューリン阻害外用薬はステロイド外用薬の代替となり得るが、コストが高く、皮膚熱感およびそう痒感などの有害事象が多い。オーストラリア・Royal North Shore HospitalのJoris A. Broeders氏らが、システマティックレビューとメタ解析を行い明らかにした。著者は、「アトピー性皮膚炎には、ステロイド外用薬が推奨されることをエビデンスレベル-1aで支持する結果である」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年5月11日号の掲載報告。

 研究グループは、アトピー性皮膚炎の治療におけるカルシニューリン阻害外用薬とステロイド外用薬の有効性および有害事象を比較する目的で、4つのデータベース(MEDLINE 、EMBASE、Cochrane Library、Web of KnowledgSe Conference Proceedings Citation Indexe-Science)を用い、小児および成人患者において両薬剤を比較した無作為化試験を検索した。
 方法論的な質は、バイアス・リスクの評価により行い、臨床転帰とコストを比較した。
 主な結果は以下のとおり。

・無作為比較試験12件(カルシニューリン阻害外用薬3,492例 vs.ステロイド外用薬3,462例)が組み込まれた。
カルシニューリン阻害外用薬とステロイド外用薬の有効性は、同等であった。
  改善率:81% vs.71%、リスク比(RR):1.18(95%信頼区間[CI]:1.04~1.34)、p=0.01。
  治療成功率:72% vs.68%、RR:1.15(95%CI:1.00~1.31)、p=0.04。
カルシニューリン阻害外用薬はステロイド外用薬より有害事象が多かった
  有害事象発現率:74% vs.64%、RR:1.28(95%CI:1.05~1.58)、p=0.02。
  皮膚熱感:30% vs.9%、RR:3.27(95%CI:2.48~4.31)、p<0.00001。
  そう痒感:12% vs.8%、RR:1.49(95%CI:1.24~1.79)、p<0.00001。
 ただし、萎縮、皮膚感染、重篤または投与中止を要する有害事象の発現に差はなかった
・コストについて報告した試験は少数であったが、カルシニューリン阻害外用薬はコストが高いことが示唆された。

<原著論文> Broeders JA, et al. J Am Acad Dermatol. 2016 May 11.


 従来は、ステロイド外用薬は長期使用により皮膚萎縮の副作用があり、カルシニューリン阻害外用薬(プロトピック®)ではその危険がない、と言われてきましたが、思い込みだったということ?
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新生児期からの保湿ケアが経皮感作を減らすという報告。

2016-06-05 07:28:34 | アレルギー性鼻炎
 近年、俄然注目を浴びている「経皮感作」。
 基礎的な知識として、

・アレルゲンが口から入ると「免疫寛容」、皮膚から入ると「感作」
・新生児期からの保湿ケアにより、アトピー性皮膚炎の発症率が抑えられた(しかし感作率はかわらなかった)

 ですが、どんどん新しい事実が判明中です。
 この報告は、アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず、生後2日時点でTEWL(経表皮水分蒸散量)が多かった赤ちゃんは、経皮感作率が高かったというもの。
 視点を変えると、生後からTEWLを低く抑えることにより、将来の食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を予防できる可能性がある、ということです;

■ 新生児期の皮膚バリア機能が食物アレルギー発症予測の指標に?
ケアネット:2016/06/01
 食物アレルゲンへの経皮曝露が、食物感作/食物アレルギーを引き起こす可能性がある。アイルランド・コーク大学のMaeve M. Kelleher氏らは、経表皮水分蒸散量(TEWL)を指標とした皮膚バリア機能と食物アレルギーとの関連を調べる出生コホート研究を行い、新生児期の皮膚バリア機能障害が、アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず2歳時の食物アレルギー発症を予測することを明らかにした。この結果は経皮感作の概念を支持するもので、TEWLを用いることにより、アレルギーマーチを変化させる介入研究においてアトピー性皮膚炎または食物アレルギーを発症する前の新生児を、生後数日で層別化できる可能性があるという。
Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2016年4月号(オンライン版2016年2月26日号)の掲載報告。

<原著論文> Kelleher MM, et al. J Allergy Clin Immunol. 2016;137:1111-1116.


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