小児医療・アレルギー・アトピー他

日々アレルギー疾患の診療をしている小児科医です.読んだ本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

抗菌薬は上気道感染症後の細菌合併症を減らせるのか?

2017-11-29 11:09:11 | 感染症
 「抗菌薬(=抗生物質)の適正使用」の啓蒙・普及が進んでいます。
 「適正使用」とは、「必要なときは使用し、不必要なときは使用しない」という単純明快なルールです。
 しかし、この言葉をよく耳にするということは「現状は適正使用されていない」ことの証明でもあります。

 スウェーデンからの報告を紹介します。
 約10年間に抗菌薬の使用が22%減少しても、風邪に伴う合併症頻度は増えなかった、という内容です。

■ 抗菌薬は上気道感染症後の細菌合併症を減らせるのか
ケアネット:2017/11/29
 抗菌薬使用と上気道感染症(URTI)後細菌合併症との関連を検討した前向きコホート研究で、URTI後の細菌合併症はまれであり、また抗菌薬は細菌合併症予防における保護効果がない可能性が示唆された。スウェーデン・ストックホルム県ランスティング公衆衛生局のThomas Cars氏らが報告した。BMJ open誌2017年11月15日号に掲載。
 本研究では、ストックホルム県のプライマリケア、専門医の外来クリニック、入院加療施設における、2006年1月~2016年1月の診察・診断・調剤抗菌薬に関する行政医療データを基に検討した。主要アウトカムは、生態学的時間傾向分析における、URTI・細菌感染/合併症・呼吸器系抗菌薬使用の頻度の10年間の傾向分析、前向きコホート研究における、抗菌薬投与あり患者と投与なし患者のURTI後の細菌合併症発症率とした。
 主な結果は以下のとおり。

・2006年から2015年までに呼吸器系抗菌薬の使用は22%減少したが、乳様突起炎(p=0.0933)、扁桃周囲膿瘍(p=0.0544)、A群溶血性レンサ球菌感染症(p=0.3991)、眼窩内膿瘍(p=0.9637)、硬膜内および硬膜下膿瘍(p=0.4790)、汎副鼻腔炎(p=0.3971)での増加傾向はみられなかった。また、髄膜炎および急性篩骨蜂巣炎は減少し(それぞれp=0.0038、p=0.0003)、咽後膿瘍および咽頭周囲膿瘍は増加した(p=0.0214)。

・URTI後の細菌合併症は、扁桃炎後の扁桃周囲膿瘍(10,000発症当たり、抗菌薬投与あり患者41.1、投与なし患者32.4)を除き、投与あり患者・投与なし患者ともまれであった(10,000発症当たり、投与あり患者1.5未満、投与なし患者1.3未満)。

 著者らは、「定期的に収集された行政医療データの分析により、患者・処方医師・政策立案者に対して、URTI・抗菌薬使用・細菌合併症の数に関する貴重な情報を提供できる」としている。


<原著論文>
Cars T, et al. BMJ Open. 2017;7:e016221.
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新型インフルエンザ候補(H7N9)の足音が・・・。

2017-11-23 07:34:08 | 感染症
 次の“新型インフルエンザ”候補のひとつにH7N9があります。
 近年、その報告数が増加していること、低病原性から高病原性への変異が確認されていることが気になります。

■ 「ヒト化」進む鳥インフルH7N9ウイルスの脅威
2017/11/7 三和護=編集委員:日経メディカル
 昨年の冬、中国を中心に鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト感染例が急増した。高病原性ウイルスが確認され、哺乳類への適応力を獲得しつつあるウイルスも見つかっている。ヒトの間で容易に感染が広がる徴候はないが、専門家は今まで以上に注意深い監視が必要と警告している。

<ポイント>
 ・第5波の感染者、前季の7倍
 ・家禽類で感染がまん延か
 ・高病原性ウイルスが出現
 ・感染研、最新のリスク評価を発表

 昨シーズン、鳥インフルエンザH7N9ウイルスのヒト感染例の急増は異常だった。流行の中心地である中国では、2016年11月に6例だった感染例が、12月に106例と急増、年が明けた2017年1月には192例に。その後、徐々に減少したものの、6月までに750例に達した(図1)。結局、2016年9月から2017年8月までに757例の感染が確認された。報告時死亡は290人で、致死率は38.3%と高率だ。

図1 中国で発生した鳥インフルエンザH7N9ウイルスのヒト感染例(報告日ベース。2016年1月~2017年9月。中国の国家衛生・計画出産委員会のデータを基に作成)


 感染者が確認された地域が、ほぼ中国全土に広がったのも異常だった。WHOによると、2015/16年までの21地域から、2016/17年は一気に30地域に拡大した。

第5波の感染者、前季の7倍
 中国から、鳥インフルエンザH7N9ウイルスの最初のヒト感染例がWHOに報告されたのは2013年3月のこと。WHOの発症日を基準とした集計によると、中国では2013年2~8月に135人が確認された。その後も冬になると流行が見られ、2013/14年(9月~翌年8月)に320人、2014/15年に224人、2015/16年に119人と推移してきた。2013/14年をピークに減少傾向にあったが、2016/17年の第5波では、759人と前年の7倍近くに急増した(図2)。

図2 鳥インフルエンザH7N9ウイルスのヒト感染例の推移(発症日ベース。第1波から第5波。2013年2月19日~2017年8月7日)(出典:MMWR September 8, 2017.66;928-32.より一部改変)


 全世界では、2017年9月までの累計患者数が1564例で、少なくとも612人が死亡している。致死率は39%と高い。地域的には中国本土からの報告が1533例と最も多く、香港21例、台湾5例、カナダ2例、マカオ2例、マレーシア1例となっている。香港や台湾などの感染者は、中国本土からのいわゆる輸入感染例がほとんどで、中国がH7N9感染の中心であることに変わりはない。

家禽類で感染がまん延か
 第5波ではなぜ、これほどまでに患者数が増えたのか――。
 中国当局は、H7N9ウイルスが変異し容易にヒト-ヒト感染を起こすような状況に至ったわけではないとの見解を示している。つまり、ウイルスの性状に変化があって、感染者数が増加したわけではない
 「家禽類を扱う市場(生鳥市場)などでH7N9ウイルスの検出件数が増加していることがヒト感染例増加の背景にある」。こう指摘するのは、インフルエンザウイルスの薬剤耐性化の研究に取り組んでいる新潟大学大学院医歯学系国際保健学分野教授の齋藤玲子氏だ。
 「第5波の鳥インフルエンザH7N9ウイルスも、家禽類などにとっては低病原性(LPAI:low-pathogenic avian influenza)のウイルスが主流だった。低病原性であるため、感染しても症状が表れない家禽類が多い。生鳥市場などでのH7N9ウイルスの検出が増加しているのは、こうした不顕性感染の家禽類が広がった証と言える」(齋藤氏)。つまり、これまでと同様、家禽類との濃厚接触による感染が大半であることを考えると、家禽類の間で不顕性のH7N9感染がまん延したことで、感染した家禽類とヒトが接触する機会が一気に増え、ヒト感染例が急増したとの見方だ。斎藤氏は、中国では生きた家禽類の売買が盛んであることを考えると、今後もウイルスを持った家禽類の拡散は避けられないと見る。

高病原性ウイルスが出現
 第5波では、家禽類に高病原性(HPAI:highly pathogenic avian influenza)の鳥インフルエンザH7N9ウイルスが検出されたのも脅威だ。
 齋藤氏によると、2016年第52週から2017年第19週までに、28人のヒト感染例から高病原性H7N9ウイルスが検出されている(J. Virol.Sept 2017)。28例中21例は、広東省と広西チワン族自治区からの報告で、他に湖南省、河北省、河南省、陝西省、台湾でも確認されている。家禽類や環境からも検出されており、2017年1月から10月までに54検体から見つかっている。このうち42件がニワトリで2件がアヒルの検体だった。残りの10件は環境の検体からだった。
 「2016年5月ごろに、香港周辺(珠江デルタ地域)で低病原性から高病原性に変化したH7N9ウイルスが現れ、その後2017年に入ってから上海周辺(長江デルタ地域)に広がり、家禽の流通ルートにのって中国全土へ広がったと見られている」(齋藤氏)。
 高病原性のH7N9ウイルスについては、その性状が明らかになりつつある。東京大学医科学研究所の河岡義裕氏らの研究によると、哺乳類の間で飛沫感染し、感染すると致死的な症状を引き起こし得ることが明らかになった(参考記事)。
 また、齋藤氏によると、高病原性H7N9ウイルスのヒト感染例では、致死率が50%に上昇しているばかりか、発症から死亡までの時間も短くなっていることも報告されている(Trends in Microbiology,2017.25;713-28)。加えて、ヒト感染例や環境から検出された高病原性H7N9ウイルスの遺伝子変異を調べた結果、ヒト化が進んでいることが明らかになりつつある(J. Virol.Sept 2017)。
 例えば、ウイルスが気管上皮細胞内に侵入する際に必須であるヘマグルチニン(HA)に、ヒト呼吸器上皮細胞への親和性が上昇する変異があったウイルスはヒト感染例と環境それぞれの検体の9割以上に見つかっている。また、ウイルス増殖に欠かせないRNAポリメラーゼのサブユニットであるPB2でも、哺乳類で増殖しやすくなる変異を持つウイルスがヒト検体の39%に見つかっている。
 高病原性のH7N9ウイルスの出現は、第5波の患者急増の直接的な原因とはみられていない。だが齋藤氏は、「ヒトへ感染しやすい変異を持つウイルスが見つかっているのは脅威だ。まだヒトの間で大流行するような兆しは見られないが、低病原性ともども注視していく必要がある」と警告している。

感染研、最新のリスク評価を発表
 最後に、国立感染症研究所が発表している「鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応」(11月2日現在)を見ておきたい。
 まず今冬の流行については、「中国において、昨シーズンと同様に感染者数が急増する可能性がある」と結論。対策としては、「H7N9ウイルスの発生地域へ渡航する際には、生鳥市場への訪問や病気の鳥との接触を控えるなどの注意喚起は継続すべき」とし、「発生地域において鳥との接触があり、渡航後に発熱を認めるなどの体調の変化があった場合には、医療機関の受診時に渡航歴を伝えることの啓発が必要」とした。
 また、限定的ながらヒト-ヒト感染がある点を踏まえて、「国内に入国した感染者から家族内などで2次感染が起こりうる」としている。ただし、疫学的・ウイルス学的所見から、ヒトへの感染が確認されているH7N9ウイルスは、「ヒト-ヒト間で容易に感染伝播するような能力は獲得しておらず、持続的なヒト-ヒト感染の可能性は低い」との見解を示している。
 高病原性H7N9ウイルスが見つかった点については、「これまでのところ、高病原性H7N9ウイルスの出現でヒトに対する疫学的パターンに変化が見られた証拠はない」と指摘。さらに、「低病原性H7N9ウイルスから高病原性H7N9ウイルスへの変異によって、ヒトでの病原性や感染力に影響を及ぼすという科学的な根拠は認められていない」としている。その上で、高病原性H7N9ウイルスについては「情報を収集し、適宜リスクアセスメントを実施する必要がある」と締めくくっている。
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イエメンではコレラ、マダガスカルではペストが流行

2017-11-15 12:01:43 | 感染症
 世界を見渡す後、日本では馴染みのない感染症が猛威を振るっている国・地域があります。
 今年話題になっているのは、アラビア半島のイエメンにおけるコレラ流行と、アフリカ東部に浮かぶマダガスカル島におけるペスト流行。
 とくにペストは中世ヨーロッパで流行し多数の死者が出たため「黒死病」として恐れられた感染症です。私が医師になってから30年弱、話題になった記憶がありません。このように一度忘れられた感染症が再度蘇って流行する現象を「再興感染症」と呼びます。

■ コレラ感染、100万人到達の恐れ 内戦下のイエメン
2017.09.30:CNN
(CNN) 国際赤十字は30日までに、内戦下にある中東イエメンでコレラの感染が今年末までに100万人に達する恐れがあると警告した。
 赤十字国際委員会のイエメン事務所代表は29日、過去に例がないコレラまん延との危機感を表明。感染が疑われる患者は現在約75万人。今年7月5日の時点では約27万6000人だった。この増加基調が続けば年末までには最大100万人に達するとした。
 世界保健機関(WHO)は今年7月、イエメンのコレラ感染について世界で最悪の流行と指摘。2015年3月に始まった内戦で医療保健体制がほころび、社会基盤の崩壊や飢餓の状態に近い食糧不足などがコレラ拡大の元凶となっている。
 WHOによると、今年9月13日段階で報告などされたコレラ感染の犠牲者はイエメン全土で2074人。以前の報告書では、住民5000人が毎日、感染しているとも推定していた。
 赤十字国際委員会のイエメン担当責任者は、同国の医療保健体制は限界水域にあると説明。今後、新たな感染拡大が発生した場合の対応策に懸念が生じているとした。


<参考>
■ 「コレラとは」(国立感染症研究所)


■ マダガスカルのペスト流行、死者124人に 1192人感染
2017.10.27:CNN
(CNN) アフリカのマダガスカルで猛威を振るっているペストの流行について、国連人道問題調整事務所と地元のリスク管理対策部門は27日までに、今年8月以降1192人が感染し、124人が死亡したと明らかにした。
 感染者の67%は、人から人へと感染する肺ペストに罹患(りかん)。ペストはペスト菌によって引き起こされ、ネズミなどが運ぶノミがかむことで感染が拡大する。症状は、痛みやリンパ節の腫れ、発熱、寒気、咳(せき)など。
 マダガスカル国内の114地区のうち、肺ペストの感染が報告されたのは40地区。人口の多い大都市を含む少なくとも10都市でも感染が伝えられている。他人との接触で一段の感染拡大が起こる恐れがあるものの、国連によれば所在のつかめている感染者は全体の3割に満たない。
 一方で23日の国連の報告では、8月1日以来、780人の感染者が治癒したとしている。また感染が伝えられた地区のうち6地区については、過去15日間で新たな感染例の報告はないという。
 世界保健機関(WHO)は直近の報告の中で、国内での感染がさらに拡大するリスクは依然として極めて高いと指摘。ただ近隣の島やアフリカ南部・東部といった周辺地域へ感染が広がるリスクはそれほどでもないとの見方を示した。
 WHOのマダガスカルの代表者は「国境を越えて感染するリスクは低い。一般的に感染者は体調不良が著しく、旅行に出られる状態ではなくなるからだ」と説明した。現在WHOはマダガスカルの空港当局と連携し、空港や港湾に医療スタッフを配備するなどして国外への感染者の流出阻止に取り組んでいるという。


<参考>
■ 「ペストとは」(国立感染症研究所)


■ ペストに気を付けろッ! その1
(2017/11/14:ケアネット)
忽那 賢志 ( くつな さとし ) 、国立国際医療研究センター 感染症内科/国際感染症センター
人類とペストの歴史
 人類とペストの歴史は古く、ヨーロッパでは西暦542~543年にかけて東ローマ帝国で流行したそうです。さらにさかのぼれば、2,800~5,000年前のアジアとヨーロッパのヒトの歯の化石から、ペストのDNAが検出されたという報告もあります1)。人間とペストとの戦いは少なくとも5,000年以上は続いているのですッ! 
 最大の流行は14世紀で、アジアから始まった流行はヨーロッパまで波及し、何とこのとき世界の人口の3割がペストで亡くなったと言われています。世界人口の3割…ペスト、恐るべしです。
 フランスのルーブル美術館にある『ジャファのペスト患者を訪れるナポレオン、1799年3月11日』は、その名の通り1799年にペスト患者を見舞うナポレオンの様子を描いた絵ですが、中央の患者は腺ペストの患者で、腋窩リンパ節が腫れているのが分かります。ナポレオンは、じかに触ろうとしていますね。
 腺ペストは、ノミに刺されることによって感染します。また、腺ペストの患者の体液に曝露すると、ヒト-ヒト感染が成立しますし、肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染します。
 そんなわけで、有史以来人類はペストと戦ってきたわけですが、日本も例外ではありません。1896年以降、ペスト患者が日本でも報告されています。『明治の避病院-駒込病院医局日誌抄』(磯貝元 編)という本には、当時の駒込病院の医師であった横田 利三郎氏が、「ペスト患者のリンパ節を切開し、血液が顔にかかったことで自身もペストに罹患し、亡くなった」と書かれています。このように日本でもペストはかつて被害をもたらした感染症なのです。
 と、ペストと人類の歴史を語ってきましたが、何だかこんな風に説明するとペストは過去の感染症のように思われるかもしれませんが、そうではありませんッ!
 ペストは今も局所的に流行しているのですッ!
現在進行形のペストの流行
図2は、世界保健機関が発表したペストの流行地域(2016年3月時点)を示した世界地図です。今でもペストに感染するリスクがある地域の存在が、お分かりいただけるかと思います。何とあのアメリカ合衆国でも、いまだにペスト患者が報告されているのです。とくにニューメキシコ州北部、アリゾナ州北部、コロラド州南部で症例が多く報告されています。アジアやアフリカでも流行していますね。



 そして、この世界地図でも赤く塗られているように、マダガスカルでもペストは流行地域に指定されているのですが、今年はとくに大規模なアウトブレイクが起こっています(図3)。すでに1,800例以上のヒト感染例が報告されており、さらにチャバイことに、症例の大半が「肺ペスト」なのですッ!(図4)2)





 通常ペストは、ノミの刺咬によって起こる「腺ペスト」の病型が一般的であり、肺ペストの病型はまれだと言われています。しかし、今回のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペストの症例が7割以上を占めているのです。この意味するところは、患者からのエアロゾル吸入による「ヒト-ヒト感染」が持続的に起こっているということなのですッ! マダガスカルでの死者は、すでに120例を超えているようです(致死率7%)。日本に住む我々も決して他人事ではない状況になってきています。


<参考文献>
1)Rasmussen S, et al. Cell.2015;163:571-582.
2)Madagascar Plague Outbreak:External Situation Report #7: 31 October 2017.


<追記>
2017.11.29
マダガスカルのペストに関する続報です。
北海道大学のチームが調査に入っているのですね。

■ 海外への拡大心配なし アフリカのペストで北大
共同通信社2017年11月28日
 アフリカ南東部の島国マダガスカルで起こっている今世紀最大規模とみられる肺ペストの流行について、国外に広がる可能性は極めて低いとする分析結果を、北海道大の西浦博(にしうら・ひろし)教授らの研究チームが28日までにまとめ、欧州医学誌電子版に発表した。
 ペストはエボラ出血熱と同じ感染症法の1類に分類される重大な感染症で、中でもせきなどによって人から人に感染する肺ペストは最も危険な種類とされる。
チームによると、ペスト全体で11月中旬までに2千人を超える患者が報告された。
 チームは、フランスのパスツール研究所などがまとめた8~10月の感染者数や、マダガスカルの出入国者数のデータを使って、マダガスカル国外にペストが広がる可能性を分析した。
 その結果、マダガスカルとの関係が深いフランスを含め、入国可能性がある肺ペスト患者の人数はどの国でも0・1人未満で、国外流行のリスクは非常に低いことが分かった。
 また、患者1人から他の人に感染する人数も従来と大きな違いはなかったという。
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健康ライフ「この1年で話題になった感染症を考える」(岡部信彦Dr.)2017

2017-11-02 17:18:11 | 感染症
 感染症分野の大御所でありご意見番の岡部先生が早くも2017年を総括。

□ 10月30日(月)「マダニ感染症」・・・SFTS(重症熱性血小板減少症)
・マダニが介するウイルス感染症で致死率約20%
・女性が野良ネコに手を噛まれて死亡
・ダニに刺されていないけれど発症した・・・感染ネコからうつった可能性。
・キーワードは「野良ネコ」、自然界のダニに刺される可能性大、ペットでは可能性小(でも具合が悪いペットは要注意)
・本来は野生動物が持っているウイルスであり、人間と野生動物の棲み分けがあやふやになってきたことが要因
・SFTSに根治薬はなく対症療法のみ

□ 10月31日(火)「劇症型溶連菌感染症」
・2017年に某プロ野球コーチが死亡した原因?
・溶連菌感染症は一般に治る細菌感染症
劇症型となる菌が特殊なものかどうかはまだわかっていない(解析中)。重症化しやすい患者側の要因もわかっていない。
・劇症型の徴候は「痛み」であちこち(足腰、指先)が痛くなる。
・毒素で組織が壊死する気配(皮膚のどす黒い変色)があればその部位の切断を考慮する。

□ 11月1日(水)「梅毒」
・梅毒が増えている。
・原因は梅毒トレポネーマという微生物で性行為で感染する。
・症状:始まりは感染した性器の潰瘍(痛みはない)、でも放置で改善する。次は手のひらの皮疹(放置で治る)、脱毛。そして脳の症状、骨が溶けてくる。
・治療:ペニシリンが有効。
・感染がわかったらセックス・パートナーの検査も必要。
・先天梅毒は大きな問題。

□ 11月2日(木)「出血性大腸菌O-157」
・大腸菌の種類はたくさんあり、病原性大腸菌の種類もたくさんある。
・O-157に感染しても症状が出ないことがある一方で、ひどい下痢・血便が出ることもある。
・O-157の毒素が腎臓や脳に悪さして重症化することがある。
・感染源は食品。ウシには常在菌であり、腸の中にいて肉にはいない。しかし、こねる調理方法(ハンバーグなど)で肉に混じり込んでしまうことがある。調理器具や患者さんの手指を介して感染が広がる。
・自然肥料に使われる牛糞にも混じていることがある。
・重症化予防のため強い下痢止めは使わない方がよい。
・抗菌薬使用の可否は現在でも賛否両論状態。

□ 11月3日(金)「RSウイルス」
・本来は冬に流行する風邪ウイルスだが、2017年は夏から流行。なぜかは不明。
・2歳までに100%罹るが、ほとんど軽症で済む。
・中には気管支炎・肺炎を合併しゼコゼコ、呼吸困難を来すことがあるのがやっかい。
・乳児では突然死の可能性もある。
・診断:迅速診断キットがある。
・治療:RSウイルスに対する特効薬はまだない。対症療法(輸液、酸素投与など)のみ。
・感染対策:飛沫感染。ゼコゼコする子がいじったり舐めたりしたおもちゃに付いていることがある。

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健康ライフ「感染症を防ぐ」(忽那賢志Dr.)2017

2017-11-02 07:50:18 | 感染症
 NHKラジオ第一放送で平日朝放送している健康ライフから、気になった文言をメモしておきます。


□ 10月23日(月)「感染症の代表、風邪とは何か」
・風邪とはウイルスによる一過性の感染症。ウイルスの種類は複数ある。
・風邪の症状はウイルスの種類によってあまり変わらない(ホント?)。
・鼻水から始まり、数日経つと痰が絡んで咳が始まり、その後咳が残りつつ1〜2週間で治っていく。
・風邪のウイルスはどこにいるか? ・・・人間が持っている。
・感染しても症状が出ない人が一定の割合で存在する(不顕性感染)。症状の出る人と出ない人の違いは現在でも解明されていない。
・風邪薬は症状を和らげる対症療法なので、早く治るわけではない。これは市販薬でも処方薬でも変わらない。
・抗生物質(=抗菌薬)は細菌をやっつける薬でありウイルスには効かない。つまり風邪には抗生物質は効かない。
・ではなぜ抗生物質が処方されるのか? ・・・例えば風邪の合併症である副鼻腔炎の予防として・・・しかしこの場合1万人に処方してやっと1人予防できるレベルであり効率が悪く、デメリット(抗生物質の副作用や耐性菌問題)も考えると正しい医療とは言えない。

□ 10月24日(火)「インフルエンザの診断と薬」
・迅速診断キットの正確性・・・発症して間もなく(1日くらい)は陰性に出やすく、陽性でも疑陽性があるので100%インフルエンザと言い切れない。症状・状況から疑われる例に施行すべき検査であり、医師の判断を補助する検査と位置づけるべき。
・抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に開始しないと効かない。使用すると本来の自然経過より半日〜1日短くなる。内服薬では下痢の副作用が目立つ。これらを天秤にかけて使用の有無を考える。
・流行を抑えるためにはワクチンによる予防が有効である。
・インフルエンザにかかったら被害者であるが、同時に加害者になる可能性があるので広げない努力をすべき(会社はしっかり休む)。

□ 10月25日(水)「手洗い・マスクの有効性」
・手洗いの効果 ・・・手洗いが風邪の流行を抑制するという科学的なデータはない。病院内で耐性菌の広がりを抑えるデータはある。
・外科医の手術前の手洗いが必要? ・・・強くこすりすぎると皮膚が傷ついて菌が居座る可能性があるので、最近は少しゆるくなった。
・手洗いのコツ:指の間、指先、親指を忘れがち。手首まで洗いましょう。
・マスクの有効性 ・・・感染症にかかった患者さんがすると他の人に広げない。健常者がマスクをすることで風邪をもらわないかどうかはまだ確定的なデータはない(理論的に予想されるが)。
・マスクの正しい付け方:鼻を出していると鼻粘膜から感染するので、鼻からあごまでしっかり覆うよう装着する。
・マスクは毎日取り替えべきか? ・・・医療従事者はインフルエンザの患者さんに接するたびにマスクを交換する(ホント?)。一般の方は、明らかにマスクが汚れたと思われる際には交換すべき。その機会がなければ毎日交換でOK。

□ 10月26日(木)「ワクチンを打つ」
・「ヒトは一度感染症にかかると同じウイルスには感染しない」という免疫システムを利用し、症状が出ない程度に弱毒化したウイルスを接種して感染させて免疫を誘導する医療である。
・定期接種と任意接種の違い:その感染症が社会に与えるインパクトを勘案して国が接種が必要と判断したものが定期接種。
・ワクチンの副反応:接種後の頭痛、皮膚の発赤腫脹、微熱などは免疫反応が起こっている証拠なので仕方がない。まれながら蕁麻疹などのアレルギー、下痢、呼吸困難などが起こることがあるので接種後は医療機関で様子を見ることが必要。
・集団免疫:多くの人がワクチンを接種することによりその感染症の流行が抑えられ撲滅ができる。また、免疫機能の弱いヒトを守ることができる。

□ 10月27日(金)「輸入感染症を防ぐ」
・デング熱、ジカ熱は現時点では日本での流行を認めていない。
・2014年に日本国内の代々木公園でデング熱が流行(患者数160人)。
・エボラ出血熱:2013/14の西アフリカでの流行は制圧された。
・MARS(中東呼吸器症候群):もともとはラクダが持っているウイルスなので無くなることはないだろう。
・感染経路は食べ物(とくに火を通していないサラダやカットフルーツ)。加熱した料理、ミネラルウォーターを利用する。
・海外で蚊に刺されないことが大切。旅行前にはワクチン接種を検討。A型ワクチンや破傷風。
・帰国後に体調が悪いときは医療機関受診の際に「外国へ行ってました」と申告すべし。

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「カンピロバクター腸炎」概論

2017-10-27 08:24:56 | 感染症
 下痢便に血が混じったという相談が時々あります。
 発熱もなく全身状態は悪くない・・・こんな患者さんに便培養検査をすると「カンピロバクター(Campylobacter)」が検出されることが多いです。

 インタビュー記事でわかりやすいものを見つけましたので、引用・抜粋させていただきます。

<ポイント>
・鶏肉・豚肉は生で食べない。
・イヌ・ネコなどペットから感染する可能性もある。
・体調・腸内環境を整えると感染しにくい&重症化しにくい。
・重症度はバリエーションがあるが、重症感があるときは積極的に抗菌薬(ニューキノロン系)を使用する。

■ カンピロバクター腸炎(食中毒)とは?
公開日 2017 年 10 月 16 日:メディカル・ノート
仲瀬 裕志 先生 札幌医科大学医学部消化器内科学講座 教授

カンピロバクター腸炎とは〜下痢・腹痛・嘔吐などを引き起こす感染性腸炎
 カンピロバクター腸炎とは、カンピロバクター属菌の細菌に感染することによって引き起こされる感染性腸炎です。
 主な症状には、下痢、腹痛、発熱、悪心(おしん:吐き気を催す、胸のむかつき)、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感などがあります。なかでも下痢や腹痛を訴える方が多いでしょう。発熱するケースでは38度を超える高熱がでるといわれており、筋肉や関節の痛みを訴える方もいます。

カンピロバクター腸炎の原因と感染経路〜カンピロバクター属菌は動物の腸管内に住みつく細菌
 カンピロバクター腸炎を引き起こす原因は、カンピロバクター属の細菌です。このカンピロバクター属菌は、主に牛や羊、豚、犬、猫、野鳥や鶏などの家禽(かきん)類の腸管内に常在菌として保菌されています。しかし、これらの動物や家禽類に腸炎が起こることはなく、細菌に感染し腸炎などの症状が現れるのは人間のみであるといわれています。

カンピロバクター属菌の感染の大半は、鶏肉などの食品から
 カンピロバクター属菌は、食事による感染が最も多いでしょう。鶏肉や豚肉などの食用肉を加工する際に菌が付着することで、感染源になりうるといわれています。
 菌の発育温度域は34〜43度であるため、十分に加熱すれば菌を死滅させることができます。さらに、大気中や乾燥した状態では菌が死滅しやすいといわれています。このため、生肉や半生の肉は、最も感染の危険がある状態といえるでしょう。
 また、食事による感染よりも少ないケースですが、犬や猫などのペットから感染することもあります。特に、ペットの便から感染するケースが多いため、ペットを触った後や便の処理をした後には、きちんと手を洗うことが感染の予防につながるでしょう。

カンピロバクター腸炎の感染者数と発症率〜報告よりも多い発生が推測できる
 日本におけるカンピロバクター腸炎の正確な頻度はわかっていません。それは、細菌に感染し腸炎の症状が現れたとしても、必ずしもみんなが病院を受診するとは限らないからです。特に軽症の下痢や腹痛であれば、病院を受診しない方も多いでしょう。
 さらに、食中毒として届け出がされているものは非常に限られた症例であると予想できます。このため、カンピロバクター腸炎は、実際に報告されている症例数よりも多く発生していると考えてもよいでしょう。

カンピロバクター属菌の潜伏期間は2〜5日間
 一般的に、細菌に感染したとしても、すぐに腹痛や下痢など腸炎の症状が現れるわけではありません。カンピロバクター属菌も例外ではなく、感染後、一定の潜伏期間(病原体に感染してから体に症状が出るまでの期間)を経て腸炎を発症します。
 カンピロバクター属菌の潜伏期間は2〜5日間と、ほかの感染型細菌性食中毒と比較するとやや長い点が特徴です。

カンピロバクター属菌に感染すると必ず発症するの?
 カンピロバクター属菌に感染したからといって、必ずしもカンピロバクター腸炎を発症するとは限りません。さらに、発症しても軽症ですむこともありますし、必ずしも重篤化する方ばかりではないでしょう。しかし、特に体調が優れないときには発症しやすく、重篤化しやすいといわれているため注意が必要でしょう。

発症・重症化には腸内環境が関係している
 ではなぜ、体調不良が腸炎の発症や重症化につながってしまうのでしょうか。それは、体調が優れないときには、腸内環境が乱れやすくなるからです。
 発症や重症化には、腸内細菌の状態が深く関わっていると考えられています。腸内細菌の状態は人によって異なりますが、腸内細菌の多様性が保たれているほうが、よりバランスがとれ良好な状態ということができます。腸内の防御のバランスがとれており、より腸管が守られている状態ということができるのです。
特 に、乳酸菌の一つであるエンテロコッカス・フェカリスと呼ばれる細菌がいなくなると、カンピロバクター属菌が増えやすくなることがわかっています。
 このため、腸内細菌の多様性が保たれ、エンテロコッカス・フェカリス菌が十分にある状態であれば、感染しても発症しない可能性も高くなると考えられています。

カンピロバクター腸炎の検査方法〜便培養(べんばいよう)検査が有効
 カンピロバクターの確定診断には、便培養(べんばいよう)検査が最も有効でしょう。便培養検査とは、患者さんの便を検体として採取・培養し、細菌の有無や菌の種類・量を調べる検査です。
 この検査を実施する際には、カンピロバクター腸炎の疑いがあることを、医師が検査の担当者に伝えることが重要です。カンピロバクター腸炎の疑いがあることがわかれば、重点的に該当する細菌がいないかどうかを調べることができるからです。

問診で食事内容をきちんと把握する
 そのため、便培養検査の前には患者さんへの問診が非常に重要になります。患者さんの食事の内容をきちんと把握することで、カンピロバクター腸炎の可能性があるか否かを判断することができるからです。
 実際、自身を潰瘍性大腸炎(大腸の粘膜に連続的に炎症が起こることで、血便・下痢・軟便・腹痛などの症状が現れる疾患)だと思い受診された患者さんがいらっしゃいました。この方は、下痢や下血があったために潰瘍性大腸炎を疑ったのです。
 しかし、腸管にカメラを入れ検査をしたところ、カンピロバクター腸炎の特異的な広がりが認められたため、食事について尋ねました。数日以内に鶏肉を食べたことを話してくださり、そこからカンピロバクター腸炎が判明しました。
 下痢や嘔吐があっても、患者さんが必ずしも食中毒を疑うわけではありません。「まさか自分は食中毒ではないだろう」と思っているケースも少なくないのです。
 そのようなケースであっても、きちんと食事の内容について話を聞くことで適切な診断につながるでしょう。患者さんも、医師に食事内容を聞かれた際には、できる限り正確に伝えるようにしていただきたいと思っています。


■ カンピロバクター腸炎の治療と予防
公開日 2017 年 10 月 17 日:メディカルノート

カンピロバクター腸炎の予防1:食事やペットへの注意〜鶏肉や豚肉などはよく加熱する
 カンピロバクター腸炎は、食事から感染することが最も多いでしょう。たとえば、豚肉や鶏肉などに付着していることが多く、これらの食べ物から感染する可能性があります。
 特に、生肉や半生の状態の肉は感染の可能性が高く危険です。カンピロバクター属菌は、食用肉の表面に存在することが多いといわれているので、表面をよく加熱することが予防につがるでしょう。

ペットと触れ合ったら手を洗う
 また、食事による感染よりは頻度が少ないと考えられますが、犬や猫などのペットから感染することもあります。特に、ペットの便から感染するケースが多いため、ペットを触った後や便の処理をした際には、きちんと手を洗うことが感染の予防につながるでしょう。

カンピロバクター腸炎の予防2:腸内環境の整備〜体調管理・食事の管理をして、腸内環境を整える
 ストレスや疲れが蓄積され体調が優れないときには、腸内環境が乱れやすくなります。このように腸内環境が乱れた状態であると菌に感染しやすく、腸炎を発症し重症化しやすいといわれています。
 このため、ストレスや疲れをなるべくためず、体調を整えることが重要になります。さらに、体調が優れないときには生肉は避けるなどの工夫も予防につながるでしょう。
 また、近年の研究では、一週間食事の内容を変えるだけで、その人の腸内細菌を変化させることができるということが明らかになっています。たとえば、一週間、野菜を多く摂取することで、腸内環境は大きく改善されるでしょう。
 私は、腸内環境をよくするために、食物繊維を1日につき18グラム以上摂取するよう指導しています。これは、腸内細菌叢を良好に保つことに加え、狭心症などさまざまな疾患の予防にもつながるでしょう。 食物繊維は、ひじきやブロッコリー、ごぼう、おからなどに豊富に含まれています。食物繊維を気にしつつ、バランスのよい食事を心がけ腸内環境を整えることは、カンピロバクター腸炎の予防にも有効でしょう。

カンピロバクター腸炎の治療方法〜自然治癒が可能
 カンピロバクター腸炎の多くは、自然治癒するといわれています。基本的に、菌が体の外にすべて出てしまえば治癒する疾患なのです。しかし、なかには敗血症(全身症状を伴う感染症)など重篤な疾患を呈する方もいます。その場合には、抗菌剤による治療が必要です。

抗生剤が早期治癒につながる
 カンピロバクター腸炎の治療法は、すでに確立されています。多くのケースは、抗生剤(細菌を死滅させ感染を防ぐ抗生物質からつくられた薬剤)を服用することで改善されるでしょう。なかでも、ニューキノロンと呼ばれる薬剤が適応されることが多くあります。

カンピロバクター腸炎とギラン・バレー症候群との関連
 カンピロバクター腸炎による死亡例はほとんどなく、予後は良好であるといわれています。しかし、近年、カンピロバクター属菌に感染した方のなかには、ギラン・バレー症候群(GBS)を発症するケースが報告されています。
 グラン・バレー症候群とは、主に筋肉を動かす運動神経が障害されることで発生する神経疾患の一つです。力が入りにくい、しびれる、などの症状が全身に現れる点が特徴です。
 私たち消化器内科からみると、カンピロバクター腸炎は、胃腸炎でおわるのですが、神経内科では、「カンピロバクター腸炎をみたら、ギラン・バレー症候群を疑え」といわれているのです。

ギラン・バレー症候群を発症するメカニズムとは?
 これは、カンピロバクター属菌の成分に対して生じた抗体が、ギラン・バレー症候群の発症に関連する神経組織のガングリオシドに対して免疫反応を生じるためであるといわれています。体のなかでカンピロバクター属菌に対する抗体反応ができれば、ガングリオシドに対しても、敵とみなし攻撃することになります。
 このように、近年では、カンピロバクター腸炎の発症をきっかけにギラン・バレー症候群を発症するケースがあるのです。
 我々消化器内科医も、カンピロバクター腸炎の診断後には、何週間か後に神経症状が現れる可能性があることを伝える必要があるかもしれません。もちろん100%ではありませんが、もしも神経症状が現れたら病院を受診するよう伝えることが重要になっていくでしょう。

体調が優れないときには十分に予防を
 カンピロバクター腸炎の多くは、治癒が可能であり予後も良好です。しかし、ギラン・バレー症候群など重篤な疾患につながる可能性はゼロではありません。
 体調が優れないときには生肉を避ける、十分に加熱するなど、十分な注意が必要でしょう。
 また、私は、カンピロバクター腸炎の予防には、普段の食事が重要になると考えています。和食は日本人にあった食事であり、世界が認めるヘルシーな料理法です。普段の食事を和食中心にして、食物繊維をとるように心がけるだけで腸内環境の整備につながります。腸内環境が良好な状態になれば、カンピロバクター腸炎の発症のみならず、あらゆる疾患の予防につながるでしょう。

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小児期C型肝炎は「重症化せず肝硬変や肝がんになる可能性はほぼない」

2017-10-26 08:06:02 | 感染症
 小児B型慢性肝炎は将来癌化する可能性があることが有名ですが、C型肝炎については不明でした。
 紹介する記事の調査では、そのリスクは低いという結果です。

■ 小児期C型肝炎「重症化せず」 久留米大助教ら疫学調査 350人対象国内最大規模 [福岡県]
2017年10月25日:西日本新聞
 小児期のC型肝炎ウイルス感染者は重症化せず、肝硬変や肝がんになる可能性はほぼない、との疫学調査結果を久留米大医学部の水落建輝助教(小児科)などの研究グループがまとめた。調査は過去30年、約350人を対象とした国内最大規模の調査で、日本消化器病学会の英文誌(電子版)に発表している。
 C型肝炎は、ウイルス感染が原因で発症し、国内の感染者は150万~200万人と推定されている。自覚症状がなく、肝硬変や肝がんに進行して感染が分かることも多いとされる。
 調査は1986~2015年に出生し、17歳未満でC型肝炎に感染しているとの診断を受けた348人(診断時の平均年齢3・1歳)を対象に実施。その後の病状の変化などについて、国内65の医療機関からデータの提供を受けて調査した。
 水落助教によると、348人の中で肝硬変や肝がんの診断を受けた人はおらず、肝臓の組織や細胞を調べる検査を実施した147人についても、病変なしと軽度が9割を占め、重度の人はいなかった。
 近年、C型肝炎の治療を巡っては、治療効果の高い新薬が開発され、成人では公的医療保険の適用も受けている。小児では安全性が確立しておらず未承認だが、水落助教は「(今回の調査で)小児期に重症化しにくいことが分かり、治療方法を慎重に検討できるようになった」と話している。
 また、疫学調査では近年、感染経路のうち9割超を母子感染が占めていることも明らかになった。
 出生年別で10年ごとに3群に分け、感染経路を調査したところ、母子感染の割合が、86~95年生まれで61%だったのが、96~2005年生まれで92%、06~15年生まれでは99%となっていた。
 C型肝炎の母から子への感染率自体は1割程度で、実数は増えていない。1992年以降、献血時の検査が適切に行われるようになったことで、輸血感染の割合が86~95年には35%だったのが、96年以降ゼロになったのが影響したと考えられる。
 水落助教は「通常の妊婦健診にC型肝炎の血液検査は組み込まれており、感染者を把握し、治療を続けることでいずれ撲滅できるとはっきりした」と語る。


 文中で気になったのは母子感染。
 輸血による感染がゼロになったことで目立つのですが、無視はできません。
 私が昔調べたときは、「母親がC型肝炎ウイルスに感染していても母乳栄養は可能」と本に書かれていましたが、現在はどうなのでしょう。

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ポリオ感染、2016年は37人のみ 「根絶に期待」

2017-10-26 08:03:14 | 感染症
 ヒトがワクチンという武器を使って撲滅に成功した感染症は、今のところ天然痘のみ。
 ポリオは2番目になれるでしょうか?

■ ポリオ感染、昨年37人のみ 「根絶に期待」とWHO
共同通信社2017年10月25日
【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)は24日、かつて日本でも大流行したポリオ(小児まひ)について、予防接種の普及により2016年の感染者は37人まで減少したと発表した。
史上最も少ない年間感染者数で「根絶に向けて期待できる兆候」(WHO当局者)として予防接種の徹底を呼び掛けている。
 WHOによると、1988年には感染者が推定35万人いたが、16年に感染が確認されたのは37人。17年もこれまでにパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアの3カ国の計12人という。
 ポリオは口から感染するポリオウイルスが神経を侵し、手足などがまひする病気で、5歳未満の乳幼児がかかることが多い。
 日本では60年に患者が5千人を超える流行があった。
 病原性を弱めたウイルスを使う生ワクチンの接種が広がったことで感染者が激減。14年には多くの感染者がいたインドを含む南東アジア地域で制圧が宣言された。
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子どもの風邪予防にはビタミン?サプリ?

2017-09-04 08:07:16 | 感染症
 子どもの風邪予防に関する記事を2つ紹介します。

 まずはビタミンD。
 残念ながら「無効」との評価。

■ 幼児へのビタミンDはかぜ予防に有用か?/JAMA
ケアネット:2017/07/31
 健康な1~5歳児に、毎日のビタミンDサプリメントを2,000IU投与しても、同400IUの投与と比較して、冬期の上気道感染症は減らないことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のMary Aglipay氏らによる無作為化試験の結果、示された。これまでの疫学的研究で、血清25-ヒドロキシビタミンDの低値とウイルス性上気道感染症の高リスクとの関連を支持するデータが示されていたが、冬期のビタミンD補給が小児のリスクを軽減するかについては明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は「ウイルス性上気道感染症予防を目的とした、小児における日常的な高用量ビタミンD補給は支持されない」とまとめている。JAMA誌2017年7月18日号掲載の報告。
冬期の最低4ヵ月間、高用量(2,000IU) vs.標準用量(400IU)投与で評価
 検討は、オンタリオ州トロント市(北緯43度に位置)で、複数のプライマリケアが参加する研究ネットワーク「TARGet Kids!」に登録された1~5歳児を対象とし、2011年9月13日~2015年6月30日に行われた。
 研究グループは参加児703例を、2,000IU/日のビタミンDサプリメントを受ける群(高用量群349例)または同400IU/日を受ける群(標準用量群354例)に無作為に割り付けて追跡した。サプリメントの投与は保護者の管理の下、登録(9~11月)からフォローアップ(翌年4~5月)の間、冬期(9月~翌年5月)の最低4ヵ月間に行われた。
 主要アウトカムは、冬期の間に、保護者によって採取された鼻腔用スワブ検体によりラボで確認されたウイルス性上気道感染症例とした。副次アウトカムは、インフルエンザ感染症、非インフルエンザ感染症、保護者報告による上気道疾患、初回上気道感染症までの期間、試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値であった。
上気道感染症発症に有意差なし、初回発症までの期間も有意差みられず
 無作為化を受けた703例(平均年齢2.7歳、男児57.7%)のうち、試験を完遂したのは699例(99.4%)であった。
 小児1例当たりに確認された上気道感染症の報告数は、高用量群1.05回(95%信頼区間[CI]:0.91~1.19)、標準用量群1.03回(同:0.90~1.16)で、両群間に統計的有意差はみられなかった(発症率比[RR]:0.97、95%CI:0.80~1.16)。
 初回上気道感染症までの期間についても、統計的有意差は示されなかった。具体的な同期間は、高用量群は3.95ヵ月(95%CI:3.02~5.95)、標準用量群3.29ヵ月(同:2.66~4.14)。また、保護者報告による上気道疾患についても有意差はなかった(高用量群625件 vs.標準用量群600件、発症RR:1.01、95%CI:0.88~1.16)。
 試験終了時の血清25-ヒドロキシビタミンD値は、高用量群48.7ng/mL(95%CI:46.9~50.5)、標準用量群は36.8ng/mL(同:35.4~38.2)であった。

<原著論文>
・Aglipay M, et al. JAMA. 2017;318:245-254.


 次にサプリ。
 最近話題のプロバイオティクスの効果は如何に?

■ プロバイオティクスのサプリ、保育園児の感染予防には効果なし?
HealthDay News:2017/07/26
 1歳前後の保育園児にプロバイオティクスのサプリメントを使用しても、風邪や感染性胃腸炎といった感染症を予防する効果は認められなかったとする研究結果が「Pediatrics」7月3日オンライン版に掲載された。
 この研究は、コペンハーゲン大学(デンマーク)栄養・運動・スポーツ学のRikke Pilmann Laursen氏らが実施したもの。同国の保育園に通う健康な生後8~14カ月の子ども290人を対象として、そのうち144人を6カ月間にわたって1日1回パウダー状のプロバイオティクスを食事や飲み物に混ぜて摂取してもらう群(プロバイオティクス群)に、146人をプラセボを混ぜて摂取してもらう群(プラセボ群)にランダムに割り付けた。
 その結果、保育園を休んだ日数や風邪の症状、下痢、発熱、嘔吐などの発生頻度がプロバイオティクス群で減少することはなく、プロバイオティクス群とプラセボ群との間に差は認められなかった。また、プロバイオティクス使用による副作用の報告もなかった。
 これまでに報告されている研究では、プロバイオティクスによる感染性胃腸炎の予防効果が示されているにもかかわらず、今回は同様の結果が得られなかった。この点について、同研究の論文に関する論評の著者の1人である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)小児科学のMichael Cabana氏は、「今回の研究の対象となった子どものほぼ半数で研究期間中も母乳育児が続けられており、全般的に健康状態が良好であったため、プロバイオティクスによる効果が現れにくかったのではないか」と考察。母乳に含まれるヒトミルクオリゴ糖は乳児の消化管に固有の細菌の成長を促進するため、母乳は腸内細菌の健康的なバランスを保つ最良の方法かもしれないとしている。
 また、今回の研究ではプロバイオティクスの副作用は認められず、安全であることは示されたが、同氏は「プロバイオティクスにはさまざまな製品があるため、もし試したいなら、まずは小児科医に相談し、適切な菌株を含み厳格な臨床試験で評価された製品を選ぶとよい」と助言している。

<原著論文>
・Laursen RP, et al. Pediatrics. 2017 Jul 3.


 プロバイオティクスも子どもの風邪予防に効果がなかったと。
 ただ、上記を読んでも「プロバイオティクス」の具体的内容が不明ですね。
 
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砂場の細菌汚染状態は「塩素消毒していないスイミングプール」のようなもの。

2017-07-30 08:09:51 | 感染症
 砂場に関しては、その功罪、メリットとデメリットがよく議論されます。。
 砂場は「塩素消毒市営ないスイミングプール」のようなもの、と表現したダークサイドの記事を紹介します。

 細菌検出の調査によるとクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)という菌が50%以上の砂場から検出されたとのこと。
 この細菌は偽膜性腸炎を引き起こすことで有名です。
 健康な腸では腸内細菌叢で守られていますが、抗菌薬使用中で腸内細菌叢が乱れた状態では感染症を引き起こす可能性があります。

 紹介論文では、砂場の厳重な管理が必要であることが述べられています。ペットは連れ込まず、掃除し、乾燥後に蓋をしておく・・・できるかなあ。

■ 公園の砂場は細菌の温床
提供元:HealthDay News、2017/07/25:ケアネット
 子どもが大好きな砂場遊びは、運動技能や社会的技能の発達にも役立つ。しかし、動物にトイレとして使われたり、複数の子どもが接触する場になったりすることで、砂場は細菌や寄生虫などの感染性の病原菌の温床となっている可能性があることが、「Zoonoses and Public Health」7月7日オンライン版に掲載の研究で明らかにされた。
 今回、マドリード・コンプルテンセ大学(スペイン)のJose Blanco氏らの調査で、52.5%の砂場からクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)という細菌が見つかった。C. difficile感染症の症状は軽度の下痢から命に関わる腸炎までさまざまだが、腸内環境も変えてしまうため治療が難しいことで知られる。
 Blanco氏らは、同国のマドリード地域にある子ども用の砂場20カ所とイヌ用の砂場20カ所から砂を採取し分析した。その結果、子ども用の砂場9カ所、イヌ用の砂場12カ所からC. difficileが検出され、その中には毒素を多く産生する型や抗菌薬に対する耐性を示す型も認められた。
 砂場に潜む病原菌はC. difficileだけではない。米疾病対策センター(CDC)によると、米国の調査ではトキソプラズマや回虫、ギョウ虫などの寄生虫が砂場にいることが示されている。イヌやネコに由来するトキソカラ(Toxocara)という回虫の感染症による失明は米国で年間約70症例にも達し、その多くは小児だという。
 Blanco氏は、「身の回りには多数の病原菌が存在しており、私たちはその中で生きていく方法を学ばなければならない。今回、C. difficileが環境中に広く存在していることが示されたが、地域社会における実態を明らかにするには追加の研究が必要だ」と話している。また、別の専門家は、砂場は“塩素消毒をしていないスイミングプールのようなもの”だと評している。
 米国小児科学会(AAP)は、砂場遊びで病気になることを防ぐための注意点を挙げている。

・砂場を使わないときは蓋をして、昆虫や動物を近づけない。
・砂が湿っていると細菌が繁殖しやすくなるため、乾燥させてから蓋をする。
・定期的に熊手を使い、破片や砂のかたまりなどの異物を取り除く。
・砂場をトイレと勘違いする可能性があるため、ペットには砂場で遊ばせない。

<原著論文>
・Orden C, et al. Zoonoses Public Health. 2017 Jul 7.


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