クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

日本文化のユニークさ18:縄文語の心

2011年01月05日 | 現代に生きる縄文
最近、日本人の自信や誇りを取り戻させるような内容の本の出版が相次いでいるような気がする。私がそういう内容の本に関心があるから気が付きやすいのかもしれないが、しかしこのような関心はもう数年も続いている。同じ関心で見ていても、この1・2ヵ月とくに多くなっているようだ。たとえば、

井沢元彦『人類を幸せにする国・日本(祥伝社新書218)』2010年10月30日
川口盛之助『世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」 (ソフトバンク新書)』2010年12月25日
増田悦佐『奇跡の日本史―「花づな列島」の恵みを言祝ぐ』2010年12月27日
竹田恒泰『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか (PHP新書)』2011年1月5日
 
さらに週刊朝日の新年合併号(1月7・14日号)が、「2011年は勝負の年! 勝てる国ニッッポン!」という特集を行っている。こういう出版の傾向は、元気のない日本にあって、悲観論が好きな日本人も、さすがに少しでも自信を取り戻したいという気持ちが働くようになったからなのか、あるいはこれまで意識的にも無意識的にも目をそらせてきた日本の長所に、しっかりと目を向けようという流れがようやく本格化しはじめたからなのか。後者であればよいと思うのだが。

上の本は、どれも近々取り上げることになると思うが、今日は最後の竹田氏の本を取り上げたい。(発行日は5日になっているが、実際には暮れから書店に並んでいた。)

日本文化のユニークさということで挙げた4項目のうち一番目は、

(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。

であった。縄文文化が日本人の心の基層に生き続けてきた理由については、これまでにもこれまでにも何回か触れてきた。

日本文化のユニークさ03:縄文文化の名残り
日本文化のユニークさ12:ケルト文化と縄文文化
日本文化のユニークさ17:現代人の中の縄文残滓
『「かわいい」論』、かわいいと平和の関係(3)

竹田氏は、上に紹介した本の中で「日本語は、原始日本人の価値観を詰め込んだタイムカプセルのようなもの」ではないかと指摘する。

日本列島に独自の特色が現れたのは、後期旧石器の地域性がみえはじめた3万年前ころだという。この頃から縄文時代早期にかけて、石器と土器に関しては人類最先端の技術をもつ地域になっていた。その日本列島で話されていた縄文語を元に、時代ごとに他地域から他の言語が流入し、現代日本語が形成された。朝鮮半島からの影響、漢語からの影響、そして江戸時代末期以降は欧米語の影響を受けつつ、日本列島の言語が形成されていったのだ。

大切なことは、日本列島が海に囲まれているため、大陸と違って、戦争により民族が言語とともに滅ぼされる経験がなかったことである。だからこそ日本語は、縄文時代、いやおそらくそれ以前からの古い要素を色濃く残している。これはもちろん、「日本文化のユニークさ(3):異民族による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験を持たなかった」という項目に対応する。そう考えると、これまで確認してきた「日本文化のユニークさ」四項目のすべてが、縄文語の継承という事実と多かれ少なかれ関係しているといえそうだ。

(1)狩猟・採集を基本とした縄文文化が、抹殺されずに日本人の心の基層として無自覚のうちにも生き続けている。

縄文時代以来の心性が、現代日本人の心に受け継がれているのは、その言葉が受け継がれたからである。太古の言葉が受け継がれるからこそ、太古の価値観が受け継がれるのである。言葉の継承なくして、古い価値観の継承もない

(2)ユーラシアの穀物・牧畜文化にたいして、日本は穀物・魚貝型とで言うべき文化を形成し、それが大陸とは違うユニークさを生み出した。

これは一見、縄文語の継承と関係が薄いかもしれないが、遊牧や牧畜文明の影響を受けなかったことが、それを基盤とした言語の影響も受けなかったということであり、縄文的(縄文語的)な自然崇拝の世界観が継続される大切な要素になっているのではないか。

(3)大陸から適度に離れた位置にある日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたず、また自文化が抹殺される体験ももたなかった。

これは上に触れたとおりである。民族とその文化の抹殺とは、文字通りその言語の抹殺でもある。大陸ではこれは往々にして見られることである。キリスト教の流入によってケルトの文化はほとんど抹殺され、ケルト由来の言葉は、地名などにわずかに残る程度に消滅してしまった。

(4)西欧の近代文明を大幅に受け入れて、非西欧社会で例外的に早く近代国家として発展しながら、西欧文明の根底にあるキリスト教は、ほとんど流入しなかったこと。

縄文時代(あるいはそれ以前)からの言葉と、それに伴う自然崇拝的な価値観とを継承してきたからこそ、遊牧・牧畜文明を基盤としたキリスト教は、日本では普及することができなかったのである。農耕文明以前からの言葉とその価値観を継承しながら、高度に発達した近代国家を形成したことが、日本文化のユニークさの大切な要素となっていることは間違いない。

そして、農耕文明以前の言葉と価値観を基盤として残しながら、中国や西欧の文明を自分の尺度に合わせて取り入れ続け、ごった煮状態にし、その混沌の中からハイブリッドなポップカルチャーを生み出し続けているのが、現代の日本なのだろう。ここに日本文化のユニークさと魅力の秘密が隠されているのだと思う。

《関連図書》
古代日本列島の謎 (講談社+α文庫)
縄文の思考 (ちくま新書)
人類は「宗教」に勝てるか―一神教文明の終焉 (NHKブックス)
山の霊力 (講談社選書メチエ)
日本人はなぜ日本を愛せないのか (新潮選書)
森林の思考・砂漠の思考 (NHKブックス 312)
母性社会日本の病理 (講談社+α文庫)
日本人とユダヤ人 (角川文庫ソフィア)
アーロン収容所 (中公文庫)
肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)
日本人の価値観―「生命本位」の再発見

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