今回は、昨日紹介した『世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」 (ソフトバンク新書)』の、このブログでの私のテーマにとって参考になるところを探ってみたい。
昨日次のように書いた。西欧近代に端を発する理性的な男性原理が作り出した代表格が現代の工業製品だが、日本はその工業製品で、西欧世界を一部追い抜いてしまった。にもかかわらず日本は、男性原理とは対極にあるカワイイ文化や、少女が大活躍するマンガ・アニメが大人気だ。
これは、私たちの「日本文化のユニークさ」四項目でいえば、(4)に対応する。
(4)西欧の近代文明を大幅に受け入れて、非西欧社会で例外的に早く近代国家として発展しながら、西欧文明の根底にあるキリスト教は、ほとんど流入しなかったこと。
近代化とは、西欧文明の背景にある一神教コスモロジーを受け入れ、男性原理システムの構築することであるはずだった。ところが日本は、最初に近代化に成功した重要な非西欧の国家でありながら、文明のいちばん深層の部分では西欧化しなかった国だ。一神教的な男性原理を、根底の部分では受け入れず、その社会・文化の中に縄文時代にまでさかのぼる日本独特の古い層を濃厚に残している。ここに日本文化のユニークさの大切な要素がある。次のエントリーは、そのへんを論じている。
クールジャパンの文明史的な意味(1)
クールジャパンの文明史的な意味(2)
日本文化のユニークさ13:マンガ・アニメと中空構造の日本文化
さて、日本の大衆文化は、日本が表面で受け入れた西欧的、近代的な理性や制度を気にせずに、自由に本音を語り、表現する。それが母性原理的なカワイイ文化や、完璧な正義のヒーローもいず、善悪を相対化させるマンガ・アニメの世界への発信となった。
こういう日本文化のユニークさが、もともと西欧で生まれたはずの工業製品の分野でも、現れはじめている。日本の工業製品にも、その日本のユニークさが反映され始めている。「何でもハイハイと従順に仕事をこなすはずだった家電品が、おきて破りのツンデレ対応をする」、「人見知りをしたり、はにかんだりと気まぐれなお嬢様チックな」受け答えをする。男性原理のを体現する工業製品が、日本ではみごとにオタク文化と融合していく。この本は、そのへんに着目し、その流れを拡大することに、日本の産業の未来があると考えているようだ。
しかし、本当に世界はそういう融合を求めているのだろうか。ひとつ面白かったのは、著者が中南米のトラックアート(デコトラ)を紹介している部分だ。中南米の装飾はキリスト教的な表現をとっているものの、底辺に流れるインディオのアニミズム的な魂が感じられるという。コテコテに飾り立てるデコトラ文化は西洋文化をもとに近代化した地域ではメジャーではなく、あっても移民などのエスニックグループに限られる場合が多いという。アメリカでも、ヒスパニック系や、カリビアン系、アフリカ系の中で花咲いているいう。表面はキリスト教化していても、魂の部分ではエスニックなものを忘れていない。どこかで日本人のアニミズム的心性と通ずるものがある。そこが面白い。
では、西欧文化圏ではどうなのか。私は、ハイテク製品とオタク文化がみごとに融合した例に、先に紹介した初音ミクがあると思う。(日本発ポップカルチャーの魅力02:初音ミク(続き))これは、マンガ・アニメが受け入れられた米国やヨーロッパでもかなり注目されている。動画もひとつ紹介しておこう。
Alice Live in HD (1080p 1920 x 1080)
ヴォーカロイドとCGの動画がみごとに融合したヴァーチャルアイドルは、画期的な成功例として急速に世界にひろがっていくような気がする。世界中から寄せられたコメントを読んでいるとそれがよくわかる。二つだけ紹介しよう。
「めちゃくちゃその国に行きたいと思わせるような国は、たぶん日本以外にない。それでも外国人が日本人になることは不可能だんだ。ただ、私たちが心の中で日本人であることを知るのにどんな正式の証明書もいらないんだ。」
これが上の動画を見てのコメントである。何とも涙ぐましいではないか。
「だれか俺に100万ドルくれないか。そうしたら俺は日本に旅立ち、女の子と結婚し、子どもを産み、木を植えて、一生のあいだミクの歌を聴き続けるんだ。」
ともあれ、工業製品やハイテク製品が、日本人の独特の心性と融合することによって未来が開けていくという一面は確かにあると思う。
昨日次のように書いた。西欧近代に端を発する理性的な男性原理が作り出した代表格が現代の工業製品だが、日本はその工業製品で、西欧世界を一部追い抜いてしまった。にもかかわらず日本は、男性原理とは対極にあるカワイイ文化や、少女が大活躍するマンガ・アニメが大人気だ。
これは、私たちの「日本文化のユニークさ」四項目でいえば、(4)に対応する。
(4)西欧の近代文明を大幅に受け入れて、非西欧社会で例外的に早く近代国家として発展しながら、西欧文明の根底にあるキリスト教は、ほとんど流入しなかったこと。
近代化とは、西欧文明の背景にある一神教コスモロジーを受け入れ、男性原理システムの構築することであるはずだった。ところが日本は、最初に近代化に成功した重要な非西欧の国家でありながら、文明のいちばん深層の部分では西欧化しなかった国だ。一神教的な男性原理を、根底の部分では受け入れず、その社会・文化の中に縄文時代にまでさかのぼる日本独特の古い層を濃厚に残している。ここに日本文化のユニークさの大切な要素がある。次のエントリーは、そのへんを論じている。
クールジャパンの文明史的な意味(1)
クールジャパンの文明史的な意味(2)
日本文化のユニークさ13:マンガ・アニメと中空構造の日本文化
さて、日本の大衆文化は、日本が表面で受け入れた西欧的、近代的な理性や制度を気にせずに、自由に本音を語り、表現する。それが母性原理的なカワイイ文化や、完璧な正義のヒーローもいず、善悪を相対化させるマンガ・アニメの世界への発信となった。
こういう日本文化のユニークさが、もともと西欧で生まれたはずの工業製品の分野でも、現れはじめている。日本の工業製品にも、その日本のユニークさが反映され始めている。「何でもハイハイと従順に仕事をこなすはずだった家電品が、おきて破りのツンデレ対応をする」、「人見知りをしたり、はにかんだりと気まぐれなお嬢様チックな」受け答えをする。男性原理のを体現する工業製品が、日本ではみごとにオタク文化と融合していく。この本は、そのへんに着目し、その流れを拡大することに、日本の産業の未来があると考えているようだ。
しかし、本当に世界はそういう融合を求めているのだろうか。ひとつ面白かったのは、著者が中南米のトラックアート(デコトラ)を紹介している部分だ。中南米の装飾はキリスト教的な表現をとっているものの、底辺に流れるインディオのアニミズム的な魂が感じられるという。コテコテに飾り立てるデコトラ文化は西洋文化をもとに近代化した地域ではメジャーではなく、あっても移民などのエスニックグループに限られる場合が多いという。アメリカでも、ヒスパニック系や、カリビアン系、アフリカ系の中で花咲いているいう。表面はキリスト教化していても、魂の部分ではエスニックなものを忘れていない。どこかで日本人のアニミズム的心性と通ずるものがある。そこが面白い。
では、西欧文化圏ではどうなのか。私は、ハイテク製品とオタク文化がみごとに融合した例に、先に紹介した初音ミクがあると思う。(日本発ポップカルチャーの魅力02:初音ミク(続き))これは、マンガ・アニメが受け入れられた米国やヨーロッパでもかなり注目されている。動画もひとつ紹介しておこう。
Alice Live in HD (1080p 1920 x 1080)
ヴォーカロイドとCGの動画がみごとに融合したヴァーチャルアイドルは、画期的な成功例として急速に世界にひろがっていくような気がする。世界中から寄せられたコメントを読んでいるとそれがよくわかる。二つだけ紹介しよう。
「めちゃくちゃその国に行きたいと思わせるような国は、たぶん日本以外にない。それでも外国人が日本人になることは不可能だんだ。ただ、私たちが心の中で日本人であることを知るのにどんな正式の証明書もいらないんだ。」
これが上の動画を見てのコメントである。何とも涙ぐましいではないか。
「だれか俺に100万ドルくれないか。そうしたら俺は日本に旅立ち、女の子と結婚し、子どもを産み、木を植えて、一生のあいだミクの歌を聴き続けるんだ。」
ともあれ、工業製品やハイテク製品が、日本人の独特の心性と融合することによって未来が開けていくという一面は確かにあると思う。
とても興味深いです。