マニー・パッキャオ VS アントニオ・マルガリート
パッキャオ 判定勝利で6階級制覇
考察 ~パッキャオ~
1~2ラウンドと様子見に費やしたが、それは相手の出方を伺うというよりも
自身の調子、仕上がりを確かめるためのように思えた。
コット戦、ハットン戦を初回のみで相手を見切ることに成功したのは
その時は自身の準備が整っていたからで、今回は報道にあったように
満足のいくキャンプは送れていなかったようだ。
また、マルケス戦で攻められた左ボディ、コット、クロッティにガードを破られた
アッパーカットの被弾など、課題は課題として浮き彫りになった形。
それでもスピード、パワー、スタミナ、当て勘、メンタル、作戦遂行能力の
いずれにおいても傑出したパフォーマンスを見せるのはconcentrationの為せる業。
右リードのフックそのものにガードを縫っていくキレがあり、
フォローの左はガードの上からでも響くだけの重みがあるが、
それらはパンチの初動を読ませない軌道とハンドスピードにある。
パンチの物理的な威力そのものは限界に来ているかもしれない。
しかしそのインパクト(=効果)は生きている。
モズリーは身長とリーチがあるのでマルガリートの正面から
先にパンチを打ち込めたが、パッキャオはどうやっても体格的なハンデがあるので
打ち始めのフェイント、ジャブ、踏み込みが必要で、
同時に打ち終わりのサイドないしはバックステップが欠かせなかった。
それが逆に相手に対しての一種の目くらましになり、
もともとのスピードも加えて目の前から消えたように感じるのだろう。
また体幹のわずかな体重移動とひねりで強いパンチが打てるので、
押し込まれても反撃が可能、4ラウンドに効かせたレバーブローがその好例である。
中盤以降はKOは時間の問題と感じられたが、レフェリーの判断、
相手の驚異的なタフネスと精神力、観客の温情、そして自身の躊躇から
KO勝利とはならなかった。
以前にバレラとのリマッチでもローチにKO指令を出されて
「彼はジェントルマンだから」と拒否したことがあったが、
この試合でも10ラウンド終わり際のカウンターの右フックに
耐えたマルガリートにその後は敬意を表したものと考える。
あれで倒れなければ一撃KOは不可能だ。
インタビューで"Boxing is not for, you know, killing each other."
「ボクシングは殺し合いじゃないんだからさ」と答えるのもむべなるかな。
考察 ~マルガリート~
初回のガードの位置、間合い、前進、プレッシャー、手数と
全てが固く控え目で遠かったことは、緊張感と作戦の両方から来るもの。
序盤の攻勢を許したのもある程度はゲームプランにしたがったものだったが、
4、5回に効かされた代償は大きく、また右目を潰されたのは痛手となった。
6ラウンドの左ボディ2発と8ラウンドのロープ際での攻勢に
かすかな期待を抱かせたものの、得意の相撃ちが満足に炸裂しなかった。
手探りのジャブを打っている時からスピード差は歴然で、
自分が打って相手を下がらせるよりも、自分から打たせて相手に
バックステップさせたところを追撃するのは良い作戦だと感じた。
コット戦ではジャブに対して相撃ちの右ボディを打つことで距離を詰めたので、
それを再現するかなと思ったからだ。
ただ、コットはサイドにせわしなく動きながら、つまり腰をあまり入れずに打ってきたのに対し、
パッキャオは正面から隙間を縫って打ってきた。
どちらに威力が乗る(≠威力がある)かは言わずもがな。
また先に打たせるという選択肢は正解だと言いたいが、
パッキャオのジャブが予想以上に少なく、強いリードをもらい続けることで
自身の距離が作れなかった。
プレッシャーをかけてロープを背負わせ、パッキャオが棒立ちになったところを
連打で弱らせ仕留めるプランを練り上げていたと思われるが、
あまりの的の速さに回を重ねるごとに打つ手がなくなり、
一瞬スイッチしてみせたが、即座に右をぶちこまれた。
9ラウンド以降は完全に手詰まりになり、遠近感もおかしく、
意識も朦朧とした状態でアゴをガードするしかなく、
力のないワン・ツーしか打てなかった。
左のフック、アッパーでは右を先にねじ込まれるだろうし、
ピーカブーで潜り込んでも右フックもしくは左アッパー被弾の危険性があった。
10ラウンドにはジャブからの右に決定的なカウンターの右フックを合わされたが、
なぜあれで立っていられたのだろうか?
またその後に自陣コーナーに帰る足取りの重たさにレフェリー、陣営は何を思ったのだろうか?
観衆は前座で打ち合いがなくなると容赦なくブーイングを飛ばしていたが、
12ラウンドにブーイングが発生しなかったのはメキシカンが多かったからではあるまい。
早い段階でボディを効かされたところは共通するが、
モズリー戦よりもダメージは甚大と見る。
なぜなら2ラウンド多く戦っているから(最終ラウンドは除外)。
またその試合では視界はふさがっていなかったが、
この試合ではほぼ右眼を潰されていたから。
またモズリー戦前はバンデージのスキャンダルを暴かれ動揺していたはずだし、
試合前からモチベーションが上がらず減量に苦しんだという話もあった。
今回は報酬、注目度、メキシコの報仇雪恨、自身の捲土重来と期するものが多く、
仕上がりは最高と聞いていた。
にもかかわらずの完敗。
試合後は病院に直行してCTを撮ったのだろう。
頭蓋への急性のダメージが懸念される。
またこれからの数日間は異状なくとも、今後30~60日の間は
慢性硬膜下血腫の存在を強く疑い、周辺の関係者は
マルガリートを注意深く観察しなければならない。
パッキャオ 判定勝利で6階級制覇
考察 ~パッキャオ~
1~2ラウンドと様子見に費やしたが、それは相手の出方を伺うというよりも
自身の調子、仕上がりを確かめるためのように思えた。
コット戦、ハットン戦を初回のみで相手を見切ることに成功したのは
その時は自身の準備が整っていたからで、今回は報道にあったように
満足のいくキャンプは送れていなかったようだ。
また、マルケス戦で攻められた左ボディ、コット、クロッティにガードを破られた
アッパーカットの被弾など、課題は課題として浮き彫りになった形。
それでもスピード、パワー、スタミナ、当て勘、メンタル、作戦遂行能力の
いずれにおいても傑出したパフォーマンスを見せるのはconcentrationの為せる業。
右リードのフックそのものにガードを縫っていくキレがあり、
フォローの左はガードの上からでも響くだけの重みがあるが、
それらはパンチの初動を読ませない軌道とハンドスピードにある。
パンチの物理的な威力そのものは限界に来ているかもしれない。
しかしそのインパクト(=効果)は生きている。
モズリーは身長とリーチがあるのでマルガリートの正面から
先にパンチを打ち込めたが、パッキャオはどうやっても体格的なハンデがあるので
打ち始めのフェイント、ジャブ、踏み込みが必要で、
同時に打ち終わりのサイドないしはバックステップが欠かせなかった。
それが逆に相手に対しての一種の目くらましになり、
もともとのスピードも加えて目の前から消えたように感じるのだろう。
また体幹のわずかな体重移動とひねりで強いパンチが打てるので、
押し込まれても反撃が可能、4ラウンドに効かせたレバーブローがその好例である。
中盤以降はKOは時間の問題と感じられたが、レフェリーの判断、
相手の驚異的なタフネスと精神力、観客の温情、そして自身の躊躇から
KO勝利とはならなかった。
以前にバレラとのリマッチでもローチにKO指令を出されて
「彼はジェントルマンだから」と拒否したことがあったが、
この試合でも10ラウンド終わり際のカウンターの右フックに
耐えたマルガリートにその後は敬意を表したものと考える。
あれで倒れなければ一撃KOは不可能だ。
インタビューで"Boxing is not for, you know, killing each other."
「ボクシングは殺し合いじゃないんだからさ」と答えるのもむべなるかな。
考察 ~マルガリート~
初回のガードの位置、間合い、前進、プレッシャー、手数と
全てが固く控え目で遠かったことは、緊張感と作戦の両方から来るもの。
序盤の攻勢を許したのもある程度はゲームプランにしたがったものだったが、
4、5回に効かされた代償は大きく、また右目を潰されたのは痛手となった。
6ラウンドの左ボディ2発と8ラウンドのロープ際での攻勢に
かすかな期待を抱かせたものの、得意の相撃ちが満足に炸裂しなかった。
手探りのジャブを打っている時からスピード差は歴然で、
自分が打って相手を下がらせるよりも、自分から打たせて相手に
バックステップさせたところを追撃するのは良い作戦だと感じた。
コット戦ではジャブに対して相撃ちの右ボディを打つことで距離を詰めたので、
それを再現するかなと思ったからだ。
ただ、コットはサイドにせわしなく動きながら、つまり腰をあまり入れずに打ってきたのに対し、
パッキャオは正面から隙間を縫って打ってきた。
どちらに威力が乗る(≠威力がある)かは言わずもがな。
また先に打たせるという選択肢は正解だと言いたいが、
パッキャオのジャブが予想以上に少なく、強いリードをもらい続けることで
自身の距離が作れなかった。
プレッシャーをかけてロープを背負わせ、パッキャオが棒立ちになったところを
連打で弱らせ仕留めるプランを練り上げていたと思われるが、
あまりの的の速さに回を重ねるごとに打つ手がなくなり、
一瞬スイッチしてみせたが、即座に右をぶちこまれた。
9ラウンド以降は完全に手詰まりになり、遠近感もおかしく、
意識も朦朧とした状態でアゴをガードするしかなく、
力のないワン・ツーしか打てなかった。
左のフック、アッパーでは右を先にねじ込まれるだろうし、
ピーカブーで潜り込んでも右フックもしくは左アッパー被弾の危険性があった。
10ラウンドにはジャブからの右に決定的なカウンターの右フックを合わされたが、
なぜあれで立っていられたのだろうか?
またその後に自陣コーナーに帰る足取りの重たさにレフェリー、陣営は何を思ったのだろうか?
観衆は前座で打ち合いがなくなると容赦なくブーイングを飛ばしていたが、
12ラウンドにブーイングが発生しなかったのはメキシカンが多かったからではあるまい。
早い段階でボディを効かされたところは共通するが、
モズリー戦よりもダメージは甚大と見る。
なぜなら2ラウンド多く戦っているから(最終ラウンドは除外)。
またその試合では視界はふさがっていなかったが、
この試合ではほぼ右眼を潰されていたから。
またモズリー戦前はバンデージのスキャンダルを暴かれ動揺していたはずだし、
試合前からモチベーションが上がらず減量に苦しんだという話もあった。
今回は報酬、注目度、メキシコの報仇雪恨、自身の捲土重来と期するものが多く、
仕上がりは最高と聞いていた。
にもかかわらずの完敗。
試合後は病院に直行してCTを撮ったのだろう。
頭蓋への急性のダメージが懸念される。
またこれからの数日間は異状なくとも、今後30~60日の間は
慢性硬膜下血腫の存在を強く疑い、周辺の関係者は
マルガリートを注意深く観察しなければならない。
それにしても、パッキャオというボクサーの試合予想をする過程で、過去の試合からの能力評価をして“こうなるのではないか”と一旦予想すると同時に、予想の根底となる過去の試合そのものが、そもそも、しかもいちいち常識の範囲を超えているので、自身の予想も整合と矛盾が同時に起こっているような、不思議な感覚を抱きながらのものになってしまいます。
今回の試合を見終わった後にしても、予想が当たったような、でも別角度からは、また心配を裏切ってくれたような、予想通りに吃驚といった感があります。
ホント、パッキャオって凄いッスね。
タイ人ボクサー以外で、地上波を使って放送されるのは、国内では彼だけだと思います。
普段はボクシングの話を全くしないタイの友人が、
「昨日はレフリーが11Rで止めるべきだよ。」
なんて話してくるんでビックリしましたww
今回の試合に言い知れぬ恐怖を感じていたパッキャオファンは多かったと思います。同じぐらいの数のファンが楽観的だったとも思いますが。一時期はミドル級でアブラハムと!なんてことを言う無責任(これはファンの性)な声も国内外でありましたが、私はそれはさすがに今でも反対です。
M-150さん - タイの政情は大丈夫なのでしょうか?私は海外には韓国、カナダ、アメリカにしか行ったことがないです。再来年にインドネシアに行く予定ですが、いつかタイにも行ってみたいですね。
タイの地上波でライブ中継とはタイのテレビ局は粋ですね。11ラウンドで止めるべきというのはレフェリーだけでなく、マルガリートコーナーの全ての人間に言えることだと思います。それにしても普段ボクシングに縁のない友人にそこまで言わせてしまうとは、パッキャオのインパクト恐るべし、ですね。
1年以内にパッキャオとメイウェザーの対戦が実現した場合、管理人氏はどちらが勝つと思われますか。
両者と対戦したマルケス、デラホーヤ、ハットンはメイウェザー有利とのコメントを出していたようですが(1,2年前の話ですが)。
本当にメイウェザーはパッキャオを捌くことができるのでしょうか。
kumaさん - ズバリお答えします。115-113でパッキャオの判定勝ちと予想します。メイウェザーはパッキャオを捌くでしょうが、確実にポイントを奪取できるほどのディフェンスや主導権支配は見せられないと考えます。
>メイウェザーはパッキャオを捌くでしょうが、確実にポイントを奪取できるほどのディフェンスや主導権支配は見せられないと考えます。
致命的なクリーンヒットは貰わないまでも、明確な決定打にも欠け、試合をコントロールしきれないままパッキャオの攻勢点がジャッジに評価されていく、といったイメージでよろしいのでしょうか。
モズリー戦のピンチでの対応も含めたメイウェザーの見事すぎる戦いぶりに脱帽したのですが、予想通りとはいえ現実にマルガリートを圧倒する様を目の当たりにしてしまうと、やはりパッキャオが押し切ってしまうのかな、と思ってしまいました。