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『龍馬伝』感想 〔by ラウド〕

2010-12-28 01:07:17 | History
またまたお久しぶりです。サインイン自体も一ヶ月ぶりくらいかもしれない。
来年は回数は少なくとも、もう少しコンスタントに更新していこうと思います。
気力の面できついのは来年も同じでしょうが…もうちょっと何とかしたい。



そしてこの『龍馬伝』の感想も、なんと4月以来。コンスタントに更新するはずがこのザマ。
それは僕のこの作品へ対するモチベーションの変化も影響しているのだが…。
今回はパートごとの感想を非常に簡単にだが述べていこうと思う。


二部:武市&以蔵シークエンスの長さ

土佐でのパートを描く前に、もっと龍馬の同志の動きを描いて欲しかった。
直接的に維新に関わってくるのは武市でも以蔵でもない。長州や薩摩や幕府の動きを単独で描いても良かったはず。
必要以上にここの部分が冗長過ぎ、無理矢理引き伸ばしているように感じてしまうのである。

賛否両論あった武田鉄矢の勝海舟だが、個人的には愛が伝わってきて嫌いではない。
特に登場回の龍馬への演説は素晴らしいの一言で、思わず落涙してしまうくらい魂がこもっていた。


三部~四部:スーパーヒーロー?坂本龍馬

残念ながら、結局このドラマの行方は危惧していた方向へとシフトしてしまった。
例えば、僕が坂本龍馬という人物の事を一切知らずにこのドラマを観ていたら、「とんでもない天才が日本にいたのか!」と諸手を挙げて龍馬を絶賛したに違いない。そして、事によっては「龍馬のような男が何故現代の日本にはいないのだ!」などと憤ったりもしていたかもしれない。
それくらい、このドラマの中の龍馬は凄すぎた。幕末を、その場その場の機転と閃きで思うがままに変えていく天才的なクリエイターであり、不世出の策士でもある。
勿論、それは否定しない。僕が生まれて初めて好きになった日本の偉人は坂本龍馬その人であり、その尊敬の念は今も全く変わっていない。グローバルな視点を持ち続けたこと、出来うる限り戦闘を回避しようとした事、身分の差を無くそうと低い出自から昇り龍のように活躍した事。こんな人物を好きでないわけがない。

ただ、やりすぎなのだ。主人公とはいえ、あまりにも周囲からの影響や尽力を無視しすぎなのだ。
友人Fから聞いた話だが、このドラマの龍馬を「詐欺師」と称した方がいらっしゃったらしい。残念ながら、そう言われても仕方がない面があるし、むしろこのドラマだけにおいてはその言葉に共感せざるを得ない。
龍馬は周旋家で、歴史的にも「薩長同盟と大政奉還の最後の仕上げを担当した」というのが定説となっている。つまりそういった派手な部分をまとめる才があった事は間違いが無いし、そういった人間に好かれる、信用されるという点で唯一無二の存在だった事に異論はないのだが、それにしても「土台」の部分をすっ飛ばし過ぎである。
だから、龍馬が突然閃いた事を次々に実現させたように見えてしまう。どのアイデアにも先人がいたはずなのに、龍馬が全て手綱を握っていたことになってしまっているのだ。これは少しまずい。「詐欺師」と評した人も、そういった点を気にしての発言だったのではなかろうか。
船中八策において、今までの仲間達からの影響を活かしたという感動的な逸話が披露されたが、申し訳ないが僕は「何を今更…」と醒めた目で見ていた。

Twitterにて、この点に関してやんわりと#ryomadenタグをつけて呟いた事がある。リプライは頂かなかったが、多くの人が僕の呟きに否定的な意見を述べていらっしゃったのがわかった。
それを要約すれば、「ドラマとして面白ければ問題ない」という事だった。
僕だって子供ではない、福山龍馬が目立たなければ大河ドラマとしてまずいのはわかるし、ドラマとしての完成度を重視するのは当然だと思っている。
だが、ドラマだからこそ言いたいのだ。福山雅治氏が演じていたのは、あの歴史上に残る偉人「坂本龍馬」ではなかったか?そこに「坂本龍馬」と名の付いた登場人物がいる限り、史実上の坂本龍馬と比較し照らし合わせてしまう、これは歴史好きでなくても止むを得ない事ではないだろうか。

最も割を食ったのが、上川隆也氏が熱演した中岡慎太郎であった事は間違いない。
お前がファンだから、出番が少なかったのが不満なのだろう?と言われるかもしれないが、坂本龍馬を主人公にしたドラマであそこまで中岡が絡んでこないのでは、当然不満しか残らない。
多くの視聴者にとって、このドラマにおける中岡は常に「わかってない人」(by yuz君)という印象しか残らなかったのではなかろうか。
制作者の方の話では、中岡を龍馬と意見の上で対立するライバルとして描きたかったらしい。別にそれは問題ないと思うのだが、どうも中岡の著書『時勢論』の一節「富国強兵と云ふものは、戦の一字にあり」にこだわりすぎてしまったように思える。
二言目には「武力倒幕、武力倒幕」。単なる好戦的な男にしか思われていないだろう。それに比べて、何と龍馬が開明的なことか。
ここで中岡の功績を挙げるのはあまりフェアではないのでそれはやめておくが、少なくともこのドラマにおいて中岡は薩長同盟にも薩土盟約にも大政奉還にも、全く関わっていない。断言してもいい、少なくとも中岡はこういった時代の大きな転換点において、龍馬を「凄い奴じゃ、龍馬は!」と讃え追随していたに過ぎない。
最近は研究が進んで、中岡の功績も再評価されつつある。少し期待していたのだが…。


総まとめ:幕末万歳


僕が大河ドラマを一年間欠かさず観たのは、『風林火山』以来だが、完成度であの作品に及んだとは思えない。
舞台が日本が近代国家として歩み始めようという未曾有のターニングポイントである幕末であり、その時代を類稀な先見性で一筋の流星の如く駆け抜けた坂本龍馬。どう描こうが面白くならないわけがないのである。
そういう点で、龍馬一人をスーパーヒーローにするのではなく、多くの志士達の才能の中で切磋琢磨していく姿を観たかったのだが、そういうドラマではなかったのが個人的には残念である。
龍馬の物語を、苦境に陥った現在の日本を活気付けるヒントにしたいのならば、一人のカリスマに引っ張られるよりも、もっと草莽崛起の精神を訴えた方が良かったと思う。
ドラマとしての完成度は、どう考えても『坂の上の雲』の方が上。こっちは観ている人は少ないようだけど…。

とはいえ、一年間とても楽しく観させてもらったのは事実。
上川慎太郎は勿論、伊勢谷晋作も素晴らしく、毎週日曜20:00から(録画や再放送を観る事も多かったけど)は幕末ワールドに浸らせてもらった事を感謝したい。
特に二部の途中までは本当に面白かった。スタッフ・キャストの皆さん、お疲れ様でした。

あと、もう戦国時代の大河ドラマは飽きた。再来年の平清盛に期待。
それよりも、『坂の上の雲』完結編が楽しみだけど。

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3 コメント

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Unknown (独眼竜)
2011-01-03 21:28:53
明けましておめでとうございます、独眼竜です。

ミカさんの龍馬伝の総評については楽しみにしておりましたが・・・ここまで私と同意見とは・・・。言いたいことが沢山あるので、読みづらいとは思いますがレスを二つにさせていただくことをご了承ください。

まずは悪い点ですが、やはり龍馬の人物像になってしまいますね。福山さんはとても気持ちの入った演技をしてくれたと思います。が、物語が進むにつれて超人的な扱いになっていくにつれてミカさん同様に醒めた目で見ていました。

確かに龍馬って一言で言えば凄い人物ですが、あそこまでではないだろうと。龍馬の偉業は、龍馬1人では出来ず、志士達(英雄割拠した時代なわけですし)が絡んだうえで成しえたという部分を描いて欲しかったです。あの描き方では幕末志士達の中でも圧倒的過ぎると感じました。

そして中岡先生・・・これも上川さんの演技はとても素晴らしかったです。今までの慎太郎像とはまた違った、それでいて慎太郎をイメージさせてくれるような演技でした。それだけに扱いがぞんざいだった事が残念でなりません。

ネット上ではありますが、もともとそんなに出す予定ではなかったという記事を目にしました。真偽は不明ですが扱いからすると本当かもと思ってしまいますね。中岡ファンよりはるかに多いであろう龍馬ファンに気を遣ったのか、あるいはアンチ中岡がスタッフにいたのか、いずれにしてもフェアな描き方ではないと感じました。
Unknown (独眼竜)
2011-01-03 21:31:25
続いて良い点を。内容そのもの以外から、まず音楽や映像美がとても良かったですね。音楽は物語にマッチしたものが多かったし、映像は新時代の大河を予感させるような美しさでした。

また、人物の描き方も総じて良かったと思います。一話限りの人物も丁寧に描いていたような印象を受けました。また俳優陣も魂を感じる演技をしてくれた方が非常に多くて良かったです。生瀬松陰や今井亀治郎等いまだに脳裏に焼きついている方々が多いこと多いこと。心からありがとうと言いたいですね。

とここまで良い点悪い点を述べてきましたが、一言で締めくくるとするならば「惜しい!」ですね。ここ数年ライトな大河で正直ややうんざりしてきた中で、久しぶりに見応えのある大河だったことについてはとても評価出来ますし、ミカさんが仰るとおり二部の中盤あたりまでは傑作と呼んでいい位の出来だったと思います。

だからこそ悪い点が非常に残念に思えるんですよね。もうちょっと幕末を俯瞰的に描けていれば「風林火山」に匹敵する傑作に成りえていただろうと考えると本当に「惜しい」です。今年は私も期待はしておりませんので、来年の清盛に期待したいですね。

あ、話はやや変わりまして、大晦日に龍馬暗殺の黒幕についてBSジャパンで放送されてました。ざっくりと言うと黒幕が英国(フリーメイソン)で実行犯が中岡だそうです。冷静に分析してみると突っ込み所満載で笑えてきました。またの機会に詳しく語りましょう!

てなわけで今年もちょくちょく遊びに来ますので、よろしくお願いします!!
Unknown (ミカ)
2011-01-05 17:52:37
>>独眼竜さん
早速熱いコメントありがとうございます。

独眼竜さんと同意見でホッとしました。今回は改めて世間の評価と自分の考えの違いに戸惑う大河ドラマとなりました、
こうして龍馬が神格化されていくという現状は、龍馬自身も望んでいないのではないでしょうか。
中岡は上川さんが名演技を見せていただけに本当に残念です。上川さん主演で『慎太郎伝』をやってくれないでしょうか。
しかしまた中岡実行犯説ですか。どうもこの大河の流れからも意図的なものを感じますねw

僕も音楽や人物の描き方、俳優陣の演技は素晴らしかったと思います。ただ、主人公への過剰な愛がこのドラマの詰めを甘くしてしまった。本当に惜しいです。

昨年は後半『龍馬伝』のように息切れしてしまいましたが、今年はもっとちゃんと更新していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

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