シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ALI アリ

2014-02-25 | シネマ あ行

「蝶のように舞い、蜂のように刺す」この言葉は父親から教わった。ワタクシが物心ついた時には、モハメドアリウィルスミスという人はすでに第一線にはいなかったから、父親からすごいボクサーだったんだと聞かされたのが初めてアリを知ったときだと思う。

ウィルスミスは筋肉質ではあるけど、華奢でどちらかと言えばいわゆる「細マッチョ」に近い体型のイメージだった。顔が小さくてスラリとしている。そんな彼が1年かけて体重を20キロも増やし、大きなヘヴィ級チャンピオンに変身した。CGか?と思ってしまうほどの変わりようだ。服を着ていれば何とでもごまかしが効くと思うけど、ほぼ裸で戦うボクサーという役どころ。あの筋肉は、体型の変化は本物なんだーと心底驚いた。彼の変身ぶりを見るだけでも価値はあると思います。

本名カシアスクレイ。親からもらった名前は奴隷が雇い主からもらった名前だとブラックムスリムの指導者から「モハメドアリ」という名前をもらい改名。父親ジャンカルロエスポジートは親からもらった名前をと嘆くがアリは聞く耳をもたない。

彼は対戦相手との試合前の会見のとき、軽快に口からぽんぽんと飛び出す韻を踏む言葉で相手を挑発する。今で言う「ラップ」のような表現で彼の口は止まらない。あれだけ韻を踏む言葉が次々に飛び出すのだから頭の回転が早い人なんだろうなー。格闘技の選手が相手を挑発するのは自分への発奮と観客やメディアへのサービスもあるのだろうとは思うのだけど、それでもワタクシはあんまり好きじゃないんですよねー。なんかカッコ悪く思えてしまって。でも、あれがアリのスタイルだったようです。

アリがブラックムスリムに入ったのはマルコムXマリオヴァンピーブルズの影響だったらしいのですが、それについてはあまり映画では詳しく語られていなくて残念でした。その辺をもっと見たかったな。最終的にブラックムスリムに引き裂かれてしまうアリとマルコムXの姿のシーンはありました。

アリは兵役を拒否したのが印象的でした。「ベトナム人は俺のことを“ニガー”とは呼ばない」と言っていましたね。黒人差別にも声を挙げて戦ったアリらしい発言でした。兵役を拒否するというのは愛国者的なことが大好きなアメリカ人からすれば、とんでもない行動だったし、当然法律違反で裁判にかけられてしまう。最終的には数年の裁判で無罪を勝ち取るんだけど、その間にチャンピオンの称号やボクサーの資格などははく奪されてしまってパスポートも取れないから海外での試合もできなかった。アリほどの人なら戦地に行くことなく形式的な兵役だけで済んだ可能性が高かったみたいなんだけど、それでもアリは自分の信念に基づいて拒否したというのがすごいですね。

やっと無罪になってアフリカで試合をすることになったときのアフリカの人たちの歓迎っぷりがすごかったですね。例の「アリ、ボンバイエ!」っていう掛け声を共にファンたちと町を行くアリの姿がとても象徴的でしたが、ちょっとこのシーンは長すぎたね。

一方で3回の結婚についても語られていて、最初の奥さんジェイダピンケットスミスは奥さんの勝手で出て行ったから良いとしても、2番目の奥さんベリンダノーナM.ゲイは不遇な時代を支えてくれたのに、アフリカに遠征している間にうまく行かなくなっちゃってその場で3番目の奥さんベロニカマイケルミシェルに乗り換えたのはちょっとおいおいって感じだった。

そのアフリカでの試合で前半はずっとロープによりかかって相手に打たれっぱなしだったから、あれ?負けちゃうの?と思ったんだけど、あれは彼の作戦だったんだね。

ここまでの人生を紹介して157分かかっているから、これで終わりなのは仕方なかったのかもしれないけど、もう少し端折れるところを端折って、後年アトランタオリンピックの開会式で聖火の点火に登場したときのエピソードなどの再現があっても良かったかなぁという気はします。

彼の取り巻きの人間関係とかちょっと下調べしてから見たほうが良い部分はあるかもしれませんが、モハメドアリという人を全然知らない世代も彼を知る良い機会になる作品だと思います。



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