シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ウォリスとエドワード~英国王冠をかけた恋

2012-11-09 | シネマ あ行

主題歌がゴールデングローブ賞歌曲賞を受賞し、アカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされたマドンナ監督第2作目。マドンナファンとしてはもちろん見に行くつもりではありましたが、最近の彼女のアルバムの出来とか、がんばって若作りしてる姿を見てちょっとファンとしてはガッカリすることが多かっただけに、もしまたガッカリだったらイヤだなぁと思っていました。

冒頭、1930年代の話だと思っていたら現代のニューヨークの女性ウォリーアビーコーニッシュが映し出される。ん?この人は子孫かなんか?と思っているといきなり香港でのシーンに変わる。さっきとは違う女性ウォリスアンドレアライズブローが夫にDVを受けお腹の赤ちゃんを流産する様子。そしてまた現代へ。さっきの女性が産婦人科で不妊治療の相談をしている。この一連の行ったり来たりがとても分かりにくい。混乱するが、少し落ち着いて見ているとだんだんと事情が呑み込めてくる。

現代のニューヨーク。ウォリーは有名な分析医リチャードコイルと結婚し、周囲からは何不自由のない幸せな生活だと思われているが、実際にはセックスレスで夫は子供を望まず、仕事にかこつけて家に帰ってこない。夫の希望でサザビーズを退職したものの、仕事に未練が募り、近々行われる王冠をかけた恋の二人ウォリスとエドワードジェームズダーシーの遺品のオークションに合わせた展示会に足繁く通う。毎日、彼らの遺品を見つめつつ物思いにふけるウォリーを警備員のエフゲニオスカーアイザックは気に掛けるようになる。

この現代のウォリーがウォリスとエドワードの遺品を見ながら空想にふける場面に登場するのが本物のウォリスとエドワードというわけで、映画は現代と過去を行ったり来たりを繰り返す。ウォリスとエドワードの時代は、英国王室が舞台とあって衣装や装飾品が豪華で、見ていて飽きません。ウォリスのメイクやファッションが一時期マドンナがよくしていたなぁという感じで、マドンナファンなら彼女のテイストをすごく感じるのではないでしょうか。

“英国王冠をかけた世紀の恋”ということで、一人の女性のために王位を捨てたエドワードには常にスポットが当たるけど、ではウォリスはそのために何を捨てたのか?という視点は興味深いものだと思う。確かに彼女はエドワードが王位を捨てたせいで悪女のレッテルを貼られ、たくさんの人々の憎しみを買ったが、実際彼女だってもう普通の生活には戻れなくなったわけで、好きな男性と結ばれるという当然の行為が、世界中に敵を作る結果となってしまったというのはある意味では悲劇的なことだろう。

ウォリスに関しては、彼女を良く思わない人がたくさんいるためか良いウワサは残っていないので、この作品の彼女は相当美化されていると思う人もいるのかもしれない。実際のところはどうだったのか本当のことは分からないけれど、ワタクシたちが目撃するのは祖母、母、娘と3代でこの世紀の恋に憧れを抱いているウォリーが空想するウォリスの姿であるから、多少美化されているのもアリなのかなと思ったりもする。

現代のウォリーがウォリスの物語に刺激されて、実際の生活で夫を捨ててエフゲニのもとへ行く過程もじっくりと描かれていて、ウォリーを演じるアビーコーニッシュとエフゲニを演じるオスカーアイザックが美しく繊細でとても素敵だった。

ここで描かれるウォリーはなかなかに男勝りというか、結構強そうな女性である反面、やはり世間からの批判に苦しむ面も描かれている。晩年病の床に臥せるエドワードに「踊ってくれ」とリクエストされて彼のためだけに踊るウォリスがすごくカッコ良かった。

原題は「W.E.」で、もちろんウォリスとエドワードの頭文字を合わせたものなんだけど、彼ら自身も自分たちのことを二人合わせて「W.E.」と書いて「ウィー」と発音していたようで、昨今ブランジェリーナとかトムキャットとかカップルの名前を合わせて呼ぶのが流行っているのを思い出しました。劇中、ウォリスが鏡に口紅で「W.E.」と書くシーンがあって、どうしてその文字をそのまま映画のロゴにしなかったんだろう。もったいないなと思いました。日本語題は「ウォリスとエドワード」になってしまってますが、この「W.E.」は現代のウォリーとエフゲニの「W.E.」でもあるわけですから、このまま残してくれたほうが良かったんじゃないかと思いました。どうせ副題つけるんだしね。それにしても、日本の配給会社って副題つけるのが好きですね。題名である程度説明できないと見に行く人が少ないのかな。

アメリカでの上映館数がたった20館ばかしで、興行成績も大コケとしか言いようのない数字なんだけど、そんなにひどい映画かなぁ?ワタクシはマドンナファンということを差っ引いても美しい作品だと思いました。好き嫌いはあると思うけど、メロドラマチックで衣装や撮影の仕方など美しい映画だと思います。逆にマドンナが嫌いな人も先入観抜きで見てほしいです。



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2 コメント

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はじめまして。 (rose_chocolat)
2012-11-23 09:15:20
こんにちは。辿ってまいりました。

確かにウォリスは当時は悪くしか言われなかったでしょうね。
それでも時が流れるにつれて夫人が再評価されたり、興味を持って共感する人たちも増えてきたんだろうと思います。当時とは価値観も変わりましたしね。

>現代のウォリーとエフゲニの「W.E.」
私もそこはいいなと思いました。アビーとオスカーのカップル、とても素敵でしたね。

>日本の配給会社って副題つけるのが好き
「~~の恋」とかっていらないですよね。 (苦笑)
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rose chocolatさま (coky)
2012-12-01 11:40:07
コメントありがとうございます。

マドンナの彼女への思い入れが見てとれる作品でしたね。

ワタクシは個人的に現代の二人のほうが好きでした。

副題が白々しくて笑っちゃうことありますよね。
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