シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

レイチェルの結婚

2009-05-14 | シネマ ら行

普通の高校生が突然一国のお姫様になったり、ダサいジャーナリスト志望の女の子が華やかなファッションの世界で変身したり。そんなアイドル女優としては王道の作品がお似合いだと思っていたアンハサウェイがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたっていうから、ちょっとビックリしたんだけど、考えてみたら「ブロークバックマウンテン」のときにただのお嬢様女優じゃないわよ、私。ってとこ見せていたなぁと。それなら、と、見に行く気になったこの作品。

確かにアンハサウェイの演技は素晴らしかった。麻薬から立ち直ろうとしているキム。更生施設から一時外出で、姉レイチェルローズマリーデウィットの結婚式のために実家に帰る。キムは気が強く思ったことをバンバン言うタイプの娘のようだけど、その心の底では家族の愛情を渇望していることがアンハサウェイの演技からよく分かる。彼女がどうしてこんなふうになってしまったのか、映画の導入部ではそのことに興味が湧き、これからの物語の展開が楽しみになる。

のだが、、、

「過去と向き合う家族像」というのは、映画の展開としては何もめずらしくもなんともない。それでもやっぱり感動しちゃうのは、そこに多かれ少なかれ観客が自分と重ねてしまうような物語があるからだと思うのだけど、こんなにも物語が語られない映画だったら、自分と重ねるもなにも、観客はすっかり肩透かしをくらった形になってしまうというものだ。

キムと姉はよく口論し、お父さんビルアーウィンはそれにオロオロ。離婚した母親デボラウィンガーが結婚式のために登場したことで、なにか展開があるのかと思いきや、このお母さんまでもが過去とは向き合わず、キムがこうなったのも、当然と言えば当然と思っていると、なんだ、キムってば、その事件の前からジャンキーだったんじゃん。なんじゃそら?これで一気にキムにも同情心が沸かなくなってしまい、結局誰にも感情移入できないまま、レイチェルの結婚式の様子がホームビデオでも見せられるかのように延々と続く。レイチェルの結婚式のダンスシーンなんかに時間を割いてるヒマがあったら、もっと語るべきことがあるでしょう?と言いたくなってしまう。お父さんやレイチェルの夫になるシドニートゥンデアデビンベが、音楽関係者ということで、劇中に素晴らしい音楽が流れるんだけど、そんなの実際の物語が素晴らしくなければ、余計なものにしかなりえない。

結局のところ、この家族は誰もまともに相手に向き合わないのね。まぁ考えようによっちゃそれはリアルって言えばリアルなのかもしれないんだけどさ。本物の家族ってそんなに真剣に問題に向き合わないまま生活しちゃったりするもんだし。でも、そんなもん映画でわざわざ見たくないというか、それ見せられてもなぁって感じだね。みんな別に悪い人じゃないんだけどさ、まぁお姉ちゃんもこの家族の中では「子供」の位置づけだからあれでも仕方ないにしても、お母さんがあれじゃ、キムはあの家族から思い切って離れたほうが幸せになれるかもね…

そんな物語でもアンハサウェイの演技は見るに値すると思うので、彼女のおかげで少しは救われたということかな。

オマケお姉ちゃんレイチェルを演じていたローズマリーデウィットがあまりにもデボラウィンガーに似ているので、なにか遠縁にあたる人?と思ってプロフィールを見ると、デボラウィンガーとはまったく何の関係もなくて、なんとあの「シンデレラマン」のジムブラドックがおじいさんというから驚いた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿