シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

アラビアのロレンス

2006-11-02 | シネマ あ行
第一次世界大戦下、ドイツ軍が同盟を組むトルコ軍に攻められていたアラビア。イギリスはアラブを援助するためにロレンス少佐を砂漠へと送り込む。

物語前半のロレンスがアラブの部族たちと出会い、彼らを打倒トルコという同じ目的に向かわせるために部族の長を味方につけていく様子がとても気持ちいい。ロレンスは頭はいいが、無鉄砲な男。イギリス軍ではもてあましていただろうが、砂漠ではそんな無鉄砲さと明晰さがアラブの人たちを惹きつけ、よそ者であるロレンスについて来させた。

どうしても砂漠の美しさとか広大さ、厳しさ、そして戦闘の激しさなどが取り上げられがちだし、当時の人々にとってはオドロキの映像だったとは思うが、ロレンスは人を殺すということを“楽しんだ”自分に対して苦悩し、アラブとトルコを利用しての大国同士の争いに心を痛めていたという部分にもきちんと焦点があてられている作品である。

ロレンスが実際にどのような外見だったのか知らないのだけど、ロレンス演じるピーターオトールは美しいブロンドヘアーにこれまたものすごく美しいブルーアイズ。絵に書いたような白人青年であり、アラブ人の特徴とは対極にあるその姿は、この物語を象徴していると言えるだろう。

初めにロレンスについていくことを決め、最後までともにいたハリト族の族長オマーシャリフは、常に冷静でロレンスとは違う人間的な魅力を持った人で、ワタクシはロレンスよりもこのハリト族の族長が登場人物の中では一番好きだ。彼は誇り高きアラブ人であり、ロレンスの誠実な親友でもあった。ときに反発しあう二人だったが、心の底から信頼していた者同士だったと思う。

次にロレンスと合流するハウェイタット族の族長アンソニークインは豪快な男で、ハリト族の族長とはほぼ正反対のような性格だった。気のいい男ではあるが、敵を倒した後の略奪行為などをやめてはくれなかった。ロレンスも「郷に入れば、郷に従え」でそういうことは必要悪だと感じていたようだったが。

結局のところ、トルコを倒してもアラブの部族間の争いは絶えず、ロレンスも自分がアラブ人にはなりきれないことに失望し、そして、彼を利用しつくしたイギリス軍も彼に世話になったはずのアラビアの王子アレックギネスも最後には、「両方にとってやっかい者」とまで言うようになる。ロレンスが夢見ていたものとは何だったのか。あれだけ無鉄砲に砂漠での戦を勝利に導いてきた雄も最終的には国同士の思惑に飲み込まれてしまった。いつの時代の戦争もやはり変わらない不毛さがそこにある。双方からやっかい者扱いされて本国に送還になったロレンスを直接の上官だけが目に涙を浮かべて見送る。印象的なシーンだった。


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2 コメント

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こんにちは (マーク・レスター)
2008-10-22 23:22:44
興味深く拝見致しました。

ボクも今作のレビューを書いておりますので、なにとぞ、トラックバックをさせてください。よろしくお願い致します。
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マーク・レスターさま (coky)
2008-10-23 09:18:52
はじめまして。
マーク・レスターさまの書かれた記事、読ませていただきました。映画的なものの分析が細かくされていて、ワタクシには到底できない作業だと感じました。

トラックバック、ありがとうございます。ワタクシもさせていただきます。これからも、気軽にトラックバックしてくださいませ
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