WEHOでは、ジャドソンの友達カップル、ビルとマイケルの自宅を訪問。このあたりはそれぞれのアパートにきれいな中庭が作られていて、これまた地中海風な作り。

ビルとマイケルの自宅に入ると、毛むくじゃらの小型犬が猛烈に出迎えてくれた。ビルはUCLAの映画学科を卒業後、転向して現在は心理セラピスト。一方のマイケルは、ヘア・スタイリストの職に就きながら、作曲など音楽業界での成功を狙っている。この二人、つきあって7、8年になるのだとか。
ビルとマイケルのアパートでくつろいだ後、僕らはWEHOの街に繰り出した。まず、ハッピーアワーでドリンクが半額なうえに、上半身裸のウェイターがサービスしてくれるというバーへ。確かに上半身裸のウェイターがサービスしてくれたけど、少し肩透かし。
テレビで見聞きするLAって、もっと身体を鍛え上げたモデル張りのゴージャス系が幅をきかせているのかと思いきや、意外と普通の人たちばかりだった。マンハッタンの方が、完璧なまでに身体を鍛え上げて、顔もchiseledなモデルたちが、夜のバイトでバーテンダー業をしているケースが多いのかな?
マンハッタンでそうしたChelseaタイプを見慣れた僕にとって、WEHOは意外なまでに飾り気がなく、肩肘張った感じのない敷居の低い印象を受けた。WEHOの大通りを歩くゲイたちも、確かに身体は鍛え上げているけど、40代後半っていう感じのカップルが多かったり、普通に肥満の人とかがビールを飲んでいたり、はたまた、ブロンドの女性たちが集団で飲んでいたり・・・。
それに、もっとアジア人が多いのかと思いきや、それほどでもない。サンフランシスコ並みにアジア人比率があるのかと勝手に想像していたけど、WEHOってとても白人比率が高い。それに東海岸の都市部に比べて(少なくとも、今回僕が連れて行かれた場所では)黒人比率がとても少ない。これまでの想像とは違うLAって感じ。
最初のバーで、フローズン・マルガリータを飲んでいたとき、グリーンのポロシャツにカーゴ・ショーツ姿の僕を見て、ビルは、「プレッピー・ファッションってまた人気が戻りつつあるよね」と、一応、褒め言葉(?)をかけてくれた。だけど、周りを見ると、アロハシャツやサンダルなど、ビーチ・カルチャーをそのままにしたファッションの人たちがほとんど。東海岸のゲイ・バーではちょっと見かけないお気楽ファッション。
そんな中で、プレッピー・ファッションの僕は、確かに少し浮いていたかも。でも、東海岸ではプレッピーないでたちが一種のメイン・ストリーム。ここでも東海岸と西海岸のカルチャー・ギャップを感じた。僕ってやっぱり東海岸の人間なんだぁって、こんなところで妙に自分のアイデンティティを認識してみたりして。
ビルに話しかけられたのをきっかけに、僕はWEHOの印象を話してみた。
「なんか、思ったよりアジア人が少ないね」と、僕。
「そうかなぁ。でもね、今、WEHOではね、アジア人のボーイフレンドを持つのがブームになってきれるんだよ」とビル。それを聞いたとき、え、マジで?と僕の目は一瞬大きく開かれたけど、周りを見回してみてもアジア人と白人カップルなんていない。たまに道を通り過ぎていく人たちの中に見かけたけど、中年おじさんとアジア人っていういわゆる「お決まり」のパターンだけ。ビルが言ってくれたことは僕を一瞬喜ばせたけど、周りを見回してそれが空喜びだと気づくのにそう時間はかからなかった。
この晩、4人で食事をしたのはこのレストラン。
Café D’Etouile
8941 1/2 Santa Monica Blvd.
West Hollywood, CA 90069
TEL: (310) 278-1011
detoile@sbcglobal.net
僕とジャドソンはグリルされたダックの乗ったサラダを、ビルはサーモン、そしてマイケルはリブ・アイ・ステーキを注文。10ドル前後というとてもお手軽な値段で、しかも美味しいレストランでした。もちろん、お客さんはゲイばかり。ウェイターも若くてハンサムな青年が親切に接客してくれた。ちょっと狭くて、内装は壁一面が鏡張りってところがラブホテルっぽかったけど、総合評価ではオススメ。
ビル、マイケル、ジャドソン、そして僕の4人は、尽きることのない会話を楽しんだ。Getty Villaにまだ行ったことのないビルとマイケルに今日の感想を話したり、逆に、ビルとマイケルが行ったというゲイ・クルーズの話を聞いたり。それに、ビルは心理セラピストをしているので、他人の問題に関して話題が尽きない。LA在住のある日本人女性アーティストがビルのクライアントの一人らしいのだけど、最近、彼女から、「女性に興味があるんだけど・・・」という告白を受けたなんていう話を聞いたり。
話が映画のことになり、僕が「うちの近所で映画の撮影が行われていて、ウッディ・ハレルソンと写真を撮ったんだよ!」と言うと、
「ウッディー!いい役者だよねぇ。それに僕のタイプ。そうそう、昔ね、道に迷って通行人に尋ねたら、それがウッディ・ハレルソンだったんだよ」とビル。
その後、場所を移してゲイ・バーへ。皆が口をそろえてオススメするというバー、 The Abbey へ徒歩で移動。

もともと、コーヒーショップだったのを大改装して、今じゃ巨大なバー&レストラン。入店のとき、ビルとマイケルはそのまま素通りで入れたのに、僕とジャドソンは、「IDを見せて」とバウンサーに呼び止められてしまった。それぞれポケットからドライバーズ・ライセンスを見せる僕たち。僕には無言だったのに、ジャドソンにIDを返すとき、
「I’m impressed!」とバウンサーのお兄さんが一言。ジャドソンが実年齢よりもずっと若く見えたということなんだけど、裏を返すと、見ため以上に相当年取ってるってことでもある。
「impressedだってさ」と僕が念押しすると、
「I’m flattered」とクールに受け止めるジャドソン。
先に入っていたビルとマイケルを追いかけて店内に進む僕ら。店の奥には、有料で予約が必要というプライベート・ボックスなんかもあってモダンな内装。LAで、初めて人がごった返すっていう体験をした。ゲイ・バーは、やっぱりこれくらい足場もないほど込み合うっていうんじゃないと雰囲気が出ない。若い女性のグループも多く見かけたし、とにかく賑やかで多様な客層。アジア人もちらほらいた。
ビルとマイケルはトイレへ行くというので、僕は店内の中央で突っ立っていた。すると、ジャドソンが僕の手をそっと握って自分の方に引き寄せてくる。振り返ると、僕の後ろに立っていた男性と僕の目が合う――
ビルとマイケルと合流してアップル・マルティーニを注文。そして店内を一周した後、屋外に出た。星空の下で満員電車に乗っているような状態で、僕らはまた会話の続きを始めた。僕が主に話しをしたのはビル。
「ゲイ・ゲームズがあったよね」とビル。
「そうだね。僕も水球チームに参加していて行くつもりだったんだけど、やめたんだ」
「えぇ、なんで?」と聞いてくるビル。
初対面の人にどこまで話すべきか迷ったけど、旅の恥はかき捨て?っていう気持ちもあったし、相手はセラピストだし、、、夕食前に飲んだフローズン・マルガリータ2杯と、今飲んでいるアップル・マルティーニも手伝って、僕はジミーのことを話し始めた。
「実はね、水球チームでつきあってた人がいたんだけど、別れたんだ。だからもうそのときは水球にも戻りたくないし、誰にも会いたくないっていう気持ちになって、、、」
「わかるよその気持ち」と、セラピストならではの巧みな返事。しかも、要所要所で、「Why?」と核心を突く質問をしてくる。
「なぜ、別れることになったの?」とビル。それに対して、ジミーが誕生日前夜に発言したオープンな関係について説明した。
「なるほど。彼、そのジミーって人は、常に自分の価値を他人に確かめてもらわないと不安になる人なんだね。例えばジムで身体を鍛えるとするじゃない。するとバーとかに行ってみんなの視線を集めるよね。すると、人は、自分が魅力的だってことを確認できて安心するんだよ。セックスも一緒。他人から求められると断れないっていうのや、見知らぬ人とセックスを繰り返すっていうのも、自分の価値を確認する行為の一つなんだ」
セラピストならではのスムーズな説明。セックス依存症も、自分の価値を常に確認することが必要な人が陥る病なのかもしれないなと思った。
「でも、また何があるかわからないじゃない?」とビル。
「え?どういうこと?」
「僕とマイケルも何回かbreak-upしてるんだ。だけどまたこうして一緒に暮らしてるし。ジミーともまた関係が戻るかもしれないじゃない」
「多分、それはない・・・」と僕。
WEHOで夜空の下、遠くの山並みに稲妻の閃光を見ながら、セラピストのビルとこんな深いお話をして夜はふけていった――
* * *
WEHOからの帰り道、車の中で、突然ジャドソンが僕に質問してきた。
「今までに男性からお金もらったことある?」
なにゆえにこんな質問をしてくるのか判らなかったけど、とっさに、
「ないよそんなの」と僕。逆にジャドソンにも同じ質問をしてみたけど、Noの回答。今にして思うと、「逆にお金を払ったことある?」って聞いたほうが核心をついていたかもしれない。だけど、過去に、フランス人のお医者さんミッシェルとつきあってたころ、かなり色々なものをもらったことはある。旅行にも連れて行ってもらったし・・・。
「お金はもらったことないけど、物はもらったことあるよ。フランス人のお医者さんから」と僕。ビルと本音トークをしてスッキリしていたことや、かなり酔いも回って眠気に襲われていた僕は、特に深く考えることもなく、素直にジャドソンにも過去の遍歴を話した。ジャドソンも、興味津々に色々な質問をしてきた。
「今でも連絡とってるの?そのフランス人のお医者さんとは」
「たまにメールを出すけど、最近、返事がないんだ。当時ね、フランスに引っ越しておいでとか言われたんだけどね。確か、その後、韓国系日本人の恋人ができたって聞いたよ」
「へぇ。連絡が途絶えたっていうのは残念だね」とジャドソン。そのままジャドソンの遍歴についても聞こうかと思ったけど思いとどまった。助手席で感じる軽いエンジン音。その振動も手伝って、夜のLAを眺める僕のまぶたが、少しずつ下降していった。

ビルとマイケルの自宅に入ると、毛むくじゃらの小型犬が猛烈に出迎えてくれた。ビルはUCLAの映画学科を卒業後、転向して現在は心理セラピスト。一方のマイケルは、ヘア・スタイリストの職に就きながら、作曲など音楽業界での成功を狙っている。この二人、つきあって7、8年になるのだとか。
ビルとマイケルのアパートでくつろいだ後、僕らはWEHOの街に繰り出した。まず、ハッピーアワーでドリンクが半額なうえに、上半身裸のウェイターがサービスしてくれるというバーへ。確かに上半身裸のウェイターがサービスしてくれたけど、少し肩透かし。
テレビで見聞きするLAって、もっと身体を鍛え上げたモデル張りのゴージャス系が幅をきかせているのかと思いきや、意外と普通の人たちばかりだった。マンハッタンの方が、完璧なまでに身体を鍛え上げて、顔もchiseledなモデルたちが、夜のバイトでバーテンダー業をしているケースが多いのかな?
マンハッタンでそうしたChelseaタイプを見慣れた僕にとって、WEHOは意外なまでに飾り気がなく、肩肘張った感じのない敷居の低い印象を受けた。WEHOの大通りを歩くゲイたちも、確かに身体は鍛え上げているけど、40代後半っていう感じのカップルが多かったり、普通に肥満の人とかがビールを飲んでいたり、はたまた、ブロンドの女性たちが集団で飲んでいたり・・・。
それに、もっとアジア人が多いのかと思いきや、それほどでもない。サンフランシスコ並みにアジア人比率があるのかと勝手に想像していたけど、WEHOってとても白人比率が高い。それに東海岸の都市部に比べて(少なくとも、今回僕が連れて行かれた場所では)黒人比率がとても少ない。これまでの想像とは違うLAって感じ。
最初のバーで、フローズン・マルガリータを飲んでいたとき、グリーンのポロシャツにカーゴ・ショーツ姿の僕を見て、ビルは、「プレッピー・ファッションってまた人気が戻りつつあるよね」と、一応、褒め言葉(?)をかけてくれた。だけど、周りを見ると、アロハシャツやサンダルなど、ビーチ・カルチャーをそのままにしたファッションの人たちがほとんど。東海岸のゲイ・バーではちょっと見かけないお気楽ファッション。
そんな中で、プレッピー・ファッションの僕は、確かに少し浮いていたかも。でも、東海岸ではプレッピーないでたちが一種のメイン・ストリーム。ここでも東海岸と西海岸のカルチャー・ギャップを感じた。僕ってやっぱり東海岸の人間なんだぁって、こんなところで妙に自分のアイデンティティを認識してみたりして。
ビルに話しかけられたのをきっかけに、僕はWEHOの印象を話してみた。
「なんか、思ったよりアジア人が少ないね」と、僕。
「そうかなぁ。でもね、今、WEHOではね、アジア人のボーイフレンドを持つのがブームになってきれるんだよ」とビル。それを聞いたとき、え、マジで?と僕の目は一瞬大きく開かれたけど、周りを見回してみてもアジア人と白人カップルなんていない。たまに道を通り過ぎていく人たちの中に見かけたけど、中年おじさんとアジア人っていういわゆる「お決まり」のパターンだけ。ビルが言ってくれたことは僕を一瞬喜ばせたけど、周りを見回してそれが空喜びだと気づくのにそう時間はかからなかった。
この晩、4人で食事をしたのはこのレストラン。
Café D’Etouile
8941 1/2 Santa Monica Blvd.
West Hollywood, CA 90069
TEL: (310) 278-1011
detoile@sbcglobal.net
僕とジャドソンはグリルされたダックの乗ったサラダを、ビルはサーモン、そしてマイケルはリブ・アイ・ステーキを注文。10ドル前後というとてもお手軽な値段で、しかも美味しいレストランでした。もちろん、お客さんはゲイばかり。ウェイターも若くてハンサムな青年が親切に接客してくれた。ちょっと狭くて、内装は壁一面が鏡張りってところがラブホテルっぽかったけど、総合評価ではオススメ。
ビル、マイケル、ジャドソン、そして僕の4人は、尽きることのない会話を楽しんだ。Getty Villaにまだ行ったことのないビルとマイケルに今日の感想を話したり、逆に、ビルとマイケルが行ったというゲイ・クルーズの話を聞いたり。それに、ビルは心理セラピストをしているので、他人の問題に関して話題が尽きない。LA在住のある日本人女性アーティストがビルのクライアントの一人らしいのだけど、最近、彼女から、「女性に興味があるんだけど・・・」という告白を受けたなんていう話を聞いたり。
話が映画のことになり、僕が「うちの近所で映画の撮影が行われていて、ウッディ・ハレルソンと写真を撮ったんだよ!」と言うと、
「ウッディー!いい役者だよねぇ。それに僕のタイプ。そうそう、昔ね、道に迷って通行人に尋ねたら、それがウッディ・ハレルソンだったんだよ」とビル。
その後、場所を移してゲイ・バーへ。皆が口をそろえてオススメするというバー、 The Abbey へ徒歩で移動。

もともと、コーヒーショップだったのを大改装して、今じゃ巨大なバー&レストラン。入店のとき、ビルとマイケルはそのまま素通りで入れたのに、僕とジャドソンは、「IDを見せて」とバウンサーに呼び止められてしまった。それぞれポケットからドライバーズ・ライセンスを見せる僕たち。僕には無言だったのに、ジャドソンにIDを返すとき、
「I’m impressed!」とバウンサーのお兄さんが一言。ジャドソンが実年齢よりもずっと若く見えたということなんだけど、裏を返すと、見ため以上に相当年取ってるってことでもある。
「impressedだってさ」と僕が念押しすると、
「I’m flattered」とクールに受け止めるジャドソン。
先に入っていたビルとマイケルを追いかけて店内に進む僕ら。店の奥には、有料で予約が必要というプライベート・ボックスなんかもあってモダンな内装。LAで、初めて人がごった返すっていう体験をした。ゲイ・バーは、やっぱりこれくらい足場もないほど込み合うっていうんじゃないと雰囲気が出ない。若い女性のグループも多く見かけたし、とにかく賑やかで多様な客層。アジア人もちらほらいた。
ビルとマイケルはトイレへ行くというので、僕は店内の中央で突っ立っていた。すると、ジャドソンが僕の手をそっと握って自分の方に引き寄せてくる。振り返ると、僕の後ろに立っていた男性と僕の目が合う――
ビルとマイケルと合流してアップル・マルティーニを注文。そして店内を一周した後、屋外に出た。星空の下で満員電車に乗っているような状態で、僕らはまた会話の続きを始めた。僕が主に話しをしたのはビル。
「ゲイ・ゲームズがあったよね」とビル。
「そうだね。僕も水球チームに参加していて行くつもりだったんだけど、やめたんだ」
「えぇ、なんで?」と聞いてくるビル。
初対面の人にどこまで話すべきか迷ったけど、旅の恥はかき捨て?っていう気持ちもあったし、相手はセラピストだし、、、夕食前に飲んだフローズン・マルガリータ2杯と、今飲んでいるアップル・マルティーニも手伝って、僕はジミーのことを話し始めた。
「実はね、水球チームでつきあってた人がいたんだけど、別れたんだ。だからもうそのときは水球にも戻りたくないし、誰にも会いたくないっていう気持ちになって、、、」
「わかるよその気持ち」と、セラピストならではの巧みな返事。しかも、要所要所で、「Why?」と核心を突く質問をしてくる。
「なぜ、別れることになったの?」とビル。それに対して、ジミーが誕生日前夜に発言したオープンな関係について説明した。
「なるほど。彼、そのジミーって人は、常に自分の価値を他人に確かめてもらわないと不安になる人なんだね。例えばジムで身体を鍛えるとするじゃない。するとバーとかに行ってみんなの視線を集めるよね。すると、人は、自分が魅力的だってことを確認できて安心するんだよ。セックスも一緒。他人から求められると断れないっていうのや、見知らぬ人とセックスを繰り返すっていうのも、自分の価値を確認する行為の一つなんだ」
セラピストならではのスムーズな説明。セックス依存症も、自分の価値を常に確認することが必要な人が陥る病なのかもしれないなと思った。
「でも、また何があるかわからないじゃない?」とビル。
「え?どういうこと?」
「僕とマイケルも何回かbreak-upしてるんだ。だけどまたこうして一緒に暮らしてるし。ジミーともまた関係が戻るかもしれないじゃない」
「多分、それはない・・・」と僕。
WEHOで夜空の下、遠くの山並みに稲妻の閃光を見ながら、セラピストのビルとこんな深いお話をして夜はふけていった――
* * *
WEHOからの帰り道、車の中で、突然ジャドソンが僕に質問してきた。
「今までに男性からお金もらったことある?」
なにゆえにこんな質問をしてくるのか判らなかったけど、とっさに、
「ないよそんなの」と僕。逆にジャドソンにも同じ質問をしてみたけど、Noの回答。今にして思うと、「逆にお金を払ったことある?」って聞いたほうが核心をついていたかもしれない。だけど、過去に、フランス人のお医者さんミッシェルとつきあってたころ、かなり色々なものをもらったことはある。旅行にも連れて行ってもらったし・・・。
「お金はもらったことないけど、物はもらったことあるよ。フランス人のお医者さんから」と僕。ビルと本音トークをしてスッキリしていたことや、かなり酔いも回って眠気に襲われていた僕は、特に深く考えることもなく、素直にジャドソンにも過去の遍歴を話した。ジャドソンも、興味津々に色々な質問をしてきた。
「今でも連絡とってるの?そのフランス人のお医者さんとは」
「たまにメールを出すけど、最近、返事がないんだ。当時ね、フランスに引っ越しておいでとか言われたんだけどね。確か、その後、韓国系日本人の恋人ができたって聞いたよ」
「へぇ。連絡が途絶えたっていうのは残念だね」とジャドソン。そのままジャドソンの遍歴についても聞こうかと思ったけど思いとどまった。助手席で感じる軽いエンジン音。その振動も手伝って、夜のLAを眺める僕のまぶたが、少しずつ下降していった。