土曜の午後、プロテイン・シェイクを近所のドラッグストアに買いに行ったときのこと。(そういえば、先日、日本では土用の丑の日だったんだよねぇ~。いいなー。うなぎの蒲焼ってそういえばここ数年、食べてない。)
話を戻して、これまで通勤途中に脇を通るので気にかけてはいたのだけど、中に入ったことはないお店。ドアを開けて中に入るとインド系かパキスタン系(いわゆるSouth Asian)の女性がカウンターに手持ち無沙汰に立っていた。お客は一人もいない。
僕は「プロテイン・シェイクのコーナーはどこですか?」と聞いて回答を求めたのだけど、半瞑想状態にあった彼女から答えが返ってくる前に僕はその場所が店の奥だということがわかった。
天井までいろんなプロテイン・シェイクが積みあがった棚。パッケージ・ラベルにはそれこそはちきれんばかりの筋肉をまとった男たちの写真。ボディー・ビルダーってなんであそこまで日焼けするんだろう?どす黒い肌にオイルを塗りこんでテカテカに光沢を放つ筋肉は、僕の目にはグロテスク以外のなにものでもないのだけど。
目移りしていた僕は、これまで買ったことのあるプロテイン・シェイクを発見。いちおう人気ブランドで、パッケージにもグロテスクな肉塊は写っていない。Wheyという牛乳から抽出したプロテインで、価格も値引きされて32.99ドルだった。
同じブランドで、パッケージの違う商品が隣にあった。成分表を見ると、ほとんど同じなのだけど、「酵素」が3倍くらいの含有量。筋肉アップと酵素ってどういう関係?なんて悩んでいると、South Asia系のおじさんが店の奥から出てきた。
「お悩みかな?」
と親切に聞いてくれたおじさんは、インドかパキスタン独特のなまりが強い英語。でも商人っていう感じで、人懐っこい感じ。
僕は、「この二つの商品の違いってなんですか?」と聞いてみた。
おじさんは成分表を見ながら、
「酵素が違いじゃ。酵素が入っとると、消化を助けるんじゃ。わしも毎日酵素を飲んどるよ」
とおなかをポンポンとさすってみせた。
僕も消化系は弱いほう。もしかしたら、これまでプロテインシェイクを飲んできたけど、多くは消化されずに体を素通りしてたかも?なんて思い出した。
「値段はこの32.99で一緒なんですね?」
と聞くと、
「同じはずじゃ」の回答。
そこで僕は、チョコレート味の消化酵素たっぷり入った新製品を買うことに決定。
レジまで向かう数歩の間に、おじさんは、僕の細い腕っ節を見ながら(この日はジムからの帰りだったんでノースリーブのTシャツ着てました)、
「ナイトロジェンっていう筋肉アップの商品もあるんじゃが、興味あるかな?」と聞いてきた。
そう、まさにそのナイトロジェン系の商品には、どす黒く日焼けしたボディー・ビルダーたちが身をくねらせてポーズをとっている。
ステロイドとは違うんだろうけど、やっぱりちょっと怖い。それに、筋肉って手のかかる恋人(?)みたいにメンテナンスにお金がかかる。高級熱帯魚も同じかも。常に水の温度調節、Ph、餌も数種類を混ぜて与えるとか、細かく気をつけないと死んじゃう。
筋肉も、プロテインと炭水化物のバランスや、食べる頻度、回数、筋トレの内容、などなどを気にしないと維持がとっても大変なんだよねぇ。
お肌への影響の心配もあった僕は、僕の細腕と顔色に交互に目をやるおじさんに、
「このままでいいっす。そこまで筋肉アップに興味ないんで」とかわした。
* * *
レジで会計を始めると、おじさん、今度はゴールド会員にならないか、と勧めてきた。
やたらとものを売りつけようとするおっさん。とりあえず、話の内容を聞いてみると、今回の商品には使えないけど、次回、買い物をするとき店舗だと20%、オンラインで購入すると30%の値引きになる特典がついてくるのだとか。それが1年間有効。年会費は15ドルだけど、今日、僕は商品を一つ買うので、キャッシュバックで6ドル払っただけでいい。(よくよく聞くと、このディスカウント、毎月1日~7日の間しか有効じゃないらしい。微妙に複雑な仕掛け。)
う~ん、なんか複雑な説明に納得しかねてたけど、ま、6ドルだけなんだったらだまされたと思って入会してみよう、と決めたのでした。おじさんも、ニコニコ笑顔でそんなにあくどい人には見えなかったし。僕のクレジットカードを受け取り、精算するおっさん。
「ほい、じゃ、ここにサイン。合計は52.39ドルじゃ」
そのとき、僕はゴールド会員の申込書に書き込み中。だけど52ドル?それってちょっとおかしくない?もともと32.99ドルの商品と税金、それに6ドルの会員費がなんで52ドルに跳ね上がるわけ?僕はレシートにある明細を一つづつ確認しはじめた。
それにたいしておっさん、
「合計は52.99ドル、ほれ、ここじゃ」
といってとにかくレシートの一番下に表示された数字を丸で囲み、とにかく僕の注意を明細からそらそうとする。なんや、このおっさん?!とむかつき始めた僕。
おっさんの野次を無視して、一つづつ明細を確認。なんかいろんなディスカウントやら混ざっててわっかりにくい明細。だけど、だてにアメリカで5年ちかく働いてきたわけじゃない。200万ドルの契約交渉にも携わってきて、とにかく、サインをする前に内容をよく確認すること!っていう鉄則が身についている。
おっさんが売りつけようとしていた値段は、プロテインシェイクが43.99ドル、それにゴールド・メンバー会員のディスカウントが適用されて8ドル引き。それに15ドルのゴールド会員年会費と税金。
これって話がぜんぜんちゃうやん?!
おっさんに、「プロテインシェイク、32.99ドルって言ったよね?これ43.99ドルになってるよ。それに、ゴールド会員のディスカウントは、今日は適用されないって言ったけど、それも違う」
うろたえるおっさん。
棚に戻って値段を確認するおっさん。
すると、「あーこの値段は、こっちの商品だけ。この新製品は違う値段じゃ」
なぬー?切れかけ3秒前になる僕。「ちょっと、おっさん、さっき同じ値段って言ったじゃんか。こんなに高いんだったら買わない。こっちの安い商品にしとく」
でもこの商品も、レジでバーコードをスキャンすると、さっきのと同じ43.99ドルの表示。
このとき、これまで僕たち以外だれもいなかった店内に、アジア人女性二人が入店。レジで押し問答を繰り返す僕たちの後ろにミネラルウォーター1本を手にした二人は、関西風の日本語で
「はよしてくれんかなー。水だけやし、さき払わしてくれんかなー」
夏になって、いっそう日本人観光客が増えてきただけあって、やたらと日本人、それも若い女性を見かける。彼女たち、周りに日本語を理解する人がいないだろう、ってタカをくくってるんで、無防備に声を低めることなくずけずけ話すっていうのがパターン。僕は、そんな場面に遭遇すると、中華系アメリカ人の振りしてそ知らぬ顔して話す内容に耳を傾ける。
今日も知らん顔しておこうと思ってた。
レジの向こう側で悪戦苦闘するおっさん。だけどこの二人のアジア人女性に気がついて、
「あ、水、99セントじゃ」
これに1ドル紙幣を手渡す関西系ギャル。
「袋かなにかいるかね?」と聞くおっさん。それに対してNoの回答をするギャルたち。傍で見ていた僕は、このおっさんが1セントのおつりを出すつもりがないことがすぐわかった。アメリカでは、こういうちいさな端数は無視することが多い。さっきのおっさんの「袋かなにかいるかね?」の質問にも、「1セントのおつりがほしいか?」がこっそり含まれてた。
だけど、そんな文化の機微なんてわかる由もないアジア人ギャルたち。袋いらないって言ったのに、もじもじその場に立ち尽くす二人。
まさに文化の溝に落ち込んでる状況。ついに僕がごうを煮やして、日本語で、
「さっきの水、99セント。1セントのおつりいるの?言わないとくれないよ」
と助け舟を出した。
そしたら関西系ギャル。「そんなん、ほしいにきまってるやん」
もう一方の少し控えめ系のギャルは、「うっわー、びっくりした」
僕は笑顔で「日本人だから」
「そ、そうなんですね。Thank you」
なんでThank youだけ英語やねん?ってつっこみ入れたかったけど、そこはおおめに。
で、おっさんには、「彼女たち、1ペニーのおつりが欲しいだって」と伝え、
別に1セントぽっきりをちょろまかすつもりもなかったおっさんは、「じゃ、あんたらに5セントをやろう」
と言って、まるでお年玉に1万円を手渡すおじいちゃんさながらに、大げさなそぶりで5セント硬貨を手渡したのでした。そして関西系ギャルは、なぜかまた英語で僕に、「Thank you」と言って店をでたのでした・・・。
* * *
だけど、このおっさんと僕のバトルはまだ佳境を迎えたばかり。
おっさんの言い訳は、
「あ、この32.99ドルは先週いっぱいで終わったんじゃ。棚からはずすの忘れておった」
だけど、それ以外の商品陳列棚には、同じような赤い紙切れが貼られ値引き額が表示されてる。この商品だけ先週で値引きが終わってるなんて、調子良すぎ。だけど、このおっさん、商人魂はあるみたいで、
「あんたには、この値引き価格で売ってやろう。32.99じゃ」
もう買わずに帰ろうと思っていた僕。おっさんの最後の切り札にグラっときた。ゴールド会員の申込書も書いてしまったし。
で、合計金額を聞くと、今後は41.39ドル。ま、そんなもんかな、と頭で概算して精算。おっさん、帰り際に
「いやー手間取らせて悪かったね。でも、あんた、スペシャル・ディスカウントじゃったから、ゴールド・カード会員の会費をまったく払わなかったようなもんじゃよ」とダメ押しする。
僕も根気強く粘ったかいがあったもんだと少し達成感あり。
* * *
だけど、自宅に帰ってレシートを見て気がついたのが、ゴールド会員の会費として僕が支払ったのは8.40ドル。15ドルから6.60ドルが値引きされてた。あのおっさん、最初は「あんたが払うのは6ドルぽっきり」って言ってたのにぃ。それってディスカウントの料金で、僕が払ったのは8.40ドルやんか!
2.40ドルという微々たる額だけど、最後にちょこっとだまされてしまった僕。あのおっさんも、最後に一矢を報いたつもりかも?
だけど、この大量消費社会の世の中において、こんなに一つの商品を購入するのに時間をかけてたらやってられない。やっぱり明朗会計が売るほうにとっても買うほうにとっても一番、得になると思うのだけど。時は金なり(Time is money)ってね。
話を戻して、これまで通勤途中に脇を通るので気にかけてはいたのだけど、中に入ったことはないお店。ドアを開けて中に入るとインド系かパキスタン系(いわゆるSouth Asian)の女性がカウンターに手持ち無沙汰に立っていた。お客は一人もいない。
僕は「プロテイン・シェイクのコーナーはどこですか?」と聞いて回答を求めたのだけど、半瞑想状態にあった彼女から答えが返ってくる前に僕はその場所が店の奥だということがわかった。
天井までいろんなプロテイン・シェイクが積みあがった棚。パッケージ・ラベルにはそれこそはちきれんばかりの筋肉をまとった男たちの写真。ボディー・ビルダーってなんであそこまで日焼けするんだろう?どす黒い肌にオイルを塗りこんでテカテカに光沢を放つ筋肉は、僕の目にはグロテスク以外のなにものでもないのだけど。
目移りしていた僕は、これまで買ったことのあるプロテイン・シェイクを発見。いちおう人気ブランドで、パッケージにもグロテスクな肉塊は写っていない。Wheyという牛乳から抽出したプロテインで、価格も値引きされて32.99ドルだった。
同じブランドで、パッケージの違う商品が隣にあった。成分表を見ると、ほとんど同じなのだけど、「酵素」が3倍くらいの含有量。筋肉アップと酵素ってどういう関係?なんて悩んでいると、South Asia系のおじさんが店の奥から出てきた。
「お悩みかな?」
と親切に聞いてくれたおじさんは、インドかパキスタン独特のなまりが強い英語。でも商人っていう感じで、人懐っこい感じ。
僕は、「この二つの商品の違いってなんですか?」と聞いてみた。
おじさんは成分表を見ながら、
「酵素が違いじゃ。酵素が入っとると、消化を助けるんじゃ。わしも毎日酵素を飲んどるよ」
とおなかをポンポンとさすってみせた。
僕も消化系は弱いほう。もしかしたら、これまでプロテインシェイクを飲んできたけど、多くは消化されずに体を素通りしてたかも?なんて思い出した。
「値段はこの32.99で一緒なんですね?」
と聞くと、
「同じはずじゃ」の回答。
そこで僕は、チョコレート味の消化酵素たっぷり入った新製品を買うことに決定。
レジまで向かう数歩の間に、おじさんは、僕の細い腕っ節を見ながら(この日はジムからの帰りだったんでノースリーブのTシャツ着てました)、
「ナイトロジェンっていう筋肉アップの商品もあるんじゃが、興味あるかな?」と聞いてきた。
そう、まさにそのナイトロジェン系の商品には、どす黒く日焼けしたボディー・ビルダーたちが身をくねらせてポーズをとっている。
ステロイドとは違うんだろうけど、やっぱりちょっと怖い。それに、筋肉って手のかかる恋人(?)みたいにメンテナンスにお金がかかる。高級熱帯魚も同じかも。常に水の温度調節、Ph、餌も数種類を混ぜて与えるとか、細かく気をつけないと死んじゃう。
筋肉も、プロテインと炭水化物のバランスや、食べる頻度、回数、筋トレの内容、などなどを気にしないと維持がとっても大変なんだよねぇ。
お肌への影響の心配もあった僕は、僕の細腕と顔色に交互に目をやるおじさんに、
「このままでいいっす。そこまで筋肉アップに興味ないんで」とかわした。
* * *
レジで会計を始めると、おじさん、今度はゴールド会員にならないか、と勧めてきた。
やたらとものを売りつけようとするおっさん。とりあえず、話の内容を聞いてみると、今回の商品には使えないけど、次回、買い物をするとき店舗だと20%、オンラインで購入すると30%の値引きになる特典がついてくるのだとか。それが1年間有効。年会費は15ドルだけど、今日、僕は商品を一つ買うので、キャッシュバックで6ドル払っただけでいい。(よくよく聞くと、このディスカウント、毎月1日~7日の間しか有効じゃないらしい。微妙に複雑な仕掛け。)
う~ん、なんか複雑な説明に納得しかねてたけど、ま、6ドルだけなんだったらだまされたと思って入会してみよう、と決めたのでした。おじさんも、ニコニコ笑顔でそんなにあくどい人には見えなかったし。僕のクレジットカードを受け取り、精算するおっさん。
「ほい、じゃ、ここにサイン。合計は52.39ドルじゃ」
そのとき、僕はゴールド会員の申込書に書き込み中。だけど52ドル?それってちょっとおかしくない?もともと32.99ドルの商品と税金、それに6ドルの会員費がなんで52ドルに跳ね上がるわけ?僕はレシートにある明細を一つづつ確認しはじめた。
それにたいしておっさん、
「合計は52.99ドル、ほれ、ここじゃ」
といってとにかくレシートの一番下に表示された数字を丸で囲み、とにかく僕の注意を明細からそらそうとする。なんや、このおっさん?!とむかつき始めた僕。
おっさんの野次を無視して、一つづつ明細を確認。なんかいろんなディスカウントやら混ざっててわっかりにくい明細。だけど、だてにアメリカで5年ちかく働いてきたわけじゃない。200万ドルの契約交渉にも携わってきて、とにかく、サインをする前に内容をよく確認すること!っていう鉄則が身についている。
おっさんが売りつけようとしていた値段は、プロテインシェイクが43.99ドル、それにゴールド・メンバー会員のディスカウントが適用されて8ドル引き。それに15ドルのゴールド会員年会費と税金。
これって話がぜんぜんちゃうやん?!
おっさんに、「プロテインシェイク、32.99ドルって言ったよね?これ43.99ドルになってるよ。それに、ゴールド会員のディスカウントは、今日は適用されないって言ったけど、それも違う」
うろたえるおっさん。
棚に戻って値段を確認するおっさん。
すると、「あーこの値段は、こっちの商品だけ。この新製品は違う値段じゃ」
なぬー?切れかけ3秒前になる僕。「ちょっと、おっさん、さっき同じ値段って言ったじゃんか。こんなに高いんだったら買わない。こっちの安い商品にしとく」
でもこの商品も、レジでバーコードをスキャンすると、さっきのと同じ43.99ドルの表示。
このとき、これまで僕たち以外だれもいなかった店内に、アジア人女性二人が入店。レジで押し問答を繰り返す僕たちの後ろにミネラルウォーター1本を手にした二人は、関西風の日本語で
「はよしてくれんかなー。水だけやし、さき払わしてくれんかなー」
夏になって、いっそう日本人観光客が増えてきただけあって、やたらと日本人、それも若い女性を見かける。彼女たち、周りに日本語を理解する人がいないだろう、ってタカをくくってるんで、無防備に声を低めることなくずけずけ話すっていうのがパターン。僕は、そんな場面に遭遇すると、中華系アメリカ人の振りしてそ知らぬ顔して話す内容に耳を傾ける。
今日も知らん顔しておこうと思ってた。
レジの向こう側で悪戦苦闘するおっさん。だけどこの二人のアジア人女性に気がついて、
「あ、水、99セントじゃ」
これに1ドル紙幣を手渡す関西系ギャル。
「袋かなにかいるかね?」と聞くおっさん。それに対してNoの回答をするギャルたち。傍で見ていた僕は、このおっさんが1セントのおつりを出すつもりがないことがすぐわかった。アメリカでは、こういうちいさな端数は無視することが多い。さっきのおっさんの「袋かなにかいるかね?」の質問にも、「1セントのおつりがほしいか?」がこっそり含まれてた。
だけど、そんな文化の機微なんてわかる由もないアジア人ギャルたち。袋いらないって言ったのに、もじもじその場に立ち尽くす二人。
まさに文化の溝に落ち込んでる状況。ついに僕がごうを煮やして、日本語で、
「さっきの水、99セント。1セントのおつりいるの?言わないとくれないよ」
と助け舟を出した。
そしたら関西系ギャル。「そんなん、ほしいにきまってるやん」
もう一方の少し控えめ系のギャルは、「うっわー、びっくりした」
僕は笑顔で「日本人だから」
「そ、そうなんですね。Thank you」
なんでThank youだけ英語やねん?ってつっこみ入れたかったけど、そこはおおめに。
で、おっさんには、「彼女たち、1ペニーのおつりが欲しいだって」と伝え、
別に1セントぽっきりをちょろまかすつもりもなかったおっさんは、「じゃ、あんたらに5セントをやろう」
と言って、まるでお年玉に1万円を手渡すおじいちゃんさながらに、大げさなそぶりで5セント硬貨を手渡したのでした。そして関西系ギャルは、なぜかまた英語で僕に、「Thank you」と言って店をでたのでした・・・。
* * *
だけど、このおっさんと僕のバトルはまだ佳境を迎えたばかり。
おっさんの言い訳は、
「あ、この32.99ドルは先週いっぱいで終わったんじゃ。棚からはずすの忘れておった」
だけど、それ以外の商品陳列棚には、同じような赤い紙切れが貼られ値引き額が表示されてる。この商品だけ先週で値引きが終わってるなんて、調子良すぎ。だけど、このおっさん、商人魂はあるみたいで、
「あんたには、この値引き価格で売ってやろう。32.99じゃ」
もう買わずに帰ろうと思っていた僕。おっさんの最後の切り札にグラっときた。ゴールド会員の申込書も書いてしまったし。
で、合計金額を聞くと、今後は41.39ドル。ま、そんなもんかな、と頭で概算して精算。おっさん、帰り際に
「いやー手間取らせて悪かったね。でも、あんた、スペシャル・ディスカウントじゃったから、ゴールド・カード会員の会費をまったく払わなかったようなもんじゃよ」とダメ押しする。
僕も根気強く粘ったかいがあったもんだと少し達成感あり。
* * *
だけど、自宅に帰ってレシートを見て気がついたのが、ゴールド会員の会費として僕が支払ったのは8.40ドル。15ドルから6.60ドルが値引きされてた。あのおっさん、最初は「あんたが払うのは6ドルぽっきり」って言ってたのにぃ。それってディスカウントの料金で、僕が払ったのは8.40ドルやんか!
2.40ドルという微々たる額だけど、最後にちょこっとだまされてしまった僕。あのおっさんも、最後に一矢を報いたつもりかも?
だけど、この大量消費社会の世の中において、こんなに一つの商品を購入するのに時間をかけてたらやってられない。やっぱり明朗会計が売るほうにとっても買うほうにとっても一番、得になると思うのだけど。時は金なり(Time is money)ってね。