陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

北のミサイル乱射で日本が学習したこと

2006-07-12 00:02:27 | 朝鮮半島
 安保理決議を巡って日米と中共の激しい攻防が続いている。7月10日には中共の制裁決議反対意見が目立つようになった。何故中共が反対するのか。名目はアジアの平和と安定にそぐわないからと言うのが理由。このまま安保理採決に進めば、中共は拒否権発動、ロシアは棄権、他の理事国13カ国は賛成で中共は完全に孤立する。

 中共は、これでは不利と見て数日間安保理採決を延期するよう日本へ要請した。強気一辺倒の中共が日本に時間猶予を求めて来たのだ。日本の強硬姿勢に中共は些か驚いた。このまま進めば、米国の金融制裁に加えて、日本が経済制裁を部分実行する、そうすれば北朝鮮崩壊が濃厚になると中共は見ているのだろう。

 只今、武大偉中共外務次官が北朝鮮を訪問中だ。北朝鮮に対する石油パイプライン輸送、トラックによる物資輸送停止の可能性をちらつかせながらである。一方で、更なる経済支援強化も提案している。飴と鞭の恫喝交渉だ。

 だが、同次官は一体誰と会っているのか。金正日は平壌を脱出し、雲隠れしたまま。ミサイル発射が予想以上に日本と国際世論を刺激してしまったし、テポドン2は失敗した。将軍様は怯えてしまい、平壌へ戻れなくなった。武次官は、北朝鮮軍有力幹部にミサイル発射の無期限延期を求めると共に、彼らと金正日温存体制を相談しているのだろう。

 この時点でテポドン2の再発射徴候が見えたら、ブッシュ大統領は只今日本海に展開中の米第7艦隊にトマホークでピンポイント爆撃をやらせるに違い無い。それは、6月下旬にも実施出来たし、米国民主党も理解を示していた。だが、日本と国際世論の動向が気になり踏み切れなかった。恐らく、中共もミサイル発射はさせないと米国へ伝えていたはずだ。

 ところが7月5日のミサイル発射があって、国際世論は硬化した。テポドン基地爆撃をしても、日本と国際世論は米国を支持するとブッシュは確信した。だからもう逡巡はしないだろう。再発射準備に入れば、テポドン基地にのみならず日本の為にノドン基地を同時に壊滅させる可能性もある。それは金正日体制の崩壊を確実に招く。

 金正日の鉄の軛が解かれたら、北朝鮮人民の多くが国境を越えて中共と韓国へ逃げ出す。混乱を防止するため、中共は北朝鮮に傀儡政権を樹立したい訳だが、欧米、ロシアを始め国際世論はそれを認めない。一方、難民が怒濤の様に押し寄せれば共産独裁政権に内在する矛盾と危うさが露呈し、今度は中共政権自体が保たなくなる。将にソ連崩壊のシナリオ再現である。それで中共は何としてでも北朝鮮軍部を懐柔し、テポドン2再発射を止めさせればならなくなった。

 日米の水面下での対中共説得が実を結ばず、安保理採決延期が7月15日迄長引いたとする。プーチン大統領は、サンクト・ペテルブルグサミットで議長国の影響力を駆使して、金正日政権温存、ミサイル発射の当面停止、北朝鮮の六カ国協議復帰でまとめ上げて、存在感を誇示することであろう。

 安保理決議の動向、サンクト・ペテルブルグサミットの議論とは関係無く、日本は毅然として北朝鮮経済制裁を強めれば良い。平壌宣言も廃棄を通告する。また、トマホークの導入など先制攻撃体制を可能とすれば、朝鮮半島有事に慌てなくても済む。それらは、ミサイル発射から得た日本政府の貴重な学習成果である。

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