陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

松本和子早大教授の不正

2006-06-25 00:12:38 | 教育と研究
 学術研究で国費補助を受けた教授が、不明朗な予算流用をして摘発されるケースがここ数年相継いでいる。今回発覚した松本和子教授(早稲田大学理工学術院)の場合もその一例だ。松本教授は個人の投資信託へもそれらの一部を流用していたと言うから、これは新しいタイプの不正である。

 松本教授は、金属錯体化学を専門としてそれなりの業績があり、現在「国際純正・応用化学連合(IUPAC)」副会長(副会長は、次期会長になる)を勤める。まあ、この分野の国際的著名人と言うわけだ。同教授は、政府関係の審議会委員も歴任している。随分と忙しそうな人物だが、大学人として最も大切な教育関係にどれだけ努力していたのであろうか。まず、それが気になる。

 文部科学省は補助金に利息を付けて返還させ、5年位は資格停止し、松本教授の補助金申請を受け付けない方針。また、早稲田大学自体へは研究助成金を出さないようになるだろう。

 一方、早稲田大学は、3年程前に問題となった松本教授の企業癒着問題調査が不完全であった事を認め、更に今回の亊案に対しては懲戒処分を行うと言う。大学としては不名誉な話だが、どれだけ事実を明らかにできるのか疑問に思う。

 松本教授は、背伸びをし過ぎたのだろう。「団塊の世代」指導者に良く見られる現象だ。同教授の将来は、最早断たれたと言っても過言では無い。松本教授がこれまでに研究成果を発表をした中から、データ捏造等が出ない事を祈るのみである。

 今回の事件は、IUPACの会長人事を巻き込んでいるが故に深刻である。日本の化学者全体に対する国際的な信用失墜に繋がるからだ。大学で化学分野を教える教師は、この問題を真剣に受け止めるべきだろう。

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早大、教授の研究費「私的流用」認める 懲戒処分へ

2006年06月23日22時06分 Asahi.com

 早稲田大学は23日、国の総合科学技術会議議員など要職を務めた同大理工学術院の松本和子教授(56)=無機化学=が国の研究費の一部を流用したとの疑惑に関する調査結果を発表した。流用総額は少なくとも1472万円にのぼり、うち教授個人名義の投資信託口座で運用されていた900万円を同大は「私的流用」と認定。松本教授を懲戒処分し、流用分の返還を求める。具体的な処分内容は今後決める。文部科学省も、研究費の応募資格停止などを行う方針だ。

 松本教授は今年1月までの2期4年間、総合科学技術会議の議員を務め、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の副会長も務めている。

 私的流用が認定されたのは、松本教授を代表者とする遺伝子解析の研究プロジェクト(99~03年度)向けに文部科学省から同大に振り込まれた競争的研究費など、国の研究費の一部。4月にあった学内からの告発をもとに、同大の調査委員会(委員長=村岡洋一副総長)が調査していた。

 発表によると、松本教授は大学側がアルバイト代として学生らに振り込んだ3127万円のうち、少なくとも1472万円分を学生らに自分名義の口座に振り込ませた。アルバイトの労働実態はなかったという。

 教授は学生に振り込ませた金のうち900万円を自分名義の投資信託口座に移して運用していた。研究が終了した現在も保有しており、この事実を同大は「私的流用に値する」と判断した。残る約500万円について、教授は学生の旅費や実験材料の購入にあてたと主張しているというが、同大は「根拠が見あたらない」としている。

 さらに、架空取引の疑いも判明。02~04年、研究費の一部2300万円が試薬代などとして松本教授が非常勤取締役に名を連ねる企業に支払われていたが、調査では、対応する納品書が確認できなかった。この問題は04年に浮上していたが、理工学術院(当時は理工学部)の同年の調査では十分に調べられないままになっていた。

 告発は外国人研究員との共同研究でデータ捏造(ねつぞう)があったとも指摘しているため、調査委は松本教授に再実験などを求める方針だ。

 松本教授は、論文捏造などの不正対策をまとめる文科省の特別委員会の主査代理も務めていたが、今月2日「一身上の理由」で辞任している。

 同大は「不適切な会計処理をしたことを深く反省し、おわび申し上げます。不適切な処理分については全額返済するつもりです」との松本教授のコメントを発表した。

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 次の松本教授に関する紹介が、何とも空々しく聞こえる。

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 松本氏は、自身を「錯体のプロ」、「金属錯体屋」と表現する。「プロになるには、地味でつまらないことを毎日毎日繰り返す時代がどうしてもあるものです」。こうした地道な鍛錬によって身に付くのは、確固とした基礎力だ。その基礎力こそが応用力を生むという。「論文を読んで、『ちょっとここをこう変えてみよう』という研究のスタートもあるけれども、『ちょっとここを変えてみましょう』ぐらいの発想では、大きなジャンプをして新しい局面を作ることはできないと思います」。松本氏の蛍光ラベル剤は、医学をはじめとする他分野との共同研究により花開いた。共同研究で成果を得るためにも、自らの核となる学問分野を確立すべきと主張する。「学際分野が大事だと言いますけれども、『自分は医学を中心にした学際だ』、『自分は化学中心の学際だ』、という核のある人間を目指して欲しいと思っています。ちょうど錯体のように」。

http://www.nanonet.go.jp/japanese/mailmag/2003/021a.html

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 国や民間から外部資金を導入して、大学の経営改善に貢献する教師が増えている。3年前から独立法人化された旧国立大学でも、年間数億円のプロジェクト研究費を得て、10-20人の研究者を使っているケースがあちこちにある。リーダーの教授は席が暖まる暇も無い程に出張ばかり。あるいは、民間との共同研究で兼業申請を出して、4-5社より個人報酬を得ている教授もいる。

 こうした活動をしている大学教師は授業等きちんとやっているのであろうか。大学院学生を無給で利用出来る作業員としてこき使っている事は無いのか。大学での研究は、大学院教育を充実させるためにあるのであって、金儲けが主目標になれば教育は何処かへ飛んでしまうのである。

 それほど技術的なプロジェクトが好きであるなら、潔く教職から去り、民間企業で働けば良いのだ。大学教授と言う世間的に立場の良い職場に安住し、肝心の教育を犠牲にして金儲けに走る、そうした教師が増えて行けば、その大学は内部崩壊することは目に見えている。
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