3次元紀行

手ぶらで地球にやって来ました。生きていくのはたいへん。そんな日々を標本にしてみました。

約束の森の植樹祭 16

2009-03-17 09:38:07 | メルヘン
★62
着ぐるみのうさぎさんと、
手をつないで、二階の窓から飛び出しました。
あの時のように、白い道が
二階の窓からのびてずっと続いています。
でも、ちょっとあたりの様子が変。
こんな道だったかしら?
たしか菜の花畑をぬけていったと思うんだけれど
「道が違ってませんか?」
わたしはつないでいた手をはなし、立ち止まりました。
「いいえ、違ってませんよ。
あたりの景色はあなたの気持ちです。
 今のあなたは
菜の花畑のようにおおらかで明るくありませんね」

★63
わたしの気持ち?
いまのわたしの気持ちは、
この道のように狭く、
道端に生えているこの茂みのように
トゲトゲしているのでしょうか?
「ところであなたはどなた?
 わたしと会ったことがあると
 おっしゃいましたね」
「ええ。そうですよ。 会っています」
「どなたなんですか?」
「わたしが誰だか知ったら、
 あなたは約束の森のことを忘れなければなりません」
「これから約束の森にも行けなくなるのでしょうか?」
「いいえ。
 いつでも行けますよ。
 現に、あなたは夢の中で
 何度も約束の森に行っています。
 でも夢は覚めると
 夢の中でのできごとを忘れるでしょう?
 あなたが目がさめても覚えていることができるのは
 招待状をもらったときだけです。
 私が誰だか教えたとしても
 これから約束の森には行きますが、
 今日の事は見たこと、聞いたことは全部、
 明日になれば忘れてしまうということになります。
 どうなさいますか?」
わたしはすこし考えましたが、こう答えました。
「目が覚めているときも、
約束の森のことは覚えていたいと思います」
着ぐるみのうさぎさんは満足そうにうなづきました。
「よろしい。
 ではいきましょう」
わたしは再びうさぎさんの腕をとって
歩き始めました。


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