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脳腫瘍のウィルス療法に血管新生阻害剤

2007-12-01 | 脳腫瘍
脳腫瘍で研究が進められている癌殺傷ウィルス療法であるが、免疫が素早く腫瘍細胞内に入り込んでそれらを排除しようとするため、その効果が制限されてしまうという問題がある。今回 Journal of the National Cancer Institute 誌にオハイオ州立大学によって発表された研究では、血管新生阻害剤をくわえることにより、免疫反応を遅らせてウィルスが癌を殺傷する時間を長く与える方法が試みられた。

Kaur's研究所に研究者として来ている日本のKazuhiko Kurozumi氏はラットにグリオマ細胞を移植し、7日後、腫瘍のみを狙い打つ組み換え型腫瘍溶解性単純ヘルペスウィルス1型であるhrR3を注入した。これらのラットでは、対照群に比べて腫瘍血管が顕著に漏れやすくなり、高レベルの白血球(免疫)が腫瘍内に進入した。また、ウィルスによって炎症と免疫反応を含む84の遺伝子のうち48個が2倍以上に活性が高まった。中でもウィルスに対する免疫反応を司る物質インターフェロンガンマ(IFNg)の変化が大きかった。この研究で、腫瘍溶解性ウィルスは局所の免疫反応を活性化させ、有効性が弱められることが明らかになった。

別のラットに血管新生阻害剤cRGDを投与したところ、この血管の浸透性が減少し、免疫反応が抑えられ、IFNg含む19の遺伝子の活性が2倍以上低下した。
血管新生阻害剤を与えられたラットの生存期間は21日、ウィルスのみは17日であった。
原文記事

【12/9追加記事】
化学療法剤が癌治療ウィルスを助ける(2006/9)ー組み換え型単純ヘルペスウィルスは直接腫瘍に注入され、腫瘍細胞のみを破壊する。しかしながら、注入されたあと数時間後には感染と戦う免疫細胞が腫瘍に侵入しウィルスの作用を弱めてしまう。化学療法剤サイクロホスファミドがこの免疫細胞の働きを抑え、ウィルスが腫瘍に広がって完全に殺傷するのを助けることがわかった。「このウィルスは安全性と有効性についてもっと判明しなければ、まだ臨床試験には進めません。」とオハイオ州立大学の研究者は述べる。
ウィルス注入後、6時間後、免疫細胞であるNK細胞とマクロファージは3倍、インターフェロンガンマ(IFNg)値は10倍、IFgは72時間後には120倍増加した。サイクロホスファミドはIFNg産生を抑制してウィルスの癌殺傷能力を上げるとみられる。「この10年間、癌殺傷ウィルスは脳腫瘍、肺、すい臓がんにおいて人で試験が行われたが極めて安全であったが、その理由はウィルスの作用が非常に弱められてしまうことであるだろう。Proceedings of the National Academy of Sciences誌掲載。原文記事

Seneca Valleyウィルスは転移癌に有効の可能性がJNCIで報告(原文記事



 


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