王様の「秘密の参謀本部」

田端到&ビンゴ本郷の実験創作プロジェクト

映画『辰巳』と『青春18×2』

2024-05-08 23:09:33 | エンタメ
●評判を聞いて、映画『辰巳』鑑賞。
 これは傑作だ。今年ベストワン候補。暴力と裏切りと情。裏社会で生きる男たちの中に、裏社会のルールなど知ったこっちゃない19歳の跳ね返り娘が混じり込む。

 役者がみんないい。ヒロインはどこかで見た女優さんと思ったら、舞台で見た森田想さんだった。主演の遠藤雄弥さんは初めて知ったけど、世捨て人の無感情さと、孤独な男の哀しみが内側からにじみ出ていた。
 ただし、中盤までの疾走感に対して、終盤のリズム感、緩急がちょっと惜しい気もした。

●清原果耶、許光漢「青春18×2」鑑賞。日本と台湾の合作映画。
 涙が、つつーっと流れた。初恋の記憶をたどる旅。ど真ん中の青春ラヴストーリーに見えて、もっと大きな広がり、出会いの持つ力を描いた物語に思えた。大切な出会いが人の生き方を変えてゆく。

「あのとき想いを伝えていたら、違う未来があったのでは」と誰もが悔いるけど、出会ったことでもう違う未来へ進んでいる。
 青春の淡い恋は実らなくとも、めぐり会ったことが人生の実りにつながっている。人生とは旅であり、出会いだ。

●清原果耶さんはいつものように天才。歩く速さだけでも、いろんなことを表現している。出番は短いけど、脇を固める黒木華、松重豊、黒木瞳らが、主人公ふたりの造形に厚みを加える。いきなり我が故郷・長岡駅が出てきてびっくり。

●もうひとつ別の感想。
「青春18×2 君へと続く道」は、藤井道人監督が岩井俊二に捧げたオマージュでもある。ゴッホがひまわりを描き続けたのと同じように、岩井俊二は「Love Letter」を撮り続けている。「ラストレター」も「チィファの手紙」も、ラヴレターその3その4だ。その藤井道人版の「Love Letter」が「青春18×2」。
 手紙が過去と現在をつなぎ、人の気持ちに整理を付けて、前を向かせる。

*以下追記。ネタバレあるので注意してください。



●映画の構成としては、シュー・グァンハンが会社の代表を解任されたところから始まり、またひとりで出直すところで終わる。恋愛や青春がテーマならこんな構成にはならないだろう。

 ラストの前に大事なアイテムとして清原果耶の書いた手紙(絵の日記)が出てくる。人は何によって区切りをつけ、何によって前を向くのかを描いた物語だ。

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