井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

小学生が弾く曲(1)

2010-01-06 22:43:14 | 梅鶯林道

 日本にはヴァイオリンの三大教本とでも呼ぶべきものがある。いわゆる,「鈴木」「篠崎」そして,もはや新しいとは思えない「新しいバイオリン教本」俗に言う「白い本」。

 それぞれに特徴があるが,かなりよくできているので,「鈴木」「篠崎」は,これを終えるまで不自由を感じないで済む。「白い本」も5巻までは同様であろう。

 問題は,この後だと思う。「鈴木」と「篠崎」が終了しても専門的な訓練にはかなり距離があるし,「白い本」は5巻と6巻の差が割とあるし,6巻の中でも難易度がかなり違う曲が混在している。ここで「小学生が弾く曲」を悩む人達が出てくるのは必至。

 これで悩むのは恐らく万国共通だろう。アメリカではグレード(難易度)を公開している人達がいる。これがかなりヒントになると思う。
 Graded Repertoire(演奏曲目グレード)という項目で検索すると,二つのグレード・リストが挙がってきた。一つはザスマンズハウスの「ヴァイオリン・マスタークラス」,もう一つはMr. Jubin Matloubieh(何と読むのだろうか?)作成のもの。便宜上,前者をS,後者をJと呼ぶことにする。

 Sは10,Jは13のグレードに分けてある。これで便利なのはアメリカでもSuzukiがポピュラーで,Sにおいてはグレード表に載っていることだ。そこから考えると,小学生のレヴェルはSでは3~5,Jでは3~8がほぼ当てはまりそうだ。

 では,一番関心の集まりそうな「小学校高学年」相当のレヴェル(Sは5,Jは7と8)には,どんな曲が挙げられているか見てみよう。

 まずS。「教則本と練習曲」「無伴奏」「ヴァイオリンとピアノ」「ヴァイオリンと管弦楽」の4ジャンルに分けられ,Suzukiは「教則本」に入れられている。9巻と10巻,モーツァルトの協奏曲の巻である。

 「無伴奏」は無い。

 「ヴァイオリンとピアノ」には以下の曲。()は筆者の感想。

・バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ全6曲(BWV1014-1019)

・バルトーク:ルーマニア民族舞曲
(セーケイ編のものと思われるが,ちょっと難しいのでは?)

・ダンクラ:6つのエア・バリエ
(6曲同じレヴェルというのは,いささか乱暴なような・・・)

・クライスラー:シチリアーノとリゴードン

・モーツァルト:ソナタ集
(これも全て同じレヴェル?)

・プロコフィエフ:5つのメロディー

・サン=サーンス:ソナタ第1番
(これは面白くない曲,と仲間うちでは定評がある)

・サラサーテ:序奏とタランテラ
(スピッカートやリコシェができないと話にならないけど)

・タルティーニ:悪魔のトリル

チャイコフスキー:3つの小品「瞑想曲」「スケルツォ」「メロディ」

・チャイコフスキー:憂鬱な(メランコリックな)セレナード
(小学生には合わないと思うけど)

・ヴィエニアフスキー:伝説曲

以下の曲は寡聞にして筆者の知らない曲
・リース:常動曲
・リーディング:協奏曲ホ短調

 「ヴァイオリンと管弦楽」

・ベリオ:協奏曲第9番 イ短調

・ベリオ:バレエの情景

・ハイドン:協奏曲 ハ長調

・カバレフスキー:協奏曲

・モーツァルト:協奏曲第2番 ニ長調

 一方,Jのレヴェル7。こちらはジャンル分けは無い。

・ベ-ト-ヴェン:ロマンス ヘ長調

・ブロッホ:バール・シェム
(日本の小学生にユダヤの粘り気を要求するのは少々無理がある)

・モーツァルト:協奏曲第1番 変ロ長調
・モーツァルト:協奏曲第2番 ニ長調

・ヴィターリ:シャコンヌ
(シャルリエ編曲のものを,日本でも昔から小学生に弾かせるけど,一般的にはもっと後の時期が良いと筆者は考える)

 続いてJのレヴェル8

モーツァルト:協奏曲第4番 ニ長調
モーツァルト:協奏曲第5番 イ長調

・ノヴァチェック:常動曲

・パガニーニ:常動曲

チャイコフスキー:3つの小品「瞑想曲」「スケルツォ」「メロディ」

・ヴィオッティ:協奏曲第22番 イ短調
・ヴィオッティ:協奏曲第23番 ト長調

・ヴォーン=ウィリアムス:揚げひばり
(あの「田舎っぽさ」は,大人がやるものではないだろうか?)

またもや筆者の知らない曲
・スヴェンセン:ロマンス ト長調

 結構な量になったが 以上である。両者にモーツァルトの協奏曲が含まれているので,ここを同じレヴェルと見なしたのだが,重なっていたのは数曲しかない。そのくらい見解が分かれるということである。
 他のレヴェルは,また次回。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿