教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

【レビュー】ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代

2016-08-12 00:03:54 | 経済/経済/社会

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784837957683


ORIGINALS誰もが「人と違うこと」ができる時代
グラント,アダム【著】〈Grant,Adam〉/サンドバーグ,シェリル【解説】〈Sandberg,Sheryl〉/楠木 建【監訳】
価格 ¥1,944(本体¥1,800)
三笠書房(2016/07発売)



これ、タイトルだけ見ると、あなたの好きなことをやってもいいんですよ的な宗教色のうっとうしい本かのように見える。
アドラー心理学本に見える人もいるかもしれない。

だがそんなことは全くない。

では何か?

創造性を発揮しない凡庸な人生を送るにはどうすればいいかということが山ほど書いてあり、そしてその解決策も記されている、というものだ。



序盤のエピソードでこんなのがある。

あなたの周りにも神童と呼ばれたヤツがいたでしょ?
そいつ大人になったらどうなったよ?
ただの平凡な一般人になっただけだっただろ?
なんでだかわかるかい?

で、この本によると答えは何と書かれていたかというとだな。

大人の言うことをよく聞いて習う能力にずばぬけた天才児たちは、いまやっていることに疑問を持って独創的な世界へ踏み込もうという意欲に欠けるから、大人になったら平凡な一般人に育つのだ。

というものだ。

この手のものはYahooビジネスのニュースにも似たようなのがときどき上がる。
だが、そういうのは高学歴のヤツなんてどうせ使えねえとルサンチマンで書いてるだけのもの、または俺は高学歴なのになんでミジメな思いをしなければならないんだというルサンチマン丸出しの人物の取材話がほとんどである。

しかしこの本は膨大な統計や行動経済学の実験結果から出したものであり、単なるルサンチマンが精神論を述べているのとは全く異なるといっておきたい。



もう1つエピソードを。

ナチス下においてユダヤ人をかくまったヤツは、ほかの傍観者と何が違うのか?

膨大なパラメータを検証した結果、唯一違うのは、親からしつけを受けた際に、なぜそれがダメなのかを説明されたかどうかだけだった、という。

この正反対の教育現場はわたしは非常によく知っている。

わたしの出身中学校では、教員の意にそぐわない行動をしたものは有無を言わさず鉄拳制裁で行動を強制した。
もちろん理由の説明など無い。

かつて1度だけ、
「あくまでこの校則を生徒に強要させるんだったら、なんでこの校則を守る必要があるのかという理由を説明してみせてくださいよ」
とあくまで食い下がって問うたことがある。

その返事は何だったと思う?

「大人になったら理不尽でも守らないといけないことは山ほどあるんだから」
だったのだ。

わたしは失望したを通り越して軽蔑した。

あの中学校は蟹工船の従業員を養成するのに最もふさわしいとわたしが前から皮肉っているのだが、それと全く同じ結論にこの本もたどりついていたのだった。



まあ、あくまで平凡がいちばんと心の底から信じているヤツにはこの本は勧めない。

だが、いまわたしが組んでいる大変フリーダムな人生を謳歌されている絵師さんのように、寝る間もおしんですべて自力でマンガを描いて、それをコミケで自費出版し、仲間とそれを共有する、そんな人もうらやむ充実した青春を贈りたいなら、一考の価値がある。

あなたはどうしたいのか?

結婚して奥さんに
「うちの旦那はマジメなだけがとりえなんです」
なんて言われる人物のまま老後を迎えたいかどうか、よく考えるといい。