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環境問題にある程度の関心を持っておられるみなさんに「環境問題とは何か」と問えば、おそらく、90%以上の方々から「地球温暖化」、「オゾン層の破壊」、「酸性雨」、「海洋汚染」、「有害廃棄物の越境移動」、「熱帯林の減少」、「野生生物種の減少」、「砂漠化」などの答えが返ってくるでしょう。
環境問題:Before(履修前)
私は複数の大学で「環境論」を講じていますが、2000年から講義の初日に、「環境問題という言葉を聞いたときに思い浮かぶことを三つ書きなさい」という質問をしています。
昨日、皆さんにも同じようなワークシート「皆さんはどう考えますか」を配布しました。皆さんのお考えはいかがですか。皆さんのお考えを知ることはできませんので、私の方からは学生はこう考えたということをお知らせします。皆さんのお考えとどの程度一致するでしょうか。
この図は昨年10月から始まった後期の講義の第1日目に行ったある大学の経営情報学部の学生61人からの回答をまとめたものです。受講生のほとんどは3年生ですので、大学の授業で経済学や経営学を学んでいるはずの学生です。今回の回答を見ても、やはり一人として経済活動との関連を示唆する言葉を挙げた学生はいませんでした。
このことは社会科学系の学生、自然科学系の学生、人文系の学生、女子大学の学生などいずれの学生も「環境問題」と「経済活動」は別のものと考えているのです。皆さんのお考えはいかがでしたか。これまでの経験から学部は違っても回答は同じようなものです。経済とのかかわりを示唆するような答えが返ってくるのは、きわめてまれです。この傾向は社会人でも似たり寄ったりです。ですから、今になって「環境」と「経済」の統合が企業研修のテーマにあがってくるのです。
環境問題:After(履修後)
講義の初日にこのような回答をしていた学生は12回ほどの講義が終わると、環境問題に対する考え方が大きく変わったことを知ります。その代表的な例は次のようなものです。
「小学六年生の頃から酸性雨や温暖化、オゾン層の破壊、森林破壊、エネルギーの枯渇など環境問題は非常に深刻な事態だと教えられてきたが、それほど深刻に考えたことはなかった。五感で感じられなかったし、自分から遠く離れた外国のことだと思っていたからだ。この授業を受けて世界の未来が危ないという事態に震えが起きた」
「環境問題と経済活動を一緒に見てきた授業はこれまでまったくなかった。環境問題をどうやって解決するかを考える前に、いまの経済活動のあり方を考え直し、持続可能な社会をつくっていくことが大切だと思った」
「環境問題はその国の環境に対する考え方や取り組みだけでなく、その国の政治的な見通しや経済活動もかかわってくる問題であることを初めて知り、すごく驚いた」
私の環境論に、学生は敏感に反応します。そのことは、履修後に提出された感想文によくあらわれています。これまでに、私の授業を履修した複数の大学のおよそ2000人の学生の90%以上が反応する共通点は「環境問題に対する考え方が大きく変わった」というものでした。また、「スウェーデンの考え方と行動を知って、絶望していた日本や世界の将来に希望が持てるようになった」という積極的な感想もありました。
判断基準や見方を変えれば、「新しい可能性と希望」が生まれることを、学生は私の講義からくみとってくれたようです。