環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑤    スウェーデン人のイメージ②

2007-08-22 07:32:36 | 社会/合意形成/アクター


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1995年1月1日のEU加盟後のことはわかりませんが、それ以前のスウェーデンは平等社会の実現」を理想としていたと思います。その実現のために、スウェーデンは社会の弱いグループを保護する政治と平等を軸に、連帯により様々な社会的問題を解決してきましたし、これからもそのような伝統的方法で社会的問題の解決をめざしていくでしょう。

ストックホルム大学社会福祉学部で社会福祉の研究を続けてこられた訓覇法子(くるべのりこ)さんによれば、スウェーデン人一般の国家や公共部門に対する見方はかなり積極的かつ信頼をともなった肯定的なもので、スウェーデンでは、国民の中に公共的なものに反感を持つという伝統はほとんどないそうです。このことはなぜスウェーデン人が社会保険制度や福祉制度のために「自助努力的解決」ではなくて、「公共的解決」を選択したかという説明にもなるとのことです。
 
「国家や公的なものへの信頼感」という点も、日本とスウェーデンの間にある大きな相違の一つです。私はここで、1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故後にスウェーデンの生協(KF)を訪問した日本のある生協グループが、帰国後書いた次のような趣旨の感想文を思い出しました。
   

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「スウェーデンの生協(KF)を訪問した時に、チェルノブイリ原発事故後の食品中の放射能の検査体制について質問したところ、国の機関が検査をしているので、生協としては特別の検査をしていないという返事であった。わが国では、私達が独自の検査体制をもって、検査をしているというのに。また、食品添加物についても、同様の質問をしたところ、同じように、国の機関が検査しているので、生協では検査していないという返事であった」
X X X X X 

私がおもしろいなと思ったのは「わが国では私達が独自の検査体制をもって検査をしているというのに」という箇所です。ここに、公的な機関への信頼感の相違を感じます。
 


訓覇さんの著書『スウェーデン人はいま幸せか』の最終章の一部を、以下のように引用させていただきます。
   

X X X X X 
日常生活のなかで育まれてきた「福祉の思想」が一人一人の心の中に常識として深く息づいていることである。福祉とは、単に選挙の公約でもなく、政治討論の議題でもない。行政処理でもなければ、企業のマーケットでもない。スウェーデンという共同体の、ひいては国民一人一人の幸せの前提であり、生活そのものである。

一人一人の生活を大切にすることが、自分の生活を大切にし、ひいては共同体を発展させていくことにつながるという認識は自然発生するものではない。教育などを通して、子供達に福祉の思想を伝えていくのは大人すべての責任である。たとえ疾病手当ての受給額が10%あるいは20%引き下げられても、医療負担が少し増えても、スウェーデン人は損をするだろうとは考えないだろうし、スウェーデン社会の追い求めてきた理想社会、そしてそれを支える理念は崩壊しないであろう。

弱き人々と共に歩むことができるスウェーデン人はほんとうの「豊かさ」の原点を知っているからである。築き上げてきた「豊かさ」は一時的な経済危機によって簡単に失われるものではないであろう。
     
90年代のスウェーデンは揺れに揺れながら、社会科学の実験国として構築してきた「豊かさ」を検証し、 「すべての国民にとってより平等の社会」をめざすためのたゆみない努力を、忍耐強く続けていくと私は思う。
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訓覇さんの著書『スウェーデン人はいま幸せか』は1991年、つまり、近年ではスウェーデンが最も経済的に苦悩していたときに書かれたものです。現在のスウェーデン経済は絶好調と言ってもよいでしょう。すでに何回も書いたように、スウェーデン政府の報告書(2007年1月4日公表)によれば90年から2005年までの15年間にCO2を7%削減しながら36%の経済成長を遂げています。このスウェーデンの現状を、訓覇さんは現在どう評価しておられるのでしょうか。

スウェーデンのCO2の排出量の推移を掲げます。


スウェーデンの最新の経済成長率(GDP)と失業率を掲げます。







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