あや乃古典教室「茜さす紫の杜」

三鷹市&武蔵野市で、大学受験専用の古文・漢文塾を開講しました。古文教師の視点から、季節のいろいろを綴ります。

桃の節句⑤

2013-03-06 23:50:10 | 
この漢の武帝と西王母の桃の話を、
叙情豊かな作品に仕立てたのが、謡曲「西王母」。
御覧になる機会があったら、どうぞ思い出して下さいね。

-これは不思議の御事かな。そも三千年に花咲くとは。
さては、いかさま聞き及べる。その西王母の園の桃か。

中々に、それとも今は物言わじ。

さればこそ、それぞ殊更、名に負う花の。
桃季物言わず。春いくばくの年月を。送り迎えて、この春は。

三千年になるという桃の、今年より。
なるという桃の今年より、花咲く春にあう事も ただこの君の四方の恵み-

ここで、「桃季物言わず」とありますが、これも仙郷絡みの和歌で、
和漢朗詠集では、仙家の項に収録されています。

お知らせ(湯島聖堂斯文会文化講座)

2013-03-06 01:02:43 | 日記
都心を散歩し、何の気なしに湯島聖堂へ。

湯島聖堂斯文会文化講座のパンフレットを、頂いてきました。
http://www.seido.or.jp/cl01/reslut.php?word=ZA

漢籍一辺倒の講座群ですが、
量・質とも大変、充実していて、楽しそうです。

(受験で漢文が必要で)余力のある学生さんや、
逆に「どうしても、わけわからない!」学生さんは、
お試しで受講してみるのも、面白いかもしれないと思います。

私も参考までに、予定が合えば受講してみたい気がします。

桃の節句④

2013-03-06 00:02:29 | 
それが証拠にとは言いませんが、
「平安貴族の間で、広く膾炙した和歌や漢詩を集めた」はずの、
和漢朗詠集には、「三月三日付桃」という項目があります。

が、その中身は、
「純粋に、桃の花の美しさを謳ったものではなく」
全て、仙郷絡みの歌です。

代表的な歌を、記してみましょう。

-三千年(みちとせ)になるといふ桃の ことしより 花さく春に あひそめにけり

(現代語訳)
三千年に一度、実をつけるという実が、
今年の春から、初めて花を咲かせるようになりましたよ

(注)
「三千年になるといふ桃」とは、
三千年に一度、果実が成るという西王母の花園の桃のことです。

「漢武内伝」には、
漢の武帝が、西王母より桃をもらって食べると、
あまりに美味しかったので、これを植えようとすると、
西王母が「此の桃、三千年に一たび、実を生ず」
と言ったという話が、載っています。

この故事を引いている和歌なわけです。