ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

巨匠のエピソード満載。 佐渡裕【棒を振る人生 指揮者は時間を彫刻する】

2018-07-13 | and others

まったく更新をしていなかった間も、本は読んでいました。
ペースは以前と比べて激減してはいましたが。
手元にあるものや印象に残っているものをぽちぽちとあげていこうと思います。

さて。

著者の佐渡裕さんは1961年生まれ。
小澤征爾に見いだされ、かのバーンスタインの最後の弟子となったというという経歴で有名な指揮者ですが、ご自身も様々な活動をされています。
『1万人の第九』や、バーンスタインの遺志を継ぐ『ヤング・ピープルズ・コンサート』などがよく知られるところでしょうか。
著書もこれが初めてではありません。
最初の一冊は『僕はいかにして指揮者になったのか』。
タイトルどおりの内容で、少年時代からバーンスタインとの思い出、支えてくれた人々のことなどが語られていました。
今回のこの本も、著者が指揮者としてどのようにオーケストラに、そして何より音楽に向き合っているかが、いくつものエピソードで語られます。

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 棒を振る人生 指揮者は時間を彫刻する

 著者:佐渡 裕
 発行:PHP研究所
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「指揮者は時間を彫刻する」。
この言葉はバーンスタインのものだそうです。
著者の中には、どれほどの深さで、亡くなって久しい巨匠が刻まれているのかと思います。
これに限らず、巨匠の印象的なエピソードが満載ですが、一番は、河合隼雄先生とのものでした。
著者が少年時代の記憶とそれに関連した夢から、音楽に作曲家が託した思いをコンサートで演奏中のある一瞬に悟り、涙が止まらなかったという話を、ある鼎談の席で(もう一人のメンバーは元ラグビー日本代表の平尾誠二さん)、河合先生にしたのだそうです。
ある意味、謎解きを期待してのことでしたが、先生は「何か言わなければならないんですが、何も言えないです」と顔を覆って泣き出してしまわれたのだとか。
忘れられない出来事として、著者は語っていますが、これは読んだ私にとっても忘れられないエピソードになりました。
何も言えないとは、どのような思いからだったのか。
著者の夢についての説明はあるはずです。
けれども、先生の涙と「何も言えない」の理由は、この先、私が知ることはできないでしょう。
知ることがないとわかっているからこそ、折に触れ、河合先生のこの時の思いについて考えてしまうような気がします。

 

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おひさしぶりです! (かもめ通信)
2018-07-20 09:54:40
ご無沙汰しておりますが,いかがお過ごしですか?今某所掲示板で新潮クレスト・ブックス祭をやっていて,クレスト・ブックスといえばきしさんだよなあ~と思い,久々におじゃましたところ,これまた久々に更新されていて嬉しい限り!!
ブクレコさんが閉鎖された影響で,一気に新規加入者が増えたりと,本が好き!もいろいろ変化の時を迎えているようです。
きしさんの復帰はないかしら?あったらいいなあ!w
かもめさん、いらっしゃいませ。 (きし)
2018-07-21 22:18:10
ご無沙汰いたしておりました。
かもめさんもお変わりないご様子、嬉しいです。
クレストブックスで思い出していただけるのはとても光栄。
閉じるかどうかもちょっと考えたのですが、まずは再開の方向で(^^)
不定期になると思いますが。

ブクレコ、終わったんですか‼
それも知らずにいました。
あちらもすてきなかたがたくさんおいででしたね。あかつきさんもお引っ越しされたかしら。
ひそかにファンだったので。
あかつきさん! (かもめ通信)
2018-07-23 09:00:16
お引っ越しされてこられましたよ!
あかつきさんを慕って一緒に移ってこられた方もおおいはず。
私もすっかりファンになっていますw

http://www.honzuki.jp/user/homepage/no11733/index.html
かもめさん、 (きし)
2018-07-24 21:15:11
情報ありがとうございます(^^)
なっちゃいますよね、ファンに。私も大好きでした。
よろしくお伝え…いやいや、ひそかに応援させていただきます。
ときどき、かもめさんのページ、拝見させていただいてます。

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