ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

『羊と鋼の森』を観てきました。

2018-07-11 | 観るものにまつわる日々のあれこれ
映画『羊と鋼の森」を観てきました。
原作を読んだ時の印象と同じで、びっくり。

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 羊と鋼の森

 監督:橋本光二郎
 公式ページをみる


「羊」はピアノのハンマーのフェルト、「鋼」は内側で張りつめている弦。
調律師の道を究めていこうとする青年のお話で、調律の世界と彼に関わる人たちを、優しく描いています。
北国の山の奥深くで育った主人公は将来に対して浮ついた夢を持つどころか、むしろ諦めをもって、進路を選ぶ時を迎えようとしていました。けれども、ある日、彼の通う学校にやってきた一人の調律師と、彼に調律されたピアノの音に出会い、調律師となることを志します。
曰く「ピアノは世界とつながっている。この世界ならば、どこまでも歩いていける」と。
彼は、ピアノの音に森の気配を感じるたぐいまれな感性を携え、美しい音を求めていくのです。
では、彼の求める音、また彼に求められるとはどのようなものか。彼は「才能」という目に見えないものに直面し、迷い、絶望しながらも。

小説では当然のことながら言葉のみで描かれていくピアノの音と森の気配が重なるイメージが、映画では分かりやすく目に見えるものとして表現されます。
原作はこちら。
2016年第13回本屋大賞受賞作です。

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 羊と鋼の森

 著者:宮下 奈都
 発行:文藝春秋
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原作と映画の印象が一緒だと思ったのは、もともと原作を読んだ時、印象的な場面がとても映像的だと感じていたからかもしれません。
音に重ねられていく映像。
主人公がピアノの音に森を感じるということ自体がすでに映像化を求めているようでもあります。
そして、題材がピアノとなれば、ここはひとつ映画にして、映像も音もつけてほしいと思うのは自然な流れで、映画化の話を聞いた時も、ああ、そうね、と当たり前のように思いました。
それなりにきれいな作品にできあがって当たり前と。
そんな気持ちで観に行きましたが、映画は、無駄な派手さでイメージを損なうことのないキャスティングと、丁寧に、美しい画面と音とで、場面ひとつひとつを整え、作り上げられていました。
映画館のスクリーンで観られて良かったと思う作品。

こういう作品をみると、原作小説と映画は別物と肝に銘じるという鉄則を忘れてしまいそうです。
思い出させてくれる作品も、今後、枚挙に暇はないでしょうけれども。



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