<10則 その3>
*肯定的な表現*
「ダメじゃないか」 「なにをやってんだ」 「キミはいつもそうなんだから」
よく口にでる言葉ですね 否定的な表現・言い方
この否定的な言い方は 相手のやる気 意欲を削いでしまう言葉の”悪玉”です
後輩の研修講師Tさんのエピソードです
盛夏の奈良での出来事でした
舞台は有名な寺院の「薬師寺」です
彼は 拝観料を払って境内に入ろうとしました
ふと見やると 清涼飲料水の自販機がある
あまりの暑さに 1缶買い求めたTさんでした
そのまま手に持って 散策をはじめます
そして 歩きながら ほとんど無意識のうちに飲みほしました
さて 困りました
周りをキョロキョロ見回します
ないのです
屑かごが・・・ 空き缶はどこへ・・
そして なんという幸運か
あったのです 大きな石が
しかも 石と地面の間に隙間があるのです
彼は 付近を見回しました
誰もいません
Tさんの決意は 電光石火 空き缶を石の下に押し込めました
最後は 靴の爪先でコンコンと奥へ・・
涼しい顔で立ち去るTさん
そのときです 穏やかな声を掛けられたのは・・
「もし もし・・」
ギョット振り向くTさん
まさに 死角でした
いたのです 坊さんが・・
なおも都合の悪いことに 竹箒を手にしています
そうです 掃除をしていたのです
後日 彼は私に語っています
”なにか言われたら 言い返してやろうと思ってましたよ 拝観料を取ってんだか
ら 屑かごくらい用意をしてほしい”
そのときの坊さんは 実にいい顔をしていたそうです
ニコニコ微笑みながら 近づいてきます
「こんにちわ 暑いですね」
「・・・こんにちわ」少し口ごもるTさん
「今年の暑さは格別ですね ところで・・・」
きたか!身構えるTさん
「もう 三重塔はご覧になられましたか」
「いや まだですが」
「そうでしたか ところで・・・」
今度か!
「塔の木造部分の細工は素晴らしいものです ご覧になったみなさまが
口を揃えて 感嘆されますよ」
「はぁ・・」(心の声・見つからなかったかナ 缶捨て)
「宮大工さんは いい仕事をしていますね」
「はぁ・・・」 同じはぁでもTさんは 落ち着きを取り戻してきました
「ところで お客さん」
”ところで攻撃”にもロケットが飛ばなくなったTさんでした
「あの三重塔の先端 てっぺん ここから一番遠いところに見えるもの
避雷針のような尖がっているものはご存知ですか」
「なんでしょうか」
「はい 名称は『相輪』(そうりん)と申します」
「そうりん?」
「はい 相輪です ところで その相輪ですが面白いことがあるんですよ」
「はぁ なんでしょうか」 スッカリ落ち着いたTさんです
「相輪はこんなに遠くから見上げると なんだか不細工に見えますね
それがね 何年かに1回 補修のため下に降ろすことがあるんですよ」
「はぁ・・」
「その時です 驚くのは・・」
「なんです・・」
「相輪を間近で見ますとね・・」
「ふむ・・」
「素晴らしい 彫刻が施されているのです」
「彫刻が・・」
「はい 彫刻です これがあなた 近くで見ることのできる 木造の部分の彫刻
よりも精密な彫りなのですよ」
「・・・」
「昔の人は素晴らしいですなぁ」
「・・・・」
「人が 気が付かないと思われるところにまで 気を配る 実にすばら・・」
”ところで坊さん”に全部まで言わせなかったTさんでした
後日のTさんの話しです
”ここまで言われたら 参った!ですよ 人が見ていないからといって気を緩め
るな 空き缶を捨ててはいけない 諭してくれました いい坊さんでしたよ”
Tさんは 坊さんに最敬礼したそうです
またしても ニッコリ微笑む坊さん
石の下の空き缶 靴の先で閉じ込めたので かなりの汗をかいたTさんでした
このエピソードは 彼と一杯やると いまでも話題になることがあります
説得の秘訣は このへんにありそうです
相手の意見・行為は否定しても 相手のプライド・人格は否定しない
人間の存在そのものは肯定することこそ コミュニケーションの要諦でしょうか
「肯定的表現」がそのコツのようです
難しいことではありますが・・・
今日は 講義調になっちゃいましたね
じゃんじゃん
*肯定的な表現*
「ダメじゃないか」 「なにをやってんだ」 「キミはいつもそうなんだから」
よく口にでる言葉ですね 否定的な表現・言い方
この否定的な言い方は 相手のやる気 意欲を削いでしまう言葉の”悪玉”です
後輩の研修講師Tさんのエピソードです
盛夏の奈良での出来事でした
舞台は有名な寺院の「薬師寺」です
彼は 拝観料を払って境内に入ろうとしました
ふと見やると 清涼飲料水の自販機がある
あまりの暑さに 1缶買い求めたTさんでした
そのまま手に持って 散策をはじめます
そして 歩きながら ほとんど無意識のうちに飲みほしました
さて 困りました
周りをキョロキョロ見回します
ないのです
屑かごが・・・ 空き缶はどこへ・・
そして なんという幸運か
あったのです 大きな石が
しかも 石と地面の間に隙間があるのです
彼は 付近を見回しました
誰もいません
Tさんの決意は 電光石火 空き缶を石の下に押し込めました
最後は 靴の爪先でコンコンと奥へ・・
涼しい顔で立ち去るTさん
そのときです 穏やかな声を掛けられたのは・・
「もし もし・・」
ギョット振り向くTさん
まさに 死角でした
いたのです 坊さんが・・
なおも都合の悪いことに 竹箒を手にしています
そうです 掃除をしていたのです
後日 彼は私に語っています
”なにか言われたら 言い返してやろうと思ってましたよ 拝観料を取ってんだか
ら 屑かごくらい用意をしてほしい”
そのときの坊さんは 実にいい顔をしていたそうです
ニコニコ微笑みながら 近づいてきます
「こんにちわ 暑いですね」
「・・・こんにちわ」少し口ごもるTさん
「今年の暑さは格別ですね ところで・・・」
きたか!身構えるTさん
「もう 三重塔はご覧になられましたか」
「いや まだですが」
「そうでしたか ところで・・・」
今度か!
「塔の木造部分の細工は素晴らしいものです ご覧になったみなさまが
口を揃えて 感嘆されますよ」
「はぁ・・」(心の声・見つからなかったかナ 缶捨て)
「宮大工さんは いい仕事をしていますね」
「はぁ・・・」 同じはぁでもTさんは 落ち着きを取り戻してきました
「ところで お客さん」
”ところで攻撃”にもロケットが飛ばなくなったTさんでした
「あの三重塔の先端 てっぺん ここから一番遠いところに見えるもの
避雷針のような尖がっているものはご存知ですか」
「なんでしょうか」
「はい 名称は『相輪』(そうりん)と申します」
「そうりん?」
「はい 相輪です ところで その相輪ですが面白いことがあるんですよ」
「はぁ なんでしょうか」 スッカリ落ち着いたTさんです
「相輪はこんなに遠くから見上げると なんだか不細工に見えますね
それがね 何年かに1回 補修のため下に降ろすことがあるんですよ」
「はぁ・・」
「その時です 驚くのは・・」
「なんです・・」
「相輪を間近で見ますとね・・」
「ふむ・・」
「素晴らしい 彫刻が施されているのです」
「彫刻が・・」
「はい 彫刻です これがあなた 近くで見ることのできる 木造の部分の彫刻
よりも精密な彫りなのですよ」
「・・・」
「昔の人は素晴らしいですなぁ」
「・・・・」
「人が 気が付かないと思われるところにまで 気を配る 実にすばら・・」
”ところで坊さん”に全部まで言わせなかったTさんでした
後日のTさんの話しです
”ここまで言われたら 参った!ですよ 人が見ていないからといって気を緩め
るな 空き缶を捨ててはいけない 諭してくれました いい坊さんでしたよ”
Tさんは 坊さんに最敬礼したそうです
またしても ニッコリ微笑む坊さん
石の下の空き缶 靴の先で閉じ込めたので かなりの汗をかいたTさんでした
このエピソードは 彼と一杯やると いまでも話題になることがあります
説得の秘訣は このへんにありそうです
相手の意見・行為は否定しても 相手のプライド・人格は否定しない
人間の存在そのものは肯定することこそ コミュニケーションの要諦でしょうか
「肯定的表現」がそのコツのようです
難しいことではありますが・・・
今日は 講義調になっちゃいましたね
じゃんじゃん