酒と畑に戯れるオヤジな私

酒を飲み、土を耕し、人と語り、日々に感動しながら楽しく生きるブログ

コミュニケーション 10則 (その2)

2006年01月14日 | コミュニケーション 10則
コミュニケーション10則

第1回は”自ら近づく”ことを提案しました

今回は この近づいてきた人への対応です


<10則 その2>

*進んで応ずる*

自分に対して物理的に また心理的に近づいて来た人に対しての 応対の仕方です

「おはよう」には「おはよう」

「寒くなりましたね~」「そうですねぇ~」

これだけでいいんでしょうね

ところが これが出来ない時がある

相手に対して なにかわだかまりがある時 なかなか素直に言葉がついていかない

「おはようございます」

「早くもないがね・・」

「寒くなりましたね」

「キミだけだろ」

これでは まるで落語です  ケンカを売っているようなものですね 

折角近づいてきてくれた人を拒絶しています

無視しています


N市の研修で こんな話を聞きました

4月の定期異動で 市民の苦情受付の責任者に任命されたK室長の例です

Kさんの前職場は公民館の館長さんでした 温厚な人柄です

内心 苦情処理の仕事には向かないのではないかと危惧していたKさんでした

前任者からの 引継ぎ事項も気になります

常連の「特別な市民」が”挨拶”に来るというのです

”今度の室長はどんなヤツか” いわゆる”実力拝見”の様子見です

「それがかなりの連中でね Kさん最初から舐められたらダメだよ つけ上がる」

最初が肝心 まともに相手にしない 話すこともない 前任室長のアドバイスです


4月も中旬になったある日のこと

Kさんより年長の部下の係長が 知らせに来ました

「室長 来ましたよ 来ましたよ 例の連中です 応接室に通しておきました

お茶も用意しました 室長に挨拶したいと言ってます」

”私は本庁に用事がありますので失礼します”

係長は なぜか嬉しそうな表情で去って行きました


前任者からの指導を反芻しながら 応接室に向かいました

3人の男たちがソファーに並んでいました

ふんぞり返った3人

真ん中がオヤ玉のようです

大柄 顔がデカイ 黒いサングラスで派手なチェックの背広

一瞬で往年の悪役スターの 上田吉二郎を思い浮かべたKさんでした

ジロリと見上げる吉二郎 

”目を合わせない 顔を見ない 声を出さない 無視 無視!”

呪文のように唱えるKさんです

3人の前に腰をおろしました

おろした瞬間 自分でもびっくりしました

声が出ていたのです  

「いらっしゃいませ」 



しばしの静寂・・

オズオズと面をあげるK室長でした


3人の様子に変化がありました

吉二郎が サングラスをはずしました

意外や ドングリまなこの可愛い目をしています 

”ドングリ”が両隣の”舎弟”を見やりました

「なぁおい 初めてだよなぁ」

「は? なにがでしょうか」と室長

「イヤなにね 室長さんが代わると”挨拶”に来るんだがね いらっしゃいませ

なんて言われたのは 初めてだよ なぁみんな」

頷く舎弟の二人

「気に入ったねぇ室長さん 今日はこのまま帰るよ・・言いたいこともあったがね

そうだ いつもは役所のまずい茶など飲んだこともないが 今日は室長さんに免じ

て ゴチになるかね これも税金のうちだ・・」

税金を払っているかどうかは別にして 3人揃ってお茶を飲みます

そして 軽く会釈までして帰っていったというのです 


N市の研修の休憩時間

ここまで Kさんのエピソードを伺った私は質問しました

「よく いらっしゃいませがでましたね」

「いいえ たいしたことではありませんよ 癖ですよ」

「癖?」

「ええ 公会堂の館長時代 来場のお客様が入場されるときは みなさんのおひと

り おひとりに”いらっしゃいませ”  お帰りのときは ”ありがとうございま

した”習慣になってしまいましたよ」

K室長のこの習慣が功を奏したのでしょうか

その後 吉二郎たちは姿を見せなくなりました

噂では 同類の仲間たちに話しているそうです

「今度の室長さんを困らせたら オレが承知しないぞ」

どこにもいそうな いちゃもんクレーマー

いらっしゃいませのひと言で ドングリ吉二郎の心を掴んだのでしょうか

Kさんは 自慢するでもなく淡々と語ってくれました


「進んで応ずる」

電車のシルバーシート 若い人に譲られたら「失敬な! まだ若い!」

なんぞと気張らずに 素直に礼を言って座りはじめたオヤジな私です