世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●哲学なき日経コラム 明治維新・文明開化の再来祈願とは

2018年01月01日 | 日記
明治維新という過ち―日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト
原田 伊織
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●哲学なき日経コラム 明治維新・文明開化の再来祈願とは

 安倍晋三や日本会議の明治回帰願望は、昨年うんざりするほど聞かされた。以下の日本経済新聞のコラムは、どのような意味合いで書かれたものか、本意は判らないが、上記二者と同調的ニアンスを伝えようとしている。真面目に働くのは馬鹿だ、狡賢いキリギリスのように賢く合理的に働こうじゃないかと提唱しているかに見える。

 欧米文化こそ普遍的価値と定義づけ、市場原理主義信仰から抜け出せない、いや、更に深みに嵌っていきたいと叫んでいるようなコラムである。経済成長至上主義な経済新聞の立場からすると、やむを得ない趣旨のコラムだが、最も重要な、日本という国はどうあるべきか、と云う哲学が欠けている。幕末明治維新の改革の賛美から話は始まっていて、その改革に、なんら齟齬がなかったかと云う論拠に基づいてコラムは書かれている。

 何とも面白いことだが、安倍晋三日本会議の改憲論と和音を奏でている忖度コラムそのもので、新年早々不快である。≪国家が半ば強制的に西欧化へと国民を駆り立てた。≫と書いているが、長州下級武士の嫉妬心が生みだした徳川幕府転覆クーデターと云う歴史上の側面が抜け落ちている。ここでいう“国家”は幕府ジェラシーグループ薩長の欧米かぶれの連中を指すわけで、クーデター政権による誤った欧米化、脱亜入欧が行われ、江戸文化が根こそぎ抉り取られたことに蓋をしている。

 それ以降の日本は、アジア人であるにも関わらず、アパルトヘイト時代の南アにおいて日本人は「名誉白人」として準白人政策で意図的に優遇されたのは笑い話だ。しかし、その裏には、欧米による最終植民地化計画の最終地と云う意味合いが含まれている事に、田舎の下級武士どもは知らなかったのだ。当時の日本人は大いに喜んだのである。ヨーロッパやアフリカの国々の人の中には、白人が支配する世界なのだから、JAPANと云う国も白人が住む国だと思っている人も無知ではなくかなりいるらしい。

 つまり、明治維新や文明開化は、英米によるアジア植民地計画の終着駅だったということだ。英米が、清の国の植民地化にアヘンを利用したわけだが、当時の日本は徳川幕府と、幕府の官僚達による統治が完成しており、女をシャブ漬けにして言うことを聞かせることが出来ないと読んだ結果、薩長の田舎侍達に武器を与えることで、徳川倒幕をさせたに過ぎないと解釈するのが妥当だ。しかも、英米資本は、彼らに武器をただで与えたわけではなく、最終的に幕府に請求書を突きつけ、借財させ、明治の金融の根っこを抑えていたのである。

 今現在、多くのリベラルな日本人が、隷米主義だと非難することは当然であるが、幾分的外れでもある。なぜなら、倒幕、そして明治維新・文明開化のながれそのものが、日本が植民地化された歴史的事実だからである。この英米植民地化の過程において、日本がいち早く欧米の産業に馴染むことが出来たのは、江戸時代に養った幕閣政治と江戸時代の町人職人らの勤勉と知恵の蓄積があったことを見逃しては、時代観、国家観、世界観を見誤るに違いない。


≪ 働きアリより賢いキリギリスに
 2018年の幕開けとともに私たちは歴史の節目を迎えた。明治元年から150年。世界への扉が大きく開かれ、常識が根底から覆った当時の日本は国も国民も新しい時代へとひた走った。その後、幾多の苦難も経験し、今の私たちはまた自信を失いかけている。次の150年は今年から始まる。維新再び――。新しい日本の道しるべを考えてみた。

 


▼維新キーワード  文明開化  あっけらかんとまねてみる。150年前の文明開化は当時の日本人のすがすがしいまでの潔さが原動力だった。「ざん切り頭をたたいてみれば……」という文句を持ち出すまでもなく、国家が半ば強制的に西欧化へと国民を駆り立てた。  今の私たちは一時期の成功体験にすっかりとらわれ、ちょっとばかりの自尊心が世界に学ぶことを妨げていないだろうか。中国やインドの台頭など、日本を取り巻く環境の変化は明治以上の広がりと深さを持つ。一人ひとりがあっけらかんと扉を開けば、新しい文明開化の鐘が鳴る。

■時代を開く生産性革命 





 黒船を率いて来航し、日本に開国を迫った米国のペリー提督は東洋の島国について予言を残した。「ひとたび文明世界の過去および現代の知識を習得したならば、日本人は将来の機械技術上の成功をめざす競争において、強力な相手になるだろう」(『ペリー提督日本遠征記』)
 ペリーは職人の「完璧な」手工技術に驚嘆し、他国に学ぼうとする日本人の好奇心にも目を向けた。幕府を震え上がらせた砲艦外交の裏側で日本の未来を見事に見通していた。
 明治という時代を迎えてから、日本は近代化への坂道を一目散に駆け上がっていく。政府や経済界の要人が欧米列強の先端技術や制度を学び、国内に持ち帰った。岩倉具視使節団が得た知識が国の礎を築き、トヨタ自動車グループ創始者の豊田佐吉氏は40代で米欧を視察した。世界初の超短波アンテナの開発で知られる八木秀次氏は20代後半でドイツ、英国、米国に留学した。明治維新は「上からの近代化」だったといえる。
 もの作りの力を磨いたこの150年、ペリーが見抜いた日本人の器用さと勤勉さが大きく花開いた。1880年代に半分近かった農業など第1次産業の付加価値の割合は1960年代には十数%にまで低下。代わって製造業などの第2次産業が4割程度に高まり、やがて世界第2位の経済大国に上り詰めた。
 高度成長期には「企業戦士」や「モーレツ社員」と呼ばれる人々が分厚い中間層となり、生産や消費の主役になった。イソップ寓話(ぐうわ)「アリとキリギリス」で言えば勤勉なアリが美徳とされた。
 しかし、明治の始まりから150年を迎える今、IT(情報技術)や人工知能(AI)を駆使したデジタル経済が世界的に広がり、中間層は不可欠な存在ではなくなった。
 国際通貨基金(IMF)は2017年4月のリポートで、企業のもうけに占める働き手の取り分を示す労働分配率を1995年から2009年までのデータを使って分析した。スキルの高い労働者は一貫して分配率が上昇しているのに対し、スキルが中程度か低い労働者は低下に拍車がかかった。高いスキルを身につけなければ、社会での活躍の場や手厚い報酬を得にくくなっている。
 働く場そのものが失われる恐れもある。経済産業省の試算によると、最新の技術革新に対応できなければ30年度に国内雇用は15年度と比べて735万人減る。国立社会保障・人口問題研究所は15年から30年にかけて15歳以上の人口が523万人減ると推計する。人口減少のペースを上回って雇用が奪われる計算になる。
 ヒントはやはり海外にある。AIやあらゆるモノがネットにつながるIoTが勃興する第4次産業革命で先を行く米国やそれを猛追する中国などで見聞を広げれば、個々人のチャンスは大きく膨らむ。だが14年の海外留学生は5万3197人と、ピークの04年から36%も減った。
 この先、急激に人口が減る日本は一人ひとりの生産性を高めていくことでしか世界と伍(ご)していけない。デジタル経済は「上からの近代化」が通用する世界でもない。
 今から80年以上前の世界大恐慌のまっただ中で、英経済学者ケインズは技術進歩と経済発展の先行きをこう見通した。「2030年ころ、人が働く時間は大幅に減り、週15時間働くだけで済む」。好奇心や効率性など生産性を高めるために必要なものを私たちは備えている。未来を見据えて自分を鍛える賢いキリギリスこそが新しい維新の担い手になる。
▼明治プレーバック  我が国未曽有の変革を為んとし、朕躬を以て衆に先んじ、天地神明に誓い、大にこの国是を定め、万民保全の道を立んとす。(五箇条の御誓文)
 ≫〔1月1日付日本経済新聞朝刊〕




 

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