阿部ブログ

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ロシアの北極域での防衛力強化 ~ロシア北極軍~

2011年09月25日 | 日記

ロシア海軍は2011年、北洋艦隊の大型対潜艦、戦略原潜、旗艦の原子力巡洋艦“Pyotr Veliky”、ロシア海軍唯一の空母“Admiral Kuznetsov”を含む、300隻近い艦艇の改修をアルハンゲリスクのズヴョーズダチカ(Zvezdochka)造船所に発注した。

ズヴョーズダチカ造船所では、戦略核ミサイル搭載のデルタ級原子力潜水艦などの解体作業が行なわれていたり、インドに売却したキロ級潜水艦のアップグレードなど軍用艦の修理補修施設として有名。

ロシア海軍のこうした動きの背景になるのは「北極海」だ。

北極海の海氷域面積が減少している事は、広く知られているが、今年は2007年9月に記録した431平方kmと言う最小記録を上回る勢いで海氷域が減少しており、こうなると北極海航路の商業利用が拡大するのは必然だ。ちなみに北極海航路の貨物量は、今年(2011年)500万トンを越えると予想されている。

北極海航路のメリットは、スエズ運河やパナマ運河・パナマ第二運河などを経由せず、太平洋域から大西洋域へ移動が可能な点。また貨物輸送の場合など5000海里、輸送期間も1週間程度の短縮が可能な点。

この北極海航路を管理する行政機関は、ロシア運輸省隷下の「北極海航路局」。
同局は、北極海航路関連の法律の制定、北極海航路の安全施策の立案、砕氷船の運航命令、民間船会社に対する行政指示、ロシア船籍以外の外国船に対する北極海航路の利用許可、及び航路通行料の徴収を行う。
但し、実際の北極海航路の管制業務及び各種管理支援業務を行う「運行管制所」はロシア政府認可の民間企業が担任する。

北極海航路の運航管制所は、(1)西部運行管制所と(2)東部運行管制所の2箇所がある。
(1)西部運航管制所(ディクソン)東経125度から西方の海域の管制業務及び支援業務をムルマンスク海運会社が行う。
(2)東部運航管制所(ペベク)東経125度から東方の海域の管制業務及び支援業務を極東海運会社が行う。

さてこの北極海域の防衛を固めつつあるのが、ロシアである。

ロシアには既に北極海専用の国境警備隊が存在する。
ロシアの国境警備隊はロシア連邦保安庁(FSB)に属し、北極海は、北極地域国境局(本部:ムルマンスク)の管轄。

そう言えば北海道にいた時、北方領土を望む根室・納沙布岬に行った事があった。当然旧KGB所属の国境警備隊の警備艇が遊弋しているが、我々制服を見つけた彼らは、こちらから見て横向きだった警備艇の船首をこちらに向け、船首砲塔の口角を上げて威嚇するような動きを見せたのは、今から思えばお愛嬌だったね。現在も昔のように常時監視を続けているとは思われないが、やはり巡視艇が警備しているのだろう。

ロシア陸軍も2011年に北極海地域の防衛力強化の為、2個旅団を新設。その一つがコラ半島のノルウェー国境付近に配備されており、この旅団は4000人規模。
それと、もう1個旅団は極東に配備されているだろう。

これは、フランスからミストラル型強襲揚陸艦2隻が極東に配備される予定であり、強襲揚陸艦と聞くと旧ソビエトの海軍歩兵部隊を想起させるが、これに乗船するのは、将来「北極軍」の一翼を担うこの旅団だろう。但し、極東への旅団配備は推測である。
だが「北極軍」については、ロシアの新聞“Nezavisimaja Gazeta”などが報じており、これ自体秘密でも何でもない。

ロシアの北極域での活動については、今後も注目して行きたい。

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