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レンズ越しに見えるもの または 見えざるもの

座敷わらしの里・金田一温泉の仙養舘〜ジッちゃんの名にかけて

2018-02-02 | 温泉・宿










金田一温泉は、岩手県二戸市にある温泉で、周囲には特に何もない本当に閑静な場所である。旅館は点在しているものの、特に温泉街らしきものもなく、歓楽的な要素は何もない。金田一温泉が有名なのは、「座敷わらし」に逢える温泉宿が多いということだ。特に「緑風荘」は有名で、昔から人気の宿である。座敷わらしに会うと幸運を招くということで、各界の著名人が宿を取っている。そのなかには、ホンダの創業者である本田宗一郎氏なども含まれるということで興味深い。その緑風荘は2009年に火事で全焼してしまったが、2016年より再建し営業を再開している。僕が泊まったのは仙養舘という旅館で、ここも座敷わらしに逢うことができるらしい。ただ僕は一回行っただけで逢えるとも思っていないので、今回はノンビリと湯を楽しむのみである。あと「金田一」というと言語学者の金田一京助氏のことが反射的に頭に浮かぶと思う。実際、金田一氏の家は、この地方の大地主であったといい、深い関係にあるのである。なお、探偵のあの方との関係は不明である。

さて、肝心の温泉はアルカリ単純泉で、柔らかく素直なお湯だった。長時間入っていたくなる湯で、実際僕にしてはかなり長いこと湯に浸かっていた。身体は芯から温まるのに変な刺激はない、とても気持ちの良い湯であった。旅館のオペレーションは、ほぼ女将さんが一人で賄っているようで、素朴だが心のこもったお持て成しを受けることができた。そして特筆すべきは、その静寂さである。他にも宿泊客はいたけど、風呂を含め殆ど顔を合わすことなく、館内は静寂に包まれていた。広い風呂を一人っきりで使い、手足を伸ばす。マイナス7度の気候に冷え切った手足が、ほぐれるように温まっていく。風呂場には、時折落ちる水滴の「ぽたん」という音がするのみだ。その時間は、「嗚呼、何て静かで落ち着く時間なんだ」と普段から田舎暮らしの僕でさえ感嘆する。

ここで都会でギスギスしている諸兄に伝えたい。いきなり座敷わらしに遭おうとか思わなくて良い。また座敷わらしが出るから怖いとかいうことも一切ない。この静かな環境で、優しい湯に浸かり、ただ一人の時間を慈しむ。ジッちゃんの名にかけて言おう。それが最高の温泉だ。

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