Garbanzo blog

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ありったけはげ山の一夜レビュー Vol.5 カンゼル指揮 / シンシナティ・ポップス交響楽団

2010-10-24 20:17:25 | 音楽

ありったけはげ山の一夜レビュー (前置き文はこちら
第五弾はエリック・カンゼル指揮 シンシナティ・ポップス交響楽団より。
こちらのCDはファンタジック・ストコフスキーというタイトルであり、
全編に渡ってクラシック曲のストコフスキーアレンジが楽しめる一枚だ。
バッハのトッカータとフーガやブラームスのハンガリー舞曲も収録されている。
今回レビューのはげ山の一夜も勿論ストコフスキーのアレンジ版だ。

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Ravel : TELARC
Conductor : エリック・カンゼル
Orchestra : Cincinati Pops Orchestra
Rec:1993年 ホール/セッション録音
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アレンジャーのストコフスキーについては以前シェエラザードのレビューで、
指揮者のエリック・カンゼルについても本blogで別タイトルをレビューさせてもらった事がある。
彼はクラシックの指揮者としてよりは映画音楽の方で有名な人だ。(1812などの名盤もあるが)
テラークレーベルにシンシナティ響と共に九十枚以上の録音を残し、世界での売り上げは一千万枚を越える。
しかし残念な事に昨年の彼の死と共に、その蜜月も終わってしまった。

さて本題のレビューに入りたい。
ストコフスキーのアレンジ自体は一般的なコルサコフ版に近く、同様にオーケストラ用の編曲だ。
アレンジ版をさらにアレンジ、という感じ。提示部の繰り返しが少なく、時間的には2分ほど短めの9分が平均。
ラスト前に切なげなオーボエやフルートのフレーズが入り、段々また盛り上げて最後は感動的に終わる。
地獄から出てきて教会の鐘の音と共に帰ってゆく、というストーリーに沿ってはいないのだが、
そもそもムソルグスキーの原曲自体もラストの静やかなフレーズはない。

演奏は非常に熱の入った、しかししっかりとコントロールが効いたバランスの良いもの。
シンシナティ響の明るいサウンドが心地よい。アレンジも重厚さよりは華やかさを重視しているので、軽やか。
さわやかなはげ山の一夜だが、ストコフスキーのアンレジという以外の印象が薄い気もする。
テンポは過不足の無い中庸だ。アメリカのオーケストラらしく、ブラスが格好良い。

音質的にはオーディオマニアのテラーク制作であり、気心が知れたカンゼルとの録音ともあってレベルは高い。
ホールトーンも充分に入っていて、さらにクリアさも損なわれていない立派なもの。
サウンドキャラクターも映画向けの明るめで派手なものだが、これはこれで良い。
テラークとカンゼルとのコンビは同レーベルの生命線みたいなものだったので、
さすがにどれも一定以上のクオリティは保たれている。デッカとデュトワみたいな関係だったのだろう。
他の楽曲もストコフスキーのアレンジが聴けて面白いので、当曲のみならずこの盤はおすすめしたい。

評価 : ★★★☆☆ (ストコフスキー好きには+1で)
録音 : A-