Garbanzo blog

政治経済と音楽のブログ。
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書評 「官製不況」 著:門倉貴史

2010-10-09 16:06:35 | 

本書は2008年に経済学者の門倉貴史によって記されたもの。
モラルハザードの使い方を意図的に一般的な勘違いである「倫理観の欠如」
にしていたりとなんだか所々妙な箇所はあるが、全体的にはどれも常識的な内容だ。
意味の無い日本版SOX法の施行、消費者金融の規制による闇金の跋扈、
ワーキングプア増加の理由、年金破綻は何故秒読みなのか・・・
など、一通り現在の日本における問題をさらってあり、
ベーシックインカムなどの流行もとりあえず抑えている。

個人的には既知の情報が多かったが、本書は手堅く重点が纏まっていて効率がいい。
ほとんどの人々は「今どんな問題が起きているのか」という現状認識が怪しいので、
この本のようなポイントを外さない指摘は重要である。

門倉氏がどんな論者かは本書を読むまで知らなかったが、
慶応の駒村教授と良く似ている。(著者自身も慶応の経済学部出身だ)
市場経済を支持はしているが、野口悠紀夫氏のような極左的リバタリアンではない。

最終章のサブプライム後のカネ余りの話はなかなかにおもしろい。
「カネ」は余るのも足りないのも社会にとって害だという事が良く解る。
その視点が持てないと、いつまでたっても日銀をバッシングし続ける
日本政府のような幼稚な考えから抜け出せない。