Garbanzo blog

政治経済と音楽のブログ。
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はげ山の一夜レビューまとめ 聴き比べ一覧

2010-10-30 09:43:28 | 音楽

10回に渡ってムソルグスキーのはげ山の一夜をレビューさせてもらった。
どのタイトルも指揮者や楽団の個性が反映されていて、やはり聴き比べは面白い。
次にやる機会があればロシアもの以外にしてみたいと思う。

以下に10回分のリンクを年代が古い順に記載しておくので、
探すのが面倒な場合はこのページを使って下さい。


1960年~1979年

・1962 サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 ロンドン交響楽団

・1971 サー・コリン・デイヴィス指揮 ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団

・1974 エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮 ロシア国立交響楽団  ★個人的おすすめ★


1980~1999年

・1985 シャルル・デュトワ指揮 モントリオール交響楽団

・1992 エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮 ロシア国立交響楽団

・1993 エリック・カンゼル指揮 シンシナティ・ポップス交響楽団

・1993 クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団  ★最高評価 名盤★

・1996 オリヴァー・ナッセン指揮 クリーヴランド管弦楽団


2000年以降

・2002 ワレリー・ゲルギエフ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団  ★おすすめの名盤★

・2008 パーヴォ・ヤルヴィ指揮 シンシナティ交響楽団


ありったけはげ山の一夜レビュー Vol.10 ヤルヴィ指揮 / シンシナティ交響楽団

2010-10-29 09:38:45 | 音楽

ありったけはげ山の一夜レビュー (前置き文はこちら
第10弾はパーヴォ・ヤルヴィ指揮、シンシナティ交響楽団より。
レビューは今回で一区切りとさせて頂くつもりだ。
本作も展覧会の絵がメインで、カップリングのはげ山の一夜は珍しく先頭に記録されている。

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Ravel : TELARC
Conductor : Paavo Järvi
Orchestra : Cincinnati Symphony Orchestra
Rec:2008年 ホール/セッション録音
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本作はシンシナティ交響楽団の演奏だ。カンゼルのレビューをした時と同じオーケストラである。
シンシナティポップスはシンシナティ交響楽団の商業的別名で、別の楽団があるわけではない。
(正確にはポップスの方は主席奏者が居ないのだがさしたる違いではない)

指揮者のパーヴォ・ヤルヴィは、名指揮者であるネーメ・ヤルヴィを父に持つサラブレッドだ。
シベリウスの指揮者として有名なフィンランドのマエストロ、パーヴォ・ベルグルンドから名前を貰ったという。
彼の指揮は熱い演奏が好きな父よりも譜面に忠実な中庸的解釈の方が多い。
が、凡庸なプレイに終始することなく、作曲家の意図する方向へオケをドライヴさせる。
世界で期待される若手という評価も頷ける。

さて本作のレビューに入る前に少し別タイトルの話をからめて感想を述べたい。
以前彼のドビュッシーとラヴェルを図書館から借りて聞いたのだがはっきり言って聞けたものではなかった。
ジャケットにはDSDと24bitレコーディグ、5.1chとSACD対応が明記されており、
いかにも最新技術の録音による高音質を売りにしている体だったが、録音状態は最悪の一言だった。
低音がだらしなくモワモワと膨らんで中域を塞ぎ、高域はカーテンがかかったかのように見通しが悪い。
中低域が妙に押し出されているせいで音も割れる寸前のジリつきがあり、そのくせ音圧は大して無い。

初めて彼のドビュッシーを聞いた時、21世紀の録音とはにわかには信じがたかった。
言いすぎを承知で述べるが個人的にはテラークとヤルヴィのコンビは録音品質が最低だと思う。

さて本題のレビューだが、演奏はなかなかである。
緊張感が漲っているし、メロディやフレーズの組み立ても無理のない解釈だ。
テンポはゲルギエフ同様遅めにとっているが、鈍重にはなっておらず重厚さを感じさせてくれる。
やや平凡な印象は受けるが、味付けに過不足の無い無難な指揮だ。

気になる録音に関してだが、嫌な予感が的中してしまったと言える。
最悪だったドビュッシーよりは大分マシだが、もわつきは相変わらず改善されていない。
とてもじゃないが最新の録音とは思えない解像度の低さだ。オケの録音に於いてクリアさは非常に重要な要素であり、
超がつく音質マニアだと言われるテラークがどうしてこんなサウンドを作っているのか未だに理解できない。
本作でもゴウゴウという中低域の嫌な空気のうなりが充満しており、それが中域や高域の抜けを阻んでいる。

本来、シンシナティのホールは明るくてよく響く良質なホールのはずだ。
同じテラークレーベルの同じシンシナティ響なのに、カンゼルのサウンドはあんなにも美しいではないか。
どうして素直に同じセッティングと音質を目指さないのだろう。聞いていて悲しくなる。
ヤルヴィの演奏はヴァージンなど他のレーベルから出ている盤では、高音質のものが沢山ある。
彼は自分の音楽をこんな形で残しつづけているテラークを許すべきではない。

評価 : ★★★☆☆
録音 : C+


ありったけはげ山の一夜レビュー Vol.9 ゲルギエフ指揮 / ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

2010-10-28 18:25:05 | 音楽

ありったけはげ山の一夜レビュー (前置き文はこちら
第九弾は2度目となるワレリー・ゲルギエフ指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団より。
本作も展覧会の絵がメインで、はげ山の一夜とコパック(ソンチンスクの市)、
前奏曲(モスクワ河の夜明け)がカップリング曲。全てムソルグスキーの作曲だが、本作では彼の原典版は一つもない。
展覧会の絵はラヴェル、はげ山の一夜はR・コルサコフ、前奏曲はショスタコーヴィチ、コパックはリャードフの編曲だ。
ちなみに2002年度のレコード・アカデミー受賞タイトルであり、
SACD対応の限定版とノーマルCDの通常版がある。(僕の持っているものは通常版)

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Ravel : Philips
Conductor : Valery Gergiev
Orchestra : Vienna Philharmonic Orchestra
Rec:2000年 ホール/ライヴ録音
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指揮者のゲルギエフについては、以前のシェエラザードでのレビューなどを見てほしい。
本作で彼は名門ウィーンフィルを、エネルギッシュにドライヴさせまくっている。
パっと聴きは派手で豪華なサウンドだが、細部にまでコントロールが行き届いており、精緻さも失われていない。
細やかなフレーズに味付けがきちんとされており、迫力で押すだけの単調さが無いのは素晴らしい。
テンポ設定はやや遅めにとってある。その分一歩一歩前へ進む力強さ、重厚さは数多のはげ山の中でもトップクラスだ。
描いている世界観のスケールが非常に大きく、最も男性的な力強さを感じられる、快活な名演だと思う。
HMVでの評価は芳しく無いが、僕はコルサコフ編曲のはげ山の一夜ではこのゲルギエフ盤が最も好きだ。
個人的にはメインの展覧会の絵よりもこのはげ山の一夜の方が出来が良いと思う。

録音も最新技術をふんだんに用いているようで、DSDでの24bitレコーディングだ。
勿論デジタル化前のアナログ機器も最高級のものを使っているのだろう。エンジニアは良い仕事をしている。
大きな音像かつクリアさも高いレベルにあり、ゴージャスな空気を感じさせるライヴ感も一定量残っている。
演奏、録音ともにハイレベルでまとまった、万人にお勧めできる一枚だ。

評価 : ★★★★☆
録音 : A


ありったけはげ山の一夜レビュー Vol.8 スヴェトラーノフ指揮 / ロシア国立交響楽団 其の弐

2010-10-27 19:35:48 | 音楽

ありったけはげ山の一夜レビュー (前置き文はこちら
第八弾は2度目となるエフゲニ・スヴェトラーノフ指揮、ロシア国立交響楽団より。
今回レビューするのは、92年録音のCANYON版だ。24bitリマスタリング処理されている。
はげ山の一夜はラスト曲だ。スペイン奇想曲、剣の舞、だったん人の踊りを始めとして、
ロシア管弦楽の名曲が非常に良い録音で楽しめる初心者におすすめの一枚。

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Ravel : PONY CANYON
Conductor : エフゲニ・スヴェトラーノフ
Orchestra : 現Svetlanov State Academic Orchestra
Rec:1992年 ホール/セッション録音
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スヴェトラーノフの紹介は第一回でもラフマニノフの回でもしたので省略。
本作は録音スタッフがキャニオンに変わったばかりの頃の作品だ。エンジニアは勿論江崎氏。
レーベルの変更による録音スタッフの入れ替わりがあったせいかは解らないが、
スヴェトラーノフらしいダイナミックさやフォルティッシモは本作ではやや影をひそめている。
ファンからするとちょっと大人しすぎるかも知れないが、その分バランスの良い演奏になっているので聴きやすい。
74年のものは触ったら血が噴き出しそうな緊張感に包まれていたが、本作はややユルめで、純音楽的アプローチ。
まだ慣れていない日本人スタッフ達との録音という事もあって遠慮したのかも知れない。
前回のものよりも良くも悪くも音楽としては軽く、10分40秒というテンポ設定も、
速いというよりは、軽快な印象が強い。

録音に関しては相変わらず非常に良い出来だ。音圧こそ低いもののレンジも像も広く、そして美しい。
江崎氏の盤はついつい演奏よりも音を聞いてしまうのが贅沢な悩みと言える。
本作はロシア管弦楽名曲集と銘打っているだけあってクラシックの入り口に居る人の方が向いている。
熱心なスヴェトラファンやコアなマニアにはちょっとヌルいかもしれないが、
個人的にはこちらの盤も適度に力が抜けていて結構好みだ。

評価 : ★★★☆☆
録音 : A


ありったけはげ山の一夜レビュー Vol.7 ナッセン指揮 / クリーヴランド管弦楽団

2010-10-26 18:47:17 | 音楽

ありったけはげ山の一夜レビュー (前置き文はこちら)
第七弾はオリヴァー・ナッセン指揮 クリーヴランド管弦楽団より。
本作も展覧会の絵がメインで、はげ山の一夜はカップリングだ。

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Ravel : Deutsche Grammophon
Conductor : Oliver Knussen
Orchestra : The Cleveland Orchestra
Rec:1996年 ホール録音(ライヴかセッションかは不明)
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本タイトルも以前紹介したカンゼル指揮のストコフスキー・ファンタジー同様、全編がストコフスキーの編曲版だ。
あちらはバッハやドビュッシーなど多種多様の編曲が楽しめるが、こちらはムソルグスキー一本に絞ってある。
それにしてもいつ聴いてもラヴェル、コルサコフに負けない非常に華美なオーケストレーションだ。

ナッセンは指揮者の中では若い方(?)で、現在は58歳だ。巨匠と呼ばれるにはまだ20年は早いだろうか。
ストコフスキー同様指揮者としてのみならず作編曲家としても名を馳せている。
オケはクリーヴランド管弦楽団で、アメリカのオケの中ではトップファイブの一つである。

さて本題のレビューに入りたい。
同じストコフスキー版でもカンゼル&シンシナティ響と比較すると、テンポはゆったりと取られている。
華麗さではカンゼル、緊張感と迫力があるのはナッセンだ。個人的にはナッセンのサウンドの方が好み。
華やかなサウンドを楽しむならカンゼル版を、原曲の味わいが残っていてほしいならナッセン版を勧めたい。
序盤~中盤にかけての陰鬱な爆発っぷりはなかなかである。後半はやや感傷的。

録音に関してはライヴかセッションかはわからないが、時々モコモコするので多分ライヴ録音だと思う。
基本的にはややマイルドで解像度も像の大きさもそれなりの、90年代グラモフォンのサウンドだ。
悪い所も特筆するような所もない平均点の録音クオリティだと言える。

とりあえず僕のように聞き比べでもしない限り、カンゼルかこちらのナッセンか、どちらか一枚で問題無い。
展覧会の絵も聞きたいならナッセンを、ストコフスキーを色々楽しみたいならカンゼル版が良い。
ちなみに展覧会の絵はパイプオルガンまで鳴っていて、なんだか豪華。

評価 : ★★★☆☆
録音 : B+