Garbanzo blog

政治経済と音楽のブログ。
Garbanzoってのはひよこ豆のことです。

[大貧困社会] 書評

2010-02-28 20:30:59 | 
慶応の経済学部教授、駒村康平氏の書かれた本。
著者はどちらかというと欧州的な「大きな政府」を目指しているが、それを差し引いても
トリクルダウンを標榜する米国的な小さな政府を正しく批判している。
彼も言うように「小さな政府で格差を少なくする」のは、
トレードオフを無視した偽善だ。

国民年金問題、セーフティネットの機能性、それに加え若年層の貧困など
タイトルの通り取り上げている話題は結構「左より」だが、
著者自身が問題を正しく見ているために非常にバランスの良い問題提起になっている。

僕は駒村教授とは違いもっとミニマムな政府を日本は目指すべきだと思うが、
(最低賃金は引き上げるべきではないと思う)
結局のところ政府の仕事量や範囲に関わらず最終的には限りある資本を
効率よく運用しない限り未来が無いという点に於いては同じ認識である。

本書は必要十分なしっかりと説得力のあるデータが添付されており、
ページ数は200P程度のコンパクトなものだが内容は詰まっている。
最近良く出ている妙な保守バンザイ本を読むよりもよほどいい。

twitterをはじめてみた

2010-02-24 23:54:50 | 日記
始めてみた。始めてみたが・・・
gooでは現在エラーのためブログパーツとして貼り付けると真っ黒に。
TWgarbanzoで登録しているのでフォローして頂ける方はどうぞ。
アイコンの絵が下手なのはご勘弁をば。

追い出し屋が何故居るのか

2010-02-23 19:06:39 | 社会

NHKで家賃を滞納した店子を追い出そうとする「追い出し屋」が報道されていた。
このニュースでは1ヶ月家賃を滞納した店子の家財道具を
保障会社(追い出し屋)が持ち去ってしまったことで、
店子側が度を越えた追い出しだとしてこの措置に反発、法的規制を求めたという。
このような脅迫的な追い出し行為が近年激増しているらしく、
政府は現在よりもきつい規制を来年春以降の法案で通そうとしているらしい。

・・・このケースは保護的な政策で必然的に出てくる歪みだと言える。
こういった住宅の賃借での問題の場合は既に第二段階にあると言っていい。
現在、住宅賃借の契約に於いては
借地借家法
かなり店子側に有利な条件が判例として認められてしまっている。
もう現時点で既に大家の権限で「追い出す」ことが事実上不可能なのだ。

流れをざっくりとさらうと、

①大家が店子を追い出そうとする

②裁判で「それはかわいそうだ」という判例が出て追い出せないような判例が出る

③大家の権限で問題のある店子が追い出せないので第三者に委託するようになる

④それを規制する法案が・・・ (以下ループ)


これは、店子や大家だけの問題ではない。
このような事後的な規制が強まると何が起きるかというと、
まず大家は店子になりうるかどうかを徹底的に調べるようになり
支払能力に少しでも不安があるような人間には絶対に物件を貸そうとしなくなる。
そのために賃貸物件の値段が不必要に高騰し、
これから新しく入居しようとする人にそのコストが転嫁される。
このような状態がいつまでも続いているので、日本の住宅事情は競争原理も働かず、
品質が悪い物件がいつまでたっても高いままだ。

しかも、NHKで紹介された最後のデータによると、このような問題が起きている件数は
過去に比べ激増しているとはいえ現在でも500件程度だという。

上記で考察した現状を踏まえて考えれば、追い出し屋を撲滅する方法は簡単に考え付く。
それは大家という管理者に本来の権限を戻す事だ。
合法な家賃の催促をした時点で、司法が大家側の督促を認めれば追い出し屋など不要だ。
追い出される店子が可哀想だという目の前だけの正義を押し通すということは、
重ねて述べるが結局今見えていない将来の誰かにコストを転嫁しているだけだ。
このような司法のパターナリズム(家父長的処遇)は
個々人のみならず最終的には社会全体に悪影響を及ぼす。
全体を見ようとしない政治家や法律家は人の上に立つ資格はない。


モカと保身

2010-02-22 19:45:55 | 社会

エチオピア産のモカが輸入を再開した。
しかし個人向けに少量確保している程度で、業務用にまわせるほどの量は無いという。

日本はモカ豆の98%をエチオピアからの輸入に頼っていたのだが、
2008年の春ごろに厚生労働省のチェックで基準値以上の残留農薬が検出され、
厚生労働省は2年近く輸入にストップをかけていた。

僕はモカが大好きだったので当時は結構イヤだったのを覚えている。
モカの輸入がストップしたせいでブラジルやコロンビアなどの
元々安めだったコーヒーが連動して値上がりしてしまった。

この時の検査の内容は第三者から見ると疑問が多く、
残留農薬のほとんどは麻袋から検出されたものだった。
厚生労働省は輸入のガイドラインも定めないまま、
無農薬や有機栽培品質の豆までも一緒くたに輸入を停止させ、
「相手が原因究明や検査の充実に努めない限り、日本側も対応のしようがない」
としてエチオピア政府の「日本の残留農薬基準値が厳しすぎる」という要求をつっぱねた。

そして現在に至るわけだが、正しかったのはエチオピアの方だ。
現に欧州や米国では残留農薬は問題にならずそのまま飲用されており、
エチオピアのコーヒーで食品事故が起きたという話は
少なくとも僕が調べた限りでは存在していない。

J-Castの記事でも書いてある通り生で食べられるきゅうりの方が
100倍も残留農薬規制値が緩い。
こうも露骨な規制が入っていると、国産のコーヒーを保護する為に
不必要に基準を厳しくしているのではないかと勘ぐってしまう。
(生産量の観点から考えたらそんな事はありえないが)

役所は往々にして安全が全てに優先するという馬鹿馬鹿しい妄執に囚われがちだが
それは殆どの場合経済的な合理性を欠いたものばかりだ。
姉歯の建築強度詐欺事件も、彼の個人的な犯罪だったのにも関わらず
その後建築基準法が大きく改悪され、優良な建築会社まで倒産し
供給が不足して住宅の価格が高騰した。
同様に一部の医薬品もwebの通販が禁止され、値段は諸外国と比べて高止まりしたままである。

結局のところ安全も安心もタダではないのだ。過剰な保護による規制は
最終的には回りまわって商品の価格に反映されてしまう。
自戒を込めて言うが、我々消費者はそういったコストがほとんど見えていないので、
無制限に安全や安心のハードルを上げることを要求しがちだ。
そしてのその規制や保護を叫ぶ民衆に動かされて政治家は法律で規制をかけ、
それを権力の源泉として肥える。

安全も安心も確かに無視していいものではないが、
それは完全に0にするようなものでもないし、すべきでもない。
鳩山首相が言う「いのち」がもっとも大事なら、車も飛行機も使うべきではないのだ。
だがそんな馬鹿げた選択肢は現代に於いてはありえない。

最も重要なのは、限りある資源や資本で最も有効な使い道を必死になって探ることだ。
それが我々に出来る最初の一歩である。


インフレーションターゲットなんてムラ ムリ ムダ

2010-02-21 13:34:26 | 経済

日銀が国債下落リスクを警戒してインフレーションのターゲッティング政策に難色を示している。

当たり前だ。
もう散々量的緩和してゼロ金利何年目だか覚えてない位なのに、
いまさら過去となんら変わらない国債の買い上げというマネタリーベース(*)だけ増やす施策をして
果たして何の意味があるというのだろう。
宝箱を右から左に移すか左から右に移すかの違いしかないのに、
勝間和代が言うような「日銀の国債引受はインパクトが違う」なんてたわ言にも程がある。

ゼロ金利状態の現在は
流動性の罠が発動しているから、金融を緩和する事は無意味だし不可能だ。
池田信夫氏が言うように問題の本質は「日銀がいくらマネタリーベースを増やしたかではなく、
民間に流通するマネーストックがいくら増えるか」であって、
日銀が90年代から量的緩和という
リフレ的政策を取ってきた結果が現在のゼロ金利である。

2006年の小泉政権下ではデフレにも関わらずいざなぎ景気という戦後最大の経済成長があった。
今問題になっているデフレーションは経済成長とは相関性の薄い結果的な現象であって、
それは派遣労働を規制しても正規雇用が全く増えないのと同じように、
それ自体を直接オペレーションでどうこう調節する事は不可能だ。
日本がよりよい将来を築くために、クリアしなくてはならない問題は膨大に存在する。
しかしその問題を解決するためにはそれと同数の解答が必要であり、
インフレになったら全て治るような都合の良い政策なんて存在しないのだ。


*マネーストックと書き間違えていたので修正した