5月13日のこと、急に思い立ってレンジローバー・イヴォークを見に行ってきました。
昔パジェロ・ロングに乗ってはいましたが、車の「動き」を楽しむようになってここ10数年、正直言って背の高い車にはまったく魅力を感じませんでした。クルマは軽快であることが一番だと思っています。たとえ家族車だろうがなんだろうが、物理の法則にしたがって動くものは「軽いこと」「重心が低いこと」がその動きの気持ちよさに直結するわけです。地球上にいる限りいくらエンジンの出力を高めても、足回りを固めてもごまかせるものではない。
とまぁ、そんなこと言っていても、通常クルマ家族や荷物も運べないと困るわけで
、子供がもっと成長して両親も年老いたらうちもいつか冷蔵庫(ワンボックスのこと)に乗らにゃいかんのかなぁと危惧はしています。
実はすでに、子供がアイスホッケーをやりだし、毎年キャンプにも行き、1シーズンに何回もスキー場に行くようになると、最近は荷物がつめて車高の高い「クロカン4駆」がまた急に便利そうに見えてました(笑)。
できることなら、アウディQ7とか、ポルシェカイエンとかがいいけど、価格も高いし普段そんな図体で走る必要もない。BMWのX1とかアウディQ3が正しい選択じゃないかなとも思うのですが、微妙にぴったりの車がないんです。
そんななか登場したのが本日ご紹介する「レンジローバー・イヴォーク」。
レンジローバーは、「オフロードのロールスロイス
」とまでいわれた質感と乗り心地、イギリス車らしいテイストをもった
高級ブランドであり、ちょっと僕や妻が乗れるイメージではなかったのですが、昨年、発表されると同時に世界中で注目を浴びたこのイヴォークは、これまでのレンジとはまったく異なる若々しくカッコイイ、魅力的なモデルなのです。
1.デザイン
なんといってもこれまでのレンジにはなかったカッコいいデザイン。この手の車のなかでは低く精悍であり、都会的でもあり、力強くもあり、スマートでもある。3ドアはもちろんですが、5ドアでもデザインを犠牲にすることなく素敵。ボディカラーも多数用意されていて美しささえ感じます。僕はレッドが気に入りました。
このクルマの特徴といえると思うのですが、全幅は1.9mとEクラスよりでかいのに、全長はX1より短いというのです。ワイドなのでX1よりでかく見えますが実はそうではない。そーゆーの、好きです(笑)。
2.4気筒エンジン
エンジンは4気筒ターボ。V型8気筒4リッター超のでっかいエンジンで重い車体を豪快に引っ張るこれまでのレンジとは違い、軽快で、燃費にも配慮したイマドキのクルマになっています。
3.手ごろな価格
個人的にはまったく手ごろだとは思っていませんが(笑)、あのレンジローバーがこの値段といえば確かに安いっちゃあ、安い。車両本体価格は450万円~590万円(オプション別)となっています。
さて、これらを踏まえての実車インプレッションです。
1.デザイン
うむむ・・・やはりかっこよかったです。当日はたくさんのレンジローバー/ランドローバーオーナーの方が見に来ていましたが、今回のターゲットはもう少し若い人とか違った層の人たちの気がします。または、レンジが好きで長年乗ってきたけど、やはり重くて大きくて疲れてきた・・っていう方にはぴったりかもしれません。
全長の短さは居住性には全く影響していないと思います。5ドアもカッコイイ。3ドアより3cm背が高いのですが、ルーフ色の異なる2トーンカラーにすれば全然気にならなくなると思います。
このクルマの最大の魅力はやはりカッコよさだと思いました。
2.4気筒エンジン
僕が一番疑問視していたのがこれ。いくらなんでもレンジに4気筒はどうかな?と思っていました。
結論から言えば、僕的には心配は的中でした。アイドリングではまったく振動もなくさすがレンジ。静かでまったくエンジン音も聞こえません。しかしひとたびアクセルを踏むと、やはり4気筒のうなるエンジン音。デザインも、外装も、内装も高級車そのものの質感にあって、このエンジンのうなる音だけはイメージとかけ離れていると思いました。
営業マン氏は僕の心配に対して、「低速ターボでかなり下からもりもりと力が出ますから」と説明していましたが、僕は力不足を心配したのではなく、4気筒エンジンの音とか落ち着きのなさを懸念していたんです。
いや、むしろダッシュ力はかなりのものです。動力的には何の不満もありません。このボディをよくも2リッターで軽々と動かすものだと感心しましたが、逆にターボ効かせすぎじゃない?!とも思いました。僕はもう少しアクセルにも落ち着きがあったほうがいいです。とっても高級なクルマにやんちゃなライトエンジンを載せたような印象です。
しかしこの評価は僕がレンジローバーを意識しすぎているのかもしれません。「時代は変わって、レンジローバーが小型ライトクロカンを発売したんだよ」といわれれば全てが納得いきます。でも・・。
3.手ごろな価格?!
価格は、仕様やロットの問題でなんと3ドアのほうがお高くて、3ドア470万円~590万円、5ドア450万円~578万円となっています。
がっ!これは「えっ!レンジがこの値段!!」と驚かせるためのトリック(笑)。実は欲しい装備がことごとくオプションになっていて、それらをつけていくとやはり相応の価格になってしまいます。
でもこの車の場合、必要なオプションはつけるべきであり、その結果高くなってしまう価格は、実はそれが本来のこのクルマの価格なんだ!と思うべきではないでしょうかね。
やっぱりこのクルマは高級ブランド車なんでしょう。歴史と誇りを持った英国の雄レンジローバー様なんです。皮革と木目とアルミのセンス高い内装なんてホントに惚れ惚れします(写真)。信号待ちでつい撫でてしまいます。皮のステアリングなんて握っているだけで幸せな気分になるほど手触りがいい。メルセデスの革ステアリングなんて硬くてかさかさで比較になりません。ドイツと英国のものづくりの違いそのものでしょう。
4.多彩なオプション
たとえばガラストップは重量が重くなるのでスポーツカーなら敬遠するところですが、こういうクルマにはうれしい装備。かなり開放的であり、後席に乗った娘がみなとみらいの摩天楼のような景色や観覧車などを見つけて大喜びでした。これは9万円のオプションです。
電動リアゲートなんていらないですか?それがねぇ、慣れちゃうと便利なんです。子供でも開閉ができるし、買い物で手がふさがっているときなど大変便利です。これは7万円!のオプションです。
そほほかDVDナビが31万円、キセノンヘッドライトが4万~10万円、さらに電動シートも標準でない。(パッケージには入っているのかな?)。
こんなにオプション設定にしてそこまで敷居を下げるか!って感じです。
まあ文句はそのくらいにして乗ってみましょう。
■試乗インプレッション
エンジンをかけるとその静かさに4気筒であることを忘れます。振動もありません。そしてオーディオが小さな音で美しい音楽を奏でています。11個もスピーカーがあるそうです。外の音が遮断されているのでとても快適で静かな中、美しい音楽を楽しむことができます。さすがです。高級車です。
がっ、信号が青になりアクセルを踏み込んだとたん、クルマのイメージは一変します。かなり低速からモリモリと力が湧いて、少し落ち着きがないとも思えるほどのダッシュを見せます。こんなにターボが効かなくてもいいのになぁ。
そしてアクセルを踏み続ければ、前述した4気筒エンジンのうなりが結構響きます。クラシック音楽を静かに奏でていた室内の空気が変わり、ちょっと大人気ない。もちろん、そうーっとアクセルを踏めばいいのですけど。そのあたりは落ち着きに欠けるといわざるを得ない。オーナーさんがこのクルマに求める価値観次第ではありますが、僕自身は「違う」と感じました。
いやさ、そうくるならぜひディーゼルがほしいぜ。この点、正規ディーラーさんとしてはまったくのゼロ回答。日本の規制に適合させるためには100万円くらいかかりそうなので正規輸入はしないだろう・・・とのことです(並行輸入はされています)。
さて、一方で乗り心地はといえば、これはとろけると言ってもいいでしょう。でかいタイヤに長いストロークの足、そしてレンジローバー様ですから、乗り心地が悪いはずがない。シートも出来がよくてゆったりソファのようです。乗り心地に関しては本当にEクラスなんかよりしっとりとして、英国車らしい上質感を堪能できます。路面の凹凸なんて気付きもしないっす。
操作系ですが、ATのセレクターレバーはダイヤル式になっていて、エンジンをかけるとウィーンとせりあがってきます。ダイヤルをPからDにすると自動的にサイドブレーキが解除されます。ATは6速で、ステアリング裏のパドルシフトで操作できます。ただ、流行のツインクラッチなどではなく普通のATです。まぁ、これはこれで問題ないし、このクルマにはあっている感じがします。
また、窓の上下高がないので室内は圧迫感があるかと思いきや、そんなことはない。窓が小さいなと感じるのは後方視界のみです。その後方にはテレビカメラがついていて、ドアミラーのカメラや前方カメラと合わせて、クルマの周囲をモニターに映し出してくれます。バンパーにはセンサーもついていて、接近するとワーニングを発してくれるそうで奥様の運転も安心です
。
試乗したクルマは実用度の高い5ドアのほうでタイヤは17インチでした。だから乗り心地は特に良くとろけるようでした。そして内装はアイボリー&ダークチェリーという高級感あふれるレザー。ダッシュボードの革のステッチまでが美しい。アクセルを踏み込まなければ本当に高級イギリス車に乗っている雰囲気がプンプンしていました。ステアリングの手触りもいつまでも触っていたいほどでクセになりそうです。そういえば昔ジャガーのXJに試乗したときに同じことを書きましたっけね。「いつまでも乗っていたいと感じた」と。このクルマもエンジンが静かならずっと乗っていたい感じがします。
5ドアと3ドアに大きな差はありません。デザインもそりゃ3ドアの方がかっこいいですけど、5ドアも全くスタイルを犠牲にしていません。素敵です、カッコイイです、欲しいです~。
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総括します。
良い点は書きはじめたらきりがない。でも自分で乗ってみないとわからない良さが多い車かもしれません。でもやっぱり一番はデザインかなぁ。
NGな点はもう3つだけ。①4気筒ターボの落ち着きのなさ、②オプションだらけで結局高くなる価格、③いま注文しても1年待ち この3つです。あとはうちの場合は荷室が今よりわずかに狭くなってしまうこと(通常は必要十分だと思います)かな。
我が家にとっては、5年後中古車買い替え候補としては有力なクルマが現れた感じがします(笑)。
でも最後にもう一度だけ言わせてください。松任谷さんが何と言おうと(笑)、僕はこの4気筒エンジンがレンジのイメージではないと感じました。V6じゃダメだったのでしょうか(載らないのか)。そりゃ時代なのかもしれません、高級ライトクロカンを狙ったのかもしれません、でもレンジローバー様にはもう少しどっしり構えて落ち着いていて欲しかった気します。